知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第2章 南郡平定戦

第39話 デッド・オア・女神

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「はい、というわけでーアッキーはまたまた死んでしまいましたー。おお、死んでしまうとは何事かー、って死んでんどーすんの! なにやってんのアッキー。過労死とかそんなブラック企業に就職させたつもりはありません!」

 はぁ……のっけからこのテンション。
 ただでさえ疲れ切ってるのに、なんなんだよ。
 てかなんでまたこの女神がいるの?

「あれ、反応薄め? アッキー死んだんだよ? もう戻れないんだよ? あの世界にも、元の世界にも」

「さすがに二度目となるとな……そりゃ落ち込むさ」

「ふーん。アッキーにしては殊勝しゅしょうじゃん。まぁいいけどね。本当は死んでないし」

 死んでないのかよ!

「ん、でも結構危なかった感じだよ。あと一歩でさらば世界よ第2章って感じ」

 全然意味が分からん。

 けど、まぁ死んでないなら何よりだ。

「んじゃあもう起きるから。てかあんま出てくんなよ」

「ひっどーい。そんなに私から出番を奪いたいの!?」

 だから出番ってなんだよ。

「もう、そっちがそう来るならこっちにも考えがあるんだから。こないだ約束したノルマの件、それを白紙に戻しちゃってもいいんだけどー?」

「ノルマ?」

「あれ? アッキー忘れちゃった? うぅ、アッキー私にあんなことしておいて、忘れるなんて……ひどい。責任取ってもらうからね!」

「黙れ。気持ち悪い」

「扱いひどくない!?」

 ただでさえこいつには恨みしかないのだ。
 しかもこのハイテンション。

 扱いも雑になるのも当然だろう。
 てか体もないのに何ができるってんだ、何が。

「で? ノルマってなんだ?」

「ん……ほんとに忘れてる? 南郡を制圧しようって試みが上手くいきそうで、ご褒美を…………あっ!」

 女神が、しまった、と言わんばかりの表情で口に手を当てる。

 なんだ?
 何かあったのか。
 ノルマ?
 南郡に関係がある?
 制圧?
 ご褒美?

 ……年内?

「あっ!」

 思い出した。
 逆に何故今まで思い出さなかったのか。

 南郡の一部を今年中に支配する。
 そうすれば知力のパラメータを1下げて、パラメータ100ボーナスを発生できるようにしてくれる。
 それがノルマとご褒美だった。

 そんな大事なことを何故忘れていた。
 これが夢だからか? 夢だから記憶できないとか。
 いや、だったら最初はどうなんだ? この世界のルール、勝手にステータスと見た目を決められたこと、この女神への恨み、すべて覚えている。

 あれは最初だから?
 いや、それとも何かが他と違っていて――

「そういや、いつもハンマーで殴り起こされてたよな」

「ぎくっ! な、な、な、なんのことかなー?」

 へたくそか!
 どれだけ分かりやすいんだ、こいつ。

「ちょっといつものハンマー見せてみ?」

「な、ないない! そんな変なものじゃなくて、ただのハンマーだよ。ただの『記憶消し消しアディオスアリーヴェデルチハンマー』だよ!?」

「記憶消しとか言ってるじゃねぇか!」

 こいつと話してると頭が痛くなってくる。
 いや、頭ないけど。

「とにかく。思い出したからには、今回はこの記憶、持ち帰らせてもらうからな。そのハンマー絶対使うなよ!」

「絶対……ほりゃ!」

「うわっ、危なっ!? 使うなっつってるだろ!」

「え、絶対やるなって、やれって意味じゃないの?」

「そういうバラエティのお約束みたいなことはいいんだよ! てかそういうことするから女神らしくねーんだよ!」

「うぅ、アッキーのいけずー」

 てかさりげなく言ってるけど、そのアッキーっていうの認めたわけじゃないからな。
 何しれっと使ってんの。

「いいじゃん、それくらい。これからアッキー大変になるのに」

 謝罪と弁解が全く一致していないんだが。
 それにもうすでに大変です。過労死寸前だったんだから。

「あら、これくらいで大変だと思うのでしたら、この後がもたなくってよ?」

「どういう意味だ?」

 急に真面目ぶったトーンになった女神の言葉は、どこか不穏で危険なニュアンスを含んでいた。

「貴方は首尾よく南郡を平定したと思ってるかもしれないけど、そう上手くいかないのが人間の世界。複雑に絡まった人々の思惑。それが1つの方向性を指示した時の力は、説明しなくても分かるでしょう? そう、オムカを独立に導いた貴方なら、人の欲望と執念と憤怒にまみれた意思がどれだけ恐ろしいものか、分かってるはず」

 それは……言われなくとも。

「気づいているのなら何故放置しているのです? なんでわかり合おうとしないのです? 南郡は今とてもホットな状況。きっかけがあれば爆発してしまうほどに。そのきっかけがもうすぐ来る。果たしてその時、貴方は大事なものを守れますか?」

 俺の、大事なもの……?

「そう。今は距離があるけれど、お互いに信頼で結びついた相手。それが人々の思惑で粉々に砕かれてしまう。それなのに貴方は見て見ぬふり、聞いて聞かぬふり、意識して意識しないふり。あぁ、破滅はすぐそこにあるというのに!」

 大事なもの?
 距離?
 信頼?

 まさか――ジル!?

「さぁ、もう行きなさい。貴方が本当に大切にするべき人は誰なのか。国を制するとはどういうことなのか。その答えを得るために。今は行きなさい、進みなさい」

 女神の厳粛な声に押されるように、俺の体――はないので意識が背後に進んでいく。
 引っ張られる。
 どこへ?
 この世界ではない、違う世界へ。

 ここは現実とあの世の狭間。
 存在しえない世界。
 俺は戻る。
 俺のいる場所。
 俺のいる世界。
 戦場へ。
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