OCEAN LINE 〜あの空を我が手に〜

ハーミット

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オーストラリア奪還計画

第十七話「合同作戦会議。やるべき事」

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 神崎定進が着席してから暫くして会議場の奥の扉が開いた。

 そこからは日本やイギリス、他国も含む各国の、この作戦において指揮を任された責任者が出てくる。そのまま順に待機室からも立ち去っていく。それらに続き、上浦綾瀬が待機室に現れた。

 「では、これよりここに居るメンバーの役割について説明します」

 先程本隊とは別行動をとる事になっている事は把握したが、その内容について詳しくは言及されていない。その時点で、先程までの作戦会議が終了するのを待機しておけという意味になる。その会議が終わり、中から現れた上浦綾瀬が神崎定進達に説明を始めるということはやはり、今回の作戦の指揮官は上浦綾瀬なのだろう。

 「まず、私達はほかの隊とは別で全員自由にオーストラリア大陸内の敵を掃討します。よく言えば特別、悪く言えば異質なあなた達は他の隊と連携を取って作戦行動をする事は不可能だろうとの事らしいです。実際この場の空気感からそれは想像が着きます」

 日本国内だけでも当てはまる事だが、コード名が着く固有能力の持ち主と言うのはそれぞれが独特の空気があり、一般的な識別番号の能力者とはあまり協力的に行動が出来ない。それは保有する能力の違いもあるが、その能力の違いから現れる劣等感等が加わり、さらに協力的に行動が出来なくしている。

 神崎定進はこれまで一人行動以外を受け付けないスタイルを貫いてきた。多田にしても、自分を中心とした戦術を組む部隊を持っている。ソフィアもエミリーと二人で戦っている。ネメもアリシアの班に所属している。そんな曲者には自由に戦えと言うのが一番良いと言うのが、徒木章の方針であり、それが反映されたのだろう。

 「あなた達は今回特別な班を組む事もなく、いつも通りの部隊で好きに動いてください。ですが、何時何処に戦いに行くかは随時私に報告してください。それを上に報告するのが私の仕事です」

 上の人間にとっても、神崎定進を初めとする良い意味でも悪い意味でも厄介な能力者たちの管理も能力者に任せる方が良い上に、上浦綾瀬の能力ならば今のところ距離はオーストラリア大陸全域は効果の範囲内であると推測されており、例えこの中の誰が何処で作戦行動を行おうともリアルタイムでの通信が可能になり、他の者の事を気にすること無く戦闘が行える。

 「明日から本隊は作戦を開始しますが、別に今日から巨大生命体の掃討に当たって頂いても構いません。上から許可は降りています」

 神崎定進がこれから行くと発言するよりも先に、ソフィア・リオンの口から声が出た。

 「ボクたち、自由に敵を倒していいってことは、別に今から行ってもいいって事だよね?」

 楽しそうな、生き生きとした目。巨大生命体を殲滅する為の教育を受けて、国の宝と持ち上げられて、巨大生命体を倒す事が使命、倒す事が喜びと素直な少女に教えこんだ結果が、この戦闘狂なのだろう。その内情を知るネメはこの場にいるソフィア・リオンを筆頭に戦闘に関して前のめりな表情の者たちをみてそう思う。

 「まぁ、だいたい想像は着いてるけど、俺達の中で誰が一番多く狩れるか競って来いってことなんだろうな」

 「いやいや、なんで皆そんな戦闘狂なんだ?俺は反対する。少数での単独行動はするべきじゃない。確かにすごい力を持っていたとしても何が起きるか分からない。俺の消失の力はあまり役に立たないし…。他にも反対の奴はいるだろ?」

 ネメはそう言って周囲を見回した。

 「予め現地の地形については把握してあるし、糸は張れる。俺は戦えるし、何より戦うソフィアたんを見たい!」

 多田充も巨大生物の殲滅事態ではないにせよやる気を出している。

 「ソフィアが止まらない事は分かって居ます」

 もういつもの事なのだろう。エミリーはやれやれといった顔で、楽しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねているソフィアの所まで歩み寄って、その手で肩を抑えて一度諌める。

 「じゃあ、決まりだな。とはいえ、俺と穂月が一番狩れる事はもう決まっているけどな。じゃあ俺達は先に向かっているから、急いで来るんだな」

 神崎定進はその言葉を残して、津田穂月と共に空へと飛び立つ。

 「ねぇエミリー、それにしても凄い能力だね。ボクも送って欲しいなぁ」

 ソフィアが空を飛んでいく神崎定進を羨ましそうに眺めながら呟く。

 「そっ!ソフィアはあの男にその、お姫様抱っこされたいのですか?」

 エミリーの反応はいつもの事。思わずエミリーに目を向けたソフィアの目は呆れを孕んだジト目だった。

 「もう…そうじゃなくて、ボクも早く戦いたいの。それにあの二人とっても仲良さそうだし、ボクにとってのライバル以外の事になる予定はないよ。さぁ、もういいでしょ?ボク達も早く行こう」

 気持ちを切り替えてソフィアは、エミリーの手を引いて外へと走り出した。
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