偉大なる悪魔は性癖に難がある

茶々

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 長いようで短い時間が過ぎると激しい光は止み、辺りに静寂が訪れる。

 恐る恐る目を開けてみれば、そこはピンクであった。
 横を見てもピンク、上を見てもピンク。どこもかしかも、いやらしいタイプのピンク色である。

 そんなピンク色に囲まれた異様な空間には、部屋のど真ん中に大きなベッドが鎮座していた。もちろんこちらもピンク色だ。


「なんだ、これは……」

 普段どんな事にも冷静に対処しているアインが珍しく動揺していた。

 それもそうだろう。先程まで確かにレナの部屋にいたはずなのに、このような謎の部屋にいつの間にか移動しているのだから。

「じゃじゃ~ん! ここ、あたしのお気に入りの場所なの! 良い所でしょ? このスイッチを押すと、ほらぁ!」

 ポチッとスイッチが押されると、ベッドにスポットライトが降り注いだ。
 他にも色々と謎機能の説明をされるが、レナもアインも受け止めきれず、二人の耳の中を右から左へと流れていった。

「……ここに連れてきたのはお前か? 俺たちを早く元の場所へ帰せ」
「そんな怖い顔で見ないで! なんだかゾクゾクしてきちゃう…。それに、ちゃーんと元の場所に返すわよ? この場所に定められた条件さえ達成すればね♡」

 すると、どこからともなくヒラヒラと一枚のカードが落ちてくる。
 受け止めようとレナが両手を揃えて出せば、寸分の狂いもなく手の中に吸い込まれるようにして収まった。

 一体何が書いてあるのだろう、とレナとアインはそのカードを覗き込んだ。


『セックスしないと出られない部屋♡』


 秒でレナの手から取り上げると、アインはそのカードを真っ二つに破り捨てた。

「ふざけているのか」
「何をしたところで、この場所から出られる条件は変わらないわよ? さ! ヤりましょ! 兄妹でセックス!!」
「何の冗談なんだ……? こんな訳の分からないことをして、お前は一体何者だ!?」
「だから言ったでしょう? 二人をくっ付ける恋の悪魔だって♡」

 ふわりと宙に浮いた女は頬を染めながら、豊満な身体をくねらせる。


「あたし、近親相姦が大好きなのっ♡」


 そうして、冒頭へと戻ってくるわけであった。


 レナはアインと悪魔の女とのやりとりを聞きながら考える。
 これはある意味チャンスなのではないか、と。

(部屋から出るための条件がお兄様とセックスすることなら、私にとっては好条件なのではないかしら?  純潔をお兄様に捧げたら、私はもう他の家に嫁げない。そうしたら私がお兄様のお嫁さんになれるはず。でも……)

 婚姻という鎖でアインを縛り付けておくことは出来ても、彼の心まではレナに縛ることは出来ない。
 女として見れない妻を持つ不幸をアインに背負わせていいのだろうか、と考えてしまう。

 それに加えて、そもそも一人の女として見れないのであれば、下半身にあるソレも反応しないだろう。
 もし本当に事を為すのであれば、アインのアインをハッスルさせる何かしらの薬を用意しないとならない可能性が高い。しかし、ここではそんな薬も手に入らない。


 だが、悩んだところで部屋を出るための条件とやら変わらない。


 レナに性的な興奮を覚えられなくとも、顔を見せず声もださないでいれば他の女性を重ねて抱けるかもしれない。
 大好きなアインに他の女性の代用品とされるのは少々辛いが、レナがほんの少しだけ我慢すれば良いのだ。

 であれば、さっさとやる事やってこの部屋からおさらばしたい。

 一度腹を括ってしまえば、先のことをよりクリアに考えられるようになった。

(……そうよ。私は自分の思いを優先して、お兄様を不幸になんかしたくない。ここで純潔を捧げて、そのまま誰にも嫁がず修道院へ行こう。私じゃない誰かを愛するお兄様なんて見たくないものね。例え誰か他の人の代用品だとしても、大好きなお兄様と身体を繋げられるのだから、私はきっと幸せ者よ)


 レナは結い上げていた髪を解き、スカートの留め具を外した。
 そのままブラウスのボタンを外して脱げば、薄いシュミーズとコルセットだけになった。

「……お兄様」
「レナ? …………っ!!」


 下着姿になったレナは覚悟と共に、アインの胸の中へと飛び込んだ。


「お兄様。これからするのここから出るためだけの行為。だから、何も考えずに私を抱いて? 妹の私では駄目なら、声を出さないし後ろを向いて顔を隠しているから……」
「レ、ナ……」
「私を抱いて、お兄様」
「うきゃはうあッ!! こ、こ、これよっ! これなのよ!! あたしが求めてたものはっ!!! ……あー、あたしはただの壁だから気にしないでどんどんヤっちゃってね♡」

 悪魔の女がそう言うと同時に、その姿は壁の中へと消えて行った。

 ピンク色に囲まれたこの異様な空間に、レナとアインの二人きりになってしまう。


「レナ、本当にいいのか?」
「うん。アインお兄様がいいの。………初めてだから優しくして、ね?」
「……っ! 途中でやめてって言っても聞けないからね」
「おにぃ、さま……んん!」

 唇に押し付けられたそれは、少し乾燥していたが思いの外柔らかな感触であった。
 レナの髪に指を絡ませながら後頭部をアインの大きな手で包み込むと、何度も角度を変えて降り注いでいた口付けが深くなる。

「ん、ふぁっ……! んん……」

 ファーストキスはレモンの味だ、と流行りの恋愛小説で見たが、どうやら嘘だったらしい。
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