イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある

或真

文字の大きさ
12 / 40
第一章

武闘大会へ向けて

しおりを挟む
 さて、週末の武闘大会に向けてやることをいくつか挙げてみようか。

 まず服装。この世界に来た時の服装のままだから、結構目立つ。しかもダンジョンの時の血飛沫がTシャツ中に染み込んでしまってるから、良くギョッとした目で見られる。

 懐も少しは深くなった事だし、この世界に馴染めるような服装をそろそろ買いたいと思う。もちろんれいちゃんにもだ。

「あぅあぅ!」

 ていうか、赤子用の服ってあるのかな?

 まあそれはどうにかするとして、二つ目はドロップ品の買取。前回ギルドにいた時、ドロップ品の買取をお願いするのを忘れちゃってな。ダンジョンのドロップ品が今大量にインベントリーに眠ってる状態だからね、ちょっと片付けないとな。

 後でまたギルドに立ち寄るとしよう。そして最後に、武器の調達。

 俺の戦力のほとんどは魔剣ディアボロス頼りだからな。それを使えないとなると新しい武器を調達する必要がある。しかも俺は剣術においては素人。武闘大会で出てくるだろう歴戦の猛者たちとタイマンを張れるか怪しい。

『おい、何落胆している。』

 俺の頭に声が響く。なんだよ神威か。煽りに来たのか?

『違う。お主、我のことを忘れていないか?』

 いや別に忘れてないよ。単に鬱陶しいから無視してるだけだが。

『無視するな!我の能力を忘れていないか?』

 神威の能力?なんだっけ?神威の刀をもう一度鑑定してみる。

《妖刀神威》

不可視の斬撃を放てるようになる、強力な刀。自由意志を持ち、認められたものはスキル『神威流剣術』が身に付く。

『気づいたか?我を握れば、神威流剣術が身につくのだ!』

 でも不可視の斬撃を放てるようにってーこれは魔法と同じ扱いにはならないのか?

『いや、あの不可視の斬撃は技術の賜物だ。低俗な魔法と一緒にするな!』

 へぇ。そんな低俗な魔法にやられた方がひどい言い草ですねー。


「あぅあぅ!」
『う、うるさい!れいちゃんも味方するな!』

 そういえば今まで気にしてなかったんだけど、なんでれいちゃんは俺の言ってることが分かるんだ?神威との念話にも介入してきたし、一体どういうことなんだ?

『ああ、それか。多分それはれいちゃんのスキルの影響だぞ。』

 ん?スキル?そんなのあったっけ?とりあえずれいちゃんを鑑定する。

個体名:れいちゃん
職業:勇者
レベル:178

体力:4814
攻撃力:1516
魔力:4012
防御力:2667
俊敏性:219

スキル:鑑定・インベントリー・言語理解

 レベルは大幅に上がってるけど、新しいスキルは取得してないし、前回と同じだな。

『物分かりが悪い奴だな!言語理解のスキルだ!』

 え?これって異世界の言葉を理解できるってだけのスキルじゃないの?

『言語理解の詳細を見てみろ。』

 神威に言われるがままにスキル『言語理解』の詳細を閲覧する。

《スキル;言語理解》

ありとあらゆる言語を理解できるようになる。

『ありとあらゆる言語には、念話や、異世界の言語も含まれる。その逆も然り、お前も赤子の言葉が理解できるぞ。』

 なるほど。だから異世界に転移してから急にれいちゃんの言葉が手に取るように分かる訳か。

 素直に子供と意思疎通できるのは、すごく嬉しいな。

 でもこれでやらないといけないことは一つ片付いたな。あとは服の調達とドロップ品の買取だ。まあ何事もまずは身だしなみからだし、とりあえず服屋に行ってみるか。

「じゃあれいちゃん、おしゃれしに行こうか。」

「あぅあぅ!」

***

「いらっしゃーい!」

 店員の活気の良い声が響く。ここは王都で一番大きい服屋、『アリス』だ。ありとあらゆるジャンルの服装が揃えられていることで評判だ。

 入ってみてまず驚いたのは店内の広さだ。サッカーコートくらいある店内は細かく区分されていて、男性女性用はもちろん、子供用に、犬用のものもあった。しかも品揃えも豊富。

 ここならいいのがありそうだけど……流石に自力でこの中から服を見つけるのはきついな。ここは店員さんに聞いてみるか。

「すみません。」

「はい、どうかしましたか?」

「実は僕とこの子用の服を探してまして……」

「なるほど。どのような服をお探しでしょうか。服にも色んな特徴がありますので……」

「実は冒険者なんで、出来るだけ丈夫、かつ機動力が優れた物がいいですね。」
「あぅ!」

「なるほど……じゃあ、こちらはどうでしょうか?」

 そういって店員は黒いコートと長ズボンを手にとって俺に差し出してきた。

「これは丈夫なだけでなく、魔力を流し込むと、身体強化魔法が発動する優れものです。これなんかどうでしょ?」

 確かにこれは中々良い服だな。デザインもいいし、黒はシックでかっこいい。だが値段は合わせて金貨1枚とまあまあ高い。

「お子様の方にはこれなんかどうでしょう?」

 店員さんが差し出したのは、白いカバーオールのベビー服。どうやら魔物の絹を使用しているらしく、随分丈夫かつ快適だそうだ。

 デザインには凝っていないがシンプルで良さそうだ。何より、さっきかられいちゃんが随分気に入ってるみたいで、「あぅあぅ!」と声をあげている。

 値段はカバーオールだからか銀貨八枚と比較的安いし、リーズナブルな値段だ。

 高級品だからやっぱり全体的に高額だけど命には変えられない。ギルドでのドロップ品の買取も期待できるし、今は買ってもいっか。

「じゃあ、お願いします。」

「はい、畏まりました!合計金貨一枚と銀貨八枚頂きます!」

「じゃあ、これで。」

 そう言って金貨一枚と銀貨八枚を支払い、新しい服に着替えて店を立ち去った。サイズもピッタリだし、中々似合っていて良さそうだ。

 次の目的地はギルド。早速出向くとしよう。

「次行くか!」

「あぅ!」

***

 ギルドでの買取は随分早く終わった。俺から買取をお願いされるのは目に見えていたらしく、受付嬢は用意周到だったな。

 俺がインベントリーから大量のドロップ品を出すと、瞬く間に査定を終わらせて買取金額を教えてくれた。多少色をつけてくれたらしくて、合計金貨六枚、銀貨七枚だった。

 まあゴブリンとかの死体が数千匹居るもんな、そりゃあ結構な金額になるわ。ちなみに非常食の『スライムのムニムニ』はもちろん売ってない。

 という感じで、ギルドでの用事はすぐ終わったんだけど、一つ欲しいものがあるんだよね。

 それはズバリ地図!俺はまだこの世界のことを良く知らないからな。国名だけ書かれているような簡単なものでいいから地図が欲しい。

 買取の代金を受け取るついでに受付嬢に聞いてみよう。

「すみません、地図ってギルドで売ってますか?」

「ええ、銅貨一枚で売ってますけどいかがですか?」

「じゃあ頂きます!」

 銅貨一枚と引き換えに地図を受け取る。見てみると結構詳細な地図で、国名はもちろん、街一つ一つまできちんと書かれていた。

 まあ今はパッと見だけでいっか。武闘大会が終わったらもう少しちゃんと見てみよう。

 さて、やることも一通り終わったし、宿でも探して武闘大会に備えるとしよう。

「れいちゃん、帰るぞ」

「あぅ!」

***
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...