かぶと虫

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 かぶと虫 第二章その後の ニ人

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もう何十回目かの冬を迎える

見慣れた横顔はすっかり年老いて
私たちは高齢夫婦になってしまった





妻 ねぇ、あれからもう何年経つかな?
  ねー!あ、れ、か、ら……また聞こえてない


夫 ん?何か言ったか.....?


妻 あれから何年経つのかな!孫ができて、
  私も仕事を辞めた時のこと覚えてる!?

夫 あ……そこのお茶、とってくれるか


(全く、ボケてるのかボケてるフリをしてるのか  腹が立つ……)


全く動かない夫の今の定位置、いつものコタツ


(ボーとして、顔のたるんだくそジジイめ!)


夫に内心で悪態つきながら、思い出すのは

娘に子供ができ毎日が楽しくてたまらないあの頃





娘も共働きで保育園の送り迎えが大変そうだった

だから私もそろそろ歳だしと、

思い切って仕事辞めて
孫のお世話に専念することにした

朝、娘の家に孫を迎えに行って保育園まで送る

それが私の役目になった


(お迎えは夫の仕事、何かしてもらわないとね)



けれど夫と孫はいつも中々帰って来ない


妻 遅いなぁ……帰りにまた寄り道してるね


(夫が迎えに行くと帰りが遅いのよね、全く)
  

夫 ただいまー!帰ったよ!
  ママが帰ってくるまでじぃじと遊ぼうね~

妻 また、そんなにお菓子買ってきて!
  娘にいつも言われてるでしょ?
  ご飯食べないからお菓子は辞めてって!
  本当に、甘いんだから!


(いくら可愛いからって買いすぎなのよね
 何がじぃじだ!くそジジーだわ!)


夫 ばぁば、怖いね~、ほらこっちに逃げよう


(孫に買って何が悪いんだ、クソババアが)


毎日孫とお迎えの帰りにお菓子を沢山買ってくる

娘もかなり怒っているが、

送り迎えがで仕事でできなく文句もあまり言えないようだった


(あたしが代わりに言わなきゃね!)



妻 ご飯まで一個しか食べたらだめ!
  ママに怒られるよばぁばが預かるから
  お菓子をよこしなさい~?

孫 嫌!じぃじが良いって言ってるもん!
  ばぁば嫌い!あっち行って!


(いつも私が嫌われ役だわ……)

娘 ただいま、ありがとう!
  帰るよおチビちゃん~

孫 やだやだ~!!じぃじと遊ぶ!!

夫 そうかそうか、じぃじと寝ようか。泊まるか

妻 だめよ、帰らないとママが泣くよ?


妻 何が泊まるかだ、毎日毎日同じことを言って
  最後まで面倒見ないくせに! 

娘 だめ!早く帰るよ、来なさい!


いつもこうなる、夕方の慌ただしい時間

泣きじゃくる孫と、苦笑いする夫

大変だったけど孫は可愛いかったなぁ……





妻 はいお茶どうぞ。いつもお菓子たくさん
  買って娘に怒られていたのを覚えてる?

夫 そんな事あったかなぁー?

妻 都合の悪いことは忘れるのね
  勝手認知が腹立つわ

妻 来年の春、小学生よ。
  あっ!ランドセル買いに行かないと!

夫 そうだなぁ……



煮え切らない夫を連れて少し先の百貨店へ……
バスに揺られていく二人



久方ぶりに見るランドセルは沢山種類があって、結局決まらず、娘にネットで選んでもらうことにした



妻 いつもこう、昔から変わらないわね



けれど、そんな夫が憎めない。

今となってはこの日常が大切な普通なのだ



(私達も歳を取ったね)











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