知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

第24話 調査報告

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 その日の夜。
 夕飯を食べ終わった俺たちは、そのまま今日の報告会を行った。

「それじゃあ見てきたことを報告してもらいたいんだが……」

「はい! 私たちから行きます!」

 クロエがビシッと手を挙げる。
 若干不安があるが、ザインがついていってるから大丈夫だろう。

「ん、じゃあ頼む」

「はい! えっと、美味しいもの多かったです!」

「おい!」

 早速お約束のボケをかましてんじゃない。

「じょ、冗談……ではないのですけどね。安くて美味しいものが食べられました。お店も繁盛してて、みんなが裕福な感じです。悲しいですけどみんな頑張ってるオムカと違って、かなり余裕ありますね」

「なるほど……一応ちゃんと見てるわけだな。てっきり食い意地が張ったのかと思ったぞ」

「ま、まさか、そんなわけないじゃないですかー」

「いや、なんでそんな食べられるのって量食ってましたからね、こいつ。5軒はしごしましたし」

「ザイン、しー!」

 いや、バレバレだから。目がこれでもかというくらい泳いでたし。
 そんなことだろうと思った。つかよく食うな、こいつ。

「まぁいいや。他にはないか?」

「あとは輸送部隊と思います、軍の人もいて。西にいっぱい食料を届けなきゃとか言って大変そうでした」

「西? ビンゴか?」

「おそらくそうかと。それらしき地名に加え、ビンゴ王国という単語も出たんで」

 ザインが答えると、横でクロエがうんうんと何度も頷く。

 なるほど、前線への補給物資は充分ってことか。

 2人の報告はそれくらいで、分かったのは帝都にはまだ十分な物資があり、それを輸送する方法も確立しているということくらいだった。

 クロエたちの報告が終わると、次にマールが手を挙げた。

「では次は私たちについてです。私たちは付近の店を中心に見て回りました」

「はい! お洋服とかアクセがいっぱいですね。日本には――」

「こほんっ!」

 竜胆が余計なことを言い始めたので、咳払いで注意する。

「あ、そっかえっと……ニホニホな感じのがいっぱいでした!」

 全然ごまかせてないけど、まぁいいや。

「そうですね、洋服以外にもアクセサリーや小物といった品物が目立ちました。女性のお客も多く繁盛しているようで」

「それは金持ちが多いってことか?」

「違う感じでしたよ。若い普通の人とかが多いですね。ブティックみたいな感じの、小さなお店が多い感じです。つまり正義ジャスティスです!」

 何が正義なのか分からないが、見てきたことに偽りはないようだ。
 オシャレといった生活必需品ではないものに中流階級の人間がお金を回せるということは、それだけ国として富んでいると判断せざるを得ない。
 王都バーベルと比べても、質でも量でもかなりの規模の差があると見て良い。

 だが不思議にも思う。
 今は戦時中なのだ。3か国が帝都を狙って戦闘が行われているのに、この能天気とも言える危機感のなさ。昨日の関所破りにせよ、街中に軍関係のものがもっと溢れるかと思えばそうではない。
 違和感、というよりかなりの不信感を覚えざるを得ない。

「あの、隊長。大丈夫でしょうか?」

「ん、ああ、すまないマール。先を続けてくれ」

「はい。といっても後は……ちょっと男の人たちに声をかけられたくらいで……」

「なにぃぃ!?」

 急にザインが大声を出した。

「そ、そそ、そ、それで、お前どうしたんだ!?」

 あからさまにうろたえた様子で、ザインがマールに詰め寄る。
 んん? この様子はまさか……。

「馬鹿ね、ただお店でお茶を飲んだだけよ」

「本当だな? それだけなんだな!?」

「もう、ザインうっさい!」

「けどよぉ~~」

 マールが心底辟易したようにザインを跳ねのける。
 なんだろう、この甘酸っぱい感じ。
 クロエやミストも何かを感じ取ったのか、やり取りを見てニヤニヤしている。

「……えっと、それでどうなったんだ?」

 俺が場の空気を戻して聞くと、竜胆がビシッと手を挙げた。

「はい! なんか正義ジャスティスな感じじゃなかったので、お引き取り願いました!」

「お、おい……手荒な真似してないよな?」

「はい! お茶とデザートおごってもらって、さよならしました!」

 こいつ……天然に酷いな。

「あ、でもリンドーもちゃんとお礼を言いましたから。ただ、そこで聞いたのですが、なんでも彼らは兵隊で、オムカ戦線に行くつもりだったが急遽西に配置換えになったとか。その最後の休みだと」

「西、ってことはビンゴか。さっきのクロエとザインの証言と合致するな。他には?」

「あぁ……そうですね、えっと……」

 マールが言いにくそうに言葉をよどませる。
 その遠慮をぶち壊したのはもちろん竜胆だ。

「はい! 女王様のお父さんどこですかって聞きました!」

 ずっこけそうになった。
 秘密の捜査内容をストレートに聞く馬鹿がどこにいる! あ、ここにいた。

「お前もうちょっと考えて喋れよ! え、マール、大丈夫だった?」

「はぁ、まぁ……相手の方もよく分かってないらしく、冗談で済まされましたが」

「うん、分かった。てかすまんマール。苦労をかけた」

「いえ、私は別に問題ありませんから」

「そうです! マールさんはとてもいい人なので、苦労なんて似合わないのです!」

「お前(苦労の根源)が言うな!」

 はぁ、頭が痛くなる。

 けど待てよ。
 相手もよく分からなかった?
 ということは、やはりこの噂は嘘なのか? 噂にもなっていないものなのか?

 ううーん、やはりまだ情報が足りないな。

「自分たちは、少し離れたところに行ってみました。ちょうど武具を売る工房があったんで覗いてきましたが」

 最後の組はウィットとルックだ。

「少し嫉妬しましたね。敵国のくせになかなか出来が良い武器作ってるみたいで。聞いた話だと北に良い鉱山があって、それで丈夫な鋼ができるんだとか」

「弓は全然なかったですねー。それより鉄砲が多いのが悔しいかったですよー」

「防具も厚い鉄板みたいなもので、鉄砲すらも弾く、とかってうたい文句でしたし」

「自分なら、矢で貫いてみせますけどー」

「それは……頼もしいな」

 どこまで本気か分からないけど、茫洋ぼうようとしているルックがここまでやる気を見せるのは、どこか頼もしい。
 鉄砲と弓。ドスガ王国戦では痛い目にあったなぁ。

「しかしこれは……装備でも負けるか」

 オムカ王国は帝国の属国という時代が長かったため、冶金やきん技術が成長していない。
 ほとんどが帝国から支給された武具で済ませていたのだ。

 だから鉄砲の量も知識もないし、装備の面でも劣っている。
 早急に対処しなくてはいけないものだが、一朝一夕でどうにかなる問題でもない。一応鉄砲は輸入だけじゃなく、クルレーンが色々対応してくれているから大きく後れを取ることはなさそうだが……。

「それから、見てきましたよ。鉄道? というんですか。馬で曳く馬車鉄道というものらしいのですが」

「鉄道……やっぱりあったのか」

 蒸気機関車ではないが、馬車鉄道とは。
 輸送量と速度はそれほど期待できないが、現時点での陸上の輸送としては断トツだろう。

「おっと、ご存じでしたか。さすがは隊長。なんでも馬に曳かせる車両を、線路と呼ばれる道の上で走らせることで――」

「ああ、説明はいい。それで、行先は? それと輸送量」

「東と西。完全にシータ王国とビンゴ王国の戦線ですね」

「輸送量はー……よくわからないですけど、1つの箱に10人以上は乗ってましたかなー。それが20以上はありましたよー」

 200人規模とはいえ、今ここにあるのがすべてではないだろう。

 普段なら東西に広い帝国を行き来するだけでも大変なのだ。
 だからオムカ王国の戦線から、他の戦線に動かすなんてことは不可能。移動だけで下手したら1か月かかると考えると、再びオムカが北上してきた時に間に合わなくなる。

 だがこの輸送があればそれは解決する。
 移動時間が圧倒的に短縮されるだけでなく、移動にかかる兵士の疲労はぐっと減る。言ってしまえば、移動した直後に戦闘に入れるのだ。歩きで移動した場合、休息も必要となってくるはずだから、その差は大きい。

「まずいぞ……完全にうちが足を引っ張ってる」

 オムカの北上がなくなったから、ビンゴ王国とシータ王国の戦線に増員ができる。
 そしてそれは現に行われているということだ。

「いかがしますか、隊長」

 ウィットが代表して聞いてくる。

「そうだな……とりあえず軍の様子くらいしか分からなかったな」

「はい、先代国王の噂は全く」

「ううーん、参ったなぁ」

「あのー」

「とりあえずそっちの方は引き続き探るしかないとして――」

「ジャンヌ隊長?」

「ビンゴ王国とシータ王国に負担をかけてるから――」

「すみま、せん」

「とりあえず、そこから手をいれていかないといけないが――」

「すみません!」

「うぉお!?」

 急に呼びかけられ驚いた。
 イッガーがすぐ横にいた。

「え、っと……どうした、イッガー?」

「……あの。その……自分の、報告」

 あっ! すっかり忘れていた。
 最初一緒にいたからとかそういう問題じゃなく、認識から漏れてしまっていた。
 だって影薄い――とは口が裂けても言えないな。

「あれ、イッガーは隊長と一緒だったのでは?」

 クロエが無粋にも聞いてきた。いらんとこで勘を働かせるな!

「そ、それだ。それだよ。一緒にいたんだから聞くまでもないってこと。あ、でも少しだけ別れたんだっけか? えっと、そう。だからあれだ。イッガーのは後でちゃんと聞こうと思ってたんだ。だから後回しだったんだよ。決して忘れたとかそんなわけじゃないから安心してくれ!?」

「いえ、いいいです。別に自分なんて……」

「そ、そんなことないぞ! イッガーはこれまで十分役に立ってくれた! 忘れるわけないじゃあないか!」

「はぁ……じゃあ。自分、そんな大したこと、してないすけど」

 イッガーは頬をぽりぽりと掻く。

 うーん、なんだろう。
 なんかとてつもないことしそうだよな、こいつ。
 あの運動会の時みたく。
 無表情で、とんでもないことを。

 そしてその予感は当たった。

「宮殿に忍び込みました」
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