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第2章 南郡平定戦
第56話 ジャンヌの休日
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翌日。
この日は特に呼び出しもないので、完璧なオフだ。
もちろん王都の外には出られないが、それでもやれることはある。
まずはニーアのお見舞い。
ニーアは今、ミストの手配してくれた隠れ家で、通いの医者に診てもらっている。
顔を出すと、簡素な部屋にベッドですやすやと眠っているニーアだけがいた。
点滴とかあればもう少し簡単に回復するだろうに。とはいえない物ねだりをしても仕方ない。
とりあえず無事な姿を見れてホッとしている。
「…………」
寝顔は美人なんだよなぁ、と眠っているニーアを見て思う。
口を開くだけ損をしてる。
相変わらずマリアのためには無茶をするニーアの顔が小憎らしくなって、俺は鼻先に軽いデコピンをお見舞いしてその場を去った。
「――で、どうするさ?」
お見舞いの後はミストの店まで行った。
どうやらここでの顔は貿易商ということらしい。
見たことのあるものからないものまで、多種多様な商品を軒先に並べた店の奥の和室で、俺はミストと対面していた。
今のミストの姿は茶髪に少し肥えたおばちゃんといった風貌で、まぁ色んな意味でハマりすぎている。
「とりあえず様子を見るしかないな。女王が囚われの身で、俺も自由に動けないし」
「いや、わたしが聞いてるのは結婚するのかってことさ」
「そっちかよ!」
「そりゃ気になるでしょ。だって男同士だよ!? めくるめく禁断の恋……はぁ、おかわり3杯はイケる」
「脳みそ腐ってんのか!?」
「腐ってるんじゃないさ! 腐葉土としてよくこなれているのさ!」
「結局腐ってる!?」
「え……ジャンヌ隊長って男だったんですか」
不意にミストとは違う声が聞こえて驚き、更に俺の真横に別の人間がいたことで二度驚いた。
「イッガー!? いたのか!?」
本当こいつ心臓に悪い。
「イッガーはわたしの店を拠点としてるからね、そりゃいるさ」
「いや、そういう問題じゃなく……」
「あ、そうそう。せっかくだから紹介しとくさ。彼女は見た目女だけど、中身は男。そして生粋のプレイヤーさ」
「………………」
無反応。無表情。
そりゃそうだ。
「いや、ミスト。そんなこといきなり言われてイッガーも困ってるじゃないか」
「あ、いえ。驚いてます。ジャンヌ隊長も、まさかプレイヤーだったなんて」
驚いたならなんか反応しろよ。
ん……? 待て、今ジャンヌ隊長“も”とか言わなかったか?
「え、もしかしてお互い知らなかったさ? はっは、これは愉快さね。不思議に思わなかったさ? いくらなんでもここまで気配を消せる人間が、ただの人間であるかどうかなんて」
いや、確かに一瞬は考えた。
考えたけど、あの女神にオムカにはプレイヤーはいないとか言われたし、まさかこんな都合よく現れるとか思ってなかったから。
「はぁ……そうなんすね。あ、えっと、自分のスキル『存在改竄』って言います。なんか、存在感を極限まで薄くできるとかで――」
「いや、いい。お前自分のスキルをペラペラ喋るな。それってつまり弱点暴露しているようなものだからな!」
「あれー? それじゃあわたしもヤバイ? めっちゃ喋っちゃったし」
「お前はもうどうでもいい」
「うわー、キツイさー。わたしが何をしたって言うのさ?」
色々やっただろうが。
耳舐めたり、言葉でもてあそんだり、抱き着いて来たり。
「はぁ、気をつけます」
イッガーの方も分かってんのかなぁ。
なんか不安になる。
「てかなんだよ、プレイヤーならそうと言ってくれれば……って、そうか。俺がそうだとは知らなかったわけだよな」
「はぁ……」
「てゆうか、俺みたいな子供に命令されるのムカってこなかったのか?」
「あ、それは別に」
なんだか張り合いないなぁ。
俺がこんなに驚いてるのに、反応が薄すぎる。
「あのー」
「ん、なんだよ」
「本当に男なんですか?」
ずっこけてお茶をこぼすところだった。
今そこかよ。やっぱりテンポが10くらい違う気がする。
てかそう聞くってことは、女として見られていたということで、やっぱりなんだかカミングアウトするみたいで恥ずかしいな。
「…………あぁ、男だよ」
「そうですか」
「…………」
「…………」
「………………?」
「………………?」
「……………………」
「……………………それだけ!?」
もっと何かあると思ってしまったじゃないか!
「ぶははっ! 2人とも面白いさー」
ミストが腹を抱えて笑っている。
「黙ってろミスト」
ったく、なんで俺の周りはこういう変な奴ばっかだよ。
「とにかく! 今はこっちから動くべきじゃない。そこらへんよく理解してくれよ。イッガー、もしかしたら色々働いてもらうかもしれない。その時は頼む」
「了解、です」
「で、結婚は? どうするさ?」
「誰がするか!」
にやにやと笑みを浮かべてくるミスト。
誰かこいつを黙らせてくれ!
終盤、大いに話はずれにずれたが、とりあえず今後のことを話し合うことはできた。
今日やることは終わったので、昼過ぎには宿舎へと戻ることにした。
散歩も同然の帰路。
だが前も来た時に思ったんだけど、人通りは少なく活気がない。遠くに煙が多く上がっている。火事ではなく、工業的な煙に見える。そちらの方は人がいるのだろうか。
王都の街並みというのにかなり寂しい。
こんなんで経済が回るのだろうか。
「もしかして、ジャンヌ様ですか?」
不意に声をかけられた。
振り向くと腰の曲がった老人が杖をついて立っている。
知らない人だ。けど無視するのも悪いし、害意は感じなかった。
「あ、はぁ」
「おお、やはりあの時の! おおい、皆! ジャンヌ様がいらしたぞ!」
老人が杖を振って大声をあげると、そこかしこの民家から人が出てきた。
え、何? 何が起こるの!?
「おお、間違いない!」「あぁ、あれがジャンヌ・ダルク様だ!」「前の略奪の時には救ってくださってありがとうございます」
あぁ、なるほど。分かってきた。
そういえばここは、先月に南郡を見て回った時に来た場所か。あの時はドスガ四天王の略奪で頭に血が上ってたし、状況も混乱していたし、そもそも地理に不慣れだったから気づかなかった。
群がる人たちは次々と増えていき、その数は50人にも及びそうになった。慣れてきたとはいえ、まだ人前が得意というわけではない。逃げ出そうと思わないだけまだ成長したと思う。
いろんな人から感謝の言葉をもらいながらも、これはある意味、ドスガ王の情報を得る好機だった。
「ちょっと話を聞かせてもらえないかな?」
「はぁ、わしらがお答えできることならばよいのですが」
「そんな難しい話じゃないんだ。この国について少し聞きたい。というかこの王都。あまり活気がないように見えるけど、いつもこんな感じなのかな?」
「はぁ。この街はいつもこんなんですわ。王都とは名ばかり。ここよか北の港町や南のスーン王国との国境にある要塞都市の方が賑わっとります。この国は戦争と交易で成り立ってるので」
「わしらはただの奴隷です。東地区にある工場で武器や特産品である織物を作るための」
あぁ、なるほど。
このドスガ王国というのはそういう国か。
外では農業を、ここのような主要都市の内では貿易に必要な輸出品を作っている。
それを北ではシータ王国やワーンス王国らと、南ではトロン、スーン、フィルフ、さらには砂漠を超えてくるという外国と交易して利益を得ているということだろう。
そして戦争という名の略奪。
そんな戦国時代の見本のような都市国家がこの王国の実態だった。
だがどこか、不自然だ。不健全というべきか。
分かってる。
熱気がないのだ。
こういった新興国というものは、上も下も一緒になって湧き上がっているものだ。戦後の日本の高度成長期もそんな感じだったと思う。
その熱がない。
少なくとも下の民衆には。
それはドスガ王に人気がないことだからと思ったが、そうとは言えないようだった。
「王様は怖い人じゃ。だが強い。だから誰も逆らわない。最低限の暮らしをさせてくれて、なおかつ守ってくれるのじゃから文句を言うものもいないがな」
「先代の時はそりゃひどかったものさ。産業に注力するのはいいけど、他国からの侵略には話し合いで対応しようとする。だから国はどんどん貧しくなる一方だ」
「そんな状況で帝国に占領されてしまいましたから。ますますひどい目に遭いました。安心して生きていける分、今の方がまだマシです」
先代の王を追放した、と聞いていたけどそういうことだったのか。
先代の王は確かに政治に対してはかなり優秀だったのだろう。だがこの戦乱の世の中で、それだけで国を保つことはできない。国が豊かになれば、それを奪おうと近隣諸国が攻めて来るような時代なのだ。
そういった時勢なのだから、今のドスガ王のような強力な指導者がいてくれた方が民衆にとっては安心なのかもしれない。
ちなみにマツナガについても聞いてみたが、返ってきたのは意外な答えだった。
「宰相? あぁ、あのよく分からない変な人。うーん、とりあえず有能だとは思うよ。崩壊寸前のこの国の財政を立て直したってことになってるし」
「そうじゃのう。よく分からない変なお人だが、少なくとも仕事はくれる。そこだけは感謝しとるのぅ」
「ええ、よく王様を抑えてくださっていると思うわ。よく分からない変なお方だけど。あ、これは内緒ね」
どうやらかなり有能と評判だった。
この国の経済状況の基礎と作ったとして、少なくとも民衆から敵視はされていないようだ。
よく分からない変人扱いされてるけど。
「なるほど。ためになった。色々教えてくれてありがとう」
「いえいえ。命を救ってくださったお方じゃ」「そうそう。しかもお妃様になるんだ。俺たちなんかと口をきける立場じゃないってのに、こうして話してくれて光栄です」「応援してます。何かあったら言ってください。私たちじゃ大した力になれないかもしれないですけど、必ずお味方しますから」
そんな言葉をかけられて、ふとオムカの人々を思い出した。
あぁ、そうか。たとえ国が違っても、こういった人たちの想いっていうのは変わらないものか。
そう思うと、なんだか胸が熱くなってきた。
だが――破滅はすぐ傍まで来ていたのに、俺は暢気にそんなことを考えていたんだ。
この日は特に呼び出しもないので、完璧なオフだ。
もちろん王都の外には出られないが、それでもやれることはある。
まずはニーアのお見舞い。
ニーアは今、ミストの手配してくれた隠れ家で、通いの医者に診てもらっている。
顔を出すと、簡素な部屋にベッドですやすやと眠っているニーアだけがいた。
点滴とかあればもう少し簡単に回復するだろうに。とはいえない物ねだりをしても仕方ない。
とりあえず無事な姿を見れてホッとしている。
「…………」
寝顔は美人なんだよなぁ、と眠っているニーアを見て思う。
口を開くだけ損をしてる。
相変わらずマリアのためには無茶をするニーアの顔が小憎らしくなって、俺は鼻先に軽いデコピンをお見舞いしてその場を去った。
「――で、どうするさ?」
お見舞いの後はミストの店まで行った。
どうやらここでの顔は貿易商ということらしい。
見たことのあるものからないものまで、多種多様な商品を軒先に並べた店の奥の和室で、俺はミストと対面していた。
今のミストの姿は茶髪に少し肥えたおばちゃんといった風貌で、まぁ色んな意味でハマりすぎている。
「とりあえず様子を見るしかないな。女王が囚われの身で、俺も自由に動けないし」
「いや、わたしが聞いてるのは結婚するのかってことさ」
「そっちかよ!」
「そりゃ気になるでしょ。だって男同士だよ!? めくるめく禁断の恋……はぁ、おかわり3杯はイケる」
「脳みそ腐ってんのか!?」
「腐ってるんじゃないさ! 腐葉土としてよくこなれているのさ!」
「結局腐ってる!?」
「え……ジャンヌ隊長って男だったんですか」
不意にミストとは違う声が聞こえて驚き、更に俺の真横に別の人間がいたことで二度驚いた。
「イッガー!? いたのか!?」
本当こいつ心臓に悪い。
「イッガーはわたしの店を拠点としてるからね、そりゃいるさ」
「いや、そういう問題じゃなく……」
「あ、そうそう。せっかくだから紹介しとくさ。彼女は見た目女だけど、中身は男。そして生粋のプレイヤーさ」
「………………」
無反応。無表情。
そりゃそうだ。
「いや、ミスト。そんなこといきなり言われてイッガーも困ってるじゃないか」
「あ、いえ。驚いてます。ジャンヌ隊長も、まさかプレイヤーだったなんて」
驚いたならなんか反応しろよ。
ん……? 待て、今ジャンヌ隊長“も”とか言わなかったか?
「え、もしかしてお互い知らなかったさ? はっは、これは愉快さね。不思議に思わなかったさ? いくらなんでもここまで気配を消せる人間が、ただの人間であるかどうかなんて」
いや、確かに一瞬は考えた。
考えたけど、あの女神にオムカにはプレイヤーはいないとか言われたし、まさかこんな都合よく現れるとか思ってなかったから。
「はぁ……そうなんすね。あ、えっと、自分のスキル『存在改竄』って言います。なんか、存在感を極限まで薄くできるとかで――」
「いや、いい。お前自分のスキルをペラペラ喋るな。それってつまり弱点暴露しているようなものだからな!」
「あれー? それじゃあわたしもヤバイ? めっちゃ喋っちゃったし」
「お前はもうどうでもいい」
「うわー、キツイさー。わたしが何をしたって言うのさ?」
色々やっただろうが。
耳舐めたり、言葉でもてあそんだり、抱き着いて来たり。
「はぁ、気をつけます」
イッガーの方も分かってんのかなぁ。
なんか不安になる。
「てかなんだよ、プレイヤーならそうと言ってくれれば……って、そうか。俺がそうだとは知らなかったわけだよな」
「はぁ……」
「てゆうか、俺みたいな子供に命令されるのムカってこなかったのか?」
「あ、それは別に」
なんだか張り合いないなぁ。
俺がこんなに驚いてるのに、反応が薄すぎる。
「あのー」
「ん、なんだよ」
「本当に男なんですか?」
ずっこけてお茶をこぼすところだった。
今そこかよ。やっぱりテンポが10くらい違う気がする。
てかそう聞くってことは、女として見られていたということで、やっぱりなんだかカミングアウトするみたいで恥ずかしいな。
「…………あぁ、男だよ」
「そうですか」
「…………」
「…………」
「………………?」
「………………?」
「……………………」
「……………………それだけ!?」
もっと何かあると思ってしまったじゃないか!
「ぶははっ! 2人とも面白いさー」
ミストが腹を抱えて笑っている。
「黙ってろミスト」
ったく、なんで俺の周りはこういう変な奴ばっかだよ。
「とにかく! 今はこっちから動くべきじゃない。そこらへんよく理解してくれよ。イッガー、もしかしたら色々働いてもらうかもしれない。その時は頼む」
「了解、です」
「で、結婚は? どうするさ?」
「誰がするか!」
にやにやと笑みを浮かべてくるミスト。
誰かこいつを黙らせてくれ!
終盤、大いに話はずれにずれたが、とりあえず今後のことを話し合うことはできた。
今日やることは終わったので、昼過ぎには宿舎へと戻ることにした。
散歩も同然の帰路。
だが前も来た時に思ったんだけど、人通りは少なく活気がない。遠くに煙が多く上がっている。火事ではなく、工業的な煙に見える。そちらの方は人がいるのだろうか。
王都の街並みというのにかなり寂しい。
こんなんで経済が回るのだろうか。
「もしかして、ジャンヌ様ですか?」
不意に声をかけられた。
振り向くと腰の曲がった老人が杖をついて立っている。
知らない人だ。けど無視するのも悪いし、害意は感じなかった。
「あ、はぁ」
「おお、やはりあの時の! おおい、皆! ジャンヌ様がいらしたぞ!」
老人が杖を振って大声をあげると、そこかしこの民家から人が出てきた。
え、何? 何が起こるの!?
「おお、間違いない!」「あぁ、あれがジャンヌ・ダルク様だ!」「前の略奪の時には救ってくださってありがとうございます」
あぁ、なるほど。分かってきた。
そういえばここは、先月に南郡を見て回った時に来た場所か。あの時はドスガ四天王の略奪で頭に血が上ってたし、状況も混乱していたし、そもそも地理に不慣れだったから気づかなかった。
群がる人たちは次々と増えていき、その数は50人にも及びそうになった。慣れてきたとはいえ、まだ人前が得意というわけではない。逃げ出そうと思わないだけまだ成長したと思う。
いろんな人から感謝の言葉をもらいながらも、これはある意味、ドスガ王の情報を得る好機だった。
「ちょっと話を聞かせてもらえないかな?」
「はぁ、わしらがお答えできることならばよいのですが」
「そんな難しい話じゃないんだ。この国について少し聞きたい。というかこの王都。あまり活気がないように見えるけど、いつもこんな感じなのかな?」
「はぁ。この街はいつもこんなんですわ。王都とは名ばかり。ここよか北の港町や南のスーン王国との国境にある要塞都市の方が賑わっとります。この国は戦争と交易で成り立ってるので」
「わしらはただの奴隷です。東地区にある工場で武器や特産品である織物を作るための」
あぁ、なるほど。
このドスガ王国というのはそういう国か。
外では農業を、ここのような主要都市の内では貿易に必要な輸出品を作っている。
それを北ではシータ王国やワーンス王国らと、南ではトロン、スーン、フィルフ、さらには砂漠を超えてくるという外国と交易して利益を得ているということだろう。
そして戦争という名の略奪。
そんな戦国時代の見本のような都市国家がこの王国の実態だった。
だがどこか、不自然だ。不健全というべきか。
分かってる。
熱気がないのだ。
こういった新興国というものは、上も下も一緒になって湧き上がっているものだ。戦後の日本の高度成長期もそんな感じだったと思う。
その熱がない。
少なくとも下の民衆には。
それはドスガ王に人気がないことだからと思ったが、そうとは言えないようだった。
「王様は怖い人じゃ。だが強い。だから誰も逆らわない。最低限の暮らしをさせてくれて、なおかつ守ってくれるのじゃから文句を言うものもいないがな」
「先代の時はそりゃひどかったものさ。産業に注力するのはいいけど、他国からの侵略には話し合いで対応しようとする。だから国はどんどん貧しくなる一方だ」
「そんな状況で帝国に占領されてしまいましたから。ますますひどい目に遭いました。安心して生きていける分、今の方がまだマシです」
先代の王を追放した、と聞いていたけどそういうことだったのか。
先代の王は確かに政治に対してはかなり優秀だったのだろう。だがこの戦乱の世の中で、それだけで国を保つことはできない。国が豊かになれば、それを奪おうと近隣諸国が攻めて来るような時代なのだ。
そういった時勢なのだから、今のドスガ王のような強力な指導者がいてくれた方が民衆にとっては安心なのかもしれない。
ちなみにマツナガについても聞いてみたが、返ってきたのは意外な答えだった。
「宰相? あぁ、あのよく分からない変な人。うーん、とりあえず有能だとは思うよ。崩壊寸前のこの国の財政を立て直したってことになってるし」
「そうじゃのう。よく分からない変なお人だが、少なくとも仕事はくれる。そこだけは感謝しとるのぅ」
「ええ、よく王様を抑えてくださっていると思うわ。よく分からない変なお方だけど。あ、これは内緒ね」
どうやらかなり有能と評判だった。
この国の経済状況の基礎と作ったとして、少なくとも民衆から敵視はされていないようだ。
よく分からない変人扱いされてるけど。
「なるほど。ためになった。色々教えてくれてありがとう」
「いえいえ。命を救ってくださったお方じゃ」「そうそう。しかもお妃様になるんだ。俺たちなんかと口をきける立場じゃないってのに、こうして話してくれて光栄です」「応援してます。何かあったら言ってください。私たちじゃ大した力になれないかもしれないですけど、必ずお味方しますから」
そんな言葉をかけられて、ふとオムカの人々を思い出した。
あぁ、そうか。たとえ国が違っても、こういった人たちの想いっていうのは変わらないものか。
そう思うと、なんだか胸が熱くなってきた。
だが――破滅はすぐ傍まで来ていたのに、俺は暢気にそんなことを考えていたんだ。
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