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後日談2 星の見えるところ
冒頭
――愛するルイがリーゲンスに戻ってきた。とても喜ばしいことだ。俺のかわいいルイ……きっときみは、少し見ないあいだにさらに美しく成長しているに違いない。早く会いたい。その華奢な体を抱きしめて、俺がずっときみの帰りを待っていたことを教えてあげたい。
だが、もたらされた知らせはよいものばかりではなかった。なんと、ルイは海の国の王太子と婚約したらしい。それで王太子が女王に挨拶しに来ることになり、ルイも一緒に帰ってきたようだ。
どうしてそんなことになったのか、まったく理解できなかった。だって、ルイは俺の婚約者なのに。なんの手違いでそんなことになってしまったのだろうか。
最初はわけがわからなかったが、冷静に考えてみると、なんとなく想像がついてきた。ルイはあの通りかわいらしい人だ。本人は自分のことを地味でなんの取り柄もない人間だと思っているようだが、あんなに魅力的な人はそうそういない。そんな自分のことに鈍感で純真なところもたまらない。
ルイは色事に疎いらしく、以前、愛の言葉を二言三言囁いただけで頬を赤くして恥ずかしそうに下を向いてしまった。思わず礼儀をかなぐり捨ててキスして押し倒したいと思ってしまったことは、ルイには内緒だ。俺でなくとも、あんな姿を見せられたら男は全員彼の虜になるだろう。
そんなかわいらしい人だから、海の国の王太子に目をつけられてしまったに違いない。無理やり海の国に連れて行かれて、婚約させられてしまったんだろう。かわいそうなルイ。俺が助けてあげないと。
ティグラノスのパーティーでルイに会えるはずだったが、それまで待てずアウロラまで来てしまった。まず城の状況を調べることにした。そこで、城に勤めている友人を夕食に誘って話を聞いてみた。
彼の話では、城に戻ってきたルイは見違えるように明るく元気になり、笑顔を見せるようになっているそうだ。そして、海の国の王太子ととても仲がよさそうだとのことだった。
果たしてそれは本当だろうか。笑顔になったのは、リーゲンスに戻ってこられて嬉しいからだろう。だが、仲がよさそうに見えるといっても、王太子の機嫌を損ねないようにしているだけかもしれない。友人はいいやつだが、ちょっと鈍いところがあるので、話の全部を鵜呑みにはできない。
ここはやはり、ルイをよく知っている自分自身の目で確かめないといけないだろう。大事な客人が来ているので、城には許可のない者は立ち入れないようになっている。城に行ってルイに会うことは不可能だ。だが、友人の話では、先日完成したミラビレスの塔をルイも見に行くらしい。俺もそこに行ってみることにしよう。
翌日、俺はアウロラの寺院に向かった。寺院の敷地内には、ミラビレスの塔を見に来た見物客が押し寄せていた。人混みをかき分けてミラビレスの塔に近づいてみると、奥に近衛兵の姿が見えた。そちらのほうに行ってみよう。
近衛兵に囲まれた先に、ルイがいた。久々にルイの姿を見られて心が躍った。少し大人びた気がする。でもその面差しは以前のままだ。白い肌にくりくりした青い目のかわいい俺のルイだ。
ルイの隣に背の高い男がいた。あいつが海の国の王太子に違いない。友人の言っていた通り、紺色の髪のいやに美形の男だ。城の侍女という侍女が骨抜きにされているのだとか。とんでもないたらし野郎だ。
王太子は少しかがんでルイの耳元に話しかけた。ルイは王太子を見上げ、はにかみながらなにか言った。
二人が楽しそうに話しているのを見て、俺の気分は急降下した。ルイのあんな笑顔は見たことがない。ルイはいつも奥ゆかしい笑みをたたえるばかりだった。ルイが俺にあんな風に無邪気に笑いかけてくれたことなど、一度もない。
まるで本当に親しくしているように見える。信じられない。信じたくない。きっとなにか事情があるはずだ。ルイは俺の婚約者なんだ。自分のものになるはずだった彼をかすめとるなんて許せない。
絶対に、許さない――
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