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蛇足の夏2020
兄弟の話
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レンとセンは嘗て魔王を倒す為に共に故郷の村を飛び出した。
村に思い入れがないかと言われればそうでは無いが、二人にとってあの村は哀しみばかりが残る地である。
二人が勇者を目指すきっかけとも言える魔王軍の襲来。それによって多くの村人ごと両親を失ってしまった。
その後は生き残った村人と共に協力しあって村の立て直しに努め、遂には村もほとんど元通りと言っていいほどまでに復旧もした。
しかし、あの憎き魔王が生きている限り村の人々が真の意味で元通り幸せな暮らしに戻る事は不可能。
だから、レンとセンの二人は冒険の旅に出た。
冒険の旅の途中、後に伝説の勇者達を率いる飛星に出会い、その一味に加わってしばらく冒険に同行した。
その中でも二人はとても強い絆で結ばれており、魔物との戦いでも息ぴったり、微塵の隙もない連携だ。
しかし、それもある日を境に途絶えた。
弟のセンが女神ルヒィアと契約し、人を超えた尋常ならざる力を手にした。これによりセン一人が持つ戦闘力は他の勇者達の中でも一二を争うものとなっていた。
一方、兄のレンはそんな力など無く、今まで通り。兄でありながら弟に一方的にピンチを救われる状況に耐えられなかった。
そんな気持ちからか、二人の連携は乱れだした。実力が均衡しておらず兄であるレンに合わせれば力の真価は発揮できない。しかし、センの全力にレンは追いつけない。
そしてある日、レンは気づいた。センは自分などいなくてもあの女神と連携をとって戦える。自分は他の勇者に守られる事はあってももう、守る事は出来ない。
「俺の冒険する理由は無くなった。戦う気が無くなっちまった。だから後の事はセン、お前に任せたぞ」
その言葉だけを残してレンは冒険の旅から降りた。
その後のレンは荒れる気持ちのまま、酒に逃げ、たどり着いた集落や村や町で暴れ回り。レンを好く者は一人もいなくなった。
今弟のセンはきっと他の仲間と共に兄弟の夢であった魔王討伐の為に戦っているんだろう。
「何やってるんだよ…俺は…。これなら死んだ方がましだな」
そして自殺を決意したレンだった。喉にナイフを突きつけて自分の愚かさを呪う。逃げに逃げてこんな事になった自分を呪う。
だが、彼女はレンを死なせてくれなかった。
たまたま立ち寄った村の酒場で働いている娘。名前すら知らない彼女はレンの様子を見て、慌てて駆けつけたのだ。
「あなたに何があったかは分かりません。あなたの悪評はみんな知っています。でも、どんな事があっても自ら命を断つのはダメです!」
行きたくても生きれなかった者は多くいる。自殺なんてしてはいけないのは当たり前だ。あの村の人だってみんな生きたかった。両親もだ。ましてやあの時両親に守られて生き延びた自分が死ぬのはきっと、何よりも両親が悲しむだろう。
「でも、俺にはもう生きる意味が無いんだよ」
絶望が頭中を埋め尽くす。
「ありますよ、生きる意味ならあります!」
誰とも知れない娘に何がわかるのか。魔王討伐の目標を掲げて旅に出たのに、戦力としても機能しない。他の目的なんて存在しなかった俺の生きる意味とは?
「あなたはこの辺りで多くの人に迷惑をかけたんですから、まずはその人達へ迷惑の分をお返しするべきです。その後のことは私が一緒に考えます」
そうだった。レンは自分勝手な都合で多くの人に迷惑をかけた。元々純粋な正義を掲げるレンにとって、確かに人々を困らせたまま一人死に逃げるべきじゃないという事は納得でした。
なら、自分にできる全力でみんなの助けになって、それが果たせたらその時、まだ死にたかった死ぬ。
「それがいい」
随分と長く笑う事等しなかったが、レンは久しぶりに笑顔を見せた。
村に思い入れがないかと言われればそうでは無いが、二人にとってあの村は哀しみばかりが残る地である。
二人が勇者を目指すきっかけとも言える魔王軍の襲来。それによって多くの村人ごと両親を失ってしまった。
その後は生き残った村人と共に協力しあって村の立て直しに努め、遂には村もほとんど元通りと言っていいほどまでに復旧もした。
しかし、あの憎き魔王が生きている限り村の人々が真の意味で元通り幸せな暮らしに戻る事は不可能。
だから、レンとセンの二人は冒険の旅に出た。
冒険の旅の途中、後に伝説の勇者達を率いる飛星に出会い、その一味に加わってしばらく冒険に同行した。
その中でも二人はとても強い絆で結ばれており、魔物との戦いでも息ぴったり、微塵の隙もない連携だ。
しかし、それもある日を境に途絶えた。
弟のセンが女神ルヒィアと契約し、人を超えた尋常ならざる力を手にした。これによりセン一人が持つ戦闘力は他の勇者達の中でも一二を争うものとなっていた。
一方、兄のレンはそんな力など無く、今まで通り。兄でありながら弟に一方的にピンチを救われる状況に耐えられなかった。
そんな気持ちからか、二人の連携は乱れだした。実力が均衡しておらず兄であるレンに合わせれば力の真価は発揮できない。しかし、センの全力にレンは追いつけない。
そしてある日、レンは気づいた。センは自分などいなくてもあの女神と連携をとって戦える。自分は他の勇者に守られる事はあってももう、守る事は出来ない。
「俺の冒険する理由は無くなった。戦う気が無くなっちまった。だから後の事はセン、お前に任せたぞ」
その言葉だけを残してレンは冒険の旅から降りた。
その後のレンは荒れる気持ちのまま、酒に逃げ、たどり着いた集落や村や町で暴れ回り。レンを好く者は一人もいなくなった。
今弟のセンはきっと他の仲間と共に兄弟の夢であった魔王討伐の為に戦っているんだろう。
「何やってるんだよ…俺は…。これなら死んだ方がましだな」
そして自殺を決意したレンだった。喉にナイフを突きつけて自分の愚かさを呪う。逃げに逃げてこんな事になった自分を呪う。
だが、彼女はレンを死なせてくれなかった。
たまたま立ち寄った村の酒場で働いている娘。名前すら知らない彼女はレンの様子を見て、慌てて駆けつけたのだ。
「あなたに何があったかは分かりません。あなたの悪評はみんな知っています。でも、どんな事があっても自ら命を断つのはダメです!」
行きたくても生きれなかった者は多くいる。自殺なんてしてはいけないのは当たり前だ。あの村の人だってみんな生きたかった。両親もだ。ましてやあの時両親に守られて生き延びた自分が死ぬのはきっと、何よりも両親が悲しむだろう。
「でも、俺にはもう生きる意味が無いんだよ」
絶望が頭中を埋め尽くす。
「ありますよ、生きる意味ならあります!」
誰とも知れない娘に何がわかるのか。魔王討伐の目標を掲げて旅に出たのに、戦力としても機能しない。他の目的なんて存在しなかった俺の生きる意味とは?
「あなたはこの辺りで多くの人に迷惑をかけたんですから、まずはその人達へ迷惑の分をお返しするべきです。その後のことは私が一緒に考えます」
そうだった。レンは自分勝手な都合で多くの人に迷惑をかけた。元々純粋な正義を掲げるレンにとって、確かに人々を困らせたまま一人死に逃げるべきじゃないという事は納得でした。
なら、自分にできる全力でみんなの助けになって、それが果たせたらその時、まだ死にたかった死ぬ。
「それがいい」
随分と長く笑う事等しなかったが、レンは久しぶりに笑顔を見せた。
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