酒涙雨で終わりにしようか?君の心臓を天に捧ぐから。

蘇 陶華

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巫女死す。白夜狐に捧げる呪術

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「あぁ!」
不死の神と犀花が死闘を繰り広げている頃、巫女は、神殿の地下で、倒れている太古の白夜狐を見つけた。また、その頃、眷属になりたての白夜狐は、九狐でありながら、霊力もさほどなく、八百万の神達の末痞えでしかなかった。婚礼の儀式を前に、巫女の夫となる神の弟に襲われ、致命的な怪我を負っていた。
「白夜狐!」
駆け寄ったものの、抱き起こす事が出来ない。怒りが起爆剤となったのか、両腕からの炎が、止まらない。燃え盛る炎を持つ両腕では、更に彼を傷つけてしまう。
「なんて事を・・・なんて・・」
巫女は、唇を噛み締めた。どんな選択をしても、彼を傷つける事に代わりなはない。どうして、自分の気持ちに従ってはいけないのだ?この手で、彼を抱きしめたい。傷を癒してやりたい。闇が続くなら、闇を払ってやりたい。気が狂わんばかりに、巫女は、願った。
「彼を助けてほしい」
両腕に炎を纏ったまま、巫女は、印を結んだ。勿論、今まで、そんな事を行った事はない。祭壇で、祈りを捧げ、舞を踊るだけ。今は、彼をこの手に抱きたい思いだけだった。
「八百万の神よ。我を助けたまえ!」
巫女は、心から願う。このまま、終わる明けには、行かない。炎が鎮まり、白夜狐の傷を癒させて欲しい。
「お鏡様・・・」
再度、白夜狐の唇が、動いた気がした。両腕の炎が、消えたのか、確認もせず、抱き寄せたが、白夜狐に触れた途端に、炎は、消えた。
「何が、あったのです?」
「来てしまったんですね」
「この怪我は?」
「望んだこと」
呟くと白夜狐は、軽く笑った。
「何を望んだんです」
「それは・・・」
白夜狐は、口籠る。
「言えない事なんですか?」
「君の代償だ」
いつの間にか、黒い法衣を来た男達が、何人も地下室に現れていた。その中に、先ほど、去った男もいた。
「二度と、近づかないければ、君の安全を保障する。その約束に両目をもらった」
「両目を?」
振り返って見ると確かに、白夜狐の目は、そこにはなく、深い傷があるだけだった。
「このままだと、君を不死の山に捨てて、来る様になる。そうなると、霊力を不死の神に与える事になる。我々としても、不本意なので、1番、君に近い者に罰を与えようかと」
「それが・・・白夜狐って事?」
巫女は、法衣の男達を見上げた。両腕に、白夜狐を抱えている。
「いいんだ・・」
白夜狐は、巫女の両腕を祓いたち上がろうとする。
「君は、きっと、約束を守る。だから、僕は、大丈夫」
身を突き刺す痛みに耐えながら、白夜狐は、立ち上がり、持っていた剣を杖代わりに、床に突き刺す。
「よくない。よくないわ」
巫女は、白夜狐に、飛びついた。
「今、わかった。私が、どうしたいのか。どうすればいいのか」
惜しむように白夜狐の胸に顔を埋める。
「どんな結論を選んでも、あなたを傷つけるのなら、答えは、私が決める。だけど」
巫女は、法衣の男達の立ち塞ぐ地上への階段へと向かう。
「どきなさい」
男達は、その行手を防ごうとしている。
「どいて」
あまりの腱膜に、男達は、少し、後ろに退いた。
「白夜狐。いつまでも、私が傷つけるしかないなら・・・私には、これしかない」
巫女は、両腕を返しながら、胸の前で、交差した。
「!」
先程の静まり返った炎が萌え出し、その炎を次第に勢いをつけていった。
「何を?」
目が見えなくても、炎が上がった事は、空気でわかった。白夜狐は、法衣の男達の響めく声で、それを察し、駆け寄ろうとするが痛みの為、動けない。
「白夜狐。遭わない方が良かった。一緒にいると、傷つけるなら・・・」
炎は、全身に広がっていく。
「生きて・・・ほしい」
巫女は、胸元から小刃を取り出す。どよめく法衣の男達が、巫女を止めようとするが、炎の勢いが強く誰も近づけない。
「お鏡さま!」
小刀は、巫女の胸を貫き、その場に倒れてしまった。
「早く、なんとかしろ!」
地上へと走る法衣の男。倒れた巫女の体から、炎を消そうとする物。視力を失った白夜狐は、状況もわからないまま、ただ、巫女の命が尽きてしまった事だけを感じていた。
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