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32話
「――パリスよ、その方が手を合わせてみた結果、あの男が本当に勇者であると確信したと申すのか」
「はい陛下。アシカガ・ユウスケは紛れもなく勇者であると考えます」
重臣たちが会議室で女王レズリス2世を囲み、ヴァレリア王国の政策が話し合われている。
その席でパリス・ソロニアはユウスケを牢から出すよう主張していた。
「男が勇者だなど馬鹿げているっ。陛下、白龍将軍は乱心したとしか思えませぬ!」
黒狼将軍であるドリスが強硬に異を唱えた。
ドリス将軍はパリスと武威を競う仲であり、常日頃からパリスをライバル視しているのだ。
「でも『神の巫女』が呼び出して『王の剣』が言うのだもの、信憑性は高いわよねえ」
国王レズリス3世の傍らに座る宰相ベルモアが言う。
ベルモアは王の愛人(ミストレス)であると同時に政務の面での信頼も篤い。
パリスがこの国の武を担う存在なら、ベルモアは智を担う人物であった。
「ふむ――ルナもあの男は勇者に相違ないというのだな」
「はい、わたくしが呼び出したあの方は間違いなく勇者の資質を持っておられます」
国王レズリスの問いに『神の巫女』の異名を持つ司祭であるルナが頷いた。
「司祭殿はパリス将軍と仲が良い。将軍は司祭殿の召喚失敗を隠す為に結託し、あの男が勇者だなどと虚偽の証言をしておられるのではないかっ」
大柄なドリス将軍が拳を振り上げてなおも言い募る。
「私心はない。このパリス・ソロニア、『王の剣』の名誉に掛けて事実を申し上げているまで」
それにパリスも応戦する。
「良かろう。ではあの男の力、計ってみる事にしようではないか――ベルモア」
「御意ですわ。では誰か適当な相手と戦わせてみると致しましょう」
「ならば、我が配下にエルザという者が居ります。ぜひその者にお命じ下さいっ」
ドリスが立ち上がった。
国王レズリス3世と宰相ベルモアに強く主張する。
「だそうよ。パリス将軍、いいかしら?」
「異存ございませぬ。御心のままに」
ベルモアの問いにパリスは頷く。
「ではその者を使い、アシカガ・ユウスケなる男の力を試せ。明日さっそく行うがよかろう」
「御意」
レズリスの言葉に、重臣一同が一斉に頭を下げた。
「――という訳だ。明日陛下の御前で試合をし、勝てばユウスケは自由の身になれるだろう」
「明日、か。嬉しいけど急な話だな」
牢獄をパリスが訪ねてきて、明日俺のテストが行われるという事を教えてくれた。
「そのエルザとかっていう女はどんな奴なんでしょうか?」
ミネバが心配そうに聞く。
「分からん。あのドリスが自ら推薦するのだから相当な手練れではあるだろうが」
黒狼将軍のドリスっていうのは、俺が国王に会った時に横からいじってきた大女だそうだ。
パリスに対抗心を持ち、足を引っ張るために俺を勝たせまいとしているらしい。
俺もこのところの訓練でかなり剣の腕に自信は付いたけど、本気の試合は初めてだからなあ。
でもまあ殺し合う訳じゃないし、モンスター相手よりは気楽かも。
「ユウスケ、油断するなよ。相手は腕を叩き斬るくらいは平気でやって来るだろう。腕が無くても子作りに支障はないからな」
うへえ、そんなの絶対無理。
こうなったらどんな手を使っても負ける訳にはいかない。
何がなんでも勝たなきゃ。
それから俺はパリスに稽古をつけてもらった。
さすがは王国一の剣の使い手。
技術の高さは驚くほどのものだ。
「良いか、ただやみくもに打ち合うのでは勝てぬ。このように相手の力をいなし――」
パリスはそう言いながら、斬りつけた俺の剣を受け流す。
俺は体勢を崩し、気付けば首筋にパリスの剣が当てられていた。
「――このように相手に隙を作る。やってみろ」
俺は見よう見まねでパリスの剣を受け流そうとするが、なかなか上手くいかない。
ついつい真っ正直に受けてしまうのだ。
「こりゃー難しいな」
「まずは相手の太刀筋を見極めること。目の動きや足の運び、体の向きなどで相手の斬りつけてくる方向を予測すること。相手が切りつけてくる太刀筋が分かれば自ずと体が反応しよう」
えーっと、それって達人の域のお話じゃないかな。
子供のころから剣を振っては来たが、俺の腕はそんなに凄いものじゃない。
「ちょ、ちょっと休もうか」
「なにを呑気な事を。明日試合をして、負ければ即、生殖房行きなのだぞ。子作りで一生を終わりたくないのだろうが」
うわあ、この先生スパルタだよ(涙)
「いくらユウスケが奥の手を持っていても、使い方を誤れば効果はない。確実にそれを生かすためには、タイミングを計る時間を稼がねばならん。その為に剣の腕を磨くことが重要なのだ」
結局、俺は夜までパリスにしごかれまくった。
もはや体はボロボロだったが、途中やって来たルナさんが回復魔法で癒してくれた。
なんてええ娘なんや(涙)
こうして練習は終わり、夜もさすがにミネバもタリアも抱くことなくぐっすりと眠った。
さあ、いよいよ運命の日だ。
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