闇落ち異世界転生記~小悪魔からはじめる成り上がり、非力でも出来る出世法~

和紗かをる

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第1章 最低最悪って、つまりは今の事だよな

1-2

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全力で逃げる事を考えるが、ただ闇雲に逃げたって追いつかれて、拳骨一つであの世行だ。せっかく異世界転生してもインプなんて最下級の小悪魔に生まれ変わって何をどうすればいいんだ?もう一回死んで今度はもうすこし強い悪魔か、もう少し金に余裕があるお大尽にでも生まれ変われればなぁとか思うが、俺に次ぎなんてあるわけがないと思いなおして、溺れる者は藁をも掴むの例え通り、横に並んで殺される順番をぼぉっと待っていた同族の首根っこをひっつかみ、逃走開始。
 チラリと御者がこちらを睨んだが、どうせすぐに追いつくと読んですぐには追いかけてこない。
 どうせ死ぬなら、ちょっとでも仕返し出来れば生きていた意味もあるかも?
 必死で走っていく中で二つの物を発見する。
 一つは先ほど吹っ飛ばされた我らが上司様である下級悪魔、ふらふらとしているが、しっかりまだ生きている。インプなら一撃で腹まで割かれて即死の攻撃を、流石格の違いか下級悪魔。具合は悪そうだが動けている。
 もう一つは・・・。
「おい、お前らは?どうした、何がどうなったんだ」
 暢気な話である。今の惨劇のきっかけはこいつがせっかくお嬢様の言いつけを守って前に出ようとしたのに、後ろから叩くからお嬢様の逆鱗に触れて、こいつの下にいる俺らインプが次々と撲殺されていると言うのに。自分で殴りかかろうにも、相手は格上の下級悪魔、下級以下で辛うじて悪魔を名乗っている小悪魔インプなんぞの一撃は意味がないし、それで反撃とか喰らったらつまらない。
 なので、首根っこひっ掴んでいるインプを勢いつけて、下級悪魔上司へと投げつける。
 と言えば聞こえはいいが、実際に出来た事と言えば、ヨタつく同族の背中を押してやっただけだ。すると自分に迫るインプをいつもの癖で殴り飛ばそうと考えた下級悪魔のすぐそばに、先ほど彼を蹴り飛ばした御者が現れた。
気配さえさせずにすぐ目の前に現れるとか、絶対中級か上級悪魔だろう。あのお嬢さんに使役されてる事を考えると、同格の上級ではなく、上級に近い実力を持った中級と言った所か。どっちにせよ、下級だろうが、その以下のインプが束になっても敵う相手ではない、逃げられるかどうかって相手だ。
 死にたくない。一回死んでこんな目にあっているんだ。二度目に死んで次がここよりもいいとは限らないしもっと悪くなることも考えられる。それにあの黒猫との契約もある。
 何もなせずに死んでしまったら、いったい何をされるか・・・。
「「逃げろっ!」
 とにかく少しでも時間を稼ぐために、下級悪魔に声をかける。
 しかし、俺の必死の願いで発せられた声に下級悪魔は全く反応を見せずに、自分の目の前に転がったインプをぼうっと見ている、
 力はインプよりも強いが、頭の回転はかなり遅い様だ・・・。
 そして俺の必死の願いは、最悪の結果を生み出す。
「そこにもいましたか・・・」
 御者の目がこちらを睨みつけてくる。ターゲッティングされた!
 力は俺よりは強いが、頭の回転の遅い下級悪魔よりも、すばっしっこい俺を先に殺す事に決めた目だ。
「何かないか?何か?」
 残された時間は少ない。相手の速度であれば3呼吸もあれば俺の腹に穴をあける事が出来るだろう。
 悪魔は人間よりも耐久値は高いんだろうが、それでも腹に穴が開けば確実に死ぬ。
 必死で今の状況を好転させる何かを探す。普通の異世界転生だったら、神様チートが発動して、相手をぶっ飛ばすとか覚醒のターンなんだが、俺はどうしたって密入国の異世界人。生きるためには、誰かに救いを求めたった無駄だ。
「くっそう!」
 畑の端に、そこだけ窪んでいるのが見える。あれはこの世界に来たばかりの頃の厠掃除で経験した、肥料の樽だ。
 中身は、鼻の曲がる臭いと目から涙が止まらなくなるほどの刺激臭が充満している悪魔たちの汚物。人でもそうだが、肥やしと言うやつは農作物には安価で高い効果が出る大事な農業の供だ。
 匂いと、汚物に対する忌避感が無ければの話だが。
 ドプン
 悩んでいる暇もなく2呼吸で肥やしが並々としているtるへダイブする。
 樽の半分は地面に埋まっている形なので、背の低いインプでも簡単に中に入る事は出来る。
「ぐぉ~臭っせ~」
 肥やしの中は意外に温かく、発酵している事が判る。匂いは勿論強烈で、鼻を手でふさいだところでたいして効果がない。
「知恵の回るインプですね・・・、これを無理に殺すと私も臭くなって、お嬢様から叱責を受けてしまいますね、どうしたものか?」
 俺が肥やしの樽に飛び込んだのを見て、やっと緊急事態に気づいたのか下級悪魔が先ほど俺が押したインプと共に肥やしの飛び込む。
 この強烈なにおいをお嬢様に嗅がれたくない御者は動きを止めてしまう。
 後はこのまま、諦めてくれるのを待つのみだ。今日の作業は大分遅れてしまうだろうが、全員抹殺されるよりは3人生き残った方が作業は進むだろう。
 それに原因は此処の領地を支配している領主の娘だ。
 時間にして1分程だろうか?肥やしの樽の中と外での睨み合いが続いたが、お嬢様からの念話が届いたようで、渋々御者は去っていった。
「助かった・・・」
 仲間と言うか同族は大分死んでしまったが、俺は生き延びた。皮膚に肥やしが日見込んでいたら最悪だが、今はとにかく体を洗いたい。
 貴重な水を使って風呂を!と要求sることも出来ないので、川にでも行くしかないが、俺はこの畑しか知らず、川の位置も判らない。
 この状態で探索なんかしていたら、脱走農奴として警戒をしている悪魔に見とがめられ殴られるか、匂いが気落ち悪く手に持つ槍で刺殺されるのがオチだろう。
「おい、お前、このままじゃ働けないから、ついてこい!」
「へい、すぐに・・・」
 肥やしの樽から抜け出し、下級悪魔について行く。彼の隣には俺と同じインプが1匹同じ様について行く。15匹いたインプがいまや2匹だ。中級悪魔1匹がキレると10匹以上のインプが簡単に虐殺される。
 人力しか労働力の無い世界で10匹上の農奴役のインプが死んだと言うのはどれだけの影響だろうか?個人的には農作業にかなりの遅れが出る事が予想されるが、あのお嬢様は領主に叱られたりするんだろうか?それとも何も言われないのだろうか?
「俺もお前らも災難だったな、領主の旦那様は偉く優しいお人なんだが、それ以外の奴らは最悪だ、農奴を簡単に殺してどうするつもりなんだか・・・」
 この惨劇の原因が領主のお嬢様にある事を知っている筈だが、下級悪魔はお嬢様に対して恨み言は延べない。身分の差なんだろうか。それともこお下級悪魔、身分なんてなんのそので、お嬢様に懸想しているんだろうか?
「ほれっあっちの川で体を洗ったら仕事に戻るぞ、他の奴らは皆死んじまったんだから、仕事は余るほどある、農奴を10人も失って仕事も終わらなければ、俺も大変だから一緒にやるぞ」
「へい、ありがとうございます」
 意外にこの下級悪魔は悪い奴ではないのかもしれない。あそこまでやられて、それでも領主のために仕事をしようだなんてよく考えられる。俺だったら逃げるか、恨みを飲み込んでサボタージュするかどちらかだ。それをこの下級悪魔は・・・。
 やっぱりお嬢様に懸想しているとしか思えないな。
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