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第2章 南郡平定戦
第6話 プレイヤーのお茶会
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九神に連れられた場所。
真っ白な襖を開けるときにもしやと思ったが、畳敷きの6畳一間の和室が現れた。その中央にちょこんとちゃぶ台が置いてあるのだから、もう完璧だ。何より新品らしき畳の香りがかぐわしい。
「すごいな、ここまで再現するなんて」
「やっぱり日本人は畳だろう? イグサが手に入るかは分からなかったけど、やってみるもんだよ。ま、これでも貿易大国だし、それに国王だしね。ここら辺はもう役得ってことで。さぁさぁ、入って座って座って」
履いてきたブーツを土間で脱ぎ、畳を足で踏みしめる。
ソックスの裏で感じる畳の感触。その何でもない行動が、日本という国を意識させて俺の心を揺さぶって来た。
「紅茶がいいかな? それともコーヒー? あ、お酒はだめだよ」
「コーヒーもあるんだ」
「それも作らせたよ。コーヒー豆はあったけどその利用法が全く確立してなかったから、ちょちょいと」
「詳しいんだな。もしかして日本ではそういうことを?」
「あ、それ聞いちゃうんだね」
「え、あ……」
そういえばそんなことを聞くなんて我ながららしくない。
初めてプレイヤーと話をするということで、少し舞い上がっているのかもしれない。
「ま、詳しい話は落ち着いてから。じゃあコーヒーでいいね。ちょっと待ってて。今いれてくるから」
そう言って九神は別室に続くドアを開けてその中に入ってしまった。
「…………」
ただ残された方としてはどうしていいのか分からない。
何より水鏡と紹介された女性と2人きりというのがかなり気まずい。なんかこの人、俺と視線を合わせてくれないし、正直怖い。
「座ったら?」
「は、はい!」
背後から急に話しかけられて思わず敬語になってしまった。
「そんな緊張することないのに」
水鏡は感情をこめずにそう言うと、自分はすたすたと畳を踏みしめて部屋の角へ。
そして座った。体育座りで。
え、なにこれ。どういう状況?
なんでこの人、こんな隅で座ってるの? 座敷わらし?
「なにぼっとしてるの?」
「え、いや……その……なんでそんな端っこに?」
「別に。落ち着くから。あんたが嫌いなわけじゃないから安心して。ただ興味がないだけだから」
うわぁ、この人。色んな意味でヤバい。てかきついわ。
こんな状況に上手く対処できるほど、俺は対人関係の経験値を積んでいない。
かといってこのまま入口で立っているのも収まりが悪い。
だから俺は何事もなかったように中央にあるちゃぶ台のそばに腰掛けようとする。
が、手と足は同じ方が出るわ、ソックスが滑って派手に転ぶわさんざんな目に遭った。
「……はぁ」
うわ、露骨にため息つかれた。
いや俺が悪いんだけどね。
とりあえず畳に膝をつくがどうしようと迷う。
正座はできる気がしないし、かといってスカートであぐらというのもダメだろ。かといって女性らしい座り方ってのも分からないし、あぁ、和室ってこういう時ムズイな!
というわけで俺も水鏡に倣って体育座り。なんだこれ。
「…………」
「…………」
そして沈黙。キツイ、この状況! 九神、早く戻って来い!
てかホスト側が接待を放棄して客をほったらかしってどういう現象だよ。
ええい、こうなったら玉砕覚悟で話を振る!
「えっと、パンツ見えてるよ?」
「……は?」
しまった! これじゃなかった!
でもワンピース姿で体育座りされると、ねぇ。それにもう……俺だって男だし。
「最低」
あからさまに嫌な顔されて、しかも体育座りを崩してさらに隅によってしまった。
ま、ですよね……。
今のは自分が悪い。
えっと、他に話題。話題……。
「水鏡はここに来て長いの?」
「初対面で呼び捨て?」
はい玉砕!
「あ……えっと、水鏡、さんは……」
「別に水鏡でいい。変にかしこまれると気持ち悪い」
じゃあなんで異議唱えたんだよ!
とはいえそんなことを言える勇気もなく、5分ほどの時間をお互い無言で過ごした。
俺は気まずさと息苦しさとプレッシャーで息も絶え絶え、対する水鏡はすまし顔で無表情。
そんな苦しみも、襖が開かれることで終了した。
「さてさて、お待たせしたね。ん、もしかして水鏡と何か喋った?」
「……いや、別に」
「あー何か言われたかな。でも凄いな。水鏡が初対面でそんなに喋るなんて、君、気に入られたんじゃない?」
あの言葉のどこに気に入る要素があったのか……。
そんな俺の視線に気づくことなく、九神はちゃぶだいに3つのカップを置いた。
動物をあしらった絵が描かれており、俺はアリクイ、九神はカピバラ、水鏡はテナガザルという謎のラインナップだった。
「さって、じゃあプレイヤーの出会いを記念して」
九神が俺にカップを差し出してくる。俺もカップを手にすると、九神のに小さく当てた。
水鏡は手を伸ばしてカップを素早く強奪すると、再び部屋の隅で体育座りしてちびちび飲み始めた。なんなんだ……。だから見えるっての。
「えっと、君の名前ってジャンヌ・ダルクだっけ?」
そんな水鏡は放置しておくのか、九神は俺を見ながらそう口を開いた。
「あ、ああ」
「それって本名? まさかダルクがファミリーネームとかってわけないよね。ってことは偽名? いや、プレイヤーネームってところかな」
やっぱりそうくるか。
自分がどうこう言いながらも、しっかりこっちは探ってくるとは。
「っと、まだちゃんとした自己紹介をしてなかったね。僕は九鬼明。しがない会社員だよ。九神というのがこちらのプレイヤーネームなんだけど、ご察しの通り、クカミというのは九鬼からとったんだ。ほら、鬼って“カミ”とも読むだろう? ご存じの通り、九鬼文書とか」
いや、ご察しの通りでもご存じの通りでもないが。
「ちなみに彼女は水鏡八重。本名もプレイヤーネームも水鏡。ほんっと面白味ないよね」
「別に。名前に面白味も何もない。ジャンヌ・ダルクみたいな名前をつける方が理解に苦しむけど」
ぐっ……。
痛いところをずけずけと。
「あー、ごめんね。悪気はないんだよ、彼女。同じプレイヤーの仲間が増えて嬉しがってるだけだから」
「だれが……」
呟くように吐き捨てる水鏡。それを見てほほ笑む九鬼――いや、九神。
仲間、か……。
その言葉が重くのしかかる。
よくよく考えたら、俺はオムカの皆に隠し事をしている。俺の根本に関わる重大な隠し事だ。それを話せば彼らは理解に苦しむだろうし、自分との距離もきっと変わる。
あるいはずっとジャンヌ・ダルクを演じ続けられれば良いのかもしれない。
でもそれは俺にとっては致命的。いつか元の世界に戻るために、俺はジャンヌ・ダルクであり続けてはならないのだ。写楽明彦という男であることは忘れてはいけない。
だからいつかは彼らにも本当の俺を告白する必要があるのは避けられない事実としてある。
でも今じゃない。
先送りにすればその分、反動は激しいものになるのはわかっている。
それでも。それでも今のこの関係を壊したくない。
卑怯だと思う。
でも居心地の良さに甘えてしまう。それは悪いことなのだろうか。
こんな世界に放り出されて、生死の境を歩かされて、居場所を求めてはいけないのだろうか。
わからない。
ただ言い出せないでいる自分が心苦しく思う。
そんな時に、この2人に出会った。
ここで少しでも分かち合ってくれる人がいる。写楽明彦としてさらけ出せる相手。
そう思うと、俺はもうどうしても我慢が出来なくなった。
その先にある反応が想像できたとしても。
「写楽……」
「ん? 何? 写楽? ホースケ? いや東洲斎?」
こいつ、その2つが出てくるとか渋いな。
「いや、その…………写楽、明彦」
「ん? 何? ごめん、小さくて聞こえなかったよ」
「明彦って聞こえた」
「あぁ、そうだよ。写楽明彦! それが俺の名前! 以上、終わり!!」
なんでこんな恥ずかしいんだ。
言ってせいせいしたかと思ったが、湧き上がってくるのは羞恥の心。
九神は目をぱちくりとさせていたが、やがて何かに納得いったらしい。
「ん……? 明彦……? え、それってまさか……男!? マジ!? ネカマ!? 女装!? 男の娘!? ロリコン!? まさかそこまで同じなんて」
「キモ……」
はぁ……こういう反応が来るとは思ってた。
でも実際言われるとショックだな。
「一応俺の言い訳を聞いてくれ」
俺は話した。
この格好になった経緯を。
とはいえそれを信じてくれるかは分からない。
いや、あからさまな作り話にも聞こえる。信じないだろう。俺なら信じない。
「へぇ、そりゃまた大変な目に遭ったんだねぇ」
ま、そうなるよな。
いきなり言われて信じろという方が難しい。
だがそのあとは少し予想外の展開だった。
何よりそんな話を興味なさそうな顔で聞いていた水鏡が口を開いたからだ。
「九神、どうなの?」
「ん? ああ、嘘は言ってないみたいだ。だから信じるよ。だからごめんよ、変なこと言っちゃって」
「え?」
正直、さらに馬鹿にされると思った。
だからその反応が意外で、疑ってしまって、そして不安になった。
「信じるって、そんな簡単でいいの?」
「うん。てか別にそこらへんは知ったところでそうなんだって話だし。これからの僕たちには何ら影響はないでしょ。それにね、ちょっとだけ種明かしをしてしまうと、僕には人のウソが分かるんだ。そういうスキルでね」
そうか、こいつらもプレイヤーってことはスキルがあるんだ。
「ま、というわけでよろしくアッキー」
「ああ……って、アッキー!?」
「だってジャンヌって呼ぶのもちょっとね。だから明彦のアッキー。それともホースケの方がいい?」
「それは色々怒られるからマジでやめて……」
「んじゃアッキーだね。よろしく。ん? てか年下でいいんだよね」
「ああ、今じゃこんななりだけど、19歳の大学生だ」
「へぇ、僕と水鏡が今年で21歳だからほとんど同い年だね」
「勝手に他人の年齢公開しないで」
「悪かったよ水鏡。でもいいだろ、ここだけの秘密だよ」
「…………ふん」
この2人の関係性が未だにつかめないな。
どうやらこの席は無礼講みたいだからこっちからも突っついてみるか。
「2人は元から知り合いだったのか?」
「まさか。この世界に来て初めて会ったよ。最初はプレイヤーかどうかも分からなかったけど。水鏡ってこう見えて優しいんだよ。僕が困っている時に助けてもらって色々手伝ってもらったんだ」
「九神が今にも死にそうな顔で助けてくださいって来たから助けてあげたの。そうでなきゃこんな……」
そうか、そういう出会いもあるのか。
俺も最初はジルに会ったけど、プレイヤーかどうかなんて考えなかったな。
もとより俺以外のプレイヤーがいるなんて思いもよらなかったけど。
「一目見てこの人は信頼できると思ったよ。それから2人で商売を始めて、とんとん拍子に仕事の幅も広くなっていったんだ。そこでは僕のスキルが役に立ったな」
「なんで? 嘘が分かるってだけじゃない?」
「商売なんて人間相手の勝負だからね。商談でも誠心誠意の真心で来るのか、こちらを損させてやろうと考えて来るのか分かれば、これほどやりやすいものはない。真作か贋作かの鑑定が知識なしでできちゃうからね」
なるほど。確かにそれが分かれば大損はしないから結果的に儲かるって寸法か。
ただそうなると疑問点が出てくる。
「そんなスキルを選んだってことは、元から商売を始めようと思ってたのか?」
「そうだね。実は元の世界でもそういった感じの仕事をしてたんだけど、これが見事に失敗して。それでここに来たら、そのリベンジをしてやろうと思ってさ。だからウソ発見器のスキルに、パラメータは政治力に全振りしたよ。まっ、王様になるなんて出来すぎだけどね」
天下統一とかを考えると、どうしても軍隊にかかわるスキルに目が行きがちだったけど、そういう考え方もあるのか。
「ちなみにアッキーはどういうスキル? 差し支えなければ教えてほしいな」
その問いに少し迷った。
本音を言えば教えたくない。俺のスキル『古の魔導書』は直接の威力がない分、その性質が重要となってくる。
それを他人に教えるのは、俺のスキルの効果を弱めることになるんじゃないか。
迷ったのは、そう思いながらも教えるべきだと思ったから。
仲間と言ってくれて、俺のこの世界の生い立ちも信じてくれた2人にあまり嘘は言いたくないというのが小さな理由。
俺と同じように性質が重要なスキルだというのに、隠さずに俺に教えてくれた九神への義理というのが中くらいの理由。
何より大きな理由が、九神のウソ発見器スキルだ。
ここで俺が嘘を言ったとしたら、九神にそれがバレる。そうなると何故嘘をついたという話になって、その理由もスキルで暴かれるだろう。
そうなるとせっかく築いた彼らとの関係、それは個人ではなく国と国との関係にまで発展し、最悪の場合、信用できない相手として同盟を破棄される可能性だってある。
どうする。
迷うのは2秒。
決めた。
「くだらない能力だよ。色んなものが読める本を出現させることができる」
「それだけ?」
「そ。それだけ。地図も見れて結構役立つものだけど、直接戦闘で相手を倒したりとかってのは無理だよ。殴れはするけど。これもあの女神が勝手に決めやがったスキルでさ」
「ふーん」
九神の目がじっと俺を見てくる。
スキルで探っているのか、いないのか。あるいはそれはポーズで、実は九神の方も本当のスキルを隠しているという可能性だってある。
心臓の音が激しく聞こえる。
落ち着け、と思う。
俺は嘘は言っていない。
『古の魔導書』が、色んなものが読める本というのは嘘じゃない。
地図が見れるというのも役立っているというのも嘘じゃない。
直接戦闘に役立つものじゃないのも嘘じゃない。
女神が勝手に決めたというのも嘘じゃない。
そう、俺は何も嘘を言っていない。本当のことを言っていないだけ。
九神のウソ発見器の精度にもよるが、嘘かどうかだけ判断するスキルであればこれでごまかしきれるはずだ。
仮にそれ以上の思考を読まれるとかのスキルがあれば脅威だが、今こうして考えていることを言い当てられていない以上大丈夫なはずだ。
だからやがて――
「なるほどね。女神に勝手に決められたんだもの。しょうがないよ」
とあっけらかんとした表情で九神が言った時、俺は心の中で盛大にため息をついた。
「そうなんだ、いつかあの女神、ぶん殴ってやろうと思って頑張って生きてきた」
その言葉に九神は苦笑する。
「それじゃあスキルなしで帝国軍10万を撃退したってこと? 時雨と淡英に勝ったってこと? すごいねー。頭がいいっていうか、天才?」
「そんなんじゃないさ。皆が頑張っただけだよ」
「お、謙虚だね。でもうちの天が認めてるくらいだからそんなもんか。うん、なるほど。ありがとう。君という人間がよく分かったよ。その上で思うけどやっぱり似てるね、僕たちは」
「似てる? 俺と?」
全く似てないと思う。
立場も考え方も何もかも違う。
性別とスキルが特殊ってくらいか?
「いや、なんというか生き方というか、人生の考え方というかさ」
「ふーん」
よく分からない。
俺はそれも似ているとは思えなかったから。
それでもここで彼の信頼を得られるのは不都合ではないことは確か。
九神は自分の胸の前で両手のひらを合わせると、にこやかに言った。
「あらためてよろしくお願いだね、アッキー」
真っ白な襖を開けるときにもしやと思ったが、畳敷きの6畳一間の和室が現れた。その中央にちょこんとちゃぶ台が置いてあるのだから、もう完璧だ。何より新品らしき畳の香りがかぐわしい。
「すごいな、ここまで再現するなんて」
「やっぱり日本人は畳だろう? イグサが手に入るかは分からなかったけど、やってみるもんだよ。ま、これでも貿易大国だし、それに国王だしね。ここら辺はもう役得ってことで。さぁさぁ、入って座って座って」
履いてきたブーツを土間で脱ぎ、畳を足で踏みしめる。
ソックスの裏で感じる畳の感触。その何でもない行動が、日本という国を意識させて俺の心を揺さぶって来た。
「紅茶がいいかな? それともコーヒー? あ、お酒はだめだよ」
「コーヒーもあるんだ」
「それも作らせたよ。コーヒー豆はあったけどその利用法が全く確立してなかったから、ちょちょいと」
「詳しいんだな。もしかして日本ではそういうことを?」
「あ、それ聞いちゃうんだね」
「え、あ……」
そういえばそんなことを聞くなんて我ながららしくない。
初めてプレイヤーと話をするということで、少し舞い上がっているのかもしれない。
「ま、詳しい話は落ち着いてから。じゃあコーヒーでいいね。ちょっと待ってて。今いれてくるから」
そう言って九神は別室に続くドアを開けてその中に入ってしまった。
「…………」
ただ残された方としてはどうしていいのか分からない。
何より水鏡と紹介された女性と2人きりというのがかなり気まずい。なんかこの人、俺と視線を合わせてくれないし、正直怖い。
「座ったら?」
「は、はい!」
背後から急に話しかけられて思わず敬語になってしまった。
「そんな緊張することないのに」
水鏡は感情をこめずにそう言うと、自分はすたすたと畳を踏みしめて部屋の角へ。
そして座った。体育座りで。
え、なにこれ。どういう状況?
なんでこの人、こんな隅で座ってるの? 座敷わらし?
「なにぼっとしてるの?」
「え、いや……その……なんでそんな端っこに?」
「別に。落ち着くから。あんたが嫌いなわけじゃないから安心して。ただ興味がないだけだから」
うわぁ、この人。色んな意味でヤバい。てかきついわ。
こんな状況に上手く対処できるほど、俺は対人関係の経験値を積んでいない。
かといってこのまま入口で立っているのも収まりが悪い。
だから俺は何事もなかったように中央にあるちゃぶ台のそばに腰掛けようとする。
が、手と足は同じ方が出るわ、ソックスが滑って派手に転ぶわさんざんな目に遭った。
「……はぁ」
うわ、露骨にため息つかれた。
いや俺が悪いんだけどね。
とりあえず畳に膝をつくがどうしようと迷う。
正座はできる気がしないし、かといってスカートであぐらというのもダメだろ。かといって女性らしい座り方ってのも分からないし、あぁ、和室ってこういう時ムズイな!
というわけで俺も水鏡に倣って体育座り。なんだこれ。
「…………」
「…………」
そして沈黙。キツイ、この状況! 九神、早く戻って来い!
てかホスト側が接待を放棄して客をほったらかしってどういう現象だよ。
ええい、こうなったら玉砕覚悟で話を振る!
「えっと、パンツ見えてるよ?」
「……は?」
しまった! これじゃなかった!
でもワンピース姿で体育座りされると、ねぇ。それにもう……俺だって男だし。
「最低」
あからさまに嫌な顔されて、しかも体育座りを崩してさらに隅によってしまった。
ま、ですよね……。
今のは自分が悪い。
えっと、他に話題。話題……。
「水鏡はここに来て長いの?」
「初対面で呼び捨て?」
はい玉砕!
「あ……えっと、水鏡、さんは……」
「別に水鏡でいい。変にかしこまれると気持ち悪い」
じゃあなんで異議唱えたんだよ!
とはいえそんなことを言える勇気もなく、5分ほどの時間をお互い無言で過ごした。
俺は気まずさと息苦しさとプレッシャーで息も絶え絶え、対する水鏡はすまし顔で無表情。
そんな苦しみも、襖が開かれることで終了した。
「さてさて、お待たせしたね。ん、もしかして水鏡と何か喋った?」
「……いや、別に」
「あー何か言われたかな。でも凄いな。水鏡が初対面でそんなに喋るなんて、君、気に入られたんじゃない?」
あの言葉のどこに気に入る要素があったのか……。
そんな俺の視線に気づくことなく、九神はちゃぶだいに3つのカップを置いた。
動物をあしらった絵が描かれており、俺はアリクイ、九神はカピバラ、水鏡はテナガザルという謎のラインナップだった。
「さって、じゃあプレイヤーの出会いを記念して」
九神が俺にカップを差し出してくる。俺もカップを手にすると、九神のに小さく当てた。
水鏡は手を伸ばしてカップを素早く強奪すると、再び部屋の隅で体育座りしてちびちび飲み始めた。なんなんだ……。だから見えるっての。
「えっと、君の名前ってジャンヌ・ダルクだっけ?」
そんな水鏡は放置しておくのか、九神は俺を見ながらそう口を開いた。
「あ、ああ」
「それって本名? まさかダルクがファミリーネームとかってわけないよね。ってことは偽名? いや、プレイヤーネームってところかな」
やっぱりそうくるか。
自分がどうこう言いながらも、しっかりこっちは探ってくるとは。
「っと、まだちゃんとした自己紹介をしてなかったね。僕は九鬼明。しがない会社員だよ。九神というのがこちらのプレイヤーネームなんだけど、ご察しの通り、クカミというのは九鬼からとったんだ。ほら、鬼って“カミ”とも読むだろう? ご存じの通り、九鬼文書とか」
いや、ご察しの通りでもご存じの通りでもないが。
「ちなみに彼女は水鏡八重。本名もプレイヤーネームも水鏡。ほんっと面白味ないよね」
「別に。名前に面白味も何もない。ジャンヌ・ダルクみたいな名前をつける方が理解に苦しむけど」
ぐっ……。
痛いところをずけずけと。
「あー、ごめんね。悪気はないんだよ、彼女。同じプレイヤーの仲間が増えて嬉しがってるだけだから」
「だれが……」
呟くように吐き捨てる水鏡。それを見てほほ笑む九鬼――いや、九神。
仲間、か……。
その言葉が重くのしかかる。
よくよく考えたら、俺はオムカの皆に隠し事をしている。俺の根本に関わる重大な隠し事だ。それを話せば彼らは理解に苦しむだろうし、自分との距離もきっと変わる。
あるいはずっとジャンヌ・ダルクを演じ続けられれば良いのかもしれない。
でもそれは俺にとっては致命的。いつか元の世界に戻るために、俺はジャンヌ・ダルクであり続けてはならないのだ。写楽明彦という男であることは忘れてはいけない。
だからいつかは彼らにも本当の俺を告白する必要があるのは避けられない事実としてある。
でも今じゃない。
先送りにすればその分、反動は激しいものになるのはわかっている。
それでも。それでも今のこの関係を壊したくない。
卑怯だと思う。
でも居心地の良さに甘えてしまう。それは悪いことなのだろうか。
こんな世界に放り出されて、生死の境を歩かされて、居場所を求めてはいけないのだろうか。
わからない。
ただ言い出せないでいる自分が心苦しく思う。
そんな時に、この2人に出会った。
ここで少しでも分かち合ってくれる人がいる。写楽明彦としてさらけ出せる相手。
そう思うと、俺はもうどうしても我慢が出来なくなった。
その先にある反応が想像できたとしても。
「写楽……」
「ん? 何? 写楽? ホースケ? いや東洲斎?」
こいつ、その2つが出てくるとか渋いな。
「いや、その…………写楽、明彦」
「ん? 何? ごめん、小さくて聞こえなかったよ」
「明彦って聞こえた」
「あぁ、そうだよ。写楽明彦! それが俺の名前! 以上、終わり!!」
なんでこんな恥ずかしいんだ。
言ってせいせいしたかと思ったが、湧き上がってくるのは羞恥の心。
九神は目をぱちくりとさせていたが、やがて何かに納得いったらしい。
「ん……? 明彦……? え、それってまさか……男!? マジ!? ネカマ!? 女装!? 男の娘!? ロリコン!? まさかそこまで同じなんて」
「キモ……」
はぁ……こういう反応が来るとは思ってた。
でも実際言われるとショックだな。
「一応俺の言い訳を聞いてくれ」
俺は話した。
この格好になった経緯を。
とはいえそれを信じてくれるかは分からない。
いや、あからさまな作り話にも聞こえる。信じないだろう。俺なら信じない。
「へぇ、そりゃまた大変な目に遭ったんだねぇ」
ま、そうなるよな。
いきなり言われて信じろという方が難しい。
だがそのあとは少し予想外の展開だった。
何よりそんな話を興味なさそうな顔で聞いていた水鏡が口を開いたからだ。
「九神、どうなの?」
「ん? ああ、嘘は言ってないみたいだ。だから信じるよ。だからごめんよ、変なこと言っちゃって」
「え?」
正直、さらに馬鹿にされると思った。
だからその反応が意外で、疑ってしまって、そして不安になった。
「信じるって、そんな簡単でいいの?」
「うん。てか別にそこらへんは知ったところでそうなんだって話だし。これからの僕たちには何ら影響はないでしょ。それにね、ちょっとだけ種明かしをしてしまうと、僕には人のウソが分かるんだ。そういうスキルでね」
そうか、こいつらもプレイヤーってことはスキルがあるんだ。
「ま、というわけでよろしくアッキー」
「ああ……って、アッキー!?」
「だってジャンヌって呼ぶのもちょっとね。だから明彦のアッキー。それともホースケの方がいい?」
「それは色々怒られるからマジでやめて……」
「んじゃアッキーだね。よろしく。ん? てか年下でいいんだよね」
「ああ、今じゃこんななりだけど、19歳の大学生だ」
「へぇ、僕と水鏡が今年で21歳だからほとんど同い年だね」
「勝手に他人の年齢公開しないで」
「悪かったよ水鏡。でもいいだろ、ここだけの秘密だよ」
「…………ふん」
この2人の関係性が未だにつかめないな。
どうやらこの席は無礼講みたいだからこっちからも突っついてみるか。
「2人は元から知り合いだったのか?」
「まさか。この世界に来て初めて会ったよ。最初はプレイヤーかどうかも分からなかったけど。水鏡ってこう見えて優しいんだよ。僕が困っている時に助けてもらって色々手伝ってもらったんだ」
「九神が今にも死にそうな顔で助けてくださいって来たから助けてあげたの。そうでなきゃこんな……」
そうか、そういう出会いもあるのか。
俺も最初はジルに会ったけど、プレイヤーかどうかなんて考えなかったな。
もとより俺以外のプレイヤーがいるなんて思いもよらなかったけど。
「一目見てこの人は信頼できると思ったよ。それから2人で商売を始めて、とんとん拍子に仕事の幅も広くなっていったんだ。そこでは僕のスキルが役に立ったな」
「なんで? 嘘が分かるってだけじゃない?」
「商売なんて人間相手の勝負だからね。商談でも誠心誠意の真心で来るのか、こちらを損させてやろうと考えて来るのか分かれば、これほどやりやすいものはない。真作か贋作かの鑑定が知識なしでできちゃうからね」
なるほど。確かにそれが分かれば大損はしないから結果的に儲かるって寸法か。
ただそうなると疑問点が出てくる。
「そんなスキルを選んだってことは、元から商売を始めようと思ってたのか?」
「そうだね。実は元の世界でもそういった感じの仕事をしてたんだけど、これが見事に失敗して。それでここに来たら、そのリベンジをしてやろうと思ってさ。だからウソ発見器のスキルに、パラメータは政治力に全振りしたよ。まっ、王様になるなんて出来すぎだけどね」
天下統一とかを考えると、どうしても軍隊にかかわるスキルに目が行きがちだったけど、そういう考え方もあるのか。
「ちなみにアッキーはどういうスキル? 差し支えなければ教えてほしいな」
その問いに少し迷った。
本音を言えば教えたくない。俺のスキル『古の魔導書』は直接の威力がない分、その性質が重要となってくる。
それを他人に教えるのは、俺のスキルの効果を弱めることになるんじゃないか。
迷ったのは、そう思いながらも教えるべきだと思ったから。
仲間と言ってくれて、俺のこの世界の生い立ちも信じてくれた2人にあまり嘘は言いたくないというのが小さな理由。
俺と同じように性質が重要なスキルだというのに、隠さずに俺に教えてくれた九神への義理というのが中くらいの理由。
何より大きな理由が、九神のウソ発見器スキルだ。
ここで俺が嘘を言ったとしたら、九神にそれがバレる。そうなると何故嘘をついたという話になって、その理由もスキルで暴かれるだろう。
そうなるとせっかく築いた彼らとの関係、それは個人ではなく国と国との関係にまで発展し、最悪の場合、信用できない相手として同盟を破棄される可能性だってある。
どうする。
迷うのは2秒。
決めた。
「くだらない能力だよ。色んなものが読める本を出現させることができる」
「それだけ?」
「そ。それだけ。地図も見れて結構役立つものだけど、直接戦闘で相手を倒したりとかってのは無理だよ。殴れはするけど。これもあの女神が勝手に決めやがったスキルでさ」
「ふーん」
九神の目がじっと俺を見てくる。
スキルで探っているのか、いないのか。あるいはそれはポーズで、実は九神の方も本当のスキルを隠しているという可能性だってある。
心臓の音が激しく聞こえる。
落ち着け、と思う。
俺は嘘は言っていない。
『古の魔導書』が、色んなものが読める本というのは嘘じゃない。
地図が見れるというのも役立っているというのも嘘じゃない。
直接戦闘に役立つものじゃないのも嘘じゃない。
女神が勝手に決めたというのも嘘じゃない。
そう、俺は何も嘘を言っていない。本当のことを言っていないだけ。
九神のウソ発見器の精度にもよるが、嘘かどうかだけ判断するスキルであればこれでごまかしきれるはずだ。
仮にそれ以上の思考を読まれるとかのスキルがあれば脅威だが、今こうして考えていることを言い当てられていない以上大丈夫なはずだ。
だからやがて――
「なるほどね。女神に勝手に決められたんだもの。しょうがないよ」
とあっけらかんとした表情で九神が言った時、俺は心の中で盛大にため息をついた。
「そうなんだ、いつかあの女神、ぶん殴ってやろうと思って頑張って生きてきた」
その言葉に九神は苦笑する。
「それじゃあスキルなしで帝国軍10万を撃退したってこと? 時雨と淡英に勝ったってこと? すごいねー。頭がいいっていうか、天才?」
「そんなんじゃないさ。皆が頑張っただけだよ」
「お、謙虚だね。でもうちの天が認めてるくらいだからそんなもんか。うん、なるほど。ありがとう。君という人間がよく分かったよ。その上で思うけどやっぱり似てるね、僕たちは」
「似てる? 俺と?」
全く似てないと思う。
立場も考え方も何もかも違う。
性別とスキルが特殊ってくらいか?
「いや、なんというか生き方というか、人生の考え方というかさ」
「ふーん」
よく分からない。
俺はそれも似ているとは思えなかったから。
それでもここで彼の信頼を得られるのは不都合ではないことは確か。
九神は自分の胸の前で両手のひらを合わせると、にこやかに言った。
「あらためてよろしくお願いだね、アッキー」
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彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
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僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
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――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
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