死神の守人

蘇 陶華

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雪の中の記憶

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 沙羅は、混沌としていた。意識は、遠い日に遡り、吹雪の中にいた。雪は、上からも、下からも、吹き付けており、どこが前なのか、後ろなのか、わからない。わかっているのは、そばに母親がいるという事。しっかりと、手を繋いでおり、その母親の背中には、小さな妹が居たと言う事。
「母さん、寒いね」
何度も、紗羅が、問いかけると、母親は、黙って、手を握り返してきた。どこに、向かっていたのか、もう、あの時の記憶は、あまり残っていない。遠い日の事。ただ、辛くて、母親と妹が可哀想で、なんとかしたかった。この後。。。私は?そう、泣いたんだ。沙羅は、思い返していた。母親と小さな妹は、雪の中に倒れた。呪った。天や自分達を追い詰めた周りの大人達を、呪った。このまま、自分も、真っ白い雪に飲まれてしまいたいと泣き叫んだ。その時、目の前に、降り立つ姿が、あった。背を向け立つ姿は、大きな2枚の翼に覆われていた。翼の色が、黒かったのか、白買ったのか、そして、どんな生き物だったのか、紗羅の記憶は、まだらだった。翼は、美しくしなやかだった。しばらく、紗羅が見とれていると、長い髪をしたその者は、振り返り、沙羅に手を差し出した。
「もう、辛い思いをしなくていいんだよ」
そう、紗羅の耳には、聞こえていた。その手をとれば、母や小さな妹は、大丈夫だと、そう、思えた。
「大丈夫?」
その者は、微笑んでいた。沙羅は、手を差し出した。その瞬間、指先から、光が、迸っていた。沙羅は、意識を失っていた。次に、目が覚めたのは、小さな商店街の路地裏にいた。
「ここは?」
沙羅は、見上げていた。手の先には、母親の手があった。暖かい眼差しで、母親は、沙羅を見下ろしていた。母親の背中には、小さな桜子が寝息を立てていた。
「紗羅。。。沙羅にしか出来ない事があるのよ」
母の手は優しく紗羅の髪を撫でていた。
「母さん達は、待っているから。紗羅」
母親の手がスッと離れていた。その後ろに、また、あの大きな翼を持つ姿が見えた。
「。。。。」
意味が、わからず、紗羅が見上げていると、その者は、ゆっくりと、遠くを指さしていた。指先を目で追いかけると、小さな少年が、走ってくるのが、見えた。
「誰?」
過去の出来事なのか、夢なのか、わからず、沙羅は、少年が、走ってくるのを見ていた。少年は、何者かに、追われていた。小さなブリキの缶を大事そうに抱えていた。転びそうになりながら、泣きそうな顔で、いくつもの影に追われていた。
「さあ。。紗羅、助けてあげなさい」
沙羅は、鋭い鎌を持ち、躍り出ていた。細く長い柄を持つ、鎌を沙羅を振り下ろしていた。
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