星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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余波。寧大が選んだ事

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台風が近づいている。
そのキャンプ場への道は、閉鎖されていた。
それでも、寧大は、旧道を探し当て、海に逢う必要があった。
「気付いているの?本当は、シーイの事を」
「違う。そうじゃない」
何でも、海は、自分にない物を持っていて、みんな、彼に惹かれていく。
花子もそうだった。
寧大と別れ、海と付き合った。
一緒にいると、海の魅力に惹かれるのが、わかる。
シーイの声は、特別だった。
バイオリンの腕も、そこそこあったが、寧大自身、その歌声に惹かれていた。
自分の理想が、海に変わっていくのに、そう、時間は、かからなかった。
音夢を見た時に、惹かれたのは、海に見えたから。
海に求めていた物を、音夢に求めた。
「寧大の希望は、手に入ったの?」
音夢は、笑った。
「滑稽でしかない」
吐き出すように言われた。
それが、引き金だった。
海の全てを曝け出し、それでも、残る人が、誰なのか、海にわかって欲しかった。
「歪んでいる」
寧大が、シーイの姿を暴露した時に、言われた。
いろんなコメントが上がった。
批判的な意見もあったが、シーイの本格的な、デビューを望む声も多かった。
かと、言って、
海は、望んでいない事を知っていた。
自分のエゴで、海のささやか幸せを壊した気がした。
「逢って、謝らなきゃいけない」
寧大は、海のいるキャンプ場へと向かって行った。

帰る足も無くなった僕は、澪に教えられた通りの場所に向かっていた。
「こんな近くに居たんだ・・」
笑う位の反対側だった。
そもそも、僕が、澪達のロケに同行する筈だったが、行き違いで、取りやめになっていた事実を知った。
「それなら、これから、同行する?」
冗談で言ったみたが、
「皆に正体がバレるでしょう?」
そう言われていたが、どうも、その必要がなくなっていた。
僕の、隠れた活動も、シーイが誰であるかも、全て、拡散されていた。
「だからこそ、変装した方がいい?」
「余計な事をしないで、普通でいいわ。誰が、どこで、流すか、わからないから」
そう言われて、僕は、全く、変装もせず、普通の格好で、リュック一つで、澪の会社のコテージを訪ねる事にした。元々、ロケを予定していた事もあり、かえって、都合が良かった。
「変に、隠れる方が、疑われるわ」
澪は、そう言って、企画室の女の子を、迎えによこしていた。
ひっそり、澪に逢えると思っていた僕は、少しだけ、がっかりした。
「スケジュールの都合がついたんですね?」
逢うなり、企画室の女の子は、声を上げた。
「今まで、顔出しNGだったんですけど・・・あの」
女の子は、僕の顔を、正面から見ると、言葉、少なに言った。
「女の子・・・?」
「?」
「いえいえ・・・御免なさい。あまり、ヒゲとか、見えないから」
「あ・・」
僕は、笑って、顎を撫でた。
「ネット。大変な事になっていますね。ここにいて、良かったですよ」
「そう?」
キャンプ場の中の小道を進んでいくと、湿地帯の向こうに、澪達のコテージが見えた。
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