死神の守人

蘇 陶華

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蓮を自分の思いのままに。

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沙羅の鋭い鎌の刃先が、三那月の喉先を狙っていた。軽い身のこなしで、身を翻し、三那月の剣先を交わし、巧みに、三那月を追い詰めていく。沙羅の鎌を避けながら、三那月の体は、次第に龍神への姿へと変化していった。
「食魂華が、順応しているようね」
沙羅は言った。
「本物の龍神になれると思うの?あなた達は、天昇を望んでいるけど、偽物に変わりない」
沙羅の鎌は、いつの間にか、1本から2本へと増えていた。
「偽物は、偽物なの。本物には、勝てない」
沙羅の鎌が、三那月の頬を擦り、紅い血飛沫が、舞い上がった。
「本物の力をみるべきよ」
「どうかしら」
三那月は、剣を構えた。剣先に青い炎が灯り、手元まで、光が上下した。光は、次第に強くなり、沙羅を飛び越え、僕に向かって走ってきた。
「避ける事は、できないのよ」
その青い光は、僕に、吸い付くように、聴いた事のない音を立てながら、僕にまとわりついた。それは、人の叫び声だった。
「あなたが、神に近い存在であるなら、避ける事はできない筈」
剣先から、ほとばしる光は、僕から離れることができない。
「蓮。離れて!」
沙羅が叫んだ。青い光は、切れない鎖のように、僕の自由を奪っていった。
「待って!」
沙羅が、何かを放り投げてきた。かろうじて、動く右手で、受けっとったのは、小さな横笛だった。
「紗羅!これは?」
「吹くのよ!思い出して」
横笛なんて、吹いた事はない。剣先から、ほとばしる青い光は、恐ろしい叫び声を上げながら、僕の自由を奪い、鎖の先は、僕の中に侵入しようとしていた。
「吹け!」
沙羅が叫び、僕は、横笛を口に当てた。忘れていた事の一つだったんだるか。僕は、自然に右手が動いていった。左手が、右手を、支え、指が自然に動いていく。優しく流れる主旋律。どこかで、僕は、横笛を吹いたことがあったのだろうか?
「そこまで、できるとはね」
三那月の剣先から、ほとばしっていた青い光は、折れてしまい、地に大きな渦を作っていた。
「だけど、ここまで、私がくると言うのは、かなり、覚悟を決めてきた事を知ってほしいの」
三那月が、足を踏み鳴らすと、青い光は、瞬時に凍りつき、細かい破片となって、宙に舞った。細かくなった粒子が、宙に舞いながら、小さな悲鳴をあげていく。
「あなたが、迦桜羅なら、この声を聞き流す事はできない筈」
小さな悲鳴は、僕に、断末魔の叫びを上げながら、絶命していく人達の姿を見せつけた。三那月が、自分の思いを果たす為に、奪っていった多くの人達。僕は、激しく胸を上下する間に、細かい粒子は、僕の肺に焼き付いていった。
「あなたが、迦桜羅なら、私達と行くのよ。あなたの為に、多くの邪神が待っている」
さあ。。と言いながら、三那月は、手を差し出していた。
「抵抗は、できない筈よ」
僕の中に、たくさんの粒子が。否、粒子に姿を変えた魂が、僕の中に入り込んでいた。
「蓮」
沙羅が、僕の名前を叫んでいた。僕は、僕の意志に反して三那月の手を取っていた。
「最初から、こうすればよかったのよ」
三那月は、僕の手をとり、そっと自分の頬に手を当てた。
「さぁ。。これから先は、ずっと一緒にいましょうね」
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