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第34話 1535年 5歳 よし兵士の入団テストをするぞ
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それから二週間が経った。
集まった兵士は五百人。
……正直、ぱっと見で「これは」という人間はいない。不満だ。
まずは弓矢のテストから始める。
黒崎弦と仁の兄弟に見本と世話を任せた。
弓を撃ったことすらない者も多い。
距離は通常の半分、的は三倍。
センスを見るための試験だ。
結果――
全滅だ。
次に木登り。
全滅。
腕立て伏せ、腹筋。
全滅。
三千メートル走、13分制限。
途中リタイア続出。
俺が頭を抱えていると、
人混みの中から不満げな声が聞こえた。
「事務の募集って聞いたのに、なんでこんなことさせられるんだよ……」
人相がいい。
頭の良さそうな顔。
年は二十三くらい。
俺はその男に声をかけた。
俺「お前、文字は書けるか?」
男「もちろんです」
俺「計算は?」
男「得意だから応募したんですが……体力が必要なら諦めます」
俺「こちらの手違いだ。悪かった。事務の試験はこっちでやる」
俺が売上計算と給与計算の“答えだけ隠した帳簿”を渡すと、
男は自前のソロバンを取り出し、信じられない速さで計算し始めた。
俺より速い。
結果――完全正解。
俺「合格だ。明日から来い。名前は?」
男「真田智景と申します。ありがとうございます。ご尊名をお伺いしても?」
俺「上杉龍義。上杉為景の孫で――お前の直接の雇い主だ」
祖父・長尾為景の許可により、
給与を俺が払う限り、家臣は自由に雇っていいことになっている。
赤目一族も、八坂正宗も、武器職人たちも――
全員、俺の直接雇用だ。
だから計算が地獄なのだ。
中身は三十二歳。
外見は五歳。
……俺は永遠に三十二歳ってことでいいな。
その時、黒崎弦と仁が駆けてきた。
黒崎弦「若様、申し訳ありません。受検者が全員帰ってしまいました」
……くそ。
真田みたいなの、まだいたかもしれないのに。
俺「真田。お前の仲間で、同じくらい計算ができる奴はいるか?」
真田「同じとは言えませんが、比較的優秀な者ならいます」
俺「明日、連れて来い」
真田「承知しました」
真田が帰ったあと、
俺は赤目滝を呼び出した。
「真田に怪しい点がないか、探れ」
翌朝、問題なしとの報告。
引き続き調査を命じる。
午前十時ごろ。
真田が二人の男を連れてきた。
一人は背が高く、
もう一人は小柄だ。
二か月前と三か月前の売上・給与計算をそれぞれやらせた。
――やや遅いが、正解。
俺「この二人とはどういう関係だ?」
真田「信濃で同じ店に勤めていた仲間です。
武田の兵に金を奪われ、店は焼かれ……信濃にいられず、こちらへ」
俺「それにしても、三人とも計算が速すぎる。理由は?」
真田「近所に和算を教えてくれる方がおりまして、幼い頃から三人で習っていました」
……なるほど。
俺「しばらくは事務員をやってもらう。
だが俺は、日本を動かす商売をしている。
いつか支店くらいは持たせてやるぞ。名前は?」
背の高い男「鍋田三吉です!よろしくお願いします!」
声が無駄に明るい。
小柄な男「小田明道です。よろしくお願いします……」
……明道のくせに暗い。
俺は三人に、これから必要になる計算と法律の勉強について説明した。
夕方、三人を帰す。
ふと見ると、
お付きの風馬と水斗は寝ていた。
……こいつらに事務は無理だ。
守役の安田も寝ていた。
お前は起きていろ。
俺は見て見ぬふりをして、外で剣の稽古をした。
しばらくして三人が起きてきた。
「若様、申し訳ございませんでした!」
俺「気にするな。俺がお前たちに眠くなる術をかけた」
安田「若様は、そんなことまで出来るのですか……?」
安田、お前はこんな冗談を信じたらダメだろ
集まった兵士は五百人。
……正直、ぱっと見で「これは」という人間はいない。不満だ。
まずは弓矢のテストから始める。
黒崎弦と仁の兄弟に見本と世話を任せた。
弓を撃ったことすらない者も多い。
距離は通常の半分、的は三倍。
センスを見るための試験だ。
結果――
全滅だ。
次に木登り。
全滅。
腕立て伏せ、腹筋。
全滅。
三千メートル走、13分制限。
途中リタイア続出。
俺が頭を抱えていると、
人混みの中から不満げな声が聞こえた。
「事務の募集って聞いたのに、なんでこんなことさせられるんだよ……」
人相がいい。
頭の良さそうな顔。
年は二十三くらい。
俺はその男に声をかけた。
俺「お前、文字は書けるか?」
男「もちろんです」
俺「計算は?」
男「得意だから応募したんですが……体力が必要なら諦めます」
俺「こちらの手違いだ。悪かった。事務の試験はこっちでやる」
俺が売上計算と給与計算の“答えだけ隠した帳簿”を渡すと、
男は自前のソロバンを取り出し、信じられない速さで計算し始めた。
俺より速い。
結果――完全正解。
俺「合格だ。明日から来い。名前は?」
男「真田智景と申します。ありがとうございます。ご尊名をお伺いしても?」
俺「上杉龍義。上杉為景の孫で――お前の直接の雇い主だ」
祖父・長尾為景の許可により、
給与を俺が払う限り、家臣は自由に雇っていいことになっている。
赤目一族も、八坂正宗も、武器職人たちも――
全員、俺の直接雇用だ。
だから計算が地獄なのだ。
中身は三十二歳。
外見は五歳。
……俺は永遠に三十二歳ってことでいいな。
その時、黒崎弦と仁が駆けてきた。
黒崎弦「若様、申し訳ありません。受検者が全員帰ってしまいました」
……くそ。
真田みたいなの、まだいたかもしれないのに。
俺「真田。お前の仲間で、同じくらい計算ができる奴はいるか?」
真田「同じとは言えませんが、比較的優秀な者ならいます」
俺「明日、連れて来い」
真田「承知しました」
真田が帰ったあと、
俺は赤目滝を呼び出した。
「真田に怪しい点がないか、探れ」
翌朝、問題なしとの報告。
引き続き調査を命じる。
午前十時ごろ。
真田が二人の男を連れてきた。
一人は背が高く、
もう一人は小柄だ。
二か月前と三か月前の売上・給与計算をそれぞれやらせた。
――やや遅いが、正解。
俺「この二人とはどういう関係だ?」
真田「信濃で同じ店に勤めていた仲間です。
武田の兵に金を奪われ、店は焼かれ……信濃にいられず、こちらへ」
俺「それにしても、三人とも計算が速すぎる。理由は?」
真田「近所に和算を教えてくれる方がおりまして、幼い頃から三人で習っていました」
……なるほど。
俺「しばらくは事務員をやってもらう。
だが俺は、日本を動かす商売をしている。
いつか支店くらいは持たせてやるぞ。名前は?」
背の高い男「鍋田三吉です!よろしくお願いします!」
声が無駄に明るい。
小柄な男「小田明道です。よろしくお願いします……」
……明道のくせに暗い。
俺は三人に、これから必要になる計算と法律の勉強について説明した。
夕方、三人を帰す。
ふと見ると、
お付きの風馬と水斗は寝ていた。
……こいつらに事務は無理だ。
守役の安田も寝ていた。
お前は起きていろ。
俺は見て見ぬふりをして、外で剣の稽古をした。
しばらくして三人が起きてきた。
「若様、申し訳ございませんでした!」
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安田、お前はこんな冗談を信じたらダメだろ
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