神様、恋をすれば世界は救われるのですか? 〜余命二年の侯爵令嬢が、選ばれなかった未来の先で最愛を見つける物語〜

お月見ましろ

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《執着の罪》

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 ――最初から、分かっていた。

 欲しいと願ってはいけない立場が、
 この世界には確かに存在する。

 血筋。役目。生まれ。
 選ばれなかったという事実。

 それらはすべて、
「望まない理由」としては十分すぎた。

 だから、欲しないふりをした。
 守ると言い換え、支えると言い換え、
 そばにいるだけでいいのだと、
 何度も自分に言い聞かせた。

 それが正しいのだと。それしか許されないのだと。

 けれど。心は、理屈を聞かない。

 選べないと知っているからこそ、
 踏み出してはいけないと分かっているからこそ。

 その存在は、
 いつの間にか「失えないもの」へと変わっていた。

 触れてはいけない。望んではいけない。
 それでも、手放せない。

 この手にある力が、
 忌むべきものだと知っているからこそ。
 自分が“ふさわしくない”と分かっているからこそ。

 彼女の隣に立つ資格はないと、
 誰よりも自分が理解している。

 誰かを守るため。誰かを傷つけないため。
 世界を壊さないため。

 そうやって理由を並べながら、
 本当はただ、彼女の視界から消えることを恐れているだけなのかもしれない。

 選ばれないと分かっている。
 選んではいけないとも、分かっている。

 それでも。

 この想いを、なかったことにはできなかった。

 もし、この感情を手放せば。
 きっと、自分は――
 抑え込んできた“本質”と向き合わずにいられなくなる。

 それを恐れている時点で、もう――潔白ではない。

 これは、愛ではない。献身でも、忠誠でもない。

 ただ。

 欲しいと言えないまま、欲してしまったこと。

 隣に立つ資格がないと知りながら、
 それでも離れられなかったこと。

 その矛盾を抱え続けるという、
 ――執着の罪。


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