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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
閑話12 マリアンヌ・オムルカ(オムカ王国女王)
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ドスガ共和国の代表。眼鏡をかけた、細面で頭の切れそうな40代の男だ。
これまでの言い合いに参加していなかったのは、彼だけが唯一、王統に関係ない人間だからだろう。
いかに国の代表とはいえ、いきなり国王と同じ立場で言い争うことはできなかったのだろう。
その男が、低い冷静な口調で言葉を紡ぐ。
「我々ドスガ共和国は、かの暴君を追放し民を救ってくれたオムカには感謝しています。しかし、貴国との戦いで命を落とした若者がいることも事実。よって貴国のために戦うこと、それを国民が是とするかは議会に承認を得たうえでなければ了承できない」
口調は激しくはないが、遠回しに拒絶を示してきた。
それは、さらなる同調者を生む。
「うむ! 何より我が国が盟主でないのはおかしくはないか? トロン王国のもとに集まるのであれば、やぶさかではないが、それでないのでは駄目だな」
「おぅ、よく言ったドスガの。前の国王よりは話が分かるみてーだな。褒美に、お前さんの国を侵略するのを3か月待ってやるよ。というわけだ。ま、金になるなら考えなくはねーがな?」
「うむ……我々は争いを続けてきた。去年は貴国への援軍も行った。ここは財政を立て直し、民を休める時ではないのか? オムカ女王よ。そなたはまだ若い。そう焦ることはないじゃろ」
怒鳴りたくなった。
この者たちは何もわかってない。
今、どうしてジャンヌたちが戦っているか、それによって何がおこるか。
このコリョの南にある川が、あるいはその先にある山岳が、帝国との距離感をさらに遠いものにしてしまっているのか。
ほんの数年前まで、帝国に間接的とはいえ支配されてきた歴史はあるだろうに。
「そう悠長に言っている場合ではない。今はオムカとシータ王国の軍が帝国の南下を防いでいるが、それが終わればすぐに南群に来るのじゃぞ。これまでの帝国領にオムカとシータの領土を含めた大陸のほぼすべてを手に入れた帝国軍。いったい何十万が攻めてくるかの」
「む、むむ……」
ま、何十万なんて、ジャンヌならそんな食料の無駄はしないと言うじゃろうがの。
脅しとしては十分に効果があったようだ。
そこにさらに一押しする。
「トロン国王。盟主が誰だとかは問題ではないのじゃ。ゆえに余がそれを担わなくともよいと考える」
「ほほぅ、では?」
「貴国が盟主として立つがよいじゃろう。しかし、盟主の役目は果たしてもらわなければならぬ。少なくとも帝国と一戦し、トロン王国ここにあり、と全土に知らしめてこその盟主であろう? あぁ、相手は帝国最強の元帥府が出てきておるが、貴国であれば問題ないじゃろうの。それに万が一敗けた場合、敗北の責任をとられる覚悟じゃろうから、その覚悟には感服するばかりじゃ」
「ぐっ……う、ううむ……」
「ぎゃはは! 前から言ってるだろうが、トロンの。プライドじゃあ腹は満たせねぇって!」
「スー国王よ」
「ん、なんだ? 言っとくが儲け話以外はいらないぜ?」
「ではその儲け話をしようではないか。今回、援軍に来ていただいたお礼として、各国への謝礼を考えておる。貴国へは、ここコリョ地方に一部の土地をお渡しする。そしてその交通権と運河金の徴収は一切をお任せする」
「…………いいね。あんたは若ぇが金の話ができる。いや、若ぇからかな。ふへへ……コウチョ川から出る莫大な金! それに勝る報酬はねぇぜ。よし、乗った!」
思った通りじゃ。
プライドの高いトロン国王は、そのプライドをくすぐってへし折ってやれば文句もでなくなる。
お金が欲しいスー国王には、相応の謝礼を行えばよい。
事前に宰相と話し合わせた通りであり、剛柔合わせた交渉術はジャンヌのやり方を真似た結果。
あと2つ。
「フィルフ王よ。貴君の言う通り、この戦乱の世で戦いに明け暮れた我らは疲れておる。ゆえに戦いを放棄する、それを掲げるのは素晴らしいことじゃと思う。是非に見習いたい」
「うむ、うむ、そうじゃろう」
「しかし、今はそうも言ってられぬ状況じゃ。帝国は本気で我らを潰しに来ておる。それに対し、非戦を謳い、和平を望むのは、空腹の野獣の前に自らの肉を差し出すようなものではないのか? 先ほど言った通り、今回は帝国の元帥府が出てきておる。話ではパルルカ教皇も前線に出ているという。さらに先月では皇帝自らが数十万の大軍を率いて南下してきたのじゃ。もはや是非を問う段階は過ぎた。戦わなければ、守れないのじゃ」
「う、うぅむ……じゃがのぅ……」
「それからドスガ共和国の代表よ。そなたの言はもっとも。しかし、ここは遺恨を忘れ、皆のため、何より貴国自身のために戦ってはくれぬか? それが貴国の新たな一歩になるじゃろう」
「しかしですな」
「もし貴国が協力してくれたら、先年の王都バーベルでの騒動については今後問わないにする」
「う……む……」
これはドスガ共和国だけではない、ワーンスを除く4国にとっては耳の痛い問題だっただろう。
彼らが主導したのかどうかは別として、間違いなく4国の軍がオムカの王都を襲ったのだ。
その引け目は何にも勝る。
「ワーンス王、貴国はよろしいのじゃ?」
「う、うむ……将軍などは援軍出すべし、と息巻いておったが……その、国を空けてしまうのは……」
「ええ、じゃから各国に軍を出していただこうと思っておるのじゃ」
「あ、ああ……でしたら、問題はないですが……えっと、いや、ところで1つ、お聞きしたい」
「なんじゃろうか」
「貴国は……いえ、女王陛下。貴女は、帝国に勝った後はいかがするおつもりですか?」
それは、彼にとってはなんとでもない質問だっただろう。
それとなく今後の話を、不安を紛らわせるために行っただけのことだろう。
だが自分にとってはかなり重要な問題。
勝った後――ジャンヌがいなくなった後に、自分がどうするか。
ジャンヌから託された世界。
それに対し、どう付き合っていくかで、今後の自分の評価が分かれるのだ。
それはこれまでずっと考えてきたこと。
そして、1つの答えが自分の中にある。
だがここでそれを話してしまえば、それはもう後戻りできない。
前言撤回すれば、各国の王の信用を失う。
ゆえに迷う。
言ってしまえば楽だ。けどあとは茨の道。
言わなければ楽だ。けどあとは混沌の道。
ジャンヌがいれば、後者でもなんとでもなるだろう。
けど自分だけでは無理だ。おそらく、ほかの誰でも無理だろう。
ならば、自分は茨の道を歩む。
たとえ傷つき、疲れ果てても。
それでも歩き続ける覚悟は、ある。
『マリア』
ジャンヌの声が、聞こえた、気がした。
余は余の道を行け、そう言われた気がした。
だから、
「オムカ王国は……余は……帝国に勝った後」
言え。
「すべての主権を放棄する」
誰もが息を飲む。そして何かを言おうとするのを制して、言葉を続ける。
「オムカ王国が帝国軍に勝てば、一気に帝国を傘下に収めるじゃろう。その暁には、この大陸に住むすべてのものから代表を募り、議会政治を開く。今、ドスガ共和国がしているようなことじゃ。もちろん、余はそれに参加しないことを約束する。諸兄らが無事に政治を行ってくれれば満足じゃ」
誰もが黙り込む。
おそらく頭の中で考えを巡らせているのだろう。
これはジャンヌから聞いた話。
ジャンヌの世界では、投票によって国の代表が決まる方式を取っているという。
血筋や、肩書はあまり意味がない。
もちろん、ジャンヌ自身もこの統治方法が完ぺきではないと言っていた。
けど自分としては、それはなんて素晴らしい制度だと思った。
1人の独断ではなく、皆の意見を聞くのが良いと思ったのだ。
これまで自分もそれなりに人の意見は聞いてきたつもりじゃけど、国民1人1人の意見は聞いたことがなかった。
だからそれができるなら、それはとても良い国になるだろうと思う。
いや、そうでもしないと、この広大な大陸すべてを統治することなんて無理だろうと思う。今でさえ、オムカの領土で四苦八苦しているというのに。
そんな若干後ろ向きな理由もあるけど、それでもきっとジャンヌなら支持してくれるはず。
それに、勝っても負けてもオムカはなくなるけど、ジャンヌが負けるより良い。
一度、ジャンヌのいないところで廷臣たちに聞いてみたことがある。
誰もがとんでもないことと反対した。これまで綿々と続いたオムカ王国を滅ぼすとは、先祖に顔向けできないと涙ながらに力説する人もいた。
1人だけ、いやニーアを入れれば2人か、宰相だけは賛成してくれた。
宰相は負けては何も残らないこと、勝った場合でもそんなことはそう簡単にできるはずない、だからどんな口約束でも空手形でもして、勝つことが大事だ、と現実的な論陣を張った。
そこらへんやっぱりジャンヌをはじめ、別世界の人の考えは違うんだな、となんとなく思う。
もちろん、自分としては言葉を違えるつもりはない。
オムカをなくし、統一国家を作るつもりで各国の代表と会ったのだ。
それから一度解散し、各自に考える時間を与えた後。
各国の代表は援軍を出すことを約束してくれた。もちろん、今言った宣誓を書面にして拇印を押すところまでした。
これがオムカ王国終焉の契約だと思うと、歴代の王たちに申し訳ない気持ちと同時、新たな歴史の転換点に思えた。
長かった会議も終わり、各国の代表が退出して、広い室内に自分とニーアだけが残る。
「ニーア……」
「はい、なんでしょう女王様」
「余は……オムカを滅ぼした大罪人かの」
「いえ、ご立派でした、女王様」
「もう余は女王ではなくなるじゃ。ニーアもいつまでも余のことに構わなくてもよいのじゃぞ。お主なら、どこへ言っても大成できるじゃろ」
「さすがに怒りますよ? ニーアはどこまで行っても女王様の傍を離れませんから」
「…………うん」
なんだか目が熱くなってきた。
私は色んな人に守られて、教えられて、助けられてここまで来ている。
だからもうわがままなんて言わない。
この世界のため、そしてジャンヌがしっかり自分の選んだ道を歩けるよう、今はまだ国の代表として、自分がやれることはやってみせよう。
そう思った。
これまでの言い合いに参加していなかったのは、彼だけが唯一、王統に関係ない人間だからだろう。
いかに国の代表とはいえ、いきなり国王と同じ立場で言い争うことはできなかったのだろう。
その男が、低い冷静な口調で言葉を紡ぐ。
「我々ドスガ共和国は、かの暴君を追放し民を救ってくれたオムカには感謝しています。しかし、貴国との戦いで命を落とした若者がいることも事実。よって貴国のために戦うこと、それを国民が是とするかは議会に承認を得たうえでなければ了承できない」
口調は激しくはないが、遠回しに拒絶を示してきた。
それは、さらなる同調者を生む。
「うむ! 何より我が国が盟主でないのはおかしくはないか? トロン王国のもとに集まるのであれば、やぶさかではないが、それでないのでは駄目だな」
「おぅ、よく言ったドスガの。前の国王よりは話が分かるみてーだな。褒美に、お前さんの国を侵略するのを3か月待ってやるよ。というわけだ。ま、金になるなら考えなくはねーがな?」
「うむ……我々は争いを続けてきた。去年は貴国への援軍も行った。ここは財政を立て直し、民を休める時ではないのか? オムカ女王よ。そなたはまだ若い。そう焦ることはないじゃろ」
怒鳴りたくなった。
この者たちは何もわかってない。
今、どうしてジャンヌたちが戦っているか、それによって何がおこるか。
このコリョの南にある川が、あるいはその先にある山岳が、帝国との距離感をさらに遠いものにしてしまっているのか。
ほんの数年前まで、帝国に間接的とはいえ支配されてきた歴史はあるだろうに。
「そう悠長に言っている場合ではない。今はオムカとシータ王国の軍が帝国の南下を防いでいるが、それが終わればすぐに南群に来るのじゃぞ。これまでの帝国領にオムカとシータの領土を含めた大陸のほぼすべてを手に入れた帝国軍。いったい何十万が攻めてくるかの」
「む、むむ……」
ま、何十万なんて、ジャンヌならそんな食料の無駄はしないと言うじゃろうがの。
脅しとしては十分に効果があったようだ。
そこにさらに一押しする。
「トロン国王。盟主が誰だとかは問題ではないのじゃ。ゆえに余がそれを担わなくともよいと考える」
「ほほぅ、では?」
「貴国が盟主として立つがよいじゃろう。しかし、盟主の役目は果たしてもらわなければならぬ。少なくとも帝国と一戦し、トロン王国ここにあり、と全土に知らしめてこその盟主であろう? あぁ、相手は帝国最強の元帥府が出てきておるが、貴国であれば問題ないじゃろうの。それに万が一敗けた場合、敗北の責任をとられる覚悟じゃろうから、その覚悟には感服するばかりじゃ」
「ぐっ……う、ううむ……」
「ぎゃはは! 前から言ってるだろうが、トロンの。プライドじゃあ腹は満たせねぇって!」
「スー国王よ」
「ん、なんだ? 言っとくが儲け話以外はいらないぜ?」
「ではその儲け話をしようではないか。今回、援軍に来ていただいたお礼として、各国への謝礼を考えておる。貴国へは、ここコリョ地方に一部の土地をお渡しする。そしてその交通権と運河金の徴収は一切をお任せする」
「…………いいね。あんたは若ぇが金の話ができる。いや、若ぇからかな。ふへへ……コウチョ川から出る莫大な金! それに勝る報酬はねぇぜ。よし、乗った!」
思った通りじゃ。
プライドの高いトロン国王は、そのプライドをくすぐってへし折ってやれば文句もでなくなる。
お金が欲しいスー国王には、相応の謝礼を行えばよい。
事前に宰相と話し合わせた通りであり、剛柔合わせた交渉術はジャンヌのやり方を真似た結果。
あと2つ。
「フィルフ王よ。貴君の言う通り、この戦乱の世で戦いに明け暮れた我らは疲れておる。ゆえに戦いを放棄する、それを掲げるのは素晴らしいことじゃと思う。是非に見習いたい」
「うむ、うむ、そうじゃろう」
「しかし、今はそうも言ってられぬ状況じゃ。帝国は本気で我らを潰しに来ておる。それに対し、非戦を謳い、和平を望むのは、空腹の野獣の前に自らの肉を差し出すようなものではないのか? 先ほど言った通り、今回は帝国の元帥府が出てきておる。話ではパルルカ教皇も前線に出ているという。さらに先月では皇帝自らが数十万の大軍を率いて南下してきたのじゃ。もはや是非を問う段階は過ぎた。戦わなければ、守れないのじゃ」
「う、うぅむ……じゃがのぅ……」
「それからドスガ共和国の代表よ。そなたの言はもっとも。しかし、ここは遺恨を忘れ、皆のため、何より貴国自身のために戦ってはくれぬか? それが貴国の新たな一歩になるじゃろう」
「しかしですな」
「もし貴国が協力してくれたら、先年の王都バーベルでの騒動については今後問わないにする」
「う……む……」
これはドスガ共和国だけではない、ワーンスを除く4国にとっては耳の痛い問題だっただろう。
彼らが主導したのかどうかは別として、間違いなく4国の軍がオムカの王都を襲ったのだ。
その引け目は何にも勝る。
「ワーンス王、貴国はよろしいのじゃ?」
「う、うむ……将軍などは援軍出すべし、と息巻いておったが……その、国を空けてしまうのは……」
「ええ、じゃから各国に軍を出していただこうと思っておるのじゃ」
「あ、ああ……でしたら、問題はないですが……えっと、いや、ところで1つ、お聞きしたい」
「なんじゃろうか」
「貴国は……いえ、女王陛下。貴女は、帝国に勝った後はいかがするおつもりですか?」
それは、彼にとってはなんとでもない質問だっただろう。
それとなく今後の話を、不安を紛らわせるために行っただけのことだろう。
だが自分にとってはかなり重要な問題。
勝った後――ジャンヌがいなくなった後に、自分がどうするか。
ジャンヌから託された世界。
それに対し、どう付き合っていくかで、今後の自分の評価が分かれるのだ。
それはこれまでずっと考えてきたこと。
そして、1つの答えが自分の中にある。
だがここでそれを話してしまえば、それはもう後戻りできない。
前言撤回すれば、各国の王の信用を失う。
ゆえに迷う。
言ってしまえば楽だ。けどあとは茨の道。
言わなければ楽だ。けどあとは混沌の道。
ジャンヌがいれば、後者でもなんとでもなるだろう。
けど自分だけでは無理だ。おそらく、ほかの誰でも無理だろう。
ならば、自分は茨の道を歩む。
たとえ傷つき、疲れ果てても。
それでも歩き続ける覚悟は、ある。
『マリア』
ジャンヌの声が、聞こえた、気がした。
余は余の道を行け、そう言われた気がした。
だから、
「オムカ王国は……余は……帝国に勝った後」
言え。
「すべての主権を放棄する」
誰もが息を飲む。そして何かを言おうとするのを制して、言葉を続ける。
「オムカ王国が帝国軍に勝てば、一気に帝国を傘下に収めるじゃろう。その暁には、この大陸に住むすべてのものから代表を募り、議会政治を開く。今、ドスガ共和国がしているようなことじゃ。もちろん、余はそれに参加しないことを約束する。諸兄らが無事に政治を行ってくれれば満足じゃ」
誰もが黙り込む。
おそらく頭の中で考えを巡らせているのだろう。
これはジャンヌから聞いた話。
ジャンヌの世界では、投票によって国の代表が決まる方式を取っているという。
血筋や、肩書はあまり意味がない。
もちろん、ジャンヌ自身もこの統治方法が完ぺきではないと言っていた。
けど自分としては、それはなんて素晴らしい制度だと思った。
1人の独断ではなく、皆の意見を聞くのが良いと思ったのだ。
これまで自分もそれなりに人の意見は聞いてきたつもりじゃけど、国民1人1人の意見は聞いたことがなかった。
だからそれができるなら、それはとても良い国になるだろうと思う。
いや、そうでもしないと、この広大な大陸すべてを統治することなんて無理だろうと思う。今でさえ、オムカの領土で四苦八苦しているというのに。
そんな若干後ろ向きな理由もあるけど、それでもきっとジャンヌなら支持してくれるはず。
それに、勝っても負けてもオムカはなくなるけど、ジャンヌが負けるより良い。
一度、ジャンヌのいないところで廷臣たちに聞いてみたことがある。
誰もがとんでもないことと反対した。これまで綿々と続いたオムカ王国を滅ぼすとは、先祖に顔向けできないと涙ながらに力説する人もいた。
1人だけ、いやニーアを入れれば2人か、宰相だけは賛成してくれた。
宰相は負けては何も残らないこと、勝った場合でもそんなことはそう簡単にできるはずない、だからどんな口約束でも空手形でもして、勝つことが大事だ、と現実的な論陣を張った。
そこらへんやっぱりジャンヌをはじめ、別世界の人の考えは違うんだな、となんとなく思う。
もちろん、自分としては言葉を違えるつもりはない。
オムカをなくし、統一国家を作るつもりで各国の代表と会ったのだ。
それから一度解散し、各自に考える時間を与えた後。
各国の代表は援軍を出すことを約束してくれた。もちろん、今言った宣誓を書面にして拇印を押すところまでした。
これがオムカ王国終焉の契約だと思うと、歴代の王たちに申し訳ない気持ちと同時、新たな歴史の転換点に思えた。
長かった会議も終わり、各国の代表が退出して、広い室内に自分とニーアだけが残る。
「ニーア……」
「はい、なんでしょう女王様」
「余は……オムカを滅ぼした大罪人かの」
「いえ、ご立派でした、女王様」
「もう余は女王ではなくなるじゃ。ニーアもいつまでも余のことに構わなくてもよいのじゃぞ。お主なら、どこへ言っても大成できるじゃろ」
「さすがに怒りますよ? ニーアはどこまで行っても女王様の傍を離れませんから」
「…………うん」
なんだか目が熱くなってきた。
私は色んな人に守られて、教えられて、助けられてここまで来ている。
だからもうわがままなんて言わない。
この世界のため、そしてジャンヌがしっかり自分の選んだ道を歩けるよう、今はまだ国の代表として、自分がやれることはやってみせよう。
そう思った。
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