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はじまり、はじまり?
序章
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暗く、どんよりとした空。
制服に纏わりつくような霧雨が本当に気持ち悪い。いつも見ているアニメのシーンだったら、こんな不快な雨はそのうち主人公たちの会話の流れに応じて晴れていき、雲の隙間から大層な夕焼けが顔出して、エンディング曲が流れたりする演出が鉄板だろう。まぁ鉄板過ぎて、もし俺が作者ならこんなシーンを使うプロデーサーをSNSで罵倒したり、それで炎上騒ぎ起こしたかもな・・・ウヘヘ。
思い返せばこの十五年、本気で良いことが無かった。
小中と虐められ、学校の屋上に初めて昇った今この時でさえ、心配してくれる友人も居ない。どちらかと言えば周囲の人間は、どうせ飛び降りたりしないんだろぉ、ウザい奴、とかここで飛び降りたらオモシレーぞ、やれやれ~勝手に死んで俺らに迷惑かけるなよ?とか思っているに違いない。
自分も自殺の記事とか、ドラマで見る自殺シーンで似たような事を思った事がある。どうせ誰かに止められるため、注目を浴びて、ああ~可哀そうですねぇって言われたいだけの莫迦な役なんだろう。ここでガチで死んで、呪って、その他大勢が恐怖のどん底に落ちるとかって展開になったら拍手してやんぜ。教育なんちゃらとか、子供の〇〇を守る会のおばちゃん達に発狂されておしまいなんだろうけどさ。
ドラマは結局作り物。
15歳の少年が学校の屋上から飛び降りても、地面に叩きつけられて死ぬまで話題にも上らない。インタビューなんかで教頭あたりが、いじめの事実はなかったとか、クラスメイトと言う名の共犯者どもが、まさか死ぬとは思っていなかっただとか、笑顔で答えるんだろう。家族はどうかって?
形ばかりは泣くかもしれない。泣いて子供の無念を、お金に換えて、残った俺よりもだいぶ優秀な兄弟に投資するのだろう。それぐらいしか想像できない。
心残りと言えば、猫のことくらいだ。動物なので、相手がこちらをどう思っているのかなんてわからないけれどな。
さて、もういいだろう・・・。
どんよりとした世界と決別して、これで終わりにしよう。
あと一歩だけ足を前に出したら、この世界とはお別れすることが出来る。
地面に当たった時は痛いのかな?そりゃ痛いんだろうが、普通に考えて長く苦しむとかはないだろう。地面に激突して、あっと思う間もなく生命活動は停止するはずで、そうなれば熱湯に手を入れたのと同じくらいの感覚で、終われるはずだ。
死んだ経験を語ることが出来ない以上、ある程度は覚悟だけの問題なんだと思う。
「じゃあな、さよなら人類」
遺書もなく、格好いい言葉をとっさに考えても、これくらいしかない、この俺はこの日、自分が通う中学校の屋上から飛び降りた。
その事件は報道されることも無く、地方紙の片隅でさえ紙面に記載されず、ただ豪速で過ぎていく今という現実の時間に押し流されて消えていくんだが、それは俺以外が生きる世界での話。
俺が居なくなった後がどうなろうが、そんなものは知らない。
俺はもう、おさらばしたんだ。
でも、おさらばして、地面に向けてダイブしたはずなのに、なんでこんな事を考えているんだろう?
ここは死後の世界か?
死神が鎌とか、おっそろしい大剣抱えて悪魔みたいなやつらとド突きあってる世界だったりするんだろうか?
それとも二頭身でやけに情に厚く、死神としては不適合だけど生きている人にとっては優しすぎる感動的なキャラとか出てくるのだろうか?
そんなしょうもないことを考えていると、なぜか俺は落ちながら、ずっと落ちていた。
うん、意味が分からない。
落ちるってのはたぶん、中学校の屋上から飛び降りたことが原因なんだけど、いつまでたっても、その落ちるという状況が終わらない。
地面にも接触せずにずっと落ちている。左右の景色は、最初は日本の地方都市だったけれど、今の左右の景色は真っ暗で極稀に光る点が見えるくらいだった。その光る点が無ければ自分が落ちているってのも判らなかった。
「これって、どうなるんだろう・・・」
意を決して飛び降りたけれど、いつまでも落ち続けて終わりが見えない。
死後の世界なのかもしれないけれど、これじゃあ救いも罰もありはしない。
ただただ落ちる。ただ落ちる。
自分の感覚的に、恐らく2時間は落ちていただろうか?
落ちるだけの世界に、変化が訪れた。
劇的な変化と言って良い。
ただただ落ちるだけの空間に俺以外の、何か知的生命体っぽいのが現れたのだ。
見た目は小動物。しゃべる言葉は学校の事務員さん(男)くらい面倒くさそうなそれは、鼬と狐と栗鼠が混ざり合ったような生物で、どう見たって地球上の生き物じゃなかった。
まさか落ちている間に、地球を飛び出して別の惑星まで来たのか?とか、うん、ありえない。
「ええと、君は地球の日本生まれの15歳、死因はショック死か、よかったね、地面に激突する前に死ねたって事は痛みもなくて、ここまで来れたんだ」
「え、ええ、まぁ」
俺がもっとコミュニケーション能力に秀でていれば、もっとまともな返し方も出来ただろうし、聞きたいことも聞けただろう。
だが、そんなコミュニケーションスキルが有れば、自分で屋上から飛び降りるほど追い詰められてはいない。
クラスの中心とは言わないまでも、クラスの中堅くらいで当たり障りなく過ごせただろう、実際はクラスの外周部の更に外。まともに机も椅子もあったことが無いって立場だった。
「死んだ理由?う~ん、これって最近多いんだが、まさか自殺して異世界目指すとかそんな莫迦な事考えてた?」
「えっ?えっ、いや、それは・・・」
よく読んでいたライトノベル小説なろう系では、確かに死んで異世界転生、ハッピーハーレムライフ的な話が氾濫していた。もちろんそれにわずかでもあこがれなかったと言えばウソになる。
だけどそれは作り物の話でしかないのは分かっている。異世界なんかない。別次元の世界があったとしても、そこに行ける訳がない。
神様を信じていないけど、クリスマスもハロウィンも行事としては参加する日本人的な話で、異世界が有ると確信はしていないけど、話としては楽しんでいた。
だから、死んで異世界へとか全くもって思っていなかったよ。
だけど、もしあって異世界ハッピーハーレムライフが送れると言うんなら、是非にとお願いしたい。
「最近多いんだよねぇ、そんな莫迦な事を言い出す人間、普通に考えてさ、地球でダメな事しかできなかった人間が異世界言って本気出したって、迷惑以外の何物ではないよねぇ、転生数時間で死ぬことも多いし、当たり前だけど、聖人でも勇者でもない、実績もない人間に神様チートなんか下げ渡されない、判るよね、人生そんなに甘くないの、君が、やっとことはただ一つ、莫迦みたいなことを考えて、真面目に耐えている人を莫迦にして、ただ莫迦みたいなことをしただけさ、だからね、こっちとしても迷惑なんで、さようなら」
見た目だけは可愛い小動物は、懐から小型のタブレットを取り出すと、その表面に指でチェックを入れる。表情は無表情。口調はあくまで事務的で死んだ俺に対して少しの同情も見られない。
「あ、あの異世界転生とか・・・出来るって思ったわけじゃ・・・」
なんとか混乱する頭を振り絞って、言葉を出すが、その言葉は小動物なおっさん事務員には届かなかった。彼はチェックを終えると、手を振って飛び去って行った。
俺はまたただ落ちるだけの状態に戻ってしまった。
このまま落ちていくだけで何も変化がない状態が続くのは暇すぎる。
スマホもパソコンのゲームも本もない状態で、ただ過ごすというのは苦痛だ。この苦痛が自殺をしたことの代償と言うのだろうか。
「これは良い候補がきたもんだね、あの使いの者に見捨てられたにしては、まだ理性を保ってる」
今度はしゃべる黒猫だ。この落ちていくだけの世界では動物が喋るのが普通らしい。
「使いの者って?」
「さっき上の方で会っただろう?あの事務屋のキメラに、あいつは融通が利かなくて本当に駄目な奴さ、せっかくの魂を放置したりして・・・」
すっと黒猫が俺の方に乗ってくる。
肉球の接触が柔らかく、温かみが伝わってくる。
「俺はどうなるんだい?まさかこのまま落ちっぱなしで気が狂うまで放置とか?」
「そうさなぁお前さんが、それが望みならそうしてもいい、だがそうじゃないってんなら、一つこっちから提案がある」
「提案?提案ってどんな」
「簡単な約束事さ、今のお前さんは死んだ世界にも、所謂はやりの異世界にも転生できない放置されて、いつの日にか消えてなくなる魂の状態だ、それが神の罰って事なんだろうな、あいつらは何時だって厳しすぎで、いじめとか暴力とか借金とか、命を絶つ理由が多岐にわたるって事を判りやがらねぇ、魂を管理していると大口叩く癖に管理している魂が多量になりすぎて、細かな機微まで忖度できなくなっているのさ」
どうやらこの黒猫は、さっきの事務屋っぽい小動物とは敵対まではいかなくても、反対の立場にいるらしい。
「それで俺は?」
「あっと、ああそうだな、お前さんが選ぶのなら、せっかくだ、流行の異世界って奴に転生させてやれないってことも無い、ただし俺らは神の使いでもないから楽しい異世界ハッピーハーレムライフが送れるようなチートスキルは渡せねぇ、それでもいいなら、ちょっと契約して、そんでここから挑戦してみねぇか?」
このままただ落ち続けるだけで、いつの日にかそのストレスで気が狂い、魂が消えるって事なら、異世界、そんな世界で魔法とか、ドラゴンとかと渡り合ってみたい。そう思う。
結局死ぬ前の世界は、誰もが自分の事ばかりで、自分のルールに他人を当てはめて空気って名のもとに集団を支配していた歪な世界だった。
そう、少しは思ってたんだ。俺の世界はここじゃなくて異世界だったら、どんなに楽しかったんだろうかって。剣で斬り合うとか、盗賊暮らしとか、そりゃ辛いこともあるだろうけど、空気を読んで愛想笑いとかは無くていい世界だろう。
それに魔法が使えれば、すべての問題にお釣りがくる。
そう、行けるならこんな落ち続ける世界ではなく、元の世界でもなく、異世界に行きたいと思う。
「行きたい、異世界に行きたい、どうすればいいんだ?」
「オーケーオーケー、契約するってっことだな、それじゃあ条件は後で説明するとして、一つ言っておくがある、俺らは空の上で威張り腐っているあいつらとは仲良くできない者達の集団で、お前さんもこれからその一員になるって事だけは覚えておけよな」
「ん?ああ、判った」
そこでやっと落ちるだけの世界は終了し、俺は夢も希望もたくさん持って、いざ異世界転生へと踏み出した。
制服に纏わりつくような霧雨が本当に気持ち悪い。いつも見ているアニメのシーンだったら、こんな不快な雨はそのうち主人公たちの会話の流れに応じて晴れていき、雲の隙間から大層な夕焼けが顔出して、エンディング曲が流れたりする演出が鉄板だろう。まぁ鉄板過ぎて、もし俺が作者ならこんなシーンを使うプロデーサーをSNSで罵倒したり、それで炎上騒ぎ起こしたかもな・・・ウヘヘ。
思い返せばこの十五年、本気で良いことが無かった。
小中と虐められ、学校の屋上に初めて昇った今この時でさえ、心配してくれる友人も居ない。どちらかと言えば周囲の人間は、どうせ飛び降りたりしないんだろぉ、ウザい奴、とかここで飛び降りたらオモシレーぞ、やれやれ~勝手に死んで俺らに迷惑かけるなよ?とか思っているに違いない。
自分も自殺の記事とか、ドラマで見る自殺シーンで似たような事を思った事がある。どうせ誰かに止められるため、注目を浴びて、ああ~可哀そうですねぇって言われたいだけの莫迦な役なんだろう。ここでガチで死んで、呪って、その他大勢が恐怖のどん底に落ちるとかって展開になったら拍手してやんぜ。教育なんちゃらとか、子供の〇〇を守る会のおばちゃん達に発狂されておしまいなんだろうけどさ。
ドラマは結局作り物。
15歳の少年が学校の屋上から飛び降りても、地面に叩きつけられて死ぬまで話題にも上らない。インタビューなんかで教頭あたりが、いじめの事実はなかったとか、クラスメイトと言う名の共犯者どもが、まさか死ぬとは思っていなかっただとか、笑顔で答えるんだろう。家族はどうかって?
形ばかりは泣くかもしれない。泣いて子供の無念を、お金に換えて、残った俺よりもだいぶ優秀な兄弟に投資するのだろう。それぐらいしか想像できない。
心残りと言えば、猫のことくらいだ。動物なので、相手がこちらをどう思っているのかなんてわからないけれどな。
さて、もういいだろう・・・。
どんよりとした世界と決別して、これで終わりにしよう。
あと一歩だけ足を前に出したら、この世界とはお別れすることが出来る。
地面に当たった時は痛いのかな?そりゃ痛いんだろうが、普通に考えて長く苦しむとかはないだろう。地面に激突して、あっと思う間もなく生命活動は停止するはずで、そうなれば熱湯に手を入れたのと同じくらいの感覚で、終われるはずだ。
死んだ経験を語ることが出来ない以上、ある程度は覚悟だけの問題なんだと思う。
「じゃあな、さよなら人類」
遺書もなく、格好いい言葉をとっさに考えても、これくらいしかない、この俺はこの日、自分が通う中学校の屋上から飛び降りた。
その事件は報道されることも無く、地方紙の片隅でさえ紙面に記載されず、ただ豪速で過ぎていく今という現実の時間に押し流されて消えていくんだが、それは俺以外が生きる世界での話。
俺が居なくなった後がどうなろうが、そんなものは知らない。
俺はもう、おさらばしたんだ。
でも、おさらばして、地面に向けてダイブしたはずなのに、なんでこんな事を考えているんだろう?
ここは死後の世界か?
死神が鎌とか、おっそろしい大剣抱えて悪魔みたいなやつらとド突きあってる世界だったりするんだろうか?
それとも二頭身でやけに情に厚く、死神としては不適合だけど生きている人にとっては優しすぎる感動的なキャラとか出てくるのだろうか?
そんなしょうもないことを考えていると、なぜか俺は落ちながら、ずっと落ちていた。
うん、意味が分からない。
落ちるってのはたぶん、中学校の屋上から飛び降りたことが原因なんだけど、いつまでたっても、その落ちるという状況が終わらない。
地面にも接触せずにずっと落ちている。左右の景色は、最初は日本の地方都市だったけれど、今の左右の景色は真っ暗で極稀に光る点が見えるくらいだった。その光る点が無ければ自分が落ちているってのも判らなかった。
「これって、どうなるんだろう・・・」
意を決して飛び降りたけれど、いつまでも落ち続けて終わりが見えない。
死後の世界なのかもしれないけれど、これじゃあ救いも罰もありはしない。
ただただ落ちる。ただ落ちる。
自分の感覚的に、恐らく2時間は落ちていただろうか?
落ちるだけの世界に、変化が訪れた。
劇的な変化と言って良い。
ただただ落ちるだけの空間に俺以外の、何か知的生命体っぽいのが現れたのだ。
見た目は小動物。しゃべる言葉は学校の事務員さん(男)くらい面倒くさそうなそれは、鼬と狐と栗鼠が混ざり合ったような生物で、どう見たって地球上の生き物じゃなかった。
まさか落ちている間に、地球を飛び出して別の惑星まで来たのか?とか、うん、ありえない。
「ええと、君は地球の日本生まれの15歳、死因はショック死か、よかったね、地面に激突する前に死ねたって事は痛みもなくて、ここまで来れたんだ」
「え、ええ、まぁ」
俺がもっとコミュニケーション能力に秀でていれば、もっとまともな返し方も出来ただろうし、聞きたいことも聞けただろう。
だが、そんなコミュニケーションスキルが有れば、自分で屋上から飛び降りるほど追い詰められてはいない。
クラスの中心とは言わないまでも、クラスの中堅くらいで当たり障りなく過ごせただろう、実際はクラスの外周部の更に外。まともに机も椅子もあったことが無いって立場だった。
「死んだ理由?う~ん、これって最近多いんだが、まさか自殺して異世界目指すとかそんな莫迦な事考えてた?」
「えっ?えっ、いや、それは・・・」
よく読んでいたライトノベル小説なろう系では、確かに死んで異世界転生、ハッピーハーレムライフ的な話が氾濫していた。もちろんそれにわずかでもあこがれなかったと言えばウソになる。
だけどそれは作り物の話でしかないのは分かっている。異世界なんかない。別次元の世界があったとしても、そこに行ける訳がない。
神様を信じていないけど、クリスマスもハロウィンも行事としては参加する日本人的な話で、異世界が有ると確信はしていないけど、話としては楽しんでいた。
だから、死んで異世界へとか全くもって思っていなかったよ。
だけど、もしあって異世界ハッピーハーレムライフが送れると言うんなら、是非にとお願いしたい。
「最近多いんだよねぇ、そんな莫迦な事を言い出す人間、普通に考えてさ、地球でダメな事しかできなかった人間が異世界言って本気出したって、迷惑以外の何物ではないよねぇ、転生数時間で死ぬことも多いし、当たり前だけど、聖人でも勇者でもない、実績もない人間に神様チートなんか下げ渡されない、判るよね、人生そんなに甘くないの、君が、やっとことはただ一つ、莫迦みたいなことを考えて、真面目に耐えている人を莫迦にして、ただ莫迦みたいなことをしただけさ、だからね、こっちとしても迷惑なんで、さようなら」
見た目だけは可愛い小動物は、懐から小型のタブレットを取り出すと、その表面に指でチェックを入れる。表情は無表情。口調はあくまで事務的で死んだ俺に対して少しの同情も見られない。
「あ、あの異世界転生とか・・・出来るって思ったわけじゃ・・・」
なんとか混乱する頭を振り絞って、言葉を出すが、その言葉は小動物なおっさん事務員には届かなかった。彼はチェックを終えると、手を振って飛び去って行った。
俺はまたただ落ちるだけの状態に戻ってしまった。
このまま落ちていくだけで何も変化がない状態が続くのは暇すぎる。
スマホもパソコンのゲームも本もない状態で、ただ過ごすというのは苦痛だ。この苦痛が自殺をしたことの代償と言うのだろうか。
「これは良い候補がきたもんだね、あの使いの者に見捨てられたにしては、まだ理性を保ってる」
今度はしゃべる黒猫だ。この落ちていくだけの世界では動物が喋るのが普通らしい。
「使いの者って?」
「さっき上の方で会っただろう?あの事務屋のキメラに、あいつは融通が利かなくて本当に駄目な奴さ、せっかくの魂を放置したりして・・・」
すっと黒猫が俺の方に乗ってくる。
肉球の接触が柔らかく、温かみが伝わってくる。
「俺はどうなるんだい?まさかこのまま落ちっぱなしで気が狂うまで放置とか?」
「そうさなぁお前さんが、それが望みならそうしてもいい、だがそうじゃないってんなら、一つこっちから提案がある」
「提案?提案ってどんな」
「簡単な約束事さ、今のお前さんは死んだ世界にも、所謂はやりの異世界にも転生できない放置されて、いつの日にか消えてなくなる魂の状態だ、それが神の罰って事なんだろうな、あいつらは何時だって厳しすぎで、いじめとか暴力とか借金とか、命を絶つ理由が多岐にわたるって事を判りやがらねぇ、魂を管理していると大口叩く癖に管理している魂が多量になりすぎて、細かな機微まで忖度できなくなっているのさ」
どうやらこの黒猫は、さっきの事務屋っぽい小動物とは敵対まではいかなくても、反対の立場にいるらしい。
「それで俺は?」
「あっと、ああそうだな、お前さんが選ぶのなら、せっかくだ、流行の異世界って奴に転生させてやれないってことも無い、ただし俺らは神の使いでもないから楽しい異世界ハッピーハーレムライフが送れるようなチートスキルは渡せねぇ、それでもいいなら、ちょっと契約して、そんでここから挑戦してみねぇか?」
このままただ落ち続けるだけで、いつの日にかそのストレスで気が狂い、魂が消えるって事なら、異世界、そんな世界で魔法とか、ドラゴンとかと渡り合ってみたい。そう思う。
結局死ぬ前の世界は、誰もが自分の事ばかりで、自分のルールに他人を当てはめて空気って名のもとに集団を支配していた歪な世界だった。
そう、少しは思ってたんだ。俺の世界はここじゃなくて異世界だったら、どんなに楽しかったんだろうかって。剣で斬り合うとか、盗賊暮らしとか、そりゃ辛いこともあるだろうけど、空気を読んで愛想笑いとかは無くていい世界だろう。
それに魔法が使えれば、すべての問題にお釣りがくる。
そう、行けるならこんな落ち続ける世界ではなく、元の世界でもなく、異世界に行きたいと思う。
「行きたい、異世界に行きたい、どうすればいいんだ?」
「オーケーオーケー、契約するってっことだな、それじゃあ条件は後で説明するとして、一つ言っておくがある、俺らは空の上で威張り腐っているあいつらとは仲良くできない者達の集団で、お前さんもこれからその一員になるって事だけは覚えておけよな」
「ん?ああ、判った」
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