最弱な奴が実は最強？

悩み

　少しだけ驚いてしまいながらも俺は彼女に問いかけた。
「なんで羨ましいんだ？」
　その問いに彼女は少し考える素振りをしたあと答えてくれた。
「私は能力者なのですが自分の能力が嫌いなのです。」
「ちなみに何の能力か聞いていいか？」
「はい。私の能力は他人の思考に干渉できます。いわゆるテレパシーです。」
「その能力の何が嫌なんだ？」
　聞くところによると彼女---冨樫　千雨(とがし　ちさめ)は能力の扱いが不十分で意識しなくとも能力が発動してしまうらしい。
　そのため周りからの自分を蔑む声が絶え間無く聞こえてくるらしい。
　確かにそんなものが聞こえてくるのなら自分の能力が嫌になるに違いない。
　だが残念な事に生まれたと同時に得る能力は当の本人である自分でも決められない。全ては運命なのだ。
「こんな力さえなければ私は普通に生きれたのに！」
　それは彼女の切実な願いなのだろう。だけど俺は励まそうとするわけでもなく言葉を繋げた。
「それなりに時間経ったし帰るわ。じゃあな。」
　そうして俺は屋上を後にした。
　何も言わずに去ってしまった事に関しては非情だと蔑んでもらって構わない。
　だけど言わせてほしい。あいつの事情は千雨自身の問題だ。部外者である俺が口出しするもんではない。
　昔の俺なら励ましていたかもしれない。救っていたのかもしれない。
　だけど俺はある事件をきっかけに極力、人と関わるのを辞めた。
　今にして思えば怖かったのかもしれない。あそこで救って何かしらの関係を持つということが。
　そんなことを考えていると後ろから声を掛けられた。
「斗真～。今までどこ行ってたんだよ？」
　煌だった。テストが終わりクラスに帰る途中なのだろう。服が泥まみれだった。
「保健室だよ。」
　嘘をつく事にした。本当のことを言うとめんどくさくなるのは火を見るより明らかだったからだ。
「そんでテストはどうだった？」
「もちろんA判定だったよ。」
「だろうな。」
　それからというもの様々な授業を受け時は過ぎ下校の時間になっていた。
　帰ろうとした瞬間、担任から話があった。
　その内容というのはこれからも事件を解決するにあたってパートナーを決めるということだった。
　この学校の生徒は事件解決に赴く時に必ずパートナーを連れていかなくては行かない。一人では危険だからだ。
　もちろん俺のように任務の時に臨時のパートナーを決められるケースもあるが今回は違う。
　臨時ではなく正式なパートナーを決めるのだ。パートナーになるからにはその人とのコミニケーションも大事になってくる。
　しかし問題なそこじゃない！真の問題は俺にはパートナーになってくれる人が存在しないということである。
　パートナーを選ぶ基準は色々あるが主に『自分と同レベルまたは近いレベルの者にすること』を重視している人が多い。　
　仮に片方が強くてもう片方が弱いとその弱い奴は強い奴の足手纏いになりかねない。
　誰かを守りながら戦うのはきつい。だから自分と同レベルまたは近いレベルの人が一番いいのだ。
　話を戻そうか・・・。とどのつまり能力の才能がない俺を誰もパートナーにしたがらないのだ。
　このままだと一人で任務に行かなくてはいけなくなる。最弱なので死ぬかもしれない・・・。
　あれ？もしかして俺の人生ここで詰み？
　などと明日のパートナーの選抜をどうにかしよう必死に考えている俺だった。