聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第一章 act.50

華那恵と史絵~-蓉子-~

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次の日の昼休み。
食事を取り終えた翔は自分の行動を
決めかねていた。

(…………………。昼休みか……。 
 飯も食ったし…どうするかな?
 ……教室に残っていた方が
 いいんだろうか……?

 ………華那恵…。やっと言うつもりに
 なったみたいだな?
 さっき…史絵ちゃんを追いかけるように
 教室を出ていったみたいだし………

 …昨日の段階では…まだ悩んでいるのが
 見え見えだったしな………。

 あれっ?
 華那恵だけ戻ってきた……。
 史絵ちゃんはどうしたんだろう……?)

「………翔くん。ちょっと時間いい?」

華那恵は教室に戻ってくるなり真直ぐに
翔のところに来て話しかけてきた。

「…………ああ。平気だけど…」

「ちょっと屋上につきあって
 くれないかな?」

「いいよ」





華那恵に誘われるまま、屋上に来た翔は
いつものように手すりに寄りかかった。

華那恵は翔の横に横に並んで
話しかけてくる。

「ごめんね。付き合わせて……」

「華那恵ちゃんどうした?」

「……これからね。史絵と一緒に
 蓉子ちゃんに会うの……。

 さっき、史絵に蓉子ちゃんを屋上に
 連れてきて欲しいって頼んだから……」

「………………」

「私…どうしても翔くんに一緒にいて
 もらいたかったの…」

「…華那恵……ちゃん」

「……ごめんね。いろいろ迷惑かけて…」

「史絵ちゃん喜んだろ?」

「………うん。史絵…泣かしちゃった。
 私…史絵にも…一杯心配かけたんだね。
 でもこれもみんな…翔くんのおかげ…
 ありがと……翔くん」

「…………………華那恵。
 華那恵ちゃん……よかったな……」

「うん」

(華那恵の言葉が心地よく
 響いてくる…。
 俺自身…一つの苦しみから
 解放された…そんな気分に
 気持ちになっていく…。

 華那恵の笑顔がこんなにも
 嬉しいなんて…少しずつ…
 少しずつでいいんだ…
 昔のように俺の前で
 笑顔でいて欲しい…
 幼なじみの翔じゃなく…
 今の俺自身を見て………)  

 。
 。
 。

次の日の昼休み。
翔はいつものように屋上に来ていた。

「よかった。屋上、誰もいないよ。
 グランドは球技を楽しんでる生徒が
 いるけど、さすがにここまでは
 誰もこないか…」

  サワッ…

(春の風………か)

「っしょっと」

  ごろん…

翔は横になり空を見上げた。

(どこまでも続く、透きとおるような青空。
 いつも思うけど…沖縄の海を思い出す…

 確かあのころ、華那恵の事を想って
 曲を書いたっけ。たしかこんな感じの―)

 『誰よりも大好きな人は
  いつも心の中にいる
  近くにいたはずなのに
  遠くに感じてしまう

  いつまでもその笑顔が見たくて
  あなたの名を呟いてみた

  記憶の中のあなたのその笑顔は
  いつも寂しそうで

  今でも寂しい思いを
  させていることに気づく
  胸の中に広がる不安な想い

  いつかあなたを胸の中で本当の
  笑顔にさせてみたい
  いつもそんな夢を見ている………』


(――なに歌ってんだ、俺)

「お上手ですねぇ」

 ガバッ

「ふっ、史絵ちゃん!?」

突然声を駆けられ、慌てて起き上がると
そこには史絵が微笑みながら立っていた。

「い……いつから聴いてたの?」

「はじめからですわ。
 翔くんが横になるときから、
 近くにいましたもの。

 声をかけようとも思ったのですけど、
 すぐに歌い始めてしまわれまして」

「聴いちゃったんだ……」

「はい。翔くんのお声って綺麗ですね。
 わたし、聴き入ってしまいましたわ」

「そ、そう? ははは……」

翔は自分の頬の筋肉がピクピク
しているのを感じていた。

「あの……ごめんなさい。
 もしかして、気を悪くされました?」

「いや、全然そんなことないよ」

「でも……」

「だからそんなことないって。
 そりゃあ多少びっくりしたけど、
 こんなところで歌ってた
 俺が悪いんだから」

「………………」

翔がフォローしても、史絵は全然
変わらず落ち込んでいた。

(まいったな――よし)

 ぽむぽむ…

「!?」

翔は思わず史絵の頭を優しく叩いた。
突然頭を触られ驚く史絵。
翔は顔を上げた史絵に微笑み
ながら言った。

「そんな顔しないでよ。
 ホント、怒ってないからさ。
 史絵ちゃんが謝ることはない」

「本当、ですか?」

「ホントホント。
 全然怒ってないから」

「そうですか? 安心しました」

「ところで史絵ちゃんは屋上に
 何しに来たの?」

「それは、翔くんにお礼を
 言いたくて…」

「えっ?」

「華那恵ちゃんの事、
 ありがとうございました。」

「史絵…ちゃん」

史絵は翔に深々と頭を下げて
お礼を言ってきた。

「昨日、屋上(ここ)で、華那恵ちゃんと
 蓉子ちゃんと翔くんと4人で会って
 お話しできて、とても嬉しかったんです。
 蓉子ちゃんもお話ししながら泣き出して、
 華那恵ちゃんは照れくささそうに
 してましたけど、瞳に涙が溜まって
 ましたし、私も半分泣いてました。」

「蓉子なんかマジ泣きしてたからな?
 わんわん泣かれた時はどうしようかと
 思ったもんな。史絵ちゃんも泣きながら
 慰めてたし、華那恵ちゃんも後半泣いて
 いたよね?」

「そうですね。翔くんが居てくれたので、
 みんな安心して泣けました。
 私もそうですけど、蓉子ちゃんも
 すっごく感謝してましたよ?
 もちろん華那恵ちゃんも感謝してます。
 本当にありがとうございました」

もう一度深々と頭を下げる史絵に
翔は少し恥ずかしそうに自分の
頬を掻いていた。

真面目な史絵の態度に照れた翔は
話題を変えるために違う
話題を切り出した。

「ああ。そういえば図書委員の
 ほうはどう? いそがしい?」

「は、はい。そうですね。
 来週には新しい本の入荷もあり
 ますから……忙しくなりそうです」

「へえ、大変だね」

「ですけど、楽しいんですよ。
 知らない本に巡りあえますから」

「ふ~ん、そういうもんなの?」

「はい」

嬉しそうに笑顔で答える史絵。
翔は安心したように会話を続ける。

(本の整理か……
 もしタイミングが合えば
 手伝ってもいいんだけど)

「きゃっ」

風が吹き、史絵のスカートが
わずかに揺れた。

「もう。いたずらな風なんだから」

頬をふくらませる史絵の顔は、
なんだかとても可愛いらしい
と思う翔であった。




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