精霊術学院の死霊魔術使い

ワガドゥー男子

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第61話:切なる思い

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【聖エレオノール精霊術学院】の学生寮の後ろにある【静寂の霊群森】にて、聖神歴895年、1月の24日、日曜日の夜間の午後11時:50分:



「今日は半日近く尾行してばかりで気を張りすぎて疲れたし、消灯時間なのにここまで抜け出してしまって、…なんか悪いことしちゃった感じがするっすねー!あ~はははは……」



「………」



夜の帳が深くなっていく頃に、二人の男女がその森奥へと『空中浮遊』で飛んでいき、ある開けた場所に到達すると着地してなにか話し始めている様子だ!



どうやら、明日の授業がある平日の生活に戻るため、既に学院の敷地内に帰ったジェームズとシャルロットが夜の時間に、【静寂の霊群森】の中にいるようだ。



二人っきりの人気のまったくいなさそうな森深くにいて、緊張しっ放しのジェームズなのか、乾いた笑いをしてぎこちなく場の雰囲気に馴染めようと必死の様子みたいだ。


「ジェームズ、あなたはまだこれから伸びしろがあるはずだぞ?だから、周りに何をどう言われて、あたしだけがあなたのことを信じてあげるからね!」


「…僕にそんなことを言うために、呼んできたんっすか?……嬉しいけどこんな真夜中の初級向けとはいえれっきとした『ダンジョン』に連れてきてまで、それを僕に告げるためにー?」


「それだけじゃないんだよ、ジェームズ!前に少ししか教えてやらなかったけど、……昔、あたしが帝国に住んでいた頃に、弟がいたって話したことがあったんだね?」



「ああ……確か、あの時の王都の世界獣の討伐任務に、4人で行動した時にヒルドレッド嬢さんに一緒に魔道飛行車へ乗ることを拒否された後にみんなに打ち明けたことあったんっすよね?」


「うむ!その夜はもっと曇ってきた心を鎮めるべく、あなたとこうして夜間の森に行って、訓練をあなたと一緒に励んだんだけど、実はそのことに関してはまだ伝えていないことがあるんだよー?」


「伝えてないことが……あるんっすか?……」



「そう。昔に、あたしが12歳だった頃の帝国の『スヴァティースヴァラ』という町に暮らしてた当時に、弟が『謎の病気』にかかり、いきなり全身に痣ができて怠くなりすぎてたから、ベッドに寝た切りの三日間だけで症状が悪化しっ放しの末にいきなり息を引き取ったって、あたしの前から永遠に消えて亡くなったってぇ~っ!ひく~っ!話したんだったよねー!?」



一滴、2滴の涙が思わず零れ落ちて、シャルロットの頬を伝っていくのを見るジェームズに、



「ああ、だから、その病気の正体がなんだったのか、弟の無念を晴らすために絶対に原因を見つけ出して、謎を解明したいってー!打ち明けてくれたんっすよね?」



「うむ、だから、意を消して去年の14歳の頃になって、すぐに両親に真相を突き止めたいために旅をしたいっていう決断を告げたら、この国の精霊術学院に行った方がいいって勧められて、だからあたしが今年、こうして留学生として入学してきたって話したんだよねー?」



「ええ、そうっすね!あの時みんなで……」



「でも、その話にはまだ言ってないことが、伝えてないことがあるんだよ。だから、ジェームズ!……良く聞くといいよー?これから話すことになる内容は、あなたとしか話したくないと思うし、他に誰ともこんなことをいうつもりはないので、その重みをどうにか噛み締めて、良く頭の中に仕舞っていくといいんだぞー!?」



「………うっす!何でも言ってくれー!誰にも言わないから僕に全部ぶちまけていいっすよー!?」



「うむ!実は…………、弟、……ボリスがね、……彼が他界するより、生きた頃に遡ると、ボリスと過ごしていた日々がとっても充実していて、人生で最も幸せな時代とも言えるんだよ!何故なら、当時のあたしは、………相当な、……自分で言うのもなんだが、そのぅ、…………筋金入りの…ぶ、ぶら、……ああもう~!ブラコンだったんだよーー!!ジェームズーー!!」



「…………そう…かぁ…」



悲痛そうな表情になった帝国人間特有な赤髪を揺らしているシャルロットに言われているジェームズがつられて真剣な顔して受け止めると、



「あの小動物っぽい可愛い笑顔、無垢で力なき繊細な体質、お姉ちゃんであるあたしにいつもそばを離れず甘えてくるその愛くるしさ、~!どれをとっても世話をもっと焼きたくなるほどの衝動にさせてくれたんだったよーー!………だから、あたしー!」



「……彼のことが好きで、甘やかしていったばかりに、ついに……」



「そう!いけないことだって思ってたけど、ボリスに対して『恋愛感情』を抱くことになったんだよー!ある日を境に!いつか大人になってたら、二人で家を出て駆け落ちして、二人暮らしの素敵な人生を始めようって想像してたんだったよーー!!でも、結局…………」



「……………つらいことばかり、思い出させてしまったんっすよな、僕ー」



言いかけてたけど、いきなりジェームズの唇を塞ぐように人差し指を置いたシャルロット!



「ううん、……あなたは何も悪い事してないんだぞ?ただ、あたしの昔話をこんなにも優しく聞いてくれてるだけだもの……感謝こそすれ、怒るのはナンセンス……だよ?……話の続きも、……実をいうとね、あたしは…」



「……シャルロット嬢?」



「………ジェームズを見た時から、なんか、……昔のボリスみたいな顔立ちしてるから、それで……」



「……」



「重ねて見えてるんだよ、あなたがー!だから、その瞬間から、………」



「僕はあんたの弟の代わりになれるような男には絶対に、……ならないと思うっすよ?別人だし…」



「……分かってる!でも、ボリスはもういなくなってしまったし、……どうしてもジェームズを見るたび、昔のボリスに重ねて見えて、思わずあなたともっと親密になって、抱きしめたくなったり、甘やかしたくなったり、最後はキスまでする間柄になるのを想像したりして、ずっと!出会った時から!……あなたのことを考えて妄想したことが何度あったか……数えきれなかったんだぞー!」



「………」



胸が締め付けられるような思いを吐き出したシャルロットに、ただただ黙って聞いてやることしかできないジェームズだった……



「ねえ、頼む……よ。あたしの……恋人に、……ならないかぁー?もう苦しいよ、こんな思い……一人だけで胸に仕舞いこみたくないんだ……どうかあたしと一緒に、……新たな人生の一幕を通っていかないのかなー?」



「……ぼ、僕は……」



「お願いジェームズ!もう耐えられないんだ!胸が苦しくて、足元も覚束なくなって、視界も霧がかっていて雫が何滴も零れ出して止まらないんだ!………ねえ、お願いだよ、ジェームズ!どうかこの胸の疼きをー」



ちゅ!



ついにシャルロットの泣き出しそうな表情を見るのに耐えられなくなったジェームズだったか、躊躇もなくいきなり彼女の言おうとした言葉を遮るようにシャルロットの唇を自分ので塞いでいって、そしてー!



ちゅ~!ちゅちゅ~!んふぅ!つぅんふ!



夜中にて、二人が一体の身体となって、キスをして、夜を共に過ごしていくのだった!





………………………………………………………





…………………………………





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