知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

閑話3 玖門竜胆(オムカ王国客将)

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「なんでいるの?」

 それがジャンヌ先輩に見つかった時の第一声だった。
 先輩の部隊に潜りこんで、こっそりついてきたのがバレてしまったのだ。

「裏切り、それは悪! すなわち正義ジャスティスなのです!」

「……遊びに行くんじゃないんだぞ」

 この時のジャンヌ先輩はちょっと怖かったです。
 なんせ声のトーンが2つくらい落ちて、睨むような感じだったので。
 クロエさんに教えてもらったんですが、それは先輩が怒っている時のトーンだそうで。

 でもそれでこの正義ジャスティスの心は折れません!

「分かってます! それに私は戦争をしにいくんじゃありません! 人を救う、つまり正義ジャスティスをしにいくのです!」

 なんかいい感じに思ったことを言ってみると、ジャンヌ先輩は目を丸くしたと思ったら、ふわっとした笑みを浮かべた。

「そうだな。捕まった人たちを助けにいくんだよな」

 そして少し背伸びをして、私の頭をちょっと撫でてくれた。
 それがなんだかくすぐったくて、なんだか男の人みたいな感じで、心の中がふわぁっと暖かくなった。

「さぁ悪はどこですか!? この私が成敗です!」

「……すまん、マール任せた」

 張り切ったのに、急にジャンヌ先輩は大きくため息をついて、マールさんを置いてどこかへ行ってしまった。
 ううん、先輩の心は私なんかが理解できるほど簡単ではないのですね。

 それから再び馬に乗って移動した。
 馬にはマールさんから色々教わっていたので、移動する分にはついていけた。

 そして遠くに大きなお城みたいなものが見える位置で停止。
 みんなが慌ただしく動き出した。

 何をやっていいか分からなかったので、邪魔にならないよう辺りを散策していると、いつの間にか太陽は山に隠れ始め、景色を赤に染めていた。
 そして山のふもとにそびえ立つ巨大な建物。

「おお、あれが悪の居城……」

 あの中に裏切り者がいて、助けを求める皆さんが閉じ込められているのですね。

 ううー、今すぐ助けにいきたいです。
 正義ジャスティスの心が騒ぎます!

 けどさすがにそれは先輩に怒られるので、我慢して明日のために正義ジャスティスパワーを貯めるだけにしていたところ。

「ん?」

 小さな黒い影がお城に向かって歩いているのを発見した。
 子供?
 もしかしてあのお城に行こうとしている?

 それは危険です。
 だから教えてあげないと!

「ちょっと、危ないですよー」

 少女、いや、少年? が振り向いた。
 これはまた……先輩と違ったタイプの美少女、もとい美少年。
 ちょっと目に険があって、生意気そうな面してるのがまたグッド。

「……誰?」

 おっと、これはいけません。
 こういう時、こちらから名乗るのが正義ジャスティスです!

「申し遅れました! 私は正義ジャスティス御子みこ玖門竜胆くかどりんどうといいます! 正義ジャスティス!」

「あぁ……あのプレイヤーの」

「む、もしかして? あなたも?」

「……別に言う必要はないでしょ」

 む、これはなかなか殻が硬そうですね。
 でも正義ジャスティスはくじけません!

「つまり当ててみろってことですね! 望むところです! んーと、ここで色々見ているってことは……はっ! つまり正義ジャスティスの使者! 分かりました、名前はジャス子ですね!」

「……大山雫おおやましずく…………19歳」

「ほぇー、雫ちゃんですね。可愛い名前です……じゅうきゅう!? 年上!? ごめんなさい!」

「……別にいいけど」

「いえ、これは失礼しました! 目上の人に敬意を払うのは当然の正義ジャスティスですから!」

「いいって。とりあえず邪魔しないで」

「えー、あー、うー」

「なに?」

「いや、年上かもしれないですけど、雫ちゃんを独りにするのは危ないなって。知ってますか? あそこには悪い裏切り者がいるんですよ」

「知ってる」

「え?」

「あの砦を攻める。だから地形を調べてる」

 なるほど。よくわからないけど、見かけによらずよくできた子だというのは分かりました。

「それに、間違ってる」

「え、何がです?」

「悪いというのは間違い。時雨は……あいつは、馬鹿なんだ」

「ふぇ? お知り合いなんですか? あ、そういえば同じ国の人って先輩が言ってましたね」

「…………喋りすぎた」

「あぅ、惜しい。もう少しお話ができたと思ったのに」

「なんで? 雫にはそんな理由ない」

「逆になんでです? お話できた方が楽しいじゃないですか」

「楽しい?」

「はい! みんなでお話しして、お互いを理解して、笑いあえばそれで世界は平和! それこそ正義ジャスティスなのです!」

「…………馬鹿?」

「あぅー、雫ちゃんも先輩と同じ反応……」

「先輩? あのジャンヌとかいう?」

「はい! この世界の先輩です! 私を色々助けてくれたのです!」

「ふーーーん」

 おや、なんか今の反応は今までと違いますね。
 私の勘が冴えますよ。

「先輩のこと、気になるんですか?」

「別に。ただちょっとうざったらしい感じで、甘ちゃんで、弱そうで、覇気がなくて、気に食わないだけだ」

「おや、喋ってくれましたね」

「……どうでもいいでしょ」

 あっと、失敗です。すねてしまいました。
 それからも雫ちゃんは地面に目をやりながら、手で触ったり、少し掘ってみたりしている。

 それを黙って見ていようと思ったけど、好奇心が負けて聞いていた。

「ところで何を調べてるんですか? こんなところ調べても何もないですよ?」

「馬鹿? だからこそでしょ」

 うぅ、竜胆は馬鹿だから意味が分かりません。

「……お前、スキルはあるの?」

 お、初めて向こうから聞いてきてくれました。
 うーん、でもどうしましょう。前に先輩からスキルのことはなるだけ隠しておけって言われたんですよねー。

 いや、でも隠し事をしてたら友達にはなれません。

 今、ようやく分かりました。
 この放っておけない感じ。構って欲しい雰囲気。
 そうです、私はこの雫ちゃんと友達になりたいのです!

 うん、だから隠し事はいけませんね!

「えっとですね。九門で、火と、水と、風と、雷とーあと光と……えっと忘れました! それをこう九紋竜形態変化チェンジフォームしてどっかーんってやるんです!」

「…………は?」

 雫ちゃんが名状しがたい何かを見たような表情を浮かべてしまった。

 うぅ、スキルの説明難しいです。

 なんとか身振り手振りで実演を交えてスキルを披露してみると、興味を持ってくれたらしく、地面をいじる手を止めてこちらをじっと見つめてきてくれました。

「ふーーーーーん? なるほど?」

 それからいくつかスキルについての質問を受けました。
 それになんとか答えていると、どんどん雫ちゃんはテンションが上がったらしく、

「へぇ! いいね、最高かよ」

 初めて口を大きく開けて笑う雫ちゃん。
 ちょっと怖いと思ってしまったのは内緒です。
 けど、なんだか気に入ってもらったみたいで、とてもハッピーな感じになったのは確かです。

「じゃあ、私たち友達ですね!」

「友達でいいよ。そして、友達ならもちろん……助けてくれるよね?」

「えぅ? はぁ、なんでしょう?」

 私なんかに手伝えることがあるのでしょうか。
 けどもう雫ちゃんは答えてくれません。

 ただ笑って、

「明日になれば分かるよ」

 その時の雫ちゃんの表情は、今までの中で一番楽しそうだったのでした。
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