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第二十一話 思わぬ来客
しおりを挟む「伊砂玲於那……さん!な、なんでこんなとこに!?」
「なんでって、ここって誰が来ても良いカフェですよね?」
伊砂玲於那は落ち着いたトーンで言った。
「なに?お姉ちゃん何しにきたの?」
紅の声に反応し、奥からミトちゃんが出てきた。
「妹が働いているお店に来ることがそんなに不思議な事なの?」
「お姉ちゃん、わたしになんか興味ないし、わざわざ東京から来ないでしょ?何か理由があるはず」
「わたしだって帰省くらいするし、こっちにも用事があったのよ。それで妹がどんな所で働いているのか、ちょっと見にきただけよ」
そう言って辺りを見渡し、アルンちゃんの方に目をやった。
「あなたがアルンさんね?」
「ども……」
アルンちゃんは警戒心全開で短く返事した。
「亀戸先生にはいつもお世話になっております」
「あら、あなたその事実知っていたの?」
タオが会話に入って来た。
伊砂玲於那は突然現れたピンクのセーラー服を着たおじさんに驚いていたが、怯むことなく対応する。
「失礼ですが、あなたは?」
「あたしはここのオーナーで、乙男女じぇねれーしょんのプロデューサーでもあるタオよ。以後お見知りおきを」
「はじめまして。Ultimate STARZの伊砂玲於那です」
こうやって改めて自己紹介されると、そのとてつもなく美しい容貌とオーラ、貫禄に圧倒される。
「先程の質問ですが、先生に妹がいるというのはなんとなく伺ってましたが、それがわたしの妹が働いているこの店にいるとは知りませんでした」
「そうなのね。それにしても、あなたやっぱり美人さんね。あたしの若い頃とどこか雰囲気似ているわ」
「ちょっと、タオさん!国民的アイドルに失礼なこと言わないでくださいよ!」
僕はたまらず口を挟んだ。
「なによ!ムンちゃんの方があたしに失礼でしょ!ねえ玲於那さん?」
「た、タオさんも凄い個性的で、す、素敵な方と思いますよ」
「あら、やっぱりあなた見る目あるじゃない。流石アルスタのエースを務めているだけあるわね」
「タオさん!スターに気を遣わせないでくださいよー!」
伊砂玲於那は気にもしない様子で話を続けた。
「あ、そうだ。今日ここへ来たのには他にも理由があって、先程亀戸先生に会っていたのですが、これを渡すように言われているので受け取ってください」
そう言って、封筒をタオに手渡した。
「何かしら?開けてもよくって?」
「どうぞ」
タオは封筒を開け、中に入っていた1枚の紙に目を通した。
「えーと、来る12月25日、第10回『ドキっ地下アイドルだらけの大上演大会』への参加の案内状?」
「はい、その大会には亀戸先生も少しながら関与していて、もしよろしければと……」
「え、それってわたしたちドキ地下に参加できるってこと?」と紅が食いついた。
「なんですか、その『ドキ地下』って?」
「まだあまり名の知れていないアイドルの為の大会だけど、これから上を目指す人たちの登竜門になろうとしてるイベントよ。その大会にわたしたちが出られるの?」
紅は熱っぽく伊砂玲於那に確認した。
「あなた達に出たい意思があるのなら」
「やるに決まってるじゃないの!」
「ムンちゃん、やったわね!」
僕たちは皆喜びあった。
「最初はこんな格好で人前に出るなんて、信じられなかったんですが、少しずつみんなと協力しあってこんなチャンスにありついたんだから頑張ります!」
「俺も自分の実力試してみたいし、ちょっと本気でやってみようかな」
僕たちのやる気が満ちて盛り上がってる中、伊砂玲於那が言葉を挟んだ。
「あの、皆さん。盛り上がってる中大変お伝えづらいんですが……」
「なに?どうしたの?」
「実はこの大会にはちょっとしたルールがありまして……」
「ルール?」
「はい。ドキ地下は女性しか出られないのです」
「え!?それって……」
「はい。夢月さん、流樺羽さんのご両名は出場資格がございません」
「えええ!!!」
「そんなことって……一応ムンちゃんはこの乙じぇねのセンターなのよ?」
「申し訳ございません。しかし以前からのルールなんです」
「この子達女の子って扱いにして出られないのかしら?」
「はい、無理です」
「じゃあ去勢してもダメ?」
「む、無理かと思われます……」
「なにせさようとしてるんですか!?」
「ええ!?そしたら今出れる子って……アオちゃん、紅ちゃん、ミトちゃん、3人しか出られないじゃないの?」
「はい、大会ルールですので」
「そんなぁ……」
僕たちが出られないのは大会ルールなので仕方がないのだが、それでも基本的に5人でパフォーマンスすることが前提として、僕たちの曲は構成されている分、そのうちの二人が出場できないというのは大きな痛手になりそうだった。
「それでは要件も済んだので、わたしはこれで失礼します」
伝えることを伝えて、伊砂玲於那は店をあとにした。
「うーん、きびしいわねえ」
「でも、それで出場を諦めるなんて、わたしはしたくない!」
紅の言う通りだ。
「と言っても最低でもあと一人は入れたいし、かと言ってすぐに見つかるはずもないし、それに覚えるまでにどれだけ時間が……」
「うーん、参ったなぁ……」
皆お手上げと言った感じの中、ミトが提案した。
「アルンは?」
「え?」
皆一斉にミトの方を向いた。
「アルンなら出場資格あるよね?」
「いや、出場資格はあるけど、すぐには覚えられ……」
「ほとんど踊れるよ」
「え?どういうこと?」
「元々コムさんとシオンさんに色々教えてもらってたし、最近はみんなカフェで働いてる間、よく二人で歌ったり踊ったりしてたんだ。だから即戦力としては十分だよ」
「ホントなの、アルンちゃん?」
「うん、多分大丈夫と思うけど……」
そうして僕たちは4階のスタジオの方に移動した。
僕たちの定番曲で、アルンちゃんは試しに踊ることとなった。
やや粗削りではあったが、アルンはそつなくこなした。
「タオさん!どうですか?」
「いいわね。ただフォーメーションをどうしようかしら?」
「そうですね……」
そう、メンバーが3人まで減らずに、4人になったのは良かった。
しかし、5人から4人になるとフォーメーションの面で問題がでてくるのだ。
かと言って、短期間でもう一人メンバーを増やすことなど不可能に近い。
悩んでいたが、タオが提案してきた。
「ね、ミトちゃん。今の曲アルンちゃんと並んで、もっかい二人で並んで踊ってみて」
「はい、別にいいですけど……」
そして、先程の曲を二人で同時に踊らせてみた。
すると、普段からよく二人でいるアルンちゃんとミトちゃんは一糸乱れぬ動きで踊りだし、二人ともまだまだ余力を残していそうな感じながらも二人の呼吸はバッチリ合っていた。
この場にいた皆が新しい手応えを感じとっていた。
「タオさん!これって、なんかめっちゃ行ける気がするんですけど!?」
「うん、思った以上だったわ!じゃあ次の大会はミトちゃんとアルンちゃんのダブルセンターで行くわよ!」
もちろん誰も異議を唱えるものはおらず、僕たちのグループに新しい可能性が生まれようとしていた。
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