知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

閑話26 ブリーダ(オムカ王国騎馬隊隊長)

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 さすがに1万の騎馬隊となると動きと迫力が違う。
 真っ向からぶつかり合いになれば、一撃で粉砕されてしまうほどの圧力だった。

 だからこちらは動き回り、敵の頭を抑えたり、歩兵に介入しようとするところをさえぎったりして翻弄ほんろうするしかない。

 こちらにとって幸運だったのが、どうやら敵の指揮官は少ないらしく、1万が固まって動こうとしていること。
 ぶつかりあいの一瞬で隊を分けることはあるが、それ以上の動きに多様性はない。

 こちらに5千を張りつけ、残った5千で歩兵に突っ込む。
 そんな風に部隊を分けられていたら、勝負は決まっていただろう。
 まぁ、そうされてもやらせねぇっすけど。

「隊長、このままではじり貧です」

 ナイザの隊が戻って合流した。

「ああ、分かってるっす。それよりそっちはどうっすか」

 1千ほど騎馬隊に増強されて、元の3千ほどに兵力はなったが、調練がまだ出来上がっていなかった。
 だからどうしても新しい1千の動きに遅れが出る。それは速度が重要なことになる騎馬隊においては致命的。
 だからその1千を思い切って別動隊にしてナイザに任せた。

「悪くはありません。直接のぶつかりあいは避けるという隊長の方針に従い、全くもって面白味もなにもない指揮ですが、私にとっては特に問題もありません」

「だからなんでわざわざ棘があるように言うんすか」

「そう聞こえたのでしたら、図星か、あるいは耳が悪いかどちらかでしょう」

「だーかーらー!」

「ほら、馬も休んでまた走れるでしょう。敵も来ますよ」

「あぁ、もう! 分かってるっす!」

 再び敵が歩兵の戦場へ向かって走る。
 こちらも2手に別れてそれを遮ろうと動く。

 すると敵は6千ほどをこちらにぶつけてきた。
 挟撃にわざわざ飛び込んできたようだが、懸念していた隊の分割をやってきたわけだ。4千が歩兵の方へ向かう。

「ちぃぃ! さかしいんすよ!」

 合図。
 まずは向かってくる6千。
 敵は数の少ないナイザの方へ向かう。
 対するナイザは敵に向かうことなく、左へ逃げた。

 それは敵にとっては意外だったらしい。
 一撃で1千を潰して、残るこちらに向かうつもりだったのが当てが外れたようだ。

 それが隙になった。
 ナイザを追う形になった敵は、こちらから見て横腹を見せている状態。だからそこへ突っ込んだ。
 わき腹を食い破られた蛇のように、敵の騎馬隊がのたうち回る。
 もう一撃加えられれば潰走まで持っていけそうだが、今はそれどころではない。迂回しながら速度を上げる。

 くそ、やられたっす。
 とにかく残りの4千だ。僅かではあるが足止めをくらったのだ。馬に差がなければ、敵の方が先に歩兵に届く。

 すまねっす、軍師殿。

 自分のミスで味方が不利になる。
 それほど辛いことはない。

 騎馬隊が歩兵に届く。

 だが、その刹那。
 轟音が鳴り響き、前方の騎馬隊が乱れた。

 鉄砲。敵が一時怯む。だから間に合った。乱れた敵に突っ込んだ。一撃で決める。そのつもりで雄たけびを上げて剣を振るった。

 4千は半分ほどに減って散り散りになっていった。
 そして歩兵の援護に回ることなく引き返す。ナイザの1千で6千を相手にするのは圧倒的に不利だ。ここで欲を出すとナイザが死ぬ。

 だから元の戦場に戻った。
 背後から爆発音が聞こえた。
 爆雷による攻撃が始まったのだろう。

 ナイザは、いた。無事だ。

 敵の6千は鉄砲で大打撃を受けた残り1千ほどを収容しながら、戻ってくる自分を見るとサッと離れた。

「まんまとやられてましたね。馬鹿正直というかなんというか」

「もうやらせねぇっす」

 そう意気込んだものの、ここは膠着がベストな気がする。
 騎馬隊1万を足止めできるだけでも、その効果は大きい。

 いや、何を弱気になってるっすか。
 本隊の方ではもっと戦力差があるのに、自分がそんなことでどうするっす。

 この騎馬隊を壊滅させて、相手の歩兵の後方を襲う。
 そうすれば勝てる見込みが出てくるはず。

 だからこちらから仕掛けるしかないのだ。

 けど、それは相手も同じでは?

 ふと嫌な予感がして本陣の方を見た。
 数の上では劣勢なものの、なんとか互角の戦いをしている。
 その向こうに、土煙が見えた。

 それが何なのか、自分には分かる。

「あれは……まさか、マズイっす!」

 だが戦場の反対側。
 ここからでは翼があったとしても間に合わない。

 そして、騎馬隊が味方の本陣に突っ込んだ。
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