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第4章 ジャンヌの西進
閑話40 ????
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目覚めると、そこは草原だった。
風に揺れる緑の草が一面に広がる大草原。
遠くでは山が連なり、連峰を成している。
若干肌寒い。
季節的には冬なのだろうか。
寒気を避けるため、羽織っていたマントのようなコートの裾を合わせる。
その下にはロングスカートのドレス。絹製なのか、すごい手触りが良い。
こんな上等なもの着たことないけど、なんだか有名な歌手みたいで少し気分は良かった。
ただ靴は履いていなかった。
草と土を裸足で踏む感覚が気持ち悪い。
「…………ふぅ」
ため息一つ。
やっぱり覚えがない。
こんな寒空の下、文明物の1つもない大草原のど真ん中で、こんな着たこともないドレス姿でいる。
最期の記憶では、まだ暑さのある夏の真っただ中だったというのに。
私は死んだ。
歌が好きで、バンドを結成して、だけどそのせいで無用のいさかいを起こして、そして死んだんだ。
それは覚えている。
そのはずなのにどうしてこんなところにいるのか。
いや、段々思い出してきた。
『はい、というわけでー。新しい人生行ってみよー、やってみよー!』
ついていけない感じのするテンションを持った女性。
自称女神という、どう反応していいのか分からない謎の人物。
彼女は言った。
私は死んだと。
彼女は言った。
新しい世界で生きろと。
彼女は言った。
統一すれば元の世界に戻してあげると。
意味が分からなかった。
死んだのに、何故続きがあるのか。
新しい世界って何なのか。
そもそも、統一って何? って感じ。
それでも私は生きている。
ここに、こうして何もないところで、確かに生きている。
心臓も動いているし、脈もある。
頬をつねれば痛いし、声を出せばいつもの私の歌声が出てくる。
そして何より現実感を如実に表し、何よりも切迫感のある現象が私を襲う。
「お腹減った……」
くぅ、と自分のお腹が鳴るのを久しぶりに聞いた。
死ぬ前は、お腹が減る前に何か食べていたからそんなことほとんどなかったのに。
なんだかそれが猛烈に恥ずかしくなって、誰が聞いてるわけでもないのにお腹を必死におさえたりする。
だが現実は想像よりはるかに過酷だった。
「どうしよう」
お腹が空いた。
それはいい。
当然の生理現象だ。
けど、どこで何を食べればいいの?
この人っ子一人いない、スーパーもコンビニすらもなさそうな田舎の山奥で、一体何を食べて私は生きればいいの?
第一、財布もない、お金もない、カードもない。
何も、持っていない。
そう考えると、涙が出てきた。
なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないの?
なんで私がこんな苦労をしなくちゃいけないの?
なんで私がこんな思いをしなくちゃいけないの?
お腹は空いた。けど足は動かない。
どこに向かっていいか分からないし、やっぱり地面の感触が気持ち悪くて進む気を無くす。
きっとこのまま私は餓死をするんだろう。
いや、この寒空。凍死の方が先かもしれない。
2度目の死。
あれだけ辛い死に方をしたのに、また死ぬの?
もう嫌だよ。
あんな目に遭うんだったら、もう死んだ方がマシ。
死にたくないから、死んだ方がいい。
思考能力もおかしくなってきているみたい。
もう何が現実で何が夢なのかも分からない。
もう誰でもいい。女神でも死神でも何でもいい。
誰か、助けて!
その声にならない悲鳴が聞こえたのか。
世界は私に答えをくれた。
遠く、何か地面を揺るがす音が聞こえる。
右手、広がる草原の中、何か黒いものがうごめいて見えた。
もやもやと動く黒いもの。
それはどこか常軌を逸していて、この世のものとは思えない化け物のようなイメージを感じた。
それが大きくなる。
いや、近づいてくる。
恐怖を覚えるほどの化け物が、こちらに近づいてくる。
そう思ったら、もうダメだった。
逃げよう。
決心する。
けど足が動かない。
どれだけ頭で命令しても、神経が切断されたように私の体はピクリとも動かない。私の体じゃないみたいだ。
ただ響く振動が大きくなり、黒い塊も次第に大きくなり、それに比例して私の中の恐怖も増大していく。
動け。動け。動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!!
逃げろ。逃げろ。逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!!
だが、どれだけ思ってもどうにもならない。
私はその場から1ミリも動けていなかった。
やがて私は腰を抜かしたように、その場にしりもちをつく。
いや、実際腰を抜かしていた。
それは化け物ではなかった。
いや、化け物の方が良かったかもしれない。
迫りくるのは馬の大群。
どれも黒く染まったそれらは、競うように大地を蹴り、こちらに向かって走ってくる。
もちろん馬だけが群れを成して走ってきているわけじゃない。
馬には人間が乗っていた。
しかもその人間は、普通よりも一回りも二回りも大きい。それがなんでかといえば、中世ヨーロッパにあるような鉄製の黒い鎧を着ていたからで。
そんな鎧を来た男(?)たちが馬を走らせている。
そんな光景を見て、ある二文字がありありと頭に浮かぶ。
戦争。
けど、何故?
馬に乗って戦争するなんて、もう何百年も前の話じゃないの?
今って戦車とか戦闘機とかそういうのじゃないの?
もとよりそう言った話には疎い方だ。
だから本当にそれがないとは言い切れないのが弱いところ。
何より、彼らから放たれる圧倒的な死のにおいに、もはやそれを疑うことはなかった。
どのみち、もう全てが遅かった。
馬群との距離はすでに100メートルを切っている。
今から逃げたところで、人間が馬の足に勝てるわけがない。
そうなれば私は殺される。
餓死でもなく、凍死でもなく、剣とか槍で斬られ突き刺されて死ぬ。
それは、とても怖いことで。嫌なことで。できれば逃げ出したかった。
そして、それは来た。
騎馬の大軍は、徐々に速度を落とし、私の5メートルほど前で止まる。
もしかしたらそのままひき殺されるんじゃないかと思ったから、そこは安堵した。
もちろん、この後に突き殺されるとかあるのかもしれないけど。
けど改めて大迫力だ。
数えていないから何頭いるのか分からないけど、馬がこれほど集まった光景を見たことがない。
どれもが鼻息を荒くしている様を見ると、どこかこの世のものではない怪物のようにも思える。
その中から1頭が――違う、馬上の1人が、前に出てきた。
その人物を見て、1つ、安堵したことがある。
その人は、女性だった。
黒に染められたいかつい鎧を着こんでいるとしても、その体つきと兜の下に見える細いラインは明らかに女性のもの。
その女性は兜に手を当てると、そのまま流れるような動作で脱ぎ去った。
そこから現れたのは、溶岩のような赤く流れる長い髪。
そして細い顎と長いまつげ――燃えるような赤い瞳を持つ女性が姿を現した。
女の私から見ても、息を呑むほどの美しさ。
美しいと格好いいが同居した、稀に見る美貌だ。
けど私が驚いている以上に、彼女の方もその切れ長の瞳を大きく見開いてこちらを見ていた。
それは何かを疑うような、信じられない何かを見るような、そんな疑念に満ちた視線。
なんだろう。私、何かしたかな。
聞いてみよう。そう思ったけど、相手の方が早かった。
「あなたは……アヤ・クレインさん?」
え? 知り合い?
まさか。
私は知らない。
そもそも、ここが私の生きていた世界と違う世界なら、そんなところに知り合いはいないわけで。
しかも私はアヤなんて名前じゃない。
ただの他人の空似だろう。
「すみません、人違いです」
「そう、か。いや、失礼。一度だけ会って、その歌声に感銘を受けたのだが」
女性は明らかに落胆したように肩を落とす。
何か悪い事をしたみたいで、こっちも戸惑う。
そうです、って言ってあげた方がよかったのかな。
でもそんな嘘すぐバレるし、それはそれで向こうも困るよね。
だから私は間違った答えを言ったわけではないと納得。
そして相手が危害を加えるつもりがないと分かり、どこか胸のつかえが取れたのか、こちらから話しかけていた。
「あの……すみませんが、何か食べ物を分けてくれませんか。私、いきなりここに放り出されて……食べ物もなくて」
我ながら図々しいと思う。
けどそうでもしないと死んでしまう。
こんな人気のないところで奇跡のように出会った相手。
せめて食べ物だけでももらえれば、何かしようと思う気になるだろう。
歌う元気も出てくるかもしれない。
そんな軽い気持ちで聞いたのだが、相手の反応は私が想定した以上のものだった。
「まさか……プレイヤーか!?」
「え? プレイヤー?」
どういう意味だろう。
スポーツをする人とか、ゲームする人だと思われてるのかな。
けど、その女性の視線は明らかにそういった類のものではないと物語っている。
もっと深刻で、私の今後に何か影響するような。そんなイメージ。
やがて女性は小さく首を振り、背後にいる数十人数百人の人たちに向かって、
「各自、休憩にする。馬の世話を終えた者から休憩に入れ!」
女性が高らかに告げた命令で、彼女の部下らしき人たちが一斉に散った。
はぁ……格好いい人がいるんだな。
なんて場違いなことを思っていると、女性は私の方に馬を進めてきて、そしてひらりと下馬した。
あ、私より背が低いんだ。
そのことがちょっと意外だった。
それでもすらっとした体躯に、意志の強そうな瞳、そして目を引く赤髪はやはり美しさを損なわない。
「私は堂島……いや、堂島だ。エイン帝国軍の元帥をしている。失礼だが、君は……」
「あ、えっと、林檎です。林田林檎です」
「リンゴ…………」
あぁ、やっぱり変だよね。
この名前のせいで、リンリンとかリンゴちゃんとか呼ばれた。嫌だった。実はあんまりリンゴ自体が好きじゃない。あの食感がどうもね。
「あぁ、いや。その、別に変だとか思ったわけではないんだ」
私の反応に戸惑ったのか女性――堂島さんは急にうろたえだした。
これまで背筋がピンと伸びて、凛々しく通る声をした格好いいと思ってた人が、急におろおろしだすのがなんだか新鮮で。
「その……そうだな。理由を喋らなければ君には失礼だろうしな。その、名前に反応したのは私の名前にも関連するからなんだ。私は、その……堂島、美柑という」
「堂島、美柑」
声に出して言う。
堂島美柑。
美柑ちゃん。
「そ、その。変、だな。私みたいなのが、そんな名で……」
顔を真っ赤にして呟くように弁明する堂島さん。
なんだかさっきまでの凛とした雰囲気と違って、とても可愛らしく思えてしまう。
「いえ、そんなことないです。素敵な名前だと思いますよ」
「そ、そうか」
「そうです。私が、林檎が言うんだから間違いないですよ」
「う……うむ」
そして何度も小さく頷く堂島さん。
なんだかその反応を見て、一気に緊張が解けた。
少なくとも悪い人じゃないし、話が通じない人でもない。
名前に若干コンプレックスを持っているという共通点も見つけた。
だから、少し肩の力が抜けた気がして、そもそもの根本を質問しようと思う気になった。
「あの、ところでご存じですか。ここが、どこなのか」
「ここはエイン帝国のはずれ、旧ビンゴ王国首都から北に100キロという地点だが……そうだ。その前に確認しておきたいことがある」
「はい、なんでしょう?」
「君は日本から来た、間違いないな?」
「え、あ、はい」
「転生の女神とかいう人物を知っているか?」
「えっと、はい、知ってます」
「ここに来たのはつい最近、そうか?」
「えっと、多分。ほんの十分くらい前です」
「分かった。最後に聞きたい。気分を害したら済まないが、とても重要なことだから答えてくれると助かる。君は――死んだことを覚えているか?」
その問いは、どこか気迫に満ちていて、これが重要な問いだと伝えているようなものだった。
だから私もしっかりと頷いた。
「はい」
「そう、か……」
堂島さんは疲れたように顔を空に向け、大きく息を吐きだす。
それは何かを悟ったような、諦めたような雰囲気を感じさせた。
「まさか本当にそうなのか……。煌夜の言っていることは本当なのか…………この世界の、真実は」
というようなことを呟いていたみたいだけど、わたしには意味が分からなかった。
「いや、すまないな。変なことを聞いて。気分を害したなら申し訳ない」
「別に構いませんけど……何か、知っているんですか? この状況を」
「……ああ。少なくとも君よりははるかにこの世界のことを知っている。私も日本からここに来た手合いだ。だから君にとっては先輩と言ってもいいだろう。だからこそだ。そんな私から質問だ」
「質問?」
「そう身構えなくていい。単純な問いだよ。これから君がどうしたいか。私は君に3つの道を示すことができる」
3つの道?
なんだろう。
でも私のこれからと言われて、どこか身構えてしまう。それほどの緊張感が堂島さんにはあった。
その堂島さんが右手をあげて、人差し指を伸ばす。
「1つは独りで生きる道。食料が欲しいなら分けよう。靴が欲しいなら差し出そう。お金が欲しいなら与えよう。だがそれだけだ。ここから君は独りで人里に降りて独りで生きる。それが1つ目の道」
それは、あまり考えたくない道だ。
世間的に見ても私はまだ子供。死ぬ前も後も、自分独りで生きてくなんて思いもよらないことで。
堂島さんの中指が伸びる。
「2つ目の道。私と共に行く道だ。こう見えて私は結構高い地位いる人間だ。人1人を保護して連れて行くこともある程度融通が効く。そして国に戻れば、私たちと同じような境遇の人間が何人かいるから、彼らに引き合わせることも可能だろう」
「それで、それでお願いします!」
反射的に答えていた。
独りで生きていけないなら、誰かに頼るしかない。
恥ずかしいとも思うけど、背に腹は代えられないのだ。
「最後まで聞いてくれ。この2つ目の道だが何も良い事ばかりではない。我々は今、戦争をしている。そこへ君はついてこなければならない。そして可能性は低いが、君も戦争に巻き込まれる可能性は高くなる」
「え……戦争?」
それって、何?
人を、殺すの?
誰かの、命を奪うの?
「だからよく考えてほしい。その覚悟があるかどうか。その道で後悔しないか」
言われ、急に心細くなった。
いきなり突き放された気分だ。裏切りとも言ってもいい。
もちろん身勝手な主張だと分かっている。
けど、理解するのと納得するのは別物だ。
保護される代わりに人殺しをさせる。
そんな詐欺まがいな提案。到底受け入れられるわけがない。
でも、そうすれば最低限の生活は保障される。
自分のために他人を犠牲にすることができるのか。
彼女はそれを聞いているのだ、と遅まきながらに思った。
混乱している私に、少し申し訳なさそうな口調で堂島さんが薬指を伸ばした。
「そして最後、3つ目の道。これは今の話を聞いて、そのうえで判断してもらいたい。この国は――世界は戦争をしている。いつ終わるとも知れない乱世の世界だ。たとえ1つ目の道で、どこかの町で落ち着いたとしても、戦乱は君を襲うかもしれない。2つ目の道ならば、おそらくその渦中に飛び込むことになるかもしれない。そしてそれは、君にとってとても辛く悲しいことを引き起こすかもしれない」
そこで堂島さんは一度言葉を区切った。
何か、自分の気持ちを整理するようなその間は、私にも無為の緊張を呼び起こす。
「だから焦らず聞いてくれ。決して軽はずみな判断をしないと誓ってくれ。そのうえで問おう。私は君に最後の道を示そう。戦乱動乱の世界。簡単に死ぬかもしれないし、不意に殺すことになるかもしれない。だからもし。今の話を聞いて。君がそれに耐えられそうにないのであれば、苦しい想いをしたくないのであれば…………これが3つ目の道。私が君に示せる、最後の道だ。もし君が望むなら――」
そして、堂島さんは顔色を変えることなく。
まるで業務連絡を告げるように、淡々と。
私に対して、こう言った。
「今、ここで君を殺してあげよう」
示された3つの道。
どこへ行こうと地獄。
どれを選ぼうと絶望。
それほどまでに狂った世界。
それほどまでに救いようのない。
けれどここで私は選ばないといけない。
ここで選ばなければ、4つ目の道が自動で決定される。
すなわち、餓死か凍死の道。
それを含めた4つの選択肢。
迷っている時間は、ない。
私が選ぶ道。
それは――
風に揺れる緑の草が一面に広がる大草原。
遠くでは山が連なり、連峰を成している。
若干肌寒い。
季節的には冬なのだろうか。
寒気を避けるため、羽織っていたマントのようなコートの裾を合わせる。
その下にはロングスカートのドレス。絹製なのか、すごい手触りが良い。
こんな上等なもの着たことないけど、なんだか有名な歌手みたいで少し気分は良かった。
ただ靴は履いていなかった。
草と土を裸足で踏む感覚が気持ち悪い。
「…………ふぅ」
ため息一つ。
やっぱり覚えがない。
こんな寒空の下、文明物の1つもない大草原のど真ん中で、こんな着たこともないドレス姿でいる。
最期の記憶では、まだ暑さのある夏の真っただ中だったというのに。
私は死んだ。
歌が好きで、バンドを結成して、だけどそのせいで無用のいさかいを起こして、そして死んだんだ。
それは覚えている。
そのはずなのにどうしてこんなところにいるのか。
いや、段々思い出してきた。
『はい、というわけでー。新しい人生行ってみよー、やってみよー!』
ついていけない感じのするテンションを持った女性。
自称女神という、どう反応していいのか分からない謎の人物。
彼女は言った。
私は死んだと。
彼女は言った。
新しい世界で生きろと。
彼女は言った。
統一すれば元の世界に戻してあげると。
意味が分からなかった。
死んだのに、何故続きがあるのか。
新しい世界って何なのか。
そもそも、統一って何? って感じ。
それでも私は生きている。
ここに、こうして何もないところで、確かに生きている。
心臓も動いているし、脈もある。
頬をつねれば痛いし、声を出せばいつもの私の歌声が出てくる。
そして何より現実感を如実に表し、何よりも切迫感のある現象が私を襲う。
「お腹減った……」
くぅ、と自分のお腹が鳴るのを久しぶりに聞いた。
死ぬ前は、お腹が減る前に何か食べていたからそんなことほとんどなかったのに。
なんだかそれが猛烈に恥ずかしくなって、誰が聞いてるわけでもないのにお腹を必死におさえたりする。
だが現実は想像よりはるかに過酷だった。
「どうしよう」
お腹が空いた。
それはいい。
当然の生理現象だ。
けど、どこで何を食べればいいの?
この人っ子一人いない、スーパーもコンビニすらもなさそうな田舎の山奥で、一体何を食べて私は生きればいいの?
第一、財布もない、お金もない、カードもない。
何も、持っていない。
そう考えると、涙が出てきた。
なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないの?
なんで私がこんな苦労をしなくちゃいけないの?
なんで私がこんな思いをしなくちゃいけないの?
お腹は空いた。けど足は動かない。
どこに向かっていいか分からないし、やっぱり地面の感触が気持ち悪くて進む気を無くす。
きっとこのまま私は餓死をするんだろう。
いや、この寒空。凍死の方が先かもしれない。
2度目の死。
あれだけ辛い死に方をしたのに、また死ぬの?
もう嫌だよ。
あんな目に遭うんだったら、もう死んだ方がマシ。
死にたくないから、死んだ方がいい。
思考能力もおかしくなってきているみたい。
もう何が現実で何が夢なのかも分からない。
もう誰でもいい。女神でも死神でも何でもいい。
誰か、助けて!
その声にならない悲鳴が聞こえたのか。
世界は私に答えをくれた。
遠く、何か地面を揺るがす音が聞こえる。
右手、広がる草原の中、何か黒いものがうごめいて見えた。
もやもやと動く黒いもの。
それはどこか常軌を逸していて、この世のものとは思えない化け物のようなイメージを感じた。
それが大きくなる。
いや、近づいてくる。
恐怖を覚えるほどの化け物が、こちらに近づいてくる。
そう思ったら、もうダメだった。
逃げよう。
決心する。
けど足が動かない。
どれだけ頭で命令しても、神経が切断されたように私の体はピクリとも動かない。私の体じゃないみたいだ。
ただ響く振動が大きくなり、黒い塊も次第に大きくなり、それに比例して私の中の恐怖も増大していく。
動け。動け。動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!!
逃げろ。逃げろ。逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!!
だが、どれだけ思ってもどうにもならない。
私はその場から1ミリも動けていなかった。
やがて私は腰を抜かしたように、その場にしりもちをつく。
いや、実際腰を抜かしていた。
それは化け物ではなかった。
いや、化け物の方が良かったかもしれない。
迫りくるのは馬の大群。
どれも黒く染まったそれらは、競うように大地を蹴り、こちらに向かって走ってくる。
もちろん馬だけが群れを成して走ってきているわけじゃない。
馬には人間が乗っていた。
しかもその人間は、普通よりも一回りも二回りも大きい。それがなんでかといえば、中世ヨーロッパにあるような鉄製の黒い鎧を着ていたからで。
そんな鎧を来た男(?)たちが馬を走らせている。
そんな光景を見て、ある二文字がありありと頭に浮かぶ。
戦争。
けど、何故?
馬に乗って戦争するなんて、もう何百年も前の話じゃないの?
今って戦車とか戦闘機とかそういうのじゃないの?
もとよりそう言った話には疎い方だ。
だから本当にそれがないとは言い切れないのが弱いところ。
何より、彼らから放たれる圧倒的な死のにおいに、もはやそれを疑うことはなかった。
どのみち、もう全てが遅かった。
馬群との距離はすでに100メートルを切っている。
今から逃げたところで、人間が馬の足に勝てるわけがない。
そうなれば私は殺される。
餓死でもなく、凍死でもなく、剣とか槍で斬られ突き刺されて死ぬ。
それは、とても怖いことで。嫌なことで。できれば逃げ出したかった。
そして、それは来た。
騎馬の大軍は、徐々に速度を落とし、私の5メートルほど前で止まる。
もしかしたらそのままひき殺されるんじゃないかと思ったから、そこは安堵した。
もちろん、この後に突き殺されるとかあるのかもしれないけど。
けど改めて大迫力だ。
数えていないから何頭いるのか分からないけど、馬がこれほど集まった光景を見たことがない。
どれもが鼻息を荒くしている様を見ると、どこかこの世のものではない怪物のようにも思える。
その中から1頭が――違う、馬上の1人が、前に出てきた。
その人物を見て、1つ、安堵したことがある。
その人は、女性だった。
黒に染められたいかつい鎧を着こんでいるとしても、その体つきと兜の下に見える細いラインは明らかに女性のもの。
その女性は兜に手を当てると、そのまま流れるような動作で脱ぎ去った。
そこから現れたのは、溶岩のような赤く流れる長い髪。
そして細い顎と長いまつげ――燃えるような赤い瞳を持つ女性が姿を現した。
女の私から見ても、息を呑むほどの美しさ。
美しいと格好いいが同居した、稀に見る美貌だ。
けど私が驚いている以上に、彼女の方もその切れ長の瞳を大きく見開いてこちらを見ていた。
それは何かを疑うような、信じられない何かを見るような、そんな疑念に満ちた視線。
なんだろう。私、何かしたかな。
聞いてみよう。そう思ったけど、相手の方が早かった。
「あなたは……アヤ・クレインさん?」
え? 知り合い?
まさか。
私は知らない。
そもそも、ここが私の生きていた世界と違う世界なら、そんなところに知り合いはいないわけで。
しかも私はアヤなんて名前じゃない。
ただの他人の空似だろう。
「すみません、人違いです」
「そう、か。いや、失礼。一度だけ会って、その歌声に感銘を受けたのだが」
女性は明らかに落胆したように肩を落とす。
何か悪い事をしたみたいで、こっちも戸惑う。
そうです、って言ってあげた方がよかったのかな。
でもそんな嘘すぐバレるし、それはそれで向こうも困るよね。
だから私は間違った答えを言ったわけではないと納得。
そして相手が危害を加えるつもりがないと分かり、どこか胸のつかえが取れたのか、こちらから話しかけていた。
「あの……すみませんが、何か食べ物を分けてくれませんか。私、いきなりここに放り出されて……食べ物もなくて」
我ながら図々しいと思う。
けどそうでもしないと死んでしまう。
こんな人気のないところで奇跡のように出会った相手。
せめて食べ物だけでももらえれば、何かしようと思う気になるだろう。
歌う元気も出てくるかもしれない。
そんな軽い気持ちで聞いたのだが、相手の反応は私が想定した以上のものだった。
「まさか……プレイヤーか!?」
「え? プレイヤー?」
どういう意味だろう。
スポーツをする人とか、ゲームする人だと思われてるのかな。
けど、その女性の視線は明らかにそういった類のものではないと物語っている。
もっと深刻で、私の今後に何か影響するような。そんなイメージ。
やがて女性は小さく首を振り、背後にいる数十人数百人の人たちに向かって、
「各自、休憩にする。馬の世話を終えた者から休憩に入れ!」
女性が高らかに告げた命令で、彼女の部下らしき人たちが一斉に散った。
はぁ……格好いい人がいるんだな。
なんて場違いなことを思っていると、女性は私の方に馬を進めてきて、そしてひらりと下馬した。
あ、私より背が低いんだ。
そのことがちょっと意外だった。
それでもすらっとした体躯に、意志の強そうな瞳、そして目を引く赤髪はやはり美しさを損なわない。
「私は堂島……いや、堂島だ。エイン帝国軍の元帥をしている。失礼だが、君は……」
「あ、えっと、林檎です。林田林檎です」
「リンゴ…………」
あぁ、やっぱり変だよね。
この名前のせいで、リンリンとかリンゴちゃんとか呼ばれた。嫌だった。実はあんまりリンゴ自体が好きじゃない。あの食感がどうもね。
「あぁ、いや。その、別に変だとか思ったわけではないんだ」
私の反応に戸惑ったのか女性――堂島さんは急にうろたえだした。
これまで背筋がピンと伸びて、凛々しく通る声をした格好いいと思ってた人が、急におろおろしだすのがなんだか新鮮で。
「その……そうだな。理由を喋らなければ君には失礼だろうしな。その、名前に反応したのは私の名前にも関連するからなんだ。私は、その……堂島、美柑という」
「堂島、美柑」
声に出して言う。
堂島美柑。
美柑ちゃん。
「そ、その。変、だな。私みたいなのが、そんな名で……」
顔を真っ赤にして呟くように弁明する堂島さん。
なんだかさっきまでの凛とした雰囲気と違って、とても可愛らしく思えてしまう。
「いえ、そんなことないです。素敵な名前だと思いますよ」
「そ、そうか」
「そうです。私が、林檎が言うんだから間違いないですよ」
「う……うむ」
そして何度も小さく頷く堂島さん。
なんだかその反応を見て、一気に緊張が解けた。
少なくとも悪い人じゃないし、話が通じない人でもない。
名前に若干コンプレックスを持っているという共通点も見つけた。
だから、少し肩の力が抜けた気がして、そもそもの根本を質問しようと思う気になった。
「あの、ところでご存じですか。ここが、どこなのか」
「ここはエイン帝国のはずれ、旧ビンゴ王国首都から北に100キロという地点だが……そうだ。その前に確認しておきたいことがある」
「はい、なんでしょう?」
「君は日本から来た、間違いないな?」
「え、あ、はい」
「転生の女神とかいう人物を知っているか?」
「えっと、はい、知ってます」
「ここに来たのはつい最近、そうか?」
「えっと、多分。ほんの十分くらい前です」
「分かった。最後に聞きたい。気分を害したら済まないが、とても重要なことだから答えてくれると助かる。君は――死んだことを覚えているか?」
その問いは、どこか気迫に満ちていて、これが重要な問いだと伝えているようなものだった。
だから私もしっかりと頷いた。
「はい」
「そう、か……」
堂島さんは疲れたように顔を空に向け、大きく息を吐きだす。
それは何かを悟ったような、諦めたような雰囲気を感じさせた。
「まさか本当にそうなのか……。煌夜の言っていることは本当なのか…………この世界の、真実は」
というようなことを呟いていたみたいだけど、わたしには意味が分からなかった。
「いや、すまないな。変なことを聞いて。気分を害したなら申し訳ない」
「別に構いませんけど……何か、知っているんですか? この状況を」
「……ああ。少なくとも君よりははるかにこの世界のことを知っている。私も日本からここに来た手合いだ。だから君にとっては先輩と言ってもいいだろう。だからこそだ。そんな私から質問だ」
「質問?」
「そう身構えなくていい。単純な問いだよ。これから君がどうしたいか。私は君に3つの道を示すことができる」
3つの道?
なんだろう。
でも私のこれからと言われて、どこか身構えてしまう。それほどの緊張感が堂島さんにはあった。
その堂島さんが右手をあげて、人差し指を伸ばす。
「1つは独りで生きる道。食料が欲しいなら分けよう。靴が欲しいなら差し出そう。お金が欲しいなら与えよう。だがそれだけだ。ここから君は独りで人里に降りて独りで生きる。それが1つ目の道」
それは、あまり考えたくない道だ。
世間的に見ても私はまだ子供。死ぬ前も後も、自分独りで生きてくなんて思いもよらないことで。
堂島さんの中指が伸びる。
「2つ目の道。私と共に行く道だ。こう見えて私は結構高い地位いる人間だ。人1人を保護して連れて行くこともある程度融通が効く。そして国に戻れば、私たちと同じような境遇の人間が何人かいるから、彼らに引き合わせることも可能だろう」
「それで、それでお願いします!」
反射的に答えていた。
独りで生きていけないなら、誰かに頼るしかない。
恥ずかしいとも思うけど、背に腹は代えられないのだ。
「最後まで聞いてくれ。この2つ目の道だが何も良い事ばかりではない。我々は今、戦争をしている。そこへ君はついてこなければならない。そして可能性は低いが、君も戦争に巻き込まれる可能性は高くなる」
「え……戦争?」
それって、何?
人を、殺すの?
誰かの、命を奪うの?
「だからよく考えてほしい。その覚悟があるかどうか。その道で後悔しないか」
言われ、急に心細くなった。
いきなり突き放された気分だ。裏切りとも言ってもいい。
もちろん身勝手な主張だと分かっている。
けど、理解するのと納得するのは別物だ。
保護される代わりに人殺しをさせる。
そんな詐欺まがいな提案。到底受け入れられるわけがない。
でも、そうすれば最低限の生活は保障される。
自分のために他人を犠牲にすることができるのか。
彼女はそれを聞いているのだ、と遅まきながらに思った。
混乱している私に、少し申し訳なさそうな口調で堂島さんが薬指を伸ばした。
「そして最後、3つ目の道。これは今の話を聞いて、そのうえで判断してもらいたい。この国は――世界は戦争をしている。いつ終わるとも知れない乱世の世界だ。たとえ1つ目の道で、どこかの町で落ち着いたとしても、戦乱は君を襲うかもしれない。2つ目の道ならば、おそらくその渦中に飛び込むことになるかもしれない。そしてそれは、君にとってとても辛く悲しいことを引き起こすかもしれない」
そこで堂島さんは一度言葉を区切った。
何か、自分の気持ちを整理するようなその間は、私にも無為の緊張を呼び起こす。
「だから焦らず聞いてくれ。決して軽はずみな判断をしないと誓ってくれ。そのうえで問おう。私は君に最後の道を示そう。戦乱動乱の世界。簡単に死ぬかもしれないし、不意に殺すことになるかもしれない。だからもし。今の話を聞いて。君がそれに耐えられそうにないのであれば、苦しい想いをしたくないのであれば…………これが3つ目の道。私が君に示せる、最後の道だ。もし君が望むなら――」
そして、堂島さんは顔色を変えることなく。
まるで業務連絡を告げるように、淡々と。
私に対して、こう言った。
「今、ここで君を殺してあげよう」
示された3つの道。
どこへ行こうと地獄。
どれを選ぼうと絶望。
それほどまでに狂った世界。
それほどまでに救いようのない。
けれどここで私は選ばないといけない。
ここで選ばなければ、4つ目の道が自動で決定される。
すなわち、餓死か凍死の道。
それを含めた4つの選択肢。
迷っている時間は、ない。
私が選ぶ道。
それは――
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