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#018 四つの意志を一つに
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「──お前に、その場所は相応しくない。さあ、我々と行こう。再び」
「お待ちなさい!」
夜の帳が下りた公園。漆黒のローブを纏った男が残間くんと一緒にいた。僕と杏那さん、そして玖代会長に肆谷副会長の4人が対峙する。保護観察処分、という名目で暫くの間監視の目を光らせていたが、まさか本当に再接触してしまうなんて……
「やはり貴方たちでしたか。彼を諦めていなかったのですね」
静かな怒りを瞳に宿し、玖代会長が問う。ローブの男が、せせら笑うように答えた。
「ああ。この男の魂が叫んでいる。渇望しているのだ。『力』が欲しい、とな。ならば我らが、その願いを叶えてやると言っている」
「その通りだ」残間くんは僕たちに向き直り、言い放った。「僕は今までの人生、ずっと泥水を啜ってきた。これだけ苦労したんだ。だから……少しくらい良い目を見たって、罰は当たらないだろ?」
その言葉に、僕は憤怒で顔を歪ませた。
「残間くん……! あの時の言葉は嘘だったの!? 機術研究部に入って、ちゃんと機術と向き合って、誰にも馬鹿にされないくらい強くなるんじゃなかったの!?」
「ああ、嘘だ」彼は吐き捨てる。「目の前に、楽して成功者になれる道があるなら、誰だってそっちを選ぶに決まってるでしょ。
...いや、あなたたちみたいな高潔ぶった優等生は選ばないのかもしれないな。でも僕は、所詮あなたたちとは出来が違うんですよ。悲しいことにね」
「残間くん……!」
激情に駆られる僕を、玖代会長が静かに制した。彼女の冷徹なまでの視線が、俺を射抜く。
「その『良い目』、とは何ですか。あなた方の組織の構成員に与えられる褒美、この目で確認させていただきましたが……」
「……!」
会長の口から紡がれた言葉に、彼は息を呑んだ。
「そうか…お前ら、あの時資料を奪って持ち帰って、そして読んだのか」
あの時、美王先生と杏那さん、それに三鳥書記の協力で奪えた資料。まだ資料がまとまっていないということで僕は見ていなかったけど、どうやら会長はすでにそれを見たらしい。
「ほう……」ローブの男が、面白そうに呟く。「ならば話は早い。機密を持ち出されているとあれば、どのみち生かしてはおけんな。──おい、残間。お前も我らのために戦え。これをくれてやる」
男の手から、冷たい金属の感触をしたデバイスが放られる。彼はそれを、疑いもなく掴み取っていた。
「……ありがとうございます」
それを見て、肆谷副会長が呆れたようにため息をつく。
「……本当に、私たちとやり合うつもり?」
「ああ。僕はずっと、酷い目に遭ってきた。それに耐えて、歯を食いしばって頑張ってきた。なのに、何も報われなかった。お前らみたいに、光の当たる場所にいる人間にはなれなかった。だから……これくらい、許されるはずだろ!」
「許されないわよ」
肆谷副会長の言葉が、氷の刃のように俺の心を切り裂く。
「私もあんたらの資料を読ませてもらったわ。あんたが入ろうとしているのは、人の命も心も、塵芥ほどにも思わない外道の集まりよ。それでもその道を選ぶと言うのなら、もはや容赦はしない」
「その、人の命や心を何とも思わない連中に! 俺は人生を狂わされたんだよッ!!」
とうとう本性が出た、ということなのか。残間くんの一人称や語気が変わった。あれが、残間くんの本当の彼の姿なのか...
「……それに比べたら、こいつらの方がよっぽど、俺の心に寄り添ってくれる」
「……私たちよりも、ですか?」
玖代会長の問いに、俺は鼻で笑った。
「ああ。普通の人間なら、何の対価もなしに力を授けてくれる奴らがいたら、そいつらを神様だと思うさ」
「普通の人間は、悪だと分かっている人間の誘いには乗らないわ」
肆谷副会長が、どこまでも冷徹に俺を断罪する。
「あんたは普通じゃない。ただ堕落した、救いようのないクズよ」
「……ああ、そうかもな。だが、なりたくてこうなったわけじゃない! お前らを取り巻く環境が、俺をこうしたんだ!」
俺は、憎悪を込めて叫んだ。
「あんたらだって、俺と同じ環境で育てば、間違いなく俺のようになっていたさ。絶対にな!」
「……意思は、変わらない。ということでよろしいですね」
玖代会長が、静かに、そして最終通告のように告げる。
「ああ。俺は特権階級になって、贅の限りを尽くす。失われた今までの人生を、すべて取り返すためにもな」
「残間くん……」
僕が、絞り出すような声で彼の名を呼ぶ。
その言葉を合図にしたかのように、僕と他の3人が一斉に戦闘態勢に入った。
「ならば、もう貴方に掛ける言葉はありません」
玖代会長の凛とした目が相手を貫く。
「これ以上罪を重ねる前に、私共が直々に手を下します」
「……望むところだ」
「会長! まずは僕に行かせてください!」
静寂を破ったのは、僕の怒りに震える声だった。
「残間くんの言葉を、僕は一度は信じました。それを裏切ったあいつを、俺は絶対に許せない!」
「七座さん……」玖代会長が、彼の決意を受け止めるように頷く。「分かりました。あなたの想いを込めた一撃、お願いします」
「はい! ……残間くん! これが君の否定した、地道な努力で手に入れた僕の実力だ! 双極!」
僕が努力で手に入れた、ナイフを操り相手を切り裂く力。それはまっすぐに、残間くんと、その隣に立つローブの男へと突き進んだ。
「──手を貸すぞ」
「ああ」
ローブの男が残間くんの肩に手を置いた、その瞬間。二人の前に展開されたのは、禍々しいオーラを纏ったエネルギーの壁。遠藤くんの放ったナイフは、その壁に弾かれた。
「くっ……やっぱり、ダメか……!」
「七座、地道な努力なんて所詮そんなもんだよ」残間くんが、凍えるような声で嘲笑う。「この組織に入ればなぁ……お前が血反吐を吐いて手に入れた力も、こんなに簡単にお前のものを上回れる!」
その言葉を証明するように、残間くんがこちらに掌を向ける。その先に収束したのは、なんと二本のナイフ。そう、『双極』だ。だが...
放たれたそれは、僕の放ったものよりも遥かに速く、そして正確にこちらを狙ってくる!明らかに僕のオリジナルを凌駕していた。
「くっ!」
肆谷副会長が前に出て鋼砕龍牙を振り回す。流石は副会長、あの速さのナイフを2本とも即座に叩き落とした。ナイフは砕け散り、そして消滅する。
「今のは……まさか……」
「……相手の機術を模倣し、さらに強化する能力、ですか」
会長の呟きに、僕の背筋が凍る。そんなチートみたいな能力が……。
「それだけじゃないぜ。俺の機術なら、こんなこともできるんだよ!」
信じられない光景だった。残間くんの腰元に、僕の『双極』と寸分違わぬナイフが、新たに二対、計四本も光と共に生成されたのだ。
「まさか!?」
「喰らえ。『双極・極み』!」
残間くんが叫ぶと同時、四本のナイフが僕の『双極』を遥かに上回る速度で飛来する。杏那さんが重力操作で、肆谷副会長は鋼砕龍牙で、そして玖代会長が水の機術で対抗し、僕も自分のナイフで対抗しようとするが撃ち落とせず、一本のナイフが縦横無尽に僕の体を切り裂いた。
「ぐあっ!」
衝撃で地面に叩きつけられる。全身に走る激痛に、思わず呻き声が漏れた。
「くっ……! すみません、会長! 僕が、早まりました……!」
「あんたが先に仕掛けてくれて、むしろ助かったわよ」
僕を庇うように前に立った肆谷副会長が、忌々しげに舌打ちする。
「私や玖代会長の技が初手でコピーされていたら、それこそ目も当てられない惨状だったわ……!」
「どうだ? これが組織の力だ」勝ち誇った残間くんが、僕らを見下す。「分かったら、とっとと俺を見逃せ。そうすれば殺しはしない。……今はな」
「冗談。あんただけは、絶対に逃がさないわよ……!」
副会長が睨みつけるが、僕は痛みに耐えかねて、つい弱音を吐いてしまった。
「でも、どうするんですか!? 何をやっても、倍以上の力で返されるんじゃ勝ち目がありませんよ!」
「恐らくは、残間さんが攻撃の模倣を、そして隣にいる男が増幅を担っているのでしょう。残間さんが攻撃する際、あの男が機術の発動と思しき仕草を取っていました」
玖代会長が冷静に分析する。
「じゃあ、どうすれば……」
僕の問いに、不敵に笑ったのは肆谷副会長だった。
「方法は一つよ。あっちが二人で一つの『合体技』で来るなら、こっちは四人でそれを上回る『合体技』を叩き込むだけ」
「お待ちなさい!」
夜の帳が下りた公園。漆黒のローブを纏った男が残間くんと一緒にいた。僕と杏那さん、そして玖代会長に肆谷副会長の4人が対峙する。保護観察処分、という名目で暫くの間監視の目を光らせていたが、まさか本当に再接触してしまうなんて……
「やはり貴方たちでしたか。彼を諦めていなかったのですね」
静かな怒りを瞳に宿し、玖代会長が問う。ローブの男が、せせら笑うように答えた。
「ああ。この男の魂が叫んでいる。渇望しているのだ。『力』が欲しい、とな。ならば我らが、その願いを叶えてやると言っている」
「その通りだ」残間くんは僕たちに向き直り、言い放った。「僕は今までの人生、ずっと泥水を啜ってきた。これだけ苦労したんだ。だから……少しくらい良い目を見たって、罰は当たらないだろ?」
その言葉に、僕は憤怒で顔を歪ませた。
「残間くん……! あの時の言葉は嘘だったの!? 機術研究部に入って、ちゃんと機術と向き合って、誰にも馬鹿にされないくらい強くなるんじゃなかったの!?」
「ああ、嘘だ」彼は吐き捨てる。「目の前に、楽して成功者になれる道があるなら、誰だってそっちを選ぶに決まってるでしょ。
...いや、あなたたちみたいな高潔ぶった優等生は選ばないのかもしれないな。でも僕は、所詮あなたたちとは出来が違うんですよ。悲しいことにね」
「残間くん……!」
激情に駆られる僕を、玖代会長が静かに制した。彼女の冷徹なまでの視線が、俺を射抜く。
「その『良い目』、とは何ですか。あなた方の組織の構成員に与えられる褒美、この目で確認させていただきましたが……」
「……!」
会長の口から紡がれた言葉に、彼は息を呑んだ。
「そうか…お前ら、あの時資料を奪って持ち帰って、そして読んだのか」
あの時、美王先生と杏那さん、それに三鳥書記の協力で奪えた資料。まだ資料がまとまっていないということで僕は見ていなかったけど、どうやら会長はすでにそれを見たらしい。
「ほう……」ローブの男が、面白そうに呟く。「ならば話は早い。機密を持ち出されているとあれば、どのみち生かしてはおけんな。──おい、残間。お前も我らのために戦え。これをくれてやる」
男の手から、冷たい金属の感触をしたデバイスが放られる。彼はそれを、疑いもなく掴み取っていた。
「……ありがとうございます」
それを見て、肆谷副会長が呆れたようにため息をつく。
「……本当に、私たちとやり合うつもり?」
「ああ。僕はずっと、酷い目に遭ってきた。それに耐えて、歯を食いしばって頑張ってきた。なのに、何も報われなかった。お前らみたいに、光の当たる場所にいる人間にはなれなかった。だから……これくらい、許されるはずだろ!」
「許されないわよ」
肆谷副会長の言葉が、氷の刃のように俺の心を切り裂く。
「私もあんたらの資料を読ませてもらったわ。あんたが入ろうとしているのは、人の命も心も、塵芥ほどにも思わない外道の集まりよ。それでもその道を選ぶと言うのなら、もはや容赦はしない」
「その、人の命や心を何とも思わない連中に! 俺は人生を狂わされたんだよッ!!」
とうとう本性が出た、ということなのか。残間くんの一人称や語気が変わった。あれが、残間くんの本当の彼の姿なのか...
「……それに比べたら、こいつらの方がよっぽど、俺の心に寄り添ってくれる」
「……私たちよりも、ですか?」
玖代会長の問いに、俺は鼻で笑った。
「ああ。普通の人間なら、何の対価もなしに力を授けてくれる奴らがいたら、そいつらを神様だと思うさ」
「普通の人間は、悪だと分かっている人間の誘いには乗らないわ」
肆谷副会長が、どこまでも冷徹に俺を断罪する。
「あんたは普通じゃない。ただ堕落した、救いようのないクズよ」
「……ああ、そうかもな。だが、なりたくてこうなったわけじゃない! お前らを取り巻く環境が、俺をこうしたんだ!」
俺は、憎悪を込めて叫んだ。
「あんたらだって、俺と同じ環境で育てば、間違いなく俺のようになっていたさ。絶対にな!」
「……意思は、変わらない。ということでよろしいですね」
玖代会長が、静かに、そして最終通告のように告げる。
「ああ。俺は特権階級になって、贅の限りを尽くす。失われた今までの人生を、すべて取り返すためにもな」
「残間くん……」
僕が、絞り出すような声で彼の名を呼ぶ。
その言葉を合図にしたかのように、僕と他の3人が一斉に戦闘態勢に入った。
「ならば、もう貴方に掛ける言葉はありません」
玖代会長の凛とした目が相手を貫く。
「これ以上罪を重ねる前に、私共が直々に手を下します」
「……望むところだ」
「会長! まずは僕に行かせてください!」
静寂を破ったのは、僕の怒りに震える声だった。
「残間くんの言葉を、僕は一度は信じました。それを裏切ったあいつを、俺は絶対に許せない!」
「七座さん……」玖代会長が、彼の決意を受け止めるように頷く。「分かりました。あなたの想いを込めた一撃、お願いします」
「はい! ……残間くん! これが君の否定した、地道な努力で手に入れた僕の実力だ! 双極!」
僕が努力で手に入れた、ナイフを操り相手を切り裂く力。それはまっすぐに、残間くんと、その隣に立つローブの男へと突き進んだ。
「──手を貸すぞ」
「ああ」
ローブの男が残間くんの肩に手を置いた、その瞬間。二人の前に展開されたのは、禍々しいオーラを纏ったエネルギーの壁。遠藤くんの放ったナイフは、その壁に弾かれた。
「くっ……やっぱり、ダメか……!」
「七座、地道な努力なんて所詮そんなもんだよ」残間くんが、凍えるような声で嘲笑う。「この組織に入ればなぁ……お前が血反吐を吐いて手に入れた力も、こんなに簡単にお前のものを上回れる!」
その言葉を証明するように、残間くんがこちらに掌を向ける。その先に収束したのは、なんと二本のナイフ。そう、『双極』だ。だが...
放たれたそれは、僕の放ったものよりも遥かに速く、そして正確にこちらを狙ってくる!明らかに僕のオリジナルを凌駕していた。
「くっ!」
肆谷副会長が前に出て鋼砕龍牙を振り回す。流石は副会長、あの速さのナイフを2本とも即座に叩き落とした。ナイフは砕け散り、そして消滅する。
「今のは……まさか……」
「……相手の機術を模倣し、さらに強化する能力、ですか」
会長の呟きに、僕の背筋が凍る。そんなチートみたいな能力が……。
「それだけじゃないぜ。俺の機術なら、こんなこともできるんだよ!」
信じられない光景だった。残間くんの腰元に、僕の『双極』と寸分違わぬナイフが、新たに二対、計四本も光と共に生成されたのだ。
「まさか!?」
「喰らえ。『双極・極み』!」
残間くんが叫ぶと同時、四本のナイフが僕の『双極』を遥かに上回る速度で飛来する。杏那さんが重力操作で、肆谷副会長は鋼砕龍牙で、そして玖代会長が水の機術で対抗し、僕も自分のナイフで対抗しようとするが撃ち落とせず、一本のナイフが縦横無尽に僕の体を切り裂いた。
「ぐあっ!」
衝撃で地面に叩きつけられる。全身に走る激痛に、思わず呻き声が漏れた。
「くっ……! すみません、会長! 僕が、早まりました……!」
「あんたが先に仕掛けてくれて、むしろ助かったわよ」
僕を庇うように前に立った肆谷副会長が、忌々しげに舌打ちする。
「私や玖代会長の技が初手でコピーされていたら、それこそ目も当てられない惨状だったわ……!」
「どうだ? これが組織の力だ」勝ち誇った残間くんが、僕らを見下す。「分かったら、とっとと俺を見逃せ。そうすれば殺しはしない。……今はな」
「冗談。あんただけは、絶対に逃がさないわよ……!」
副会長が睨みつけるが、僕は痛みに耐えかねて、つい弱音を吐いてしまった。
「でも、どうするんですか!? 何をやっても、倍以上の力で返されるんじゃ勝ち目がありませんよ!」
「恐らくは、残間さんが攻撃の模倣を、そして隣にいる男が増幅を担っているのでしょう。残間さんが攻撃する際、あの男が機術の発動と思しき仕草を取っていました」
玖代会長が冷静に分析する。
「じゃあ、どうすれば……」
僕の問いに、不敵に笑ったのは肆谷副会長だった。
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