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逃亡
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まあこんなものだろう。期待をしていた訳では無い。
痛みを伴う寝起きにそう呟いた。まだ朝の五時だというのに、無駄に目が冴えてしまって、眠れなかった。薄暗い部屋の窓辺に置いてある時計のアラームを消した。
無造作に伸ばした左手の五つの指先が、そっと濡れた。窓だ。外では雨が降っているのだ。
そこでようやく耳が音を捉え始めた。壁が軋み、窓が叩かれ、風が吹き抜けている音だ。
夢中になっていた。まだ日が昇らないこの場所で、日が昇ろうとも灯りの射さないこの場所に、魅了されたのだ。
まるで地獄じゃないか。
この世の中に地獄はあるじゃないか。
少女は窓を開けた。突風が部屋を刺した。窓辺の時計も、机の原稿も、寝床のぬいぐるみも、その部屋の全てをめちゃくちゃにしていった。
少女は笑っていた。濡れた頬を撫でて、美しく、笑っていた。
痛みを伴う寝起きにそう呟いた。まだ朝の五時だというのに、無駄に目が冴えてしまって、眠れなかった。薄暗い部屋の窓辺に置いてある時計のアラームを消した。
無造作に伸ばした左手の五つの指先が、そっと濡れた。窓だ。外では雨が降っているのだ。
そこでようやく耳が音を捉え始めた。壁が軋み、窓が叩かれ、風が吹き抜けている音だ。
夢中になっていた。まだ日が昇らないこの場所で、日が昇ろうとも灯りの射さないこの場所に、魅了されたのだ。
まるで地獄じゃないか。
この世の中に地獄はあるじゃないか。
少女は窓を開けた。突風が部屋を刺した。窓辺の時計も、机の原稿も、寝床のぬいぐるみも、その部屋の全てをめちゃくちゃにしていった。
少女は笑っていた。濡れた頬を撫でて、美しく、笑っていた。
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