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SOUL2・冨永真実
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しおりを挟む「A・・・・私ね、お別れ言いに来たんだ」
「はあっ? 何、言ってんだよ急に?」
「もう、逢えないんだ。ゴメンね」
「真実、そんな事言わないでくれよ。お前が店に来てくれなくなったら、俺の売り上げ落ちて困るだろ。あ、さっきの女に嫉妬してるのかよ? 大丈夫。アイツはただの身体だけの女。客だよ、客」
Aが微笑んで真実の肩を抱き寄せた。「お前も今すぐ抱いてやるから、機嫌直してくれよ」
無遠慮に身体に触れられて真美は拒み、嫌だと声を荒げた。
「お前が嫌でも、俺がお前を抱きたいんだよ。俺の汚れた身体、綺麗にするのはお前の役目だろ」
「やめてったら!!」
行為を止めないAを拒み、真実が突き放した。大祐はそんな彼女の行動を、黙って見守っていた。
「ンだよ。お前みたいなダサイ奴が、俺を拒む権利なんか、ねーんだよ! 嫌だなんて、ダサ子が何を今更、カマトトぶってんだ。お前を何回抱いたと思ってるんだよ!」
Aが、真実を怒鳴りつけた。「お前は大人しく、俺の上で腰振ってりゃいーんだよ」
真実の髪の毛を掴んで引っ張り、強引に口付ける。
「A・・どうしてそんなことするの? 本当の貴方は、もっと優しいじゃない! どうしてこんな事・・・・」
「解った風な事言うな! お前に、俺の何が解るんだよ!」
真実の言葉に怒りをあらわにして、酷く怒鳴りつけるA。
「解るよッ!! Aは、私の事、救ってくれたもん!!! 私に、生きる希望をくれたんだよ!」
真実がAを抱きしめた。
「貴方に渡したいものがあるの。お願い、私の家に来て。キャンバスがある部屋の本棚の引き出しに、渡したいものが入ってるから。鍵は持っているでしょ? お願い、絶対に来て! 待ってるから!!」
どんなに酷く抱いた時も罵った時も決して涙を見せることの無かった真実が、初めて自分の前で涙を流して訴える姿を見て、Aは驚いた。
「待ってるから――」
真実の身体が、透けた。
温もりが天に昇っていくように、Aの腕から真実が消えた。
「何だ・・・・消えた? おい、真実? 真実―――――っ!!」
はっ、とAは自分の声で目覚めた。
気が付くとベッドの上で眠っていた。
――今のは、夢だったのか?
Aは辺りを見回した。真実の姿は何処にも無かった。
さっき客の女が来て、ウリやって、そのまま眠ってしまったのか?
それにしても、何でダサ子の夢なんか・・・・。
ベッドから身体を起こすと、真実に描いてもらった花畑の絵が、掛けてあった壁から離れ、額ごと床に落ちていた。
この絵は真実に近づく為――真実を利用しようと思って、Aが嘘を吐いて彼女に描かせた絵だった。
真実に近づく事には既に成功したので、本来ならもうこんな絵等必要無い筈なのに、Aはどうしてもこの絵を捨てることが出来なかった。どうしても、雑に扱えなかった。
今まで大切にしていた其の絵は、まるでAに何かを告げるように、静かに床に其の身を横たえていた。
何だか、胸騒ぎがした。
絵の事といい、さっき見た夢もとてもただの夢とは思えなかった。
いてもたってもいられず、真実を探す為に、何かあった時の為にと預かっていた真実の部屋の鍵を持って、Aは自分のマンションを飛び出した。
彼女の家はそう遠くない。
自分でも解らないうちにAは息を切らせ、走っていた。
こんなに必死に走るなんて、何年ぶりだろう。
何故か真実の事が心配で、額に汗をかき、彼女のマンションまで走り続けた。
マンションに入り、急いで合鍵を使って鍵を開け、Aが真実の部屋の中に飛び込んだ。
「真実っ!!」
呼んでも彼女は部屋の何処にも居なかった。「真実!? 何処だよっ!」
寝室、バスルーム、トイレ、物置。全て探し回ったが、何処にも真実の姿は無かった。
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