星渡る舟は、戻らない

蘇 陶華

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ストーリーは、決められている

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海と蒼の競演は、榊さんの耳にも届くことになる。
その話を伝えたのは、娘の萌だった。
「面白い話よ。」
事情を知らない萌の声は、弾んでいた。
「蒼のバイオリンを届けたのが、海だったみたい。海の腕前を知ってね。競演したいって。まぁ、蒼による海の腕試しだね」
「蒼は、海の腕を試して、どうするつもりなの?」
「聞いた話だと、蒼のライブの前で、海がバイオリンを弾いたらしいの。開演前だったんだけど、観客が、海に流れていって」
聞いていた榊は、
「あぁ・・・そうか」
理解できたかの様に、呟いた。
「知っていたの?パパ?」
萌は、榊の反応が、予想外だった。
素人の海が、蒼と対決するなんて、無謀だと、止めに入るのかと考えていたのだ。
「パパとしては、どう、思う?」
「どちらが、上かって?」
「海は、パパのお気に入りでしょう?留学に推薦するくらいだから」
「留学だよ。海は、まだまだだ・・・。生まれながらに育てられた蒼とは、違う」
「バイオリニストの血を引いて、育てられた恵まれた蒼とは、違うのに、どうして、蒼は、海が気になるのかしら」
「不思議な物だな」
あのバイオリンケースが、二人を惹きつけたのだろう。
「聞いてみたいと思わない?ただのYouTuberと、プロのバイオリニストの対決」
「そりゃぁ・・・蒼が、勝つだろう」
蒼が勝つのは、当たり前だ。海は、まだまだ、未熟だ。大学で、勉強してきたに、すぎない。恵まれた環境で、育った蒼とは、違う。
・・・・同じ血を分け合った兄弟なのに・・・
「聞きに行くのか?」
「当然よ。だけど、投票権は、音楽関係者は、ないの。YouTubeでも、流れるみたいだけど、生で、聞きたいわ」
「感想を聞かせてくれ」
「パパは、行かないの?」
「まだ、外出許可が降りていないからね。面会の許可が降りて、真っ先に、きたのが、娘だなんて、僕は、がっかりだ」
「悪かったわね」
萌は、下唇を突き出した。
「ところで、萌。君は・・・」
海を気に入っているのかい?
そうきこうとして、言葉に詰まった。
萌が、あの先輩の息子と、親しくなれば、自分もこの上なく、嬉しい。
だが、聞くまでもなかった。
「しっかり、見届けで、来るわ」
萌の鼻息は、荒かった。

その頃、空港に蒼の姿があった。
「そろそろ、着くはずなんだけど・・」
見渡す到着ロービーの中で、探している人物の顔を見つけた。
「はーい。エリィ!こっちこっち!」
手を振る先に、美しい婦人の姿があった。
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