19 / 57
18話 現状と現場
しおりを挟む
手駒は揃ってきたここで、ちょっと現状の再確認でもしましょうか。
クロイツェル・アン・ラスアィン
私のお見合い相手に来た没落貴族。
ちょっと見目がいいだけの優男なんだけど、私のプロジェクト“かぐや姫”の目的を的確に見抜いた知恵者だ。ちょっとキザでいけ好かないけど。
ダウンゼン・ドーン
下町で反乱計画をもくろむガテン系アニキ。
貴族に反発を持っているようで、その統率力から人望も厚い。あと胸板も。うぅん、あの胸板は反則よ。
ただその裏にガーヒルが暗躍しているようで、その繋がりは重要な位置づけにある。
ソフィア・アノマニスム(という姓だと後で知った)。
ガーヒルの婚約者。私から結婚相手を奪った相手なんだけど……なんというか被害者感が凄い。けど盲目的な恋に生きる乙女という感じで、なんとも哀れ。あんな男に惚れなさんな。
最初はこの子も、あるいは主犯格として私殺しに関わっていたと思うけど、たぶんないわね。これで実は、みたいな展開はミステリーでありそうだけど、それだったらアカデミー賞ものの演技力よ。
そして今パパ。
正直、状況は苦しいらしい。どれくらい厳しいか、それはさすがに家に情報は持ち帰らないから不明だけど、王宮に出仕して帰宅する今パパの憔悴と苛立ちを見れば大体のことは分かる。
ふむ。ここら辺の情報がもっと入るようにしたいけど、なかなか難しいわね。今パパもさすがにそこはわきまえてるだろうし、どこか王宮にいる人間との繋がりが必要かも。
とりあえず自分が使えそうな駒はそんな感じ。アーニィもいるけど、これは手駒というより護衛でしか使えないからね。
そして敵。
ガーヒル……なんだっけ? ま、いいわ。
とにかく私を殺そうとした……いえ、殺した相手。敵。
だから情けは要らない。前パパも言ってた。敵対するなら徹底的に潰しなさい、と。だから潰す。
かといって目には目を歯には歯を、みたいなことはしないわよ。別にあいつを殺しても一銭の特にもならないわけだし。だからせいぜい無様に踊って絶望にもだえ苦しみ破産して世間的に破滅するくらいのことしか願ってないわ。本当よ?
そのガーヒルだけど、あのパーティ以降の動きが鈍い。いえ、ダウンゼンらを使って反乱を起こさせようとかしてるらしいけど、表立った動きはない。
それがどこか不気味。考えすぎかもだけど。
それより1つ疑問として残るのが、あの男がなぜ彼女を結婚相手に選んだのかということ。
今パパと私を切り捨てた。そこは分かる。
だって私たちを断罪することで権力を握る大義名分、正統性を得た。さらに私たちを見限った貴族どもを吸収して一大勢力になり上がることもできた。
そこまでは理解できる。
けどなんでソフィーを?
正直言って、ソフィーの家は没落一歩手前。あのクロイツェルと同じで、貴族の中でも末の末というもので、あの男にとってはなんらメリットがない。
こういう時は、大貴族の令嬢と婚姻して更なる権力基盤の拡充を目指すのが普通のはず。
なのになんでソフィー?
あるいは本気で彼女に惚れた。
――なんてことは1ミリたりとも思ってない。
だってあのガーヒルとかいう男。いや、正直あのパーティで会って直接話をしたわけじゃないから全然知らないけど。
それでもそんな惚れた女性に一途みたいなことはまったく信じられない。
なんでって?
そりゃ当然。そんな人間が、自分のために婚約破棄させて、都合が悪いからと暗殺させようとする? しないでしょ。
そんなのがいたら、とんだサイコパスよ。
だからあの男がソフィーを選んだのは何か理由があってのこと。
そしてそれをソフィー側は望んだかどうかはわからないということ。
あの子。ぽーっとしてるから、簡単に悪い男に引っかかりそうだもの。
ま、そこらへんはおいおいでいいわ。問題はソフィーのこと以外にいっぱいあるし。
とにかく今は宮中の動きを掴むこと。
相手の動きが見えないなら、それを見えるようにすればいい。それだけのこと。
けどどうやって宮中に潜り込もうか。
そう考えていた時だ。
「騒がしいわね」
家の外で何やら言い争いをしている声が聞こえる。
ここは一応、貴族たちのいる風流で雅なエリア。喧騒なんてものは彼らの気質に合わないし、なんとも不自然な感じもする。
だからその時私は知らなかった。
見えない敵の動き。それが実は始まっていたのだと。
クロイツェル・アン・ラスアィン
私のお見合い相手に来た没落貴族。
ちょっと見目がいいだけの優男なんだけど、私のプロジェクト“かぐや姫”の目的を的確に見抜いた知恵者だ。ちょっとキザでいけ好かないけど。
ダウンゼン・ドーン
下町で反乱計画をもくろむガテン系アニキ。
貴族に反発を持っているようで、その統率力から人望も厚い。あと胸板も。うぅん、あの胸板は反則よ。
ただその裏にガーヒルが暗躍しているようで、その繋がりは重要な位置づけにある。
ソフィア・アノマニスム(という姓だと後で知った)。
ガーヒルの婚約者。私から結婚相手を奪った相手なんだけど……なんというか被害者感が凄い。けど盲目的な恋に生きる乙女という感じで、なんとも哀れ。あんな男に惚れなさんな。
最初はこの子も、あるいは主犯格として私殺しに関わっていたと思うけど、たぶんないわね。これで実は、みたいな展開はミステリーでありそうだけど、それだったらアカデミー賞ものの演技力よ。
そして今パパ。
正直、状況は苦しいらしい。どれくらい厳しいか、それはさすがに家に情報は持ち帰らないから不明だけど、王宮に出仕して帰宅する今パパの憔悴と苛立ちを見れば大体のことは分かる。
ふむ。ここら辺の情報がもっと入るようにしたいけど、なかなか難しいわね。今パパもさすがにそこはわきまえてるだろうし、どこか王宮にいる人間との繋がりが必要かも。
とりあえず自分が使えそうな駒はそんな感じ。アーニィもいるけど、これは手駒というより護衛でしか使えないからね。
そして敵。
ガーヒル……なんだっけ? ま、いいわ。
とにかく私を殺そうとした……いえ、殺した相手。敵。
だから情けは要らない。前パパも言ってた。敵対するなら徹底的に潰しなさい、と。だから潰す。
かといって目には目を歯には歯を、みたいなことはしないわよ。別にあいつを殺しても一銭の特にもならないわけだし。だからせいぜい無様に踊って絶望にもだえ苦しみ破産して世間的に破滅するくらいのことしか願ってないわ。本当よ?
そのガーヒルだけど、あのパーティ以降の動きが鈍い。いえ、ダウンゼンらを使って反乱を起こさせようとかしてるらしいけど、表立った動きはない。
それがどこか不気味。考えすぎかもだけど。
それより1つ疑問として残るのが、あの男がなぜ彼女を結婚相手に選んだのかということ。
今パパと私を切り捨てた。そこは分かる。
だって私たちを断罪することで権力を握る大義名分、正統性を得た。さらに私たちを見限った貴族どもを吸収して一大勢力になり上がることもできた。
そこまでは理解できる。
けどなんでソフィーを?
正直言って、ソフィーの家は没落一歩手前。あのクロイツェルと同じで、貴族の中でも末の末というもので、あの男にとってはなんらメリットがない。
こういう時は、大貴族の令嬢と婚姻して更なる権力基盤の拡充を目指すのが普通のはず。
なのになんでソフィー?
あるいは本気で彼女に惚れた。
――なんてことは1ミリたりとも思ってない。
だってあのガーヒルとかいう男。いや、正直あのパーティで会って直接話をしたわけじゃないから全然知らないけど。
それでもそんな惚れた女性に一途みたいなことはまったく信じられない。
なんでって?
そりゃ当然。そんな人間が、自分のために婚約破棄させて、都合が悪いからと暗殺させようとする? しないでしょ。
そんなのがいたら、とんだサイコパスよ。
だからあの男がソフィーを選んだのは何か理由があってのこと。
そしてそれをソフィー側は望んだかどうかはわからないということ。
あの子。ぽーっとしてるから、簡単に悪い男に引っかかりそうだもの。
ま、そこらへんはおいおいでいいわ。問題はソフィーのこと以外にいっぱいあるし。
とにかく今は宮中の動きを掴むこと。
相手の動きが見えないなら、それを見えるようにすればいい。それだけのこと。
けどどうやって宮中に潜り込もうか。
そう考えていた時だ。
「騒がしいわね」
家の外で何やら言い争いをしている声が聞こえる。
ここは一応、貴族たちのいる風流で雅なエリア。喧騒なんてものは彼らの気質に合わないし、なんとも不自然な感じもする。
だからその時私は知らなかった。
見えない敵の動き。それが実は始まっていたのだと。
2
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる