政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成

文字の大きさ
65 / 68

63話 最後の勝負

しおりを挟む
 敵が逃げるように去っていって3日後。
 私は王都に凱旋した。

 戦後処理とかは全部クロイツェルにぶん投げた。だって私、何やればいいか知らないもの。

 だからダウンゼンらの部下の100人くらいと共に王都へ戻ると、それはもう大歓迎だったわ。
 すでに馬を飛ばして報告は入っていたから、上町かみまち下町しもまちも関係なく、皆が笑顔で迎えてくれた。徹夜で作ったのか、のぼりがそこかしこにはためき、紙吹雪が舞って楽隊がパレードのように演奏をかき鳴らす。

 まるでお祭りだったけど、その当事者である私を一目見ようと人々が駆け寄ってくるのにはさすがに閉口したわ。
 オーバーツーリズムの京都でもこんなに混んでないわってくらい人がいっぱいいて、こちらに押し寄せようとしてくるんだからもう。
 選挙事務所の近所の街の人たちにも挨拶を受けたけど、とてもじゃないけどゆっくり話している暇もないから手を振るだけで終わったのがちょっと心残り。彼らも色々と役に――いえ、とてもよくしてくれましたから。少しはねぎらって――ご挨拶してあげたかったけど残念。

 というわけで上を下への大騒ぎの王都入口周辺のことはもう割愛して本題よ。
 さすがに貴族様が暮らす中央区では大丈夫だろうと思ったけど、そこも恥も外聞も投げ捨てての大騒ぎ。よっぽど怖かったのね。ほんと、役立たずは役立たずなりに密やかに生きててほしいのに。

 というわけでさっさと中央区を通り、王宮へと向かう。

 そこで国王へと戦勝報告をするわけだけど。
 さてさて、これが最後と思うと少し胸が高鳴るわね。

 何がって?
 この物語――じゃなく、もちろんあいつ。ガーヒルとの決着をつける時ってこと。

「おお! 戻ったか、エリーゼ・カシュトルゼ!」

 国王の歓待を受けながらも、私は周囲に気を配る。
 さすがにここに詰めている上級の貴族様たちは、外のやんちゃな連中とは一線を画している。

 誰も陽気にはしゃいだりはせず、静かに見守っている。

 そう。私とガーヒルの最終決戦を。

「さすがカシュトルゼの娘よ。まさか圧倒的不利な状況をひっくり返すとは!」

「いえいえ。わたくしなど。ただお飾りのようにいただけです。何もしておりませんわ」

 返しは謙虚に。
 うん。だって本当に何もしてないからね。表だっては。

「いや、お主のげきが皆を震わせたというぞ! この功は比類なきものぞ。ふむ、これは褒美を考えなければな。エリーゼよ。何を望むか?」

「お待ちを、陛下。敵が退いたというのは本当でしょうか。何もせず、被害もなく退いたというのはどうも……」

「ガーヒル。嫉妬とはみっともないぞ」

「いえ決してそのようなことは……」

 慌てるように首を振るガーヒルを見てため息が出る。

「安心ください。ガーヒル様。私は選挙で負けた身。それなのに筆頭大臣の椅子を望めば、それこそこの選挙を認めた陛下の顔に泥を塗ることになる。そのようなことのために私は前線に立ったのではありません。私はただ、この国を守りたいがために立ったのですわ」

「う、うむ。そうか」

 困惑しながらも少し胸をなでおろした様子のガーヒル。

 器の小さい男。
 はぁ。やっぱりいくら知能が回るようになったとて、元からの器の小ささは変わらないってことね。

 じゃあとどめを刺してくれましょう。

「陛下。では望むものが1つあります」

「うむ。申せ」

上奏じょうそうをさせていただきたく」

「なに? それだけでいいのか?」

「ええ。陛下にお伝えしたいことがあり。ただ、なにぶん難しいことゆえはっきりとしたことがつかめるまで黙っておりましたが、このような事態となってはお告げしなければならないと思い、この機会に上奏させていただきたいと考えたのです」

「う、うむ。そうか。別にお主ならばこのような褒美ということはなく、いつでも朝議での発言を許すのだが」

「いえ、今、この時、この場所でさせていただくことが私への褒美となりますので」

「うむ。では申すがよい」

 許しを得た私は、パンパンと手を打つ。

 それを合図に、広間の扉が開く。そこから入って来たのはダウンゼン。
 いつものやつれた上着姿ではなく、ちょっとやんちゃの過ぎた貴族と言われても怪しまれない程度の身なりをしている。ワルドゥ執事長のお古を借りて髪を整えて薄く化粧をした彼は、その野性的な雰囲気と相まって女性がいれば思わず胸を突かれるほどの美男子となっていた。

 その彼が運んできたのは1つのケース。

 それを私の横に持ってくると、床に置いて鍵を開く。
 そこから吐き出されたのは、ぎっしりと詰まった紙の束。

「エリーゼよ、それはなんだ?」

「お答えしましょう。これは我が国を売った造反者の証拠となります」

「なに? 造反者?」

「ええ。この国を敵に売った最悪の売国奴ですわ」

「エリーゼ!!」

 と、私と陛下の会話に入り込み、議場に響く声を出した者がいる。

 私はこみ上げる笑みを抑えながら、その人物に振り向き言った。

「どうしました、ガーヒル様? なにかこれに用でもあります?」

「い、いや。その手紙はなんだと思ってな」

「おや、手紙? 私はこれを手紙と言った覚えは一言もありませんが? ただの売国奴の証拠と言っただけなのですが? どうしてこの紙の束が手紙だと分かったのでしょう?」

「っ!!」

 あらあら。そんな露骨な引っかけにかからないでくださる?
 本当に、殿方は単純なんだから。

「お父様、こちらの書類を読んでいただけますか?」

「う、うむ……」

 一応、まだ新筆頭大臣は決まっていないので、国王の次に偉いお父様に書類を渡す。
 その様子をガーヒルが殺意をみなぎらせた視線を送ってくるが無視。

 その中を朗々とお父様が文章を読み上げる。
 内容はイチノ国のザーラド将軍との内通を示唆するようなもの。

「以上、貴軍の健闘を祈る。ガーヒル・バイスランウェイより」

 それを読み終えた時。
 終わった。
 その言葉が確かに胸の中に響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

異世界でのんびり暮らしたいけど、なかなか難しいです。

kakuyuki
ファンタジー
交通事故で死んでしまった、三日月 桜(みかづき さくら)は、何故か異世界に行くことになる。 桜は、目立たず生きることを決意したが・・・ 初めての投稿なのでよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...