聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第一章Ⅹ

体育祭~初めての体験Ⅰ~

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翌日のHR(ホームル-ム)の時間に、
月末の日曜日に行われる体育祭に向けて
の話し合いが行われた。

「以上が、このクラスで出場しなければ
 いけない競技の項目と人数です。
 基本的には男女ペアの競技は我が紅組
 の共同競技となりますので、
 他のクラスの選手とのミーティングの
 後、ペアを決めることになります。
 選ばれた方は、この後放課後まで、
 それぞれの教室に行ってください。
 後、何か質問はありますか?」

体育祭実行委員に選ばれたクラスの代表
が教壇にあがり説明している。

各学年ごとに2クラスで合計6クラス分
を4色に色分けして組み分けている。
そして、各色組で競技を競い合うらしい。

翔のクラスは赤組であったが、転校して
きたばかりの翔にとっては、他のクラス
に知り合いがいるわけではないので他の
クラスの生徒の事は解るわけもなかった。

翔は自分のところに廻ってきたプリント
に目を通しながら華那恵の顔を見ていた。

華那恵は史絵と笑いながら話をしている。

クラスメイト達も楽しそうにでる競技を
選んでるようだった。

「ふう…」

翔は大きく溜息をつきながら、もう一度
プリントに目を落とす。

「翔どうした? 浮かない顔をして?」

伸が嬉しそうに翔に話しかけてくる。

「ああ、伸か?どうしたって…別に…」

翔は伸の顔を見て素っ気なく答える。
伸はそんな翔の表情を見て理解したよう
に話しかけてきた。

「ははーん。解った。そうだよな?
 転校してきてすぐに体育祭だもんな。
 どんな競技がいいか解らないもんな。
 よし翔。俺と一緒に騎馬戦にでようぜ。
 騎馬戦!いいぞ。この学園の騎馬戦は
 騎手は女の子だからな。
 よし、決まりだ!」

「伸、お前…」

翔はあきれたように伸の顔を見た。
伸はニッと笑いながら実行委員の男の所
に言いに行く。

「はいは~い!俺と翔は騎馬戦ね~」

「し、しかし伸君。騎馬戦は人気のある
 競技で君達だけ先に決めるなんて事は
 さすがに…」

戸惑う実行委員の男に伸は肩を組んで、
耳元で何やら囁き始めた。

「だからさ…ごにょごにょ…」

「えっ?おお、そっか!
 伸君。君は天才か! それならば君達
 には騎馬戦で参加してもらおう!」

どうやら翔は伸と共に騎馬戦に参加する
事になってしまったようだった。

「後はですね……。
 メインの男女混合100mリレーに
 出てくれる人いませんか?
 この競技が一番重要なんだけど、特に
 今年はアンカーになっちゃったし…
 誰かいませんか?
 自選でも推薦でもいいんだけど、
 誰か出てくれませんか?」

実行委員の男が困ったようにクラスを
見渡している。
なぜか伸の所で一瞬軽く頷く所作も
見られたような気がした。

「負けると先輩達に何言われるか
 解らないからなぁ…」

「責任ある競技って、ヤダよね?」

そんな事にも気づかずにガヤガヤと、
好きなことを言うクラスメイト達。

「と、とりあえず。女性走者だけでも
 先に決めてもらえませんか?」

「え~なんで女子だけ?
 それでも出たくないなぁ…」

「ねぇあやは?あんた陸上部でしょ?」

「あたしパス。200mと400mに出るし。
 これ以上は無理。誰かほかの人で」

女子は女子で好きなように言っていた。

「私、出ます!」

それを見かねて立候補してくる華那恵。

「おお、沙原さん。出てくれるのか?
 これで女子は決定で…。後は男子だ。
 誰かいませんか?」

「みんな!がんばって出ようよ!
 負けちゃっても、頑張った結果なら
 いいじゃない!」

華那恵がクラスの男子達に話しかける。

「でもな…」

「女はいいよな。負けてもあんまり、
 言われねえもんな…」

男達はそれでもブツブツと言いながら
手を挙げようとしない。

「みんな……」

あまりの男子達の反応に悲しそうな顔
をする華那恵であった。

「俺、出るよ」

翔は自分で手を挙げて立候補した。

「翔くん!?」

「た、高村君。いいのか?」

華那恵が驚きの声を上げて、実行委員
の男はなぜか慌てた感じで聞いてきた。

「ああ、俺なら転校して日も浅いから、
 知ってる先輩もいないし、文句を
 言われても気にしないですむし。
 女の子が頑張って立候補しているのに、
 男が頑張らなくちゃ仕方ないだろう?
 俺でいいなら、リレーで走るぜ?」

男らしく笑いながら答える翔であった。

「えっうん。じゃあ、このクラスの
 リレー代表は高村君と沙原さんに
 決定と言うことで…。
 この後、30分からそれぞれの指定
 されている教室で、ミーティングを
 開始しますので行ってください!
 選手に選ばらなかった人は、体育館
 に集合してください!
 応援の練習をします」

実行委員が説明して教室を出ていった。

クラスメイト達が立ち上がって教室を
出ていく中、華那恵が翔の所にやって
きて前の席に座り話しかけてくる。
リレーのミーティングは翔達のクラス
で行う事になっている。

「翔くんありがと。私嬉しかった」

華那恵は微笑みながら話しかけてくる。
翔も同じように微笑んで答えた。

「華那恵ちゃんも偉いよね?一人で
 立候補して…でも走るの平気なの?」

「そんなに足が早い訳じゃないけど…
 基本的に走るの好きだから平気だと
 思う。翔くんはどうなの?」

「俺も走るのは好きだよ。今も毎日
 走ってるし。足はどうだろ?
 計ったことないから判らないや…
 まあ、とにかく体育祭までよろしくな」

笑いながら手をさしのべる翔。
華那恵も笑いながら翔の手を握りしめた。

「よろしくね…翔くん!」

握手を交わしあう翔と華那恵であった。

「翔、リレー頑張れよ!騎馬戦の
 ミーティングは俺が行って来るから」

伸が翔の肩をポンと叩き、元気よく
教室を出て行った。
残ったクラスメイト達も次々に教室を
出ていっている。

しばらくすると、教室には翔と華那恵の
二人きりになり静かな状態になった。
翔と華那恵は教室に取り残されるような
形になった。

「みんな、行っちゃったね?
 なんだか…ドキドキしてきた」

華那恵は翔と二人っきりになったのが
照れくさいのか、翔の隣の椅子に座り
直し、頬を少し赤らめながら言ってきた。

「大丈夫だよ華那恵ちゃん。
 何かあったら…俺もいるし…」

翔は華那恵に微笑みかけながら話した。

ガヤガヤ・・・

やがて、他のクラスから来た、
リレーの選手達が教室に入ってきた。
面白いことに3年生の選手達が前の方、
続いて2年生と1年生はバラバラに
座っていった。

やる気の表れなのか3年生の選手達が
一番前を陣取っている。
その内の一人の選手が代表して教壇に
あがり挨拶を仕始める。

前の席から次々に自己紹介をし、全員
の顔見せが終わった後に、話し合いが
始まった。

翔と華那恵は仲良く並んで座り、説明
を聞いていた。

明日からは毎日6限目が体育祭の準備
に当てられ、そのときに各競技の練習
(各自のトレーニングを中心に練習し、
空いた時間を競技の練習時間に充てる
という事らしい。

グランドは大まかに東西南北の4分割
に別けられ、トラックは合同で使用。
体育館は4っつの体育館を色分けし、
それぞれ練習できるようになっている
らしい。紅組はグランドの東側(校舎)
と第一体育館を割り当てられていた。

終了のチャイムが鳴り響き、選手達は
各自の教室に戻っていった。

騒ぎながらクラスメイト達が次々と
教室に戻ってくる。
華那恵は翔の側を離れ、史絵の元へ
寄って行った。
代わりに伸が翔の元にニヤニヤと笑い
ながら寄ってきて話しかけてきた。

「翔、ばっちりだぜ! 瑠璃ちゃんの
 馬になった!」

「………」

にやにや笑っている伸の顔を見て、
あきれて言葉をなくす翔であった。





その日の放課後、一人袴(胴着)姿で
グランドを走っている菜緒の姿があった。

その菜緒を教室の窓から見ている翔。

伸は彼女を見ている翔に近づいてきて、
彼女の説明をしてくれた。

「よお、翔。何見てる?」

「ああ、伸か…」

「ははん、菜緒を見てたんか?何だ翔。
 彼女が気になるのか?そうだよな?
 菜緒に大恥をかかしたんだもんな?」

「お前が言うな!お前が!
 なあ、伸? 菜緒ってなんで袴姿で
 走ってんだ? 体育祭の練習なら、
 トレーニングウェアだろうし…」

翔は伸に文句を言いながら菜緒に対する
疑問を聞いてみた。

「ああ、あれね。今度の大会の為の稽古
 だろ? 彼女はこの街に古くからある
 道場の一人娘だし、剣道で全国大会に
 顔を出すほどの強者だぜ?
 だから、時々ああして、一人で黙々と
 稽古をしてる」

伸は静かに答えた。

「道場?道場って剣道のか?」

「ああ、明神道場って言えば、この街では
 有名だぜ?昔は剣術の道場だったらしい
 今は普通の剣道場だけど、門下生には
 警察官や自衛隊員も多くいるらしい。
 彼女はそこの師範もやっているらしい」
 
「明神?そっか、明神菜緒って言うのか?
 いいな…ああいうの…」

翔がポツリと呟く。それを聞いた伸が、
にやにやしながら翔に言ってくる。

「彼女を落とすのは難しいぜ! たしか
 自分より強い男にしか興味が無かった
 ような気がする。
 まあ、俺様は別だけどな?」

「ふーん…」

伸の意味深な問いに、一人グランドを走る
菜緒を見ながら、上の空で答えている翔で
あった。

(俺も、ああして…何か一つのことに熱中
 できればなぁ…。
 華那恵のことや他のこと。
 すべて忘れられるのだろうか?
 俺にも何か純粋に打ち込める物が
 あればなあ…)

翔は汗をかきながら黙々とトレーニングに
励んでいる菜緒の姿を何時までも見ていた。




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