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第二部第二章〈2学期編〉act.40
雪乃-YUKINO-3-Ⅲ
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「ゴメンゴメン。遅くなって……」
しばらくして、店長がバックヤードに
戻ってきた。
すでに体を離していた二人は
真面目な顔で店長を見た。
「結論から言うと…申し訳ないが……
今日のライブは中止にしたよ」
「えっ?」
店長は雪乃の顔を見ながら言ってきた。
驚く雪乃に店長は笑いながら話を続ける。
「長谷川さんは気にしなくていいよ?
ライブを中止したのは、
お客さん達…まあ例のカメラマン達の
反発にあって僕が勝手に言っちゃった
だけだから。
それと、長谷川さんを撮っていた
お客さん達には、厳重に注意してから
カメラを取り上げて保存データを全部
消去させてもらったから…。
ついでに他のお客さんのスマホや携帯
の写真データを見せてもらって、
その場で消去してもらったよ。
そのおかげでかなり遅くなったんだけど…。
次回のライブからはカメラの持ち込みや
ライブ中にスマホや携帯を取り出す行為
の禁止と準備中のホールの入場は禁止に
させてもらう事もしっかりと伝えさせて
もらったし…今後のライブ中はスタッフ
に監視させようと思うから
それでいいかな?」
「店長…。それじゃ…他のスタッフの方に
ご迷惑じゃ…」
心配そうに店長に聞き返す雪乃であった。
店長はニコニコと笑いながら言ってきた。
「この『AQUA』のアイドルの
長谷川さんを守るためならどうって事
ないさ。
高村君もゴメンね?
わざわざ来てもらったのに
ライブ中止にしちゃって…」
「いえ。俺は別に…気にしないで下さい」
翔に向かって軽く頭を下げる店長に
翔も軽く頭を下げて答えた。
その翔の隣で『アイドルって…』と
呟きながら紅くなっている雪乃であった。
「長谷川さん。今日はこのまま上がって
いいから…。あのお客さん達が
待ち伏せているかも知れないから…
高村君に送ってもらいなさい」
「は、はい」
店長はそう言ってホールの方に出て
行こうとする。
雪乃は慌てて店長を呼び止めてお礼を
言った。
「店長。
今日は御迷惑をお掛けして
申し訳ございませんでした」
頭を下げて謝る雪乃に併せるように翔も
姿勢を正して頭を下げた。
店長は『いいからいいから』と言いながら
バックヤードを出て行った。
・
・
・
「まさか…本当に待ち伏せされてるとは
思いませんでした…」
雪乃は翔の手を握りしめ少し怯えるような
表情を見せて言ってきた。
翔の顔を見上げる雪乃の瞳には
涙が浮かんでいた。
翔は雪乃の揺るえる手を抑えるように
ギュッと力強く握り返した。
「雪乃…。大丈夫だから…
俺が側にいるから…」
優しく微笑んで雪乃の顔を
見ながら答える翔であった。
「…しょう…さん…」
雪乃は翔の名前を呟きながら
翔の腕に頬を寄せてくる。
二人は寄り添うように
夜の道を歩いていた。
・
・
・
雪乃は店長の好意でバイトの時間を早く
切り上げる事になった。
店舗裏にある『AQUA』の従業員用
出入り口から出て行こうとする雪乃を
翔は念のため制止してから自分が先に
扉を開けて出て行く。
薄暗い路地裏を人の気配を気にしながら
見回る翔は物陰に隠れてカメラを構える
2、3人の男の姿を見つける。
翔が怒声を上げるように声を掛けると
男達は慌てながらその場から
逃げ出していった。
翔は『マジかよ…』と呆れるように
呟いてからもう一度周りを見渡た。
人の気配が無くなったのを確認してから
扉の内側に待たせている雪乃に声を
掛けて急いでその場を後にしたので
あった。
「雪乃…。
ちょっと俺の部屋に寄って行こう…」
「えっ?」
手を繋ぎながら雪乃の自宅に向かって
行く途中、翔は雪乃を誘うように
言ってきた。
翔の突然の誘いに驚く雪乃に翔は
体を寄せて、雪乃の耳元で囁くように
伝えた。
「さっきの奴らが…着いてきている…」
「!?」
目を大きく見開き驚く雪乃の体が
ビクッと大きく跳ね上がる。
翔は雪乃の顔を見ながら横目で
後ろの方を確認する。
繁華街を歩く二人の後方10メートル
位の所に二人のカメラを持った男が
物陰に隠れるように後を着けて
来ていた。
翔の視線を追うように後を
確認しようとする雪乃の頭を
抱え込むように抱きしめて
引っ張る翔。
ぐいっ
「きゃっ」
翔に突然引っ張られ、雪乃は小さな
悲鳴を上げて翔の胸に顔を埋めた。
「雪乃。気付かないふりをして…」
雪乃の耳元で小さな声で伝える翔。
「……はい」
雪乃は翔の腕に抱かれながら
小さく頷いた。
「とにかく…あいつらが諦めるように
俺の部屋に行こう。
雪乃は自分の家に帰るように
振舞っていて…」
「……はい。わかりました…」
耳元で囁くように話してくる翔に
併せるように、雪乃も小さな声で
答えてくる。
「雪乃…晩ご飯どうする?。
家に帰る前に…何か買って
帰ろうか?」
翔は雪乃の体を離し、ニッコリと
微笑みながら少し大きな声で
言ってきた。
「お弁当はイヤかも…。
あたし何か作るから…スーパーに
寄って帰りましょう」
雪乃もそれに併せるように明るい声で
返事をしてくる。
「はは。OK!」
翔は笑いながら雪乃の手を握り締めて
歩き出した。
・
・
・
雪乃は『本当に待ち伏せされてると
思っていなかった』と言いながら
翔の手を握りしめ、寄り添うように
して夜の道を歩いて行く。
翔はそんな雪乃を優しく見守っていた。
「そうだ。ちょっと待ってくれる?」
「えっ? あ、はい」
翔は雪乃に笑いかけながら
自分のポケットからスマホを
取り出す。
「買い物の前に隆二さんと
玲子さんに連絡しておくよ…。
ついでに何か買って行く物も
あるかもしれないし」
スマホを雪乃に見せながら翔は
笑いかけた。
「雪乃を部屋に連れて行くのに
玲子さんに言っておかないと後で
絶対に怒られるから…。
最悪、夕方言った来週の泊りの件
今日になるかも…」
翔が『はぁー」と溜息混じりに言った
言葉に雪乃は大きく頷く。
「…た、たしかに…
泊まるのは明日学校は休みだから
良いですけど…ただ、着替えとか
なんにもないですし…」
「まあ…泊まりはともかく、絶対に
遊びに来いって言われると思うけど…」
そう言いながら翔はスマホの履歴から
隆二の電話番号を探し出し掛け始める。
『おう、翔か? どうした?』
掛けはじめて数コールで隆二の
声が聞こえる。
「ちょっと隆二さんと玲子さんに
用事があって…」
電話の向こうで隆二が玲子を呼ぶ声が
聞こえる。
隆二はスピーカーモードに切り替えて
玲子と同時に話し始めた。
翔は二人に雪乃と一緒に居ることを
告げてから部屋に遊びに行く事を話した。
電話の向こうで玲子が歓喜の
声を上げていた。
さらにスーパーに寄って夕食の材料を
買って行く事を伝えると玲子から
『その必要はないから早く雪乃ちゃんを
連れて来て!晩ご飯は私が作っておく
から!』と強く言われ、翔はその旨を
雪乃に笑いながら伝えた。
「……と言う事で玲子さんが
晩飯用意するって…」
雪乃も笑って頷いて答えた。
翔は二人にすぐに行く事を
伝えて通話を切り、スマホを自分の
ポケットに納めた。
「とりあえず。 急いで行こう」
「はい」
二人は手を繋いだまま、
急ぎ足で翔のマンションへ向かって行った。
・
・
・
がちゃ
「きゃあぁぁぁぁぁ~っ!!雪乃ちゃん!
いらっしゃい~!!」
隆二さん達の扉を開けると奇声を
上げながら玲子が突進してきた。
「!!」
雪乃の前に立って扉を開けた
翔は玲子の突進を寸前でかわした。
「きゃっ!」
そのままの勢いで雪乃に
飛びつく玲子に雪乃はバランスを崩し
倒れそうになった。
「!?」
翔は素早く雪乃の腰に手を
廻し転倒させないように身体を支える。
「ふふふ…雪乃ちゃん。会いたかったよ~」
雪乃に抱きついたまま頬刷りをする
玲子に雪乃は顔を真っ赤にして
言葉を無くしていた。
翔は『ふー』と大きく溜息を吐いて
玄関の方に顔を向けた。
そこには腕を組んでニコニコと
笑って立っている隆二の姿があった。
「雪乃ちゃんお久しぶり。元気だったか?」
「あ、はい。 お久しぶりです」
雪乃は玲子の腕の隙間から真っ赤な顔を
上げて、隆二に返事を返した。
「ははは。
玲子…雪乃ちゃん困っているから…。
早く中に入ってもらえば?」
隆二は律儀に返事を返す雪乃を見て
笑いながら玲子に話しかける。
玲子はそんな隆二の声も気にかけない
様子で雪乃の頬にすりすりと
自分の頬を擦りつけていた。
隆二は翔を見てクイっと顎を振って
合図を送り二人に近づいて行く。
翔は『しかたないなぁ』と小さな声で呟き、
雪乃の腰に手を廻したまま後ろに回りこむ。
隆二が眼で翔に合図を送り阿吽の呼吸で
雪乃と玲子の身体を引き離した。
「きゃっ!」
「あ~ん。雪乃ちゃん~」
雪乃が小さな悲鳴を上げ、玲子が
名残惜しそうに両の手を伸ばす。
翔と隆二、それぞれの腕の中に雪乃と
玲子の身体がすっぽりと納まっていた。
翔は雪乃の顔を見て、微笑みながら
話しかけた。
「雪乃…大丈夫か?」
「しょう…さん。
ありがとう…ございます」
雪乃は涙目になりながら顔を上げて
翔にお礼を言ってきた。
「玲子さんも…相変わらずだなぁ…」
翔は雪乃の頭を優しく撫でて苦笑いを
浮かべて言った。
「ふふふ。でも…玲子さんらしくって…
安心します…」
雪乃は翔の胸に顔を埋めながら返事をした。
「とにかく…中に入ろうか?」
「……はい」
隆二達が部屋の中に入っていったのを
確認し翔が雪乃を誘うように言った。
雪乃は小さく頷き、二人で玄関の中に
入っていった。
・
・
・
「そうか…そういう事で俺の所に
来たんだな?」
「はい。
正直…どうしていいか…わからなくて…」
隆二が自分のマグカップに入ったコーヒー
を飲みながら眉目を吊り上げながら
翔に聞いてきた。
自分用のコーヒーカップをテーブルに
置いてから隆二の顔を見ながら、
困惑した表情でそれに答えていた。
玲子の手料理を食べ終わり玲子と雪乃が
キッチンで片付けをしている間に
翔は隆二に雪乃の事を相談していた。
隆二は急に雪乃を連れて自分を訪ねてきた
翔を気にして『雪乃ちゃんに何かあった
のか?』と自分から聞いてきたのだ。
翔は一瞬戸惑った表情を見せたが隆二に
全てを話したのであった。
「しかし、あの『AQUA』の店長も
思い切ったことをやってくれたな…。
あの手の奴らは追い詰められると
なにをしでかすかわからないからな?」
隆二はそう言いながら立ち上がり
リビングの窓に向かって行く。
その窓のカーテンを少し開けてから、
マンションの正面玄関をそっと覗くように
見下ろした。
「よっぽど…お前達の事が気になるんだな?
まだ隠れて見張っているよ…」
隆二は『ハッ』と大きく息を吐きながら
不機嫌そうに言ってきた。
「えっ?」
隆二に言われ、慌てて立ち上がり自分も
窓から外の様子を確認する翔であった。
外を確認した翔は、『チッ』と舌打をして
隆二の顔を見る。
隆二は腕を組みながら翔の顔を黙って
見ていた。
「翔。もっと俺を頼れよ?」
「えっ?」
「お前の前にいる男はこの街じゃ
ちょっとは顔が利く男だぜ?
遠慮なく頼って来い!」
隆二は真剣な顔で翔に言ってきた。
「隆二…さん」
翔は驚いたように隆二の顔を見つめた。
そして姿勢を正して隆二に頭を下げた。
「隆二さん。雪乃の事を守ってください!」
頭を下げながらハッキリと告げる翔に
隆二は嬉しそうに笑いながら答えてきた。
「ははは。わかった。雪乃ちゃんの事は
何とかするよ。 安心して良いから…。
とにかくそこに座っていろ!」
そう言って隆二はソファーを指差し
スマホを取り出して電話を掛け始めた。
翔は言われたとおりにソファーに腰を
降ろした。
何も知らない雪乃と玲子の楽しそうに
はしゃいでいる声がキッチンから
聞こえていた。
・
・
・
しばらくして、店長がバックヤードに
戻ってきた。
すでに体を離していた二人は
真面目な顔で店長を見た。
「結論から言うと…申し訳ないが……
今日のライブは中止にしたよ」
「えっ?」
店長は雪乃の顔を見ながら言ってきた。
驚く雪乃に店長は笑いながら話を続ける。
「長谷川さんは気にしなくていいよ?
ライブを中止したのは、
お客さん達…まあ例のカメラマン達の
反発にあって僕が勝手に言っちゃった
だけだから。
それと、長谷川さんを撮っていた
お客さん達には、厳重に注意してから
カメラを取り上げて保存データを全部
消去させてもらったから…。
ついでに他のお客さんのスマホや携帯
の写真データを見せてもらって、
その場で消去してもらったよ。
そのおかげでかなり遅くなったんだけど…。
次回のライブからはカメラの持ち込みや
ライブ中にスマホや携帯を取り出す行為
の禁止と準備中のホールの入場は禁止に
させてもらう事もしっかりと伝えさせて
もらったし…今後のライブ中はスタッフ
に監視させようと思うから
それでいいかな?」
「店長…。それじゃ…他のスタッフの方に
ご迷惑じゃ…」
心配そうに店長に聞き返す雪乃であった。
店長はニコニコと笑いながら言ってきた。
「この『AQUA』のアイドルの
長谷川さんを守るためならどうって事
ないさ。
高村君もゴメンね?
わざわざ来てもらったのに
ライブ中止にしちゃって…」
「いえ。俺は別に…気にしないで下さい」
翔に向かって軽く頭を下げる店長に
翔も軽く頭を下げて答えた。
その翔の隣で『アイドルって…』と
呟きながら紅くなっている雪乃であった。
「長谷川さん。今日はこのまま上がって
いいから…。あのお客さん達が
待ち伏せているかも知れないから…
高村君に送ってもらいなさい」
「は、はい」
店長はそう言ってホールの方に出て
行こうとする。
雪乃は慌てて店長を呼び止めてお礼を
言った。
「店長。
今日は御迷惑をお掛けして
申し訳ございませんでした」
頭を下げて謝る雪乃に併せるように翔も
姿勢を正して頭を下げた。
店長は『いいからいいから』と言いながら
バックヤードを出て行った。
・
・
・
「まさか…本当に待ち伏せされてるとは
思いませんでした…」
雪乃は翔の手を握りしめ少し怯えるような
表情を見せて言ってきた。
翔の顔を見上げる雪乃の瞳には
涙が浮かんでいた。
翔は雪乃の揺るえる手を抑えるように
ギュッと力強く握り返した。
「雪乃…。大丈夫だから…
俺が側にいるから…」
優しく微笑んで雪乃の顔を
見ながら答える翔であった。
「…しょう…さん…」
雪乃は翔の名前を呟きながら
翔の腕に頬を寄せてくる。
二人は寄り添うように
夜の道を歩いていた。
・
・
・
雪乃は店長の好意でバイトの時間を早く
切り上げる事になった。
店舗裏にある『AQUA』の従業員用
出入り口から出て行こうとする雪乃を
翔は念のため制止してから自分が先に
扉を開けて出て行く。
薄暗い路地裏を人の気配を気にしながら
見回る翔は物陰に隠れてカメラを構える
2、3人の男の姿を見つける。
翔が怒声を上げるように声を掛けると
男達は慌てながらその場から
逃げ出していった。
翔は『マジかよ…』と呆れるように
呟いてからもう一度周りを見渡た。
人の気配が無くなったのを確認してから
扉の内側に待たせている雪乃に声を
掛けて急いでその場を後にしたので
あった。
「雪乃…。
ちょっと俺の部屋に寄って行こう…」
「えっ?」
手を繋ぎながら雪乃の自宅に向かって
行く途中、翔は雪乃を誘うように
言ってきた。
翔の突然の誘いに驚く雪乃に翔は
体を寄せて、雪乃の耳元で囁くように
伝えた。
「さっきの奴らが…着いてきている…」
「!?」
目を大きく見開き驚く雪乃の体が
ビクッと大きく跳ね上がる。
翔は雪乃の顔を見ながら横目で
後ろの方を確認する。
繁華街を歩く二人の後方10メートル
位の所に二人のカメラを持った男が
物陰に隠れるように後を着けて
来ていた。
翔の視線を追うように後を
確認しようとする雪乃の頭を
抱え込むように抱きしめて
引っ張る翔。
ぐいっ
「きゃっ」
翔に突然引っ張られ、雪乃は小さな
悲鳴を上げて翔の胸に顔を埋めた。
「雪乃。気付かないふりをして…」
雪乃の耳元で小さな声で伝える翔。
「……はい」
雪乃は翔の腕に抱かれながら
小さく頷いた。
「とにかく…あいつらが諦めるように
俺の部屋に行こう。
雪乃は自分の家に帰るように
振舞っていて…」
「……はい。わかりました…」
耳元で囁くように話してくる翔に
併せるように、雪乃も小さな声で
答えてくる。
「雪乃…晩ご飯どうする?。
家に帰る前に…何か買って
帰ろうか?」
翔は雪乃の体を離し、ニッコリと
微笑みながら少し大きな声で
言ってきた。
「お弁当はイヤかも…。
あたし何か作るから…スーパーに
寄って帰りましょう」
雪乃もそれに併せるように明るい声で
返事をしてくる。
「はは。OK!」
翔は笑いながら雪乃の手を握り締めて
歩き出した。
・
・
・
雪乃は『本当に待ち伏せされてると
思っていなかった』と言いながら
翔の手を握りしめ、寄り添うように
して夜の道を歩いて行く。
翔はそんな雪乃を優しく見守っていた。
「そうだ。ちょっと待ってくれる?」
「えっ? あ、はい」
翔は雪乃に笑いかけながら
自分のポケットからスマホを
取り出す。
「買い物の前に隆二さんと
玲子さんに連絡しておくよ…。
ついでに何か買って行く物も
あるかもしれないし」
スマホを雪乃に見せながら翔は
笑いかけた。
「雪乃を部屋に連れて行くのに
玲子さんに言っておかないと後で
絶対に怒られるから…。
最悪、夕方言った来週の泊りの件
今日になるかも…」
翔が『はぁー」と溜息混じりに言った
言葉に雪乃は大きく頷く。
「…た、たしかに…
泊まるのは明日学校は休みだから
良いですけど…ただ、着替えとか
なんにもないですし…」
「まあ…泊まりはともかく、絶対に
遊びに来いって言われると思うけど…」
そう言いながら翔はスマホの履歴から
隆二の電話番号を探し出し掛け始める。
『おう、翔か? どうした?』
掛けはじめて数コールで隆二の
声が聞こえる。
「ちょっと隆二さんと玲子さんに
用事があって…」
電話の向こうで隆二が玲子を呼ぶ声が
聞こえる。
隆二はスピーカーモードに切り替えて
玲子と同時に話し始めた。
翔は二人に雪乃と一緒に居ることを
告げてから部屋に遊びに行く事を話した。
電話の向こうで玲子が歓喜の
声を上げていた。
さらにスーパーに寄って夕食の材料を
買って行く事を伝えると玲子から
『その必要はないから早く雪乃ちゃんを
連れて来て!晩ご飯は私が作っておく
から!』と強く言われ、翔はその旨を
雪乃に笑いながら伝えた。
「……と言う事で玲子さんが
晩飯用意するって…」
雪乃も笑って頷いて答えた。
翔は二人にすぐに行く事を
伝えて通話を切り、スマホを自分の
ポケットに納めた。
「とりあえず。 急いで行こう」
「はい」
二人は手を繋いだまま、
急ぎ足で翔のマンションへ向かって行った。
・
・
・
がちゃ
「きゃあぁぁぁぁぁ~っ!!雪乃ちゃん!
いらっしゃい~!!」
隆二さん達の扉を開けると奇声を
上げながら玲子が突進してきた。
「!!」
雪乃の前に立って扉を開けた
翔は玲子の突進を寸前でかわした。
「きゃっ!」
そのままの勢いで雪乃に
飛びつく玲子に雪乃はバランスを崩し
倒れそうになった。
「!?」
翔は素早く雪乃の腰に手を
廻し転倒させないように身体を支える。
「ふふふ…雪乃ちゃん。会いたかったよ~」
雪乃に抱きついたまま頬刷りをする
玲子に雪乃は顔を真っ赤にして
言葉を無くしていた。
翔は『ふー』と大きく溜息を吐いて
玄関の方に顔を向けた。
そこには腕を組んでニコニコと
笑って立っている隆二の姿があった。
「雪乃ちゃんお久しぶり。元気だったか?」
「あ、はい。 お久しぶりです」
雪乃は玲子の腕の隙間から真っ赤な顔を
上げて、隆二に返事を返した。
「ははは。
玲子…雪乃ちゃん困っているから…。
早く中に入ってもらえば?」
隆二は律儀に返事を返す雪乃を見て
笑いながら玲子に話しかける。
玲子はそんな隆二の声も気にかけない
様子で雪乃の頬にすりすりと
自分の頬を擦りつけていた。
隆二は翔を見てクイっと顎を振って
合図を送り二人に近づいて行く。
翔は『しかたないなぁ』と小さな声で呟き、
雪乃の腰に手を廻したまま後ろに回りこむ。
隆二が眼で翔に合図を送り阿吽の呼吸で
雪乃と玲子の身体を引き離した。
「きゃっ!」
「あ~ん。雪乃ちゃん~」
雪乃が小さな悲鳴を上げ、玲子が
名残惜しそうに両の手を伸ばす。
翔と隆二、それぞれの腕の中に雪乃と
玲子の身体がすっぽりと納まっていた。
翔は雪乃の顔を見て、微笑みながら
話しかけた。
「雪乃…大丈夫か?」
「しょう…さん。
ありがとう…ございます」
雪乃は涙目になりながら顔を上げて
翔にお礼を言ってきた。
「玲子さんも…相変わらずだなぁ…」
翔は雪乃の頭を優しく撫でて苦笑いを
浮かべて言った。
「ふふふ。でも…玲子さんらしくって…
安心します…」
雪乃は翔の胸に顔を埋めながら返事をした。
「とにかく…中に入ろうか?」
「……はい」
隆二達が部屋の中に入っていったのを
確認し翔が雪乃を誘うように言った。
雪乃は小さく頷き、二人で玄関の中に
入っていった。
・
・
・
「そうか…そういう事で俺の所に
来たんだな?」
「はい。
正直…どうしていいか…わからなくて…」
隆二が自分のマグカップに入ったコーヒー
を飲みながら眉目を吊り上げながら
翔に聞いてきた。
自分用のコーヒーカップをテーブルに
置いてから隆二の顔を見ながら、
困惑した表情でそれに答えていた。
玲子の手料理を食べ終わり玲子と雪乃が
キッチンで片付けをしている間に
翔は隆二に雪乃の事を相談していた。
隆二は急に雪乃を連れて自分を訪ねてきた
翔を気にして『雪乃ちゃんに何かあった
のか?』と自分から聞いてきたのだ。
翔は一瞬戸惑った表情を見せたが隆二に
全てを話したのであった。
「しかし、あの『AQUA』の店長も
思い切ったことをやってくれたな…。
あの手の奴らは追い詰められると
なにをしでかすかわからないからな?」
隆二はそう言いながら立ち上がり
リビングの窓に向かって行く。
その窓のカーテンを少し開けてから、
マンションの正面玄関をそっと覗くように
見下ろした。
「よっぽど…お前達の事が気になるんだな?
まだ隠れて見張っているよ…」
隆二は『ハッ』と大きく息を吐きながら
不機嫌そうに言ってきた。
「えっ?」
隆二に言われ、慌てて立ち上がり自分も
窓から外の様子を確認する翔であった。
外を確認した翔は、『チッ』と舌打をして
隆二の顔を見る。
隆二は腕を組みながら翔の顔を黙って
見ていた。
「翔。もっと俺を頼れよ?」
「えっ?」
「お前の前にいる男はこの街じゃ
ちょっとは顔が利く男だぜ?
遠慮なく頼って来い!」
隆二は真剣な顔で翔に言ってきた。
「隆二…さん」
翔は驚いたように隆二の顔を見つめた。
そして姿勢を正して隆二に頭を下げた。
「隆二さん。雪乃の事を守ってください!」
頭を下げながらハッキリと告げる翔に
隆二は嬉しそうに笑いながら答えてきた。
「ははは。わかった。雪乃ちゃんの事は
何とかするよ。 安心して良いから…。
とにかくそこに座っていろ!」
そう言って隆二はソファーを指差し
スマホを取り出して電話を掛け始めた。
翔は言われたとおりにソファーに腰を
降ろした。
何も知らない雪乃と玲子の楽しそうに
はしゃいでいる声がキッチンから
聞こえていた。
・
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