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第1章 オムカ王国独立戦記
第35話 スキピオになる
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俺は調子に乗っていたのだろうか。
ちょっと何回か上手くいったからといって、ハンニバル・バルカや張良子房、そして諸葛亮孔明のような天才軍略家になったつもりだったのか。
地形や敵を知らずして、戦いに勝てる完璧超人だといつから思っていたのか。
それとも『古の魔導書』の有用さに溺れて学ぶことを忘れていたのか。
なんて阿呆だ。歴史を専攻しているといっても、まだ19の若造なのだ。それを思い知った。
「隊長殿、そろそろ外に出られてはいかがですか。これ以上部屋にこもっているとお体にも悪いかと」
ある日、クロエが夕食を運んできてくれた時に心配そうにそう言ってくれた。
前の戦いがあってから、俺は1週間書庫にこもった。
食事も睡眠もそこでとり、それ以外はひたすらに本を読んだ。
直近で外に出たのは、地形を調べるために4日前に出た時だけ。もともとインドア派だし、大学の研究室では日がな部屋にこもることも珍しくないのだから苦痛ではなかった。
何より、今の俺は敬愛すべきプブリウス・コルネリウス・スキピオ・アフリカヌス・マイヨルなのだ。カンナエの戦いでカルタゴの英雄ハンニバル・バルカに敗れ、それからハンニバルを学んでついにザマで打ち破った共和制ローマの英雄だ。
今の俺には知力と若さと時間がある。
やる気と根気さえあれば、やってできないことはないはずだ。
最初の数日は文字の勉強に費やした。
さすがに『古の魔導書』といえど、俺が知らないことは調べられない。
例えばいついつにどこで戦闘が起こったのかを知らなければ、そもそもが検索できないのだ。
このスキル唯一の欠点と言っていいだろう。
そのためには書庫にある資料を読まなければならず、そのために文字の勉強をした。
恥を忍んでクロエに教えてもらったところ、ラインツ語と呼ばれる大陸言語は、文字こそギリシャ文字に似ているが、英語によく似た文法と単語であることが分かった。
英語なら大学受験で勉強したし、喋ることはできなくても読むことはできたのだからさほど苦労はなかった。
分かりづらい単語を手帳にまとめて簡易的な辞書を作ると、ある程度の本はなんとか読めるようになった。というより分からないもの、分かりづらい部分はそれこそ『古の魔導書』で検索すれば日本語で読めるので、概略は本で読んで詳細はスキルを使用するという使い方もできたのだ。
そうして過去の戦闘を振り返ってみると、シータ王国の戦闘は主に水軍が強いことが分かった。
外海に面しているだけじゃなく、国土の至るところに大小様々な河川があるのだから船が発達してその結果、水軍が強くなったということだろう。これはやはり三国志の孫呉に類する国だと思って良さそうだ。
故に船の上で使いにくい長物――槍や太刀といった武器は使われず、短刀や弓、そして鉄砲が使われている。今回の戦闘では使われなかったが、ジルたちから聞いたようにやはり鉄砲を輸入して兵器として使っているのだ。
これは無視できない存在で、更には軍船には大砲を積んでいるのだから困ったものだ。
ハワードも鉄砲の存在と有用性は知っており、城内でも使われているがあくまで防戦のためのもので野戦で使うという発想はないらしい。
そもそもこの時代の鉄砲は、オートマチックとかリボルバー形式のものではなく、先込め式の火縄銃だ。
発射に時間がかかるし、手入れも大変で、雨では使えないし、ライフリングもないから命中率も悪い。
そういった欠点からこの城塞にも100丁あるだけで、もちろん王都には回っていない。サカキが知らないわけだ。
とはいえこの時代においては最先端の兵器であることは疑いない。
これをどう使うかによって戦術がまるっきり違ってくるのだ。
「隊長殿?」
「あぁ、すまん。えっと、何か用?」
「何か用かではありません。こんなところにずっと引きこもって、体に悪いですよ」
「いや、こんなの当たり前だし。食事も睡眠もとっているから問題ないよ」
「しかしですね。太陽に当たらない生活をして病気になった例はたくさんあります。隊長殿はもっとお体を労わってください」
まぁ運動不足から体調を崩す例はなくはないが、たった数日外に出ないだけで大げさだな。
ただ中世は迷信深い時代だったと言うし、そういう心配もあるのかもしれない。
「それに、この旅で隊長殿ともっとお話しできると思ったのに……」
「あれ、もしかして寂しかった?」
「そ、そそそそんなことないです! 城の人たちも良くしてくれてますし! 稽古してくれますし! でも隊長殿はずっとこもりっぱなしだからお話できないなって思ったくらいです! 他意はないです!」
ほんと分かりやすい奴だ。可愛いなぁ。
などとほんわかした気持ちになっていると、
「そうそう。その八つ当たりで兵をボコボコにされちゃあ敵わんのぅ」
「あ、師団長殿!」
ハワードがクロエの後ろから顔を出した。
その顔にはにやにやと笑みを浮かべており、
「その年で遠慮のない打ち込みをする、さすがニーアの弟子じゃて」
「あ、あの人は関係ありません。私が勝手に強くなったんです!」
「うんうん、若いうちはそれくらい元気な方がよろしい」
まるで好々爺のような笑みを浮かべるハワードだが、そんな話をしに来たわけではないことは一目瞭然だ。それほどこの爺さんは暇ではない。
「それで、何の用?」
「いやいや、ちっと通りかかったからのぅ。しかしこれまた散らかしたのぅ。ちゃんと片づけるのだぞ」
いたるところに本が散らばり、書き散らかしたメモが散乱する書庫を見てハワードは眉をしかめる。
「後でやっとく」
「ま、いいがの。しかし1週間もこもりきりとは。それほどこないだの失敗が悔しかったのかのぅ」
「残念でした。全然違う。そこまで見当違いなことを言えるとは耄碌したか?」
「はっは! それだけの強がりが言えれば元気の証拠だの」
からからと笑うハワード。本当何しに来たんだ。
「ふむ、そんなお主に朗報だ。汚名返上の場所を用意してやったぞ」
「場所?」
「シータが大軍で攻めてくる」
「は?」
「シータが大軍で攻めてくる」
「いや、聞こえてるよ。内容を疑っただけで」
「おお、そうか。わしは最近すっかり耳が遠くなってのぅ」
「それはそれでヤバいだろ」
「いやいや、少しくらい聞こえなくとも指揮はできるからの。お主が字を読めなくとも問題なく戦えたように」
「俺だって少しは読めるようになった――じゃなく! シータがせめてくるってどういうことだよ!?」
「来とるぞ。陸から2万、川から1万の3万でな。あと5日もすれば見えるじゃろ」
「しかしなんで今さら」
こないだの敗戦を挽回するにしては数が多すぎる。まるで何か意図があって全力で攻めてくるみたいだ。
「わしがそう仕向けた」
「へ?」
「城塞の指揮官ハワードが高齢のため明日をも知れぬ重体だというのを数日前からばらまいたからの。チャンスと思って攻め寄せたんじゃろ」
「なんでそんな……」
わけが分からない。
わざと侵攻の口実を与えるなんて、正気じゃ考えられない。
「シータと同盟を結びたいんじゃろ? 今こっちから行っても足元を見られるだけじゃ。交渉を有利に進めるには、オムカ国は強力であり独立に成功の見込みがあるということを見せんとな」
「それは道理だ。けど厳しいぞ。勝ちすぎれば恨みを残すし、手を抜いて勝てる兵力差じゃない」
「大変じゃのぅ」
「何を他人事みたいに言ってるんだよ。ここが破られれば、それこそ王国滅亡の危機だぞ」
「そうじゃのぅ。ただ今のわしは明日をも知れぬ重体だからの。表立って動けぬ。ま、勝負どころでは出ていくがな」
「そんな無責任な」
「なに、これくらいのことをせんと、独立など夢のまた夢じゃて。というわけで指揮はお主に任せた」
「はぁ?」
「指揮はお主に任せた」
「聞こえなかったわけじゃなく! なんだその丸投げ! 最近流行ってるのか!?」
「なに、勉強熱心なお主ならなんとかなるじゃろ。この城のことは教えるし、敵の情報も分かってる限りは伝える。なーに、本当にヤバそうだったらわしが出ていくからお主は安心して指揮を取れ」
「た、隊長殿、こんな話をしている場合じゃありません。今から王都に援軍を……いや、間に合わないかもしれないですが何もしないよりマシです!」
クロエが慌てた様子で口を挟んできた。
その顔を見ていたら落ち着いた。自分よりパニックになっている人を見ると落ち着くというのは本当のようだ。
思考が回転する。今どうしてこのようなことをハワードがしたのか。そしてそれによって起こる戦闘、そして結果。
これまでの勉強で頭は温まっている。だから脳をフル回転して数秒後、ハワードが何故シータ軍を呼び込んだか理解できた。
「……そういうことかよ。これがあんた流の最終試験、そして予行練習ってことか」
「そうとってもらっても構わん。ま、これくらい乗り越えなければ50万とは戦えんて」
「え、え?」
クロエが俺とハワードを交互に見て困惑する。
やれやれ、ジルやサカキがぼやくのもよく分かる。とんでもない爺さんだ。
自分どころか1万の人間の命を賭けに出すとは。
だが、ここで王都バーベル防衛戦の予行練習ができるとなれば、それはかなりありがたい。
籠城戦なんて経験はないし、敵の動きも知ったことではないのだから。
「いいぜ、やってやる。シータを撃退して交渉に移る。いや、攻めあぐねさせるのが最良か」
「そうじゃのぅ。下手に奇襲でもすればこちらも相手も多大な犠牲が出る」
「とりあえず備蓄の確認からだな。てゆうか北の守りが薄いぞ。大軍が展開できないとはいえ、山あいに構えられたら面倒なことになる」
「それは罠じゃよ。あそこは山肌が脆く滑りやすい。しかも麓がすぐそのまま城壁になっているから攻城兵器を置くことはできん。ま、それで何度か撃退しているから今さら攻めてはこんじゃろ。とみせかけて決死隊を送ってくるくらいのことはしてくるから油断はせんようにな」
「ちっ、食えない爺さんだな」
「ほっほ、褒めても何もでんぞ」
俺とハワードの会話に、クロエは疑問符を浮かべ首をかしげるばかりだが、俺が生き生きとしているのを見てうれしいのか、にんまりと笑ったのが見えた。
ちょっと何回か上手くいったからといって、ハンニバル・バルカや張良子房、そして諸葛亮孔明のような天才軍略家になったつもりだったのか。
地形や敵を知らずして、戦いに勝てる完璧超人だといつから思っていたのか。
それとも『古の魔導書』の有用さに溺れて学ぶことを忘れていたのか。
なんて阿呆だ。歴史を専攻しているといっても、まだ19の若造なのだ。それを思い知った。
「隊長殿、そろそろ外に出られてはいかがですか。これ以上部屋にこもっているとお体にも悪いかと」
ある日、クロエが夕食を運んできてくれた時に心配そうにそう言ってくれた。
前の戦いがあってから、俺は1週間書庫にこもった。
食事も睡眠もそこでとり、それ以外はひたすらに本を読んだ。
直近で外に出たのは、地形を調べるために4日前に出た時だけ。もともとインドア派だし、大学の研究室では日がな部屋にこもることも珍しくないのだから苦痛ではなかった。
何より、今の俺は敬愛すべきプブリウス・コルネリウス・スキピオ・アフリカヌス・マイヨルなのだ。カンナエの戦いでカルタゴの英雄ハンニバル・バルカに敗れ、それからハンニバルを学んでついにザマで打ち破った共和制ローマの英雄だ。
今の俺には知力と若さと時間がある。
やる気と根気さえあれば、やってできないことはないはずだ。
最初の数日は文字の勉強に費やした。
さすがに『古の魔導書』といえど、俺が知らないことは調べられない。
例えばいついつにどこで戦闘が起こったのかを知らなければ、そもそもが検索できないのだ。
このスキル唯一の欠点と言っていいだろう。
そのためには書庫にある資料を読まなければならず、そのために文字の勉強をした。
恥を忍んでクロエに教えてもらったところ、ラインツ語と呼ばれる大陸言語は、文字こそギリシャ文字に似ているが、英語によく似た文法と単語であることが分かった。
英語なら大学受験で勉強したし、喋ることはできなくても読むことはできたのだからさほど苦労はなかった。
分かりづらい単語を手帳にまとめて簡易的な辞書を作ると、ある程度の本はなんとか読めるようになった。というより分からないもの、分かりづらい部分はそれこそ『古の魔導書』で検索すれば日本語で読めるので、概略は本で読んで詳細はスキルを使用するという使い方もできたのだ。
そうして過去の戦闘を振り返ってみると、シータ王国の戦闘は主に水軍が強いことが分かった。
外海に面しているだけじゃなく、国土の至るところに大小様々な河川があるのだから船が発達してその結果、水軍が強くなったということだろう。これはやはり三国志の孫呉に類する国だと思って良さそうだ。
故に船の上で使いにくい長物――槍や太刀といった武器は使われず、短刀や弓、そして鉄砲が使われている。今回の戦闘では使われなかったが、ジルたちから聞いたようにやはり鉄砲を輸入して兵器として使っているのだ。
これは無視できない存在で、更には軍船には大砲を積んでいるのだから困ったものだ。
ハワードも鉄砲の存在と有用性は知っており、城内でも使われているがあくまで防戦のためのもので野戦で使うという発想はないらしい。
そもそもこの時代の鉄砲は、オートマチックとかリボルバー形式のものではなく、先込め式の火縄銃だ。
発射に時間がかかるし、手入れも大変で、雨では使えないし、ライフリングもないから命中率も悪い。
そういった欠点からこの城塞にも100丁あるだけで、もちろん王都には回っていない。サカキが知らないわけだ。
とはいえこの時代においては最先端の兵器であることは疑いない。
これをどう使うかによって戦術がまるっきり違ってくるのだ。
「隊長殿?」
「あぁ、すまん。えっと、何か用?」
「何か用かではありません。こんなところにずっと引きこもって、体に悪いですよ」
「いや、こんなの当たり前だし。食事も睡眠もとっているから問題ないよ」
「しかしですね。太陽に当たらない生活をして病気になった例はたくさんあります。隊長殿はもっとお体を労わってください」
まぁ運動不足から体調を崩す例はなくはないが、たった数日外に出ないだけで大げさだな。
ただ中世は迷信深い時代だったと言うし、そういう心配もあるのかもしれない。
「それに、この旅で隊長殿ともっとお話しできると思ったのに……」
「あれ、もしかして寂しかった?」
「そ、そそそそんなことないです! 城の人たちも良くしてくれてますし! 稽古してくれますし! でも隊長殿はずっとこもりっぱなしだからお話できないなって思ったくらいです! 他意はないです!」
ほんと分かりやすい奴だ。可愛いなぁ。
などとほんわかした気持ちになっていると、
「そうそう。その八つ当たりで兵をボコボコにされちゃあ敵わんのぅ」
「あ、師団長殿!」
ハワードがクロエの後ろから顔を出した。
その顔にはにやにやと笑みを浮かべており、
「その年で遠慮のない打ち込みをする、さすがニーアの弟子じゃて」
「あ、あの人は関係ありません。私が勝手に強くなったんです!」
「うんうん、若いうちはそれくらい元気な方がよろしい」
まるで好々爺のような笑みを浮かべるハワードだが、そんな話をしに来たわけではないことは一目瞭然だ。それほどこの爺さんは暇ではない。
「それで、何の用?」
「いやいや、ちっと通りかかったからのぅ。しかしこれまた散らかしたのぅ。ちゃんと片づけるのだぞ」
いたるところに本が散らばり、書き散らかしたメモが散乱する書庫を見てハワードは眉をしかめる。
「後でやっとく」
「ま、いいがの。しかし1週間もこもりきりとは。それほどこないだの失敗が悔しかったのかのぅ」
「残念でした。全然違う。そこまで見当違いなことを言えるとは耄碌したか?」
「はっは! それだけの強がりが言えれば元気の証拠だの」
からからと笑うハワード。本当何しに来たんだ。
「ふむ、そんなお主に朗報だ。汚名返上の場所を用意してやったぞ」
「場所?」
「シータが大軍で攻めてくる」
「は?」
「シータが大軍で攻めてくる」
「いや、聞こえてるよ。内容を疑っただけで」
「おお、そうか。わしは最近すっかり耳が遠くなってのぅ」
「それはそれでヤバいだろ」
「いやいや、少しくらい聞こえなくとも指揮はできるからの。お主が字を読めなくとも問題なく戦えたように」
「俺だって少しは読めるようになった――じゃなく! シータがせめてくるってどういうことだよ!?」
「来とるぞ。陸から2万、川から1万の3万でな。あと5日もすれば見えるじゃろ」
「しかしなんで今さら」
こないだの敗戦を挽回するにしては数が多すぎる。まるで何か意図があって全力で攻めてくるみたいだ。
「わしがそう仕向けた」
「へ?」
「城塞の指揮官ハワードが高齢のため明日をも知れぬ重体だというのを数日前からばらまいたからの。チャンスと思って攻め寄せたんじゃろ」
「なんでそんな……」
わけが分からない。
わざと侵攻の口実を与えるなんて、正気じゃ考えられない。
「シータと同盟を結びたいんじゃろ? 今こっちから行っても足元を見られるだけじゃ。交渉を有利に進めるには、オムカ国は強力であり独立に成功の見込みがあるということを見せんとな」
「それは道理だ。けど厳しいぞ。勝ちすぎれば恨みを残すし、手を抜いて勝てる兵力差じゃない」
「大変じゃのぅ」
「何を他人事みたいに言ってるんだよ。ここが破られれば、それこそ王国滅亡の危機だぞ」
「そうじゃのぅ。ただ今のわしは明日をも知れぬ重体だからの。表立って動けぬ。ま、勝負どころでは出ていくがな」
「そんな無責任な」
「なに、これくらいのことをせんと、独立など夢のまた夢じゃて。というわけで指揮はお主に任せた」
「はぁ?」
「指揮はお主に任せた」
「聞こえなかったわけじゃなく! なんだその丸投げ! 最近流行ってるのか!?」
「なに、勉強熱心なお主ならなんとかなるじゃろ。この城のことは教えるし、敵の情報も分かってる限りは伝える。なーに、本当にヤバそうだったらわしが出ていくからお主は安心して指揮を取れ」
「た、隊長殿、こんな話をしている場合じゃありません。今から王都に援軍を……いや、間に合わないかもしれないですが何もしないよりマシです!」
クロエが慌てた様子で口を挟んできた。
その顔を見ていたら落ち着いた。自分よりパニックになっている人を見ると落ち着くというのは本当のようだ。
思考が回転する。今どうしてこのようなことをハワードがしたのか。そしてそれによって起こる戦闘、そして結果。
これまでの勉強で頭は温まっている。だから脳をフル回転して数秒後、ハワードが何故シータ軍を呼び込んだか理解できた。
「……そういうことかよ。これがあんた流の最終試験、そして予行練習ってことか」
「そうとってもらっても構わん。ま、これくらい乗り越えなければ50万とは戦えんて」
「え、え?」
クロエが俺とハワードを交互に見て困惑する。
やれやれ、ジルやサカキがぼやくのもよく分かる。とんでもない爺さんだ。
自分どころか1万の人間の命を賭けに出すとは。
だが、ここで王都バーベル防衛戦の予行練習ができるとなれば、それはかなりありがたい。
籠城戦なんて経験はないし、敵の動きも知ったことではないのだから。
「いいぜ、やってやる。シータを撃退して交渉に移る。いや、攻めあぐねさせるのが最良か」
「そうじゃのぅ。下手に奇襲でもすればこちらも相手も多大な犠牲が出る」
「とりあえず備蓄の確認からだな。てゆうか北の守りが薄いぞ。大軍が展開できないとはいえ、山あいに構えられたら面倒なことになる」
「それは罠じゃよ。あそこは山肌が脆く滑りやすい。しかも麓がすぐそのまま城壁になっているから攻城兵器を置くことはできん。ま、それで何度か撃退しているから今さら攻めてはこんじゃろ。とみせかけて決死隊を送ってくるくらいのことはしてくるから油断はせんようにな」
「ちっ、食えない爺さんだな」
「ほっほ、褒めても何もでんぞ」
俺とハワードの会話に、クロエは疑問符を浮かべ首をかしげるばかりだが、俺が生き生きとしているのを見てうれしいのか、にんまりと笑ったのが見えた。
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その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
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