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第3章 帝都潜入作戦
第19話 ジャスティスのありか
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というわけで、嬉し恥ずかしのお風呂イベントも大騒動で終わり、それぞれ部屋に別れて就寝となった。
うぅ、まだ額が痛いし、くらくらする。
早く寝たい。
だが、それより先にやるべきことがあった。
「それじゃあ何をお話ししましょうか! そうですね、本当にあった正義な話など――」
「竜胆。大事な話がある」
「ほぇ? なんでしょう?」
とはいえどうしよう。
さっきのあんなことがあったから、余計男だって言い出しにくくなってる。
けどプレイヤーということだけでも話したいわけだが……あ、そうか。
男だってことだけ隠しておけば問題ない。さすが俺。機転が利く。
そして俺は話した。
この世界のこと。情勢、戦況。俺ことジャンヌ・ダルクのこと。立ち位置、そして目的。
それを細大余さず、誇張も虚言もなく、ゆっくりと諭すように語った。
そして――
「うぉぉぉ! 凄いです! まさかこんな正義な感じとは!」
握りこぶしを突き上げて、興奮した様子ではしゃぐ竜胆。
はぁ、本当に分かってるのかなぁ。不安だ。
「ん……でもあれ?」
「どうした?」
「思ったんですけど、皆帰れるなら、帝国に降伏した方がよくないです? そうすれば誰も危険な目に遭わずに帰れますよね? それこそ正義じゃないですか?」
「っ!」
言葉に詰まる。
それは何度も考えた問い。
俺たちが争わずに、降伏して帝国が統一すれば、俺たちプレイヤーは全員元の世界に戻れる。
プレイヤーの犠牲も、この世界の民衆の犠牲もなしに、だ。
「いや、それは……駄目だ」
「そうなんですかー。良い考えだと思ったんですけど……」
はっきりとそう問われて、迷いが生まれる。
俺たちが降伏しないから、犠牲者が出た。そしてこれからも出る。降伏すれば、死ななかったはずの命。
それなのになぜ俺は抗う? なぜ戦う? なぜ殺す?
死ななかったはずの命。それを俺たちのエゴで散らせてよかったのか。
……いや、違う。
それは俺たちの目線で見るからそう思うだけだ。
この世界に住む人間として見れば、帝国に従うのをよしとしない人が多いのは間違いない。
「俺たちは良くても、この世界に暮らす人たちの生活も考えなくちゃいけないんだ。帝国に支配された世界になれば、その分不幸になる人も出てくる。だから簡単に降伏できないんだよ」
それは竜胆に聞かせるというより、自分自身に言い聞かせるようなものだった。
俺たちが消えた後、この世界で暮らす皆は幸せになれるのか?
少なくとも俺の知るオムカの皆にそれはないと考える。あの帝国に支配されていた時代を知る者からすれば、そんなものは受け入れられない。何のための独立なのか、それを見失うことになる。
だから俺は帝国に負けられない。
勝って、彼らの幸福な世界を実現してからこの世界を去るのだ。
それが俺の目的。願い。夢。
「うーーーん? なるほど、です? つまり、それぞれの人に正義があるってことですかね?」
「あぁ、多分そうかな」
「なるほどです! へへー、これ、実は警察官だったお父さんから教わったんですよ! やっぱり正義ってことですね!」
結局意味が分からない結論に落ち着いたわけだけど、ある意味、俺の中にある戦うための決意というものを掘り起こされたようで、意義のある議論だと思った。
というわけで、一応話すことは話した。
だから最後に聞く。
「改めて聞きたい。いや、頼みたいことがある。俺たちと一緒に帝都に行ってくれないか? 正直、危険はある。けどクロエと引き分けた力、俺に貸してほしいんだ」
答えはすぐに来ないだろう。
それほど決断の有する質問だから。
だが――
「ええ、構いません! 正義に二言はないのです!」
そう迷いもなく答えてくれたのが、とても嬉しく――どこか切なかった。
やっぱりどこか不安はあるけど、とりあえず意思疎通ができたということでホッと一安心と言ったところか。
「それでジャンヌさ――いや、アッキーさんってお呼びした方がいいです?」
「どっちでも好きにしてくれ。いや、ジャンヌの方が色々めんどくさくなくていいかな。こっちではそっちの方が通りが良いし」
「へぇそうなんですか。でもなんだかアッキーって男の人の名前みたいですね。お話ししている感じも」
「あ、アキ、亜樹って名前なんだよ! それでアッキー! それにほら、うちって男家族ばっかでさ。こんな喋り方になっちゃったっていうか」
く、苦しい言い訳だ。
けど竜胆はにかっと笑う。
「はい、信じますよ。だって男の人がこんなことするわけないですもの! もし男の人だったら、もう……正義、いえ、たとえ悪の道に染まろうとも……私は……」
「女! もちろん女だから! 安心して!」
怖い。超怖い。
てかヤバイ。こんな弱みをマツナガに知られたら……一生あいつに頭が上がらなくなる!
「竜胆、プレイヤーの元の世界での話は結構デリケートだから、あんまり他の人には話さないでな。生まれとか本名とか性別とか年齢とか性別とか職業とか性別とか性別とか」
「もちろんです! そんなプライベートなことを話し回るようなノン正義なこと、しませんから!」
これでいい。
竜胆は正義とやらにこだわっているようだから、よほどのことがない限り秘密は守ってくれるはずだ。
「じゃあ、ジャンヌ先輩ということで!」
「なんだよ、先輩って……」
「いや、この世界の先輩ですから! 年功序列より勤務日数が大事なのです!」
会社人かよ、お前。
「うふふー、でもいいですね。ジャンヌ・ダルク。実は私も好きなんですよー。なんかこう、国と自分の信じるもののために戦って散る! まさに正義って感じで!」
「散ったらダメだろ……」
結局こいつの判断基準ってそうなるのか。
まぁいいか。とにかく強力な味方が増えたのは喜ぶべきだろう。
「というわけで改めて玖門竜胆! よろしくお願いします! ジャンヌ先輩!」
敬礼のポーズをしてにっと笑う。
あの無駄な正義がなければ可愛いんだけどなぁ。出来の悪い妹みたいで。
てか出来の悪い妹属性多くない?
俺が一番年下なんだよ?
ちなみにその後。
ほぼ初対面の女の子が隣で寝ているところで安眠できるほど、俺の神経は図太くなかった。
いや、手足を放りだしてお腹を出して寝ているその姿に色香なんてものはなんもなかったんだけど……やっぱりどうも意識してしまう。
里奈ともこんなことしたこと(当然)ないのに。
それに――
「ぐがー、ぐにゃー。うふふふ。先輩ーは女の子ーあれ? アッキー先輩? アッキー先輩って女の子?」
どんな夢を見てるのか。すごい心臓に悪い。
だから竜胆の耳元に近寄り、
「ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子」
「うなー、ジャンヌ先輩は女の子ですー。」
ふぅ、危ない。油断も好きもないなこいつ。
けど王都まであと4日。
俺の体力、持つのか……?
うぅ、まだ額が痛いし、くらくらする。
早く寝たい。
だが、それより先にやるべきことがあった。
「それじゃあ何をお話ししましょうか! そうですね、本当にあった正義な話など――」
「竜胆。大事な話がある」
「ほぇ? なんでしょう?」
とはいえどうしよう。
さっきのあんなことがあったから、余計男だって言い出しにくくなってる。
けどプレイヤーということだけでも話したいわけだが……あ、そうか。
男だってことだけ隠しておけば問題ない。さすが俺。機転が利く。
そして俺は話した。
この世界のこと。情勢、戦況。俺ことジャンヌ・ダルクのこと。立ち位置、そして目的。
それを細大余さず、誇張も虚言もなく、ゆっくりと諭すように語った。
そして――
「うぉぉぉ! 凄いです! まさかこんな正義な感じとは!」
握りこぶしを突き上げて、興奮した様子ではしゃぐ竜胆。
はぁ、本当に分かってるのかなぁ。不安だ。
「ん……でもあれ?」
「どうした?」
「思ったんですけど、皆帰れるなら、帝国に降伏した方がよくないです? そうすれば誰も危険な目に遭わずに帰れますよね? それこそ正義じゃないですか?」
「っ!」
言葉に詰まる。
それは何度も考えた問い。
俺たちが争わずに、降伏して帝国が統一すれば、俺たちプレイヤーは全員元の世界に戻れる。
プレイヤーの犠牲も、この世界の民衆の犠牲もなしに、だ。
「いや、それは……駄目だ」
「そうなんですかー。良い考えだと思ったんですけど……」
はっきりとそう問われて、迷いが生まれる。
俺たちが降伏しないから、犠牲者が出た。そしてこれからも出る。降伏すれば、死ななかったはずの命。
それなのになぜ俺は抗う? なぜ戦う? なぜ殺す?
死ななかったはずの命。それを俺たちのエゴで散らせてよかったのか。
……いや、違う。
それは俺たちの目線で見るからそう思うだけだ。
この世界に住む人間として見れば、帝国に従うのをよしとしない人が多いのは間違いない。
「俺たちは良くても、この世界に暮らす人たちの生活も考えなくちゃいけないんだ。帝国に支配された世界になれば、その分不幸になる人も出てくる。だから簡単に降伏できないんだよ」
それは竜胆に聞かせるというより、自分自身に言い聞かせるようなものだった。
俺たちが消えた後、この世界で暮らす皆は幸せになれるのか?
少なくとも俺の知るオムカの皆にそれはないと考える。あの帝国に支配されていた時代を知る者からすれば、そんなものは受け入れられない。何のための独立なのか、それを見失うことになる。
だから俺は帝国に負けられない。
勝って、彼らの幸福な世界を実現してからこの世界を去るのだ。
それが俺の目的。願い。夢。
「うーーーん? なるほど、です? つまり、それぞれの人に正義があるってことですかね?」
「あぁ、多分そうかな」
「なるほどです! へへー、これ、実は警察官だったお父さんから教わったんですよ! やっぱり正義ってことですね!」
結局意味が分からない結論に落ち着いたわけだけど、ある意味、俺の中にある戦うための決意というものを掘り起こされたようで、意義のある議論だと思った。
というわけで、一応話すことは話した。
だから最後に聞く。
「改めて聞きたい。いや、頼みたいことがある。俺たちと一緒に帝都に行ってくれないか? 正直、危険はある。けどクロエと引き分けた力、俺に貸してほしいんだ」
答えはすぐに来ないだろう。
それほど決断の有する質問だから。
だが――
「ええ、構いません! 正義に二言はないのです!」
そう迷いもなく答えてくれたのが、とても嬉しく――どこか切なかった。
やっぱりどこか不安はあるけど、とりあえず意思疎通ができたということでホッと一安心と言ったところか。
「それでジャンヌさ――いや、アッキーさんってお呼びした方がいいです?」
「どっちでも好きにしてくれ。いや、ジャンヌの方が色々めんどくさくなくていいかな。こっちではそっちの方が通りが良いし」
「へぇそうなんですか。でもなんだかアッキーって男の人の名前みたいですね。お話ししている感じも」
「あ、アキ、亜樹って名前なんだよ! それでアッキー! それにほら、うちって男家族ばっかでさ。こんな喋り方になっちゃったっていうか」
く、苦しい言い訳だ。
けど竜胆はにかっと笑う。
「はい、信じますよ。だって男の人がこんなことするわけないですもの! もし男の人だったら、もう……正義、いえ、たとえ悪の道に染まろうとも……私は……」
「女! もちろん女だから! 安心して!」
怖い。超怖い。
てかヤバイ。こんな弱みをマツナガに知られたら……一生あいつに頭が上がらなくなる!
「竜胆、プレイヤーの元の世界での話は結構デリケートだから、あんまり他の人には話さないでな。生まれとか本名とか性別とか年齢とか性別とか職業とか性別とか性別とか」
「もちろんです! そんなプライベートなことを話し回るようなノン正義なこと、しませんから!」
これでいい。
竜胆は正義とやらにこだわっているようだから、よほどのことがない限り秘密は守ってくれるはずだ。
「じゃあ、ジャンヌ先輩ということで!」
「なんだよ、先輩って……」
「いや、この世界の先輩ですから! 年功序列より勤務日数が大事なのです!」
会社人かよ、お前。
「うふふー、でもいいですね。ジャンヌ・ダルク。実は私も好きなんですよー。なんかこう、国と自分の信じるもののために戦って散る! まさに正義って感じで!」
「散ったらダメだろ……」
結局こいつの判断基準ってそうなるのか。
まぁいいか。とにかく強力な味方が増えたのは喜ぶべきだろう。
「というわけで改めて玖門竜胆! よろしくお願いします! ジャンヌ先輩!」
敬礼のポーズをしてにっと笑う。
あの無駄な正義がなければ可愛いんだけどなぁ。出来の悪い妹みたいで。
てか出来の悪い妹属性多くない?
俺が一番年下なんだよ?
ちなみにその後。
ほぼ初対面の女の子が隣で寝ているところで安眠できるほど、俺の神経は図太くなかった。
いや、手足を放りだしてお腹を出して寝ているその姿に色香なんてものはなんもなかったんだけど……やっぱりどうも意識してしまう。
里奈ともこんなことしたこと(当然)ないのに。
それに――
「ぐがー、ぐにゃー。うふふふ。先輩ーは女の子ーあれ? アッキー先輩? アッキー先輩って女の子?」
どんな夢を見てるのか。すごい心臓に悪い。
だから竜胆の耳元に近寄り、
「ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子ジャンヌ先輩は女の子」
「うなー、ジャンヌ先輩は女の子ですー。」
ふぅ、危ない。油断も好きもないなこいつ。
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俺の体力、持つのか……?
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