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オーストラリア奪還計画
第二十二話「意思の世界」
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視界全てが暗い。今意識があるのかすら分からない。考える事ができているから意識があるのか、夢の中の様な場所なのか。情報が少なすぎて神崎定進には判断がつかなかった。
記憶の最後を思い出せば、あの竜との戦い。そこに現れた津田穂月達に気を取られて手酷いダメージを受けた。
あれだけのダメージを受けた事は無かったが、回復ができる能力者がいない以上あれは助からないだろう。
つまりここは走馬灯か、死後の世界なのか。現実世界では無いのだろうと感じた。
『意思はまだ存在する』
どこからかそんな声が聞こえた。耳から聞こえているのか声が直接流れ込んでいるのかすら分からない。
「どういう事だ?」
神崎定進にはその声が意味することが分からない。
『この領域へと足を踏み入れた者よ。この意思の領域、適応するそなたが諦め無ければまだ繋がる。生きる事を諦めるな自身を捜せ!意思を強く持つのだ』
神崎定進は強く自身を想像する。暗くて何も見えないが、先程とは違い自身の身体があるのが分かる。普段は何も考えすらしない生きている状態の自分自身を神崎定進は強く思い描く。
そして、その右手を手を前に伸ばす。繋がる。といえば良いのか何かを感じる。
手を握られている。視界の暗闇が晴れてそこに津田穂月の姿が見える。
「先輩!やっと繋がりました」
「繋がる?」
「はい、私の能力で先輩とリンクする為に色々手を尽くして、やっと先輩の意識と繋がりました」
神崎定進にはその意味が理解できなかった。津田穂月ですら細かい事は分かっていない。意識を失った神崎定進に夢中で呼びかけているうちに気づけばここに居た。感覚的には付与の能力の影響で神崎定進の意識の中に入り込んだと思っていた。
『この場所にたどり着くものが更に居ようとは思わなかった。それに面白い能力を持っている』
神崎定進の背後を見て固まる津田穂月。それを見て振り返った神崎定進はそこで認識する。果てしなく拡がるこの空間。すぐ後ろには鱗も爪も翼も全て漆黒の竜が見える。
「竜、お前が話してるのか?」
先程から頭の中に直接聞こえていた声。その主であろう竜の返答を待つ。
『そうである。私は真意域の主ソロイア。そして、ソナタ達の状況も理解出来ている。完全ではないが、私の力を貸してやろう』
20メートルはあったその竜の身体は小さく縮み、1メートル程の長さの黒い剣へと変化する。しかし存在感は衰えることはなく、その剣からは竜であった時と同じ位にプレッシャーを放っている。
『神崎定進。その力を使えばこの真意の黒き聖器を創り出す事ができるだろう?』
「何故、幻想の能力の事を知っている?それに俺が戦っていたあの竜の事は何か知ってるのか?」
『真意を司る私の前に、意思ある者が立った時点で、その考えや記憶は自ずと見えてくる。今はソナタ達からしか情報を得られない以上は、竜の事に関しては知り得ない』
「そうか…。穂月は先に戻っていてくれ。俺はこの剣を幻想で創り出せるよつになってから戻る」
「確かに外の様子も心配ですし、他にも実は心配な事がありますからね。先輩、向こうで待っていますね」
その言葉と共に津田穂月は意思の世界から退出した。
問題は剣を形成している物質が全く何か分からない点。質感は鉱物に似ているが、非常に軽い。しかし硬度は恐ろしく高い。物理法則から逸脱した物質であることは間違いなかった。柄に飾られた黒い宝石ですら現存する物質ではない。
『この剣は物質で形成されている訳では無い。先程の竜の姿ですら主に与えられた仮初の物である。真意の概念その物が私であり、この剣はその真意の力の塊である。ソナタが知る中でネメの能力をもってしても言わば別の世界と言っても過言ではないこの剣は消しされないだろう。これに近しい物で言えばソフィア・リオンの持つ力、それを小さく圧縮すれば同じ様に剣が生成される。真意の適性は非常に高いのだから、深く考えずとも創り出せる』
物事を思い出す感覚で今目の前にある剣を想像する。そうして幻想の能力で創り出された剣は明らかに存在感が足りなかった。柄の宝石が存在しない。
『この宝石自体が今の私の本体とも言えよう。それが生み出せないのは至極当然かもしれない。その剣にはひとまず真意の空の聖杯と名付けよう。それでも十分戦えるであろう』
「他には何かあるか?なかったら俺も戻る」
『大丈夫。健闘を祈っているよ』
竜の形態に戻ったソロイアに見送られ、神崎定進は意思の世界から退出した。
『神崎定進、時間域の影響を受けないここでは、その竜の謎も、君の未来も全てみえていた。未来私が現世に顕現する時、ソナタが存在しない事を残念に思う』
ソロイアは神崎定進の未来を1人憂いた。
記憶の最後を思い出せば、あの竜との戦い。そこに現れた津田穂月達に気を取られて手酷いダメージを受けた。
あれだけのダメージを受けた事は無かったが、回復ができる能力者がいない以上あれは助からないだろう。
つまりここは走馬灯か、死後の世界なのか。現実世界では無いのだろうと感じた。
『意思はまだ存在する』
どこからかそんな声が聞こえた。耳から聞こえているのか声が直接流れ込んでいるのかすら分からない。
「どういう事だ?」
神崎定進にはその声が意味することが分からない。
『この領域へと足を踏み入れた者よ。この意思の領域、適応するそなたが諦め無ければまだ繋がる。生きる事を諦めるな自身を捜せ!意思を強く持つのだ』
神崎定進は強く自身を想像する。暗くて何も見えないが、先程とは違い自身の身体があるのが分かる。普段は何も考えすらしない生きている状態の自分自身を神崎定進は強く思い描く。
そして、その右手を手を前に伸ばす。繋がる。といえば良いのか何かを感じる。
手を握られている。視界の暗闇が晴れてそこに津田穂月の姿が見える。
「先輩!やっと繋がりました」
「繋がる?」
「はい、私の能力で先輩とリンクする為に色々手を尽くして、やっと先輩の意識と繋がりました」
神崎定進にはその意味が理解できなかった。津田穂月ですら細かい事は分かっていない。意識を失った神崎定進に夢中で呼びかけているうちに気づけばここに居た。感覚的には付与の能力の影響で神崎定進の意識の中に入り込んだと思っていた。
『この場所にたどり着くものが更に居ようとは思わなかった。それに面白い能力を持っている』
神崎定進の背後を見て固まる津田穂月。それを見て振り返った神崎定進はそこで認識する。果てしなく拡がるこの空間。すぐ後ろには鱗も爪も翼も全て漆黒の竜が見える。
「竜、お前が話してるのか?」
先程から頭の中に直接聞こえていた声。その主であろう竜の返答を待つ。
『そうである。私は真意域の主ソロイア。そして、ソナタ達の状況も理解出来ている。完全ではないが、私の力を貸してやろう』
20メートルはあったその竜の身体は小さく縮み、1メートル程の長さの黒い剣へと変化する。しかし存在感は衰えることはなく、その剣からは竜であった時と同じ位にプレッシャーを放っている。
『神崎定進。その力を使えばこの真意の黒き聖器を創り出す事ができるだろう?』
「何故、幻想の能力の事を知っている?それに俺が戦っていたあの竜の事は何か知ってるのか?」
『真意を司る私の前に、意思ある者が立った時点で、その考えや記憶は自ずと見えてくる。今はソナタ達からしか情報を得られない以上は、竜の事に関しては知り得ない』
「そうか…。穂月は先に戻っていてくれ。俺はこの剣を幻想で創り出せるよつになってから戻る」
「確かに外の様子も心配ですし、他にも実は心配な事がありますからね。先輩、向こうで待っていますね」
その言葉と共に津田穂月は意思の世界から退出した。
問題は剣を形成している物質が全く何か分からない点。質感は鉱物に似ているが、非常に軽い。しかし硬度は恐ろしく高い。物理法則から逸脱した物質であることは間違いなかった。柄に飾られた黒い宝石ですら現存する物質ではない。
『この剣は物質で形成されている訳では無い。先程の竜の姿ですら主に与えられた仮初の物である。真意の概念その物が私であり、この剣はその真意の力の塊である。ソナタが知る中でネメの能力をもってしても言わば別の世界と言っても過言ではないこの剣は消しされないだろう。これに近しい物で言えばソフィア・リオンの持つ力、それを小さく圧縮すれば同じ様に剣が生成される。真意の適性は非常に高いのだから、深く考えずとも創り出せる』
物事を思い出す感覚で今目の前にある剣を想像する。そうして幻想の能力で創り出された剣は明らかに存在感が足りなかった。柄の宝石が存在しない。
『この宝石自体が今の私の本体とも言えよう。それが生み出せないのは至極当然かもしれない。その剣にはひとまず真意の空の聖杯と名付けよう。それでも十分戦えるであろう』
「他には何かあるか?なかったら俺も戻る」
『大丈夫。健闘を祈っているよ』
竜の形態に戻ったソロイアに見送られ、神崎定進は意思の世界から退出した。
『神崎定進、時間域の影響を受けないここでは、その竜の謎も、君の未来も全てみえていた。未来私が現世に顕現する時、ソナタが存在しない事を残念に思う』
ソロイアは神崎定進の未来を1人憂いた。
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