知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第2章 南郡平定戦

第77話 最低なエピローグ

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「なるほど。そんなことがあったのですね」

 年の瀬も迫ったある日。
 南郡の処理が終わって王都に戻ってきたマツナガを会議室に呼んだ。

 尾田とかいうエイン帝国の来訪について相談したかったからだ。
 今まではこういった相談は誰ともできなかったが、マツナガが来たことでそれができるようになったのは、少し気持ちが軽くなった気分だ。

 そこだけは素直にありがたい。

 そこだけは。

「ま、言わせておきましょう。まだ帝国の内乱の種は全て片付いていないようですから、少し火をくべればこちらに構っている暇などないでしょうし。そうやって宣戦布告をしておいてこちらを焦らせる。くだらない手口です」

「お、おぅそうか……」

 なんともまぁ。
 蛇の道は蛇というか、類は友を呼ぶというか。
 頼もしいがすっきりと喜べないのは何故だろうか。

 いやいい。これはあくまで話の枕だ。
 本題は別にある。

「先日、訃報ふほうが届いた。トロンとスーンからだ」

「ほぅ、そうなのですか。どなたが亡くなったのです?」

「両国の将軍筆頭。しかも斬首。罪人として首を斬られたんだ」

「それは大変ですね」

 あくまでしらを切るつもりか。
 もういい。単刀直入に聞こう。

「お前、何をした?」

 俺の射るような視線を受け、マツナガはちょっと考え込むふりをして、そして大仰に肩をすくめてこう言った。

「わたしは今、オムカの臣ですよ。オムカに害する者を除くのは当然でしょう?」

「な・に・をしたんだ?」

 ふぅと嘆息したマツナガは訳知り顔で語り始める。

「トロンとスーンの将軍、会われました? あぁ一緒に戦ったんでしたね。では分かるはずです。あれらはいずれオムカに害をなすことに。我らが北に兵力を集めているところで蜂起する気満々です。ですので消えてもらいました。わたしのスキル『トロイの木馬ドーリオス・イッポス』で。これは人の狂気を育て、精神を暴走させるためのスキル。その効能は、君も身をもって体験しているかと」

 ワーンス城内で暴れた兵。
 少し錯乱した様子のワーンス大将軍。
 そして早すぎた南郡の蜂起。

「まさかお前が……全部?」

「はい、わたしが全部です。ちなみに先ほどのドスガの民衆の反乱も同じですよ。王政より民主政治の方がオムカが統治するには容易ですからね。だから民衆をちょっと煽ればこの通り。ですが何かいけないことでしょうか? わたしはあの女王様に天下をとってもらいたい。その気持ちでやったこと。つまり君と同じなのです」

「…………」

「言い返しませんね。ちょっと前の君なら、食ってかかったところなのに」

「その挑発にはもうのらない」

「良いでしょう。成長するのは良い事。ドスガ王ももう少し狂気が成長してくれればよかったのですが」

 その言葉は、ある意味別の角度から俺に衝撃をもたらした。

「……まさか、ドスガ王も!?」

「ええ、良い実験体でした。惜しいとはもう思いませんが」

 どうでも良さそうにマツナガは呟く。笑顔を浮かべて。

 ドスガ王の最期。
 あの時、憑き物が落ちたようなすっきりとした表情を見せていた。

 まさか、本当に憑き物があったとは。

「……お前、本当に吐き気を催すほど心底最低だな」

「最高の誉め言葉ですよ」

 こいつ……。
 どこまで本気なんだよ。

 それでも釘をさしておく必要がある。

「オムカの国に、いや、俺たちにそのスキルを使った兆しをみたら、何が何でもお前を処罰するからな」

「これは怖い怖い。ですがちゃんと捜査してくださいよ。冤罪えんざいで死ぬのはごめんです」

「安心しろ。俺のスキルは相手の体験、心理をすべて把握できる。それが証拠だ」

「素晴らしいスキルですね。これまでの戦果はそのおかげですか。しかしおかしいですねぇ。それならもっと早く私のスキルについて知ることができたでしょうし。それに、わたしのスキル、君に――プレイヤーに使っても効果がないんですよね。なのに君のスキルだけわたしに効果がある。これはおかしいと思いませんか?」

「――!」

 バレているのか。
 俺のスキル、いや先日の尾田の話も含めると相手に直接影響するスキルはプレイヤー同士には効かないことになっているようだ。
 その法則をこの男は知っている?

 いや、それでもここはハッタリでもかます場面。
 腹部に力を入れて、睨みかえす。

「何が言いたい」

「別に。これから仲良くしましょう、ということです」

 マツナガが柔和な笑みを見せる。

 この笑顔の下。何を思ってるのか。
 分からない。
 分かりたくもない。

 ただこれだけは言える。

「お前、最低だな」

「ありがとうございます。最高の誉め言葉ですよ」

 あぁ、くそ。
 本当つくづく最低な人間を仲間にしてしまった。


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2章完結、間近です。もうちょっとだけ続きます。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
この後も続く、彼らの物語を楽しんでいただければと思います。

また、いいねやお気に入りをいただけると励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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