死神の守人

蘇 陶華

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市神、正道を諦める

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 市神は、地域の医療に貢献しろとの父親の約束を守り、診察の傍、午後は、往診をしている。主に、最後は、看取りという事になるのだが、ここ何年かは、不思議な事が続いている。元々人間の終末期に於いて、科学や医療では、実証出来ない事は、たくさんあったが、ここの所、起きている事は、そんな話で、片付けられる事では、なかった。
「何か、起きている」
そう感じている。しかも、自分の身の回りで、起き始めていた。ある一定の人物の周りで、起きている。市神は、不自然さを感じている。
「先生?」
診察中に、ふと手が止まるのを、看護師長は、見逃さず、注意した。疲れているのだろうか?看護師長の三那月は、患者に後ろを見せるようにした後、市神を促した。
「午後一で、往診もあるので」
あぁ。。そうだった。例にも漏れず、また、何か、ありそうな家。訪問看護は、どこだったけ?
「先生!」
再度、叱責を受けて。慌てて、診察を終わらせた。訪問看護は、どこでも、同じ。どこにしたら、いいのか、相談したら、三那月に、勧められ、あの看護師のいる所にしたはずだった。
「三那月くん、確か、午後一の訪問するお宅は。。」
診察を終え、カルテを見ながら、市神は、看護師長の三那月に確認した。
「えぇ。。。ちょっと、厄介なケースになるんじゃないか?って話のお宅です」
あぁ、そうだった。信徒の家で、どこも関わるのを嫌がり、ここに回されてきたのだった。今まで、何度か、危ない目に会うことも、あったが、何故か、自然と回避できていた。幼い時に、乗っていたバスの事故で、1人だけ助かった市神に亡くなった祖母が、
「お前は、守られているから」
とは、よく言っていた。何が、自分を守ってくれるのか、市神には、信じられず、大学の時も、非現実的だと笑いながら、馬鹿にしていた。でも、振り返ってみると、ギリギリの所で、助かる事は、あった。
「あまり、余計な事に、巻き込まれたくはないけどん。三那月君、往診の備えて早めにお昼をとってね」
そう言いながら、市神は、仕事の片付けをし始めながら、繰り返すように、高野蓮の事を考えていた。
「普通ではない」
非現実な事で、助かった自分は、時折、見せる高野の顔が気になっていた。ふとした瞬間に、別の顔が垣間見える。興味があり、尻尾を捕まえようとした事は、何度もあったが、突然、現れる高野と同じ位の青年に邪魔されている。
「確認してみるのも、面白いかもな」
思いを巡らせながら、診察室から出ていく市神を三那月は、薄く笑いながら見つめていた。
「楽しい、診察になりそうですね。先生」
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