皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

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陽出でる国の姫

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「たかが、一塊の術士風情が!」
紗々姫の顔は、もはや人間のものとは、違っていた。紗々姫の姿に、風蘭(聚周)は、一瞬、怯んだが、構わず、紗々姫の首元を抑えにかかるが、紗々姫の怒りは、止まらず、長い尻尾で、風蘭の手を振り落とした。
「嫌だわね。半端なのよ。全てが」
叩かれた瞬間、風蘭は、弾け飛び床に落ちた。
「風蘭!」
紫鳳は、手を出し、抱え上げようとしたが、紗々姫に睨まれ、首を振った。
「違うんだよな」
「今までのように、近寄れぬ」
尻尾で、風蘭を叩いた事で、少しは、気が落ち着いたのか、紗々姫の顔は、人の形を取り戻しつつあった。
「どうも、この女は、始末が悪い」
尻尾に叩かれ、風蘭は、聚周の術が、途切れた様子だった。目の周りが、赤く腫れ痛々しい。朦朧としながら、風蘭は、起き上がる。
「これは・・・?」
「知らぬふりは、するな。意識は、あった筈」
風蘭に話しかける頃には、人の姿に戻っている紗々姫。起きてしまった事に当惑しているが、紗々姫の受け答えは冷たかった。
「何をしたのか?自分の立場はわかっているのか?」
紗々姫の言葉の端端には、鋭い棘があった。紗々姫は、風蘭の存在、その物を嫌っている。
「私が?」
「担がれているのか、わかっておろう。目も耳もあるのだからな」
薄く緑色に輝く紗々姫の双眸が、そこにはあった。冷たく、見据える視線に、風蘭は、体の奥底から、寒気がした。成徳と似ている様な気もするが、紗々姫の体の奥から立ち上がる気は、恐ろしく刺々しく、風蘭の全てを否定していた。
「知らないでは、済ませられない。かけがえのない存在が、消えようとしているのだから」
紗々姫は、風蘭の乱れた髪を強く引っ張り、紫鳳の腕に抱かれている瑠璃光の顔に寄せる。
「お前の甘さが、彼を深く傷つけた」
「あ!」
紫鳳が間に入り、紗々姫を止めようとするが、紗々姫は、容赦しなかった。
「生まれながらの高貴な身分ではなかろう。去ね」
「紗々姫!」
紫鳳が止めるが、紗々姫の怒りは止まらない。
「座すべきでない物が、座しているから、バランスが崩れる。お前に、その座を守る力は、ないであろう」
風蘭は、言葉を失った。自分が、ここにいる本当の理由を知られてしまうのかお、恐れた。目の前の、東の国から来た姫は、妖の姿をしていても、自分より、清く強い。
「待て」
誰かの、手が、周りを制した。誰が、この場を収めるのかと、顔を見合わせると、紫鳳の手を避け、ゆっくりと起き上がったのは、先程まで、意識を失っていた瑠璃光だった。
「逃げ出したのは、私だった。彼女は、悪くない」
「効いたか?大丈夫だったのか?」
青嵐の声が弾んでいた。
「まさかね。こんな解毒の方法は、思いつかなかった」
瑠璃光は、口元を揺るめて、笑う。
「さて、弁解しても、誰も、納得いかないだろうが」
寝台の下を、瑠璃光は、指で示し、青嵐に寝台を横にずらす様に、支持する。青嵐と紫鳳が、横にずらすと、1枚の床板の色が、周りと異なって見えている。
「あけてくれ」
青嵐が、用心深く、ゆっくりと開けてみると、そこには、光が見え、地下へと続く階段が見えていた。
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