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スマイル4・王様とケーキ作り
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パーティが終った後、応接室で王雅と向き合った。
「冷めないうちにどうぞ」
淹れたての紅茶を勧めると、うん、美味い、と呟いて、美味しそうに飲んでいる。
施設で育てているハーブを使って淹れた、無農薬ハーブティー。昨日も美味しいって飲んでいたわね。
セレブの割に、嫌がらずに庶民の食べるものを口にするから、見かけによらず庶民的な所もあるのかしら。
だから、子供たちに好かれるのかもしれない。
「今日は有難う。飾り付け手伝ってくれて、本当に助かったわ」
「あ、えっ、いや、別に・・・・」
「ケーキ、皆で食べたら美味しかったでしょ?」
「あ、えっ、まあ、美味かったけど・・・・」
「そりゃあ、アンタが買ってきてくれたケーキも相当美味しいと思うよ? 高いって有名なお店で買ったんでしょ。知ってるわ」
「まあな。俺が特別に作らせたんだ」
王雅が私の一言で、かなり得意気になっている。こういう所は王様だなって思う。
「でも、あのケーキじゃね、一人を笑顔にすることは出来ても、皆を笑顔にすることはできないの」
「笑顔?」
「そう。皆でワイワイ言いながら食べるのが、美味しいの。私の手作りじゃ、味はアンタの買ってきてくれたケーキには適わないけど、ケーキの役割は果たしてるのよ」
「役割? ナンだよそれ。そういえば買い物する前にも言ってたな。役割を教えるとか何とか」
「ええ。ケーキは、皆を笑顔にするの。楽しいパーティに欠かせない魔法のお菓子よ。ただ高い、有名で美味しいってだけじゃダメ。愛情がたっぷり込められたケーキには、皆を幸せにしてくれる魔法の役目がある。それが、ケーキの役割よ」
「ケーキ食っただけで幸せになんのかよ」
「なったでしょ? 子供たちもそうだけど、私も、アンタも」
「なるか!」
「はあー。お金があっても心が貧しいってイヤねえ。これだけ言っても解らないなんて」
やっぱ所詮、お金持ちには庶民の考えは解らないのよね。
超特大のため息が出た。
「テメエ、フザケテルトホンキデヤッチャウゾ!」
「アンタ、まだそんな事言ってんの? それに、私はふざけてないわ。何時だってホンキよ」
「俺だってふざけてねーよ!」
急に声を荒げた王雅が目の前の応接テーブルをドン、と拳で叩いた。
「いいか、俺はこの施設の人間を立ち退かせに来たんだ。お前がこの施設に拘る理由なんて知ったこっちゃねーよ! つべこべ言わずにさっさと契約書にサインしろ。それだけで沢山の金が手に入るし、子供達にも裕福な生活させてやれるだろ! 貧乏くさい手作りケーキじゃなくて、一流のケーキ、毎日腹いっぱい食わしてやれるじゃねーか。それが幸せなんだろ? 何時までも貧乏のまんまじゃ、アイツ等だってカワイソウ――・・・・」
言い過ぎたと思ったのか、私の顔を見て王雅が言葉を詰まらせた。
王雅にそんな事言われて、何故かショックだった。
少しは優しい所がある、いいヤツだって思っていたのに。
ただの勘違いだったのね。
「そうよね。確かにこんな貧乏施設じゃ、満足に美味しいものいっぱい食べさせてあげられないけど・・・・」
声が震えた。
あれ、私、どうしてこんなに悲しいのかしら。
金持ちのお坊ちゃまに、貧乏人のキモチが解らないのは当然の事なのに。
「ここはね、私の両親が一生懸命働いたお金で、建ててくれた施設なの! 孤児で辛い思いをしていた子供達や、虐待で苦しんでいた子供達が、笑顔になれる場所なの!! 幾ら大金出しても、お金なんかじゃ買えない、大切な故郷なの!! だから私だって身体張って守ってる! アンタみたいな金持ちのお坊ちゃまなんかには、この場所が私達にとってどんなに大切な場所なのかなんて、絶対解らないわ! 理解して欲しくもない!! だから、何度来ても同じよ! 帰って! 二度と来ないで!!」
口を開けば、王雅に自分のキモチが理解して貰えない事が、どういう訳か怒りとして現れた。
道楽息子に、私のキモチなんか解らなくたって、別に構わないじゃない。
こんなにムキになるのは、自分でもよく理解出来なかった。
「俺には・・・・わかんねーよ、お前の気持ちなんて。お前だって俺の気持ち、わかんねーだろ。・・・・また来る」
「二度と来ないで!!」怒って王雅を追い出した。
そうよ。もう二度と来ないで。
便利屋がいなくなってしまうのは残念だけれど、平穏なこの生活にこれ以上波風立たせないで。
王雅。貴方には、もう二度と会いたくない。
何度来ても結果は同じなんだから、もう私の事は放っておいて。施設のことは諦めてよ。
この施設は、誰が何と言おうと、絶対に手放さないんだから!!
「冷めないうちにどうぞ」
淹れたての紅茶を勧めると、うん、美味い、と呟いて、美味しそうに飲んでいる。
施設で育てているハーブを使って淹れた、無農薬ハーブティー。昨日も美味しいって飲んでいたわね。
セレブの割に、嫌がらずに庶民の食べるものを口にするから、見かけによらず庶民的な所もあるのかしら。
だから、子供たちに好かれるのかもしれない。
「今日は有難う。飾り付け手伝ってくれて、本当に助かったわ」
「あ、えっ、いや、別に・・・・」
「ケーキ、皆で食べたら美味しかったでしょ?」
「あ、えっ、まあ、美味かったけど・・・・」
「そりゃあ、アンタが買ってきてくれたケーキも相当美味しいと思うよ? 高いって有名なお店で買ったんでしょ。知ってるわ」
「まあな。俺が特別に作らせたんだ」
王雅が私の一言で、かなり得意気になっている。こういう所は王様だなって思う。
「でも、あのケーキじゃね、一人を笑顔にすることは出来ても、皆を笑顔にすることはできないの」
「笑顔?」
「そう。皆でワイワイ言いながら食べるのが、美味しいの。私の手作りじゃ、味はアンタの買ってきてくれたケーキには適わないけど、ケーキの役割は果たしてるのよ」
「役割? ナンだよそれ。そういえば買い物する前にも言ってたな。役割を教えるとか何とか」
「ええ。ケーキは、皆を笑顔にするの。楽しいパーティに欠かせない魔法のお菓子よ。ただ高い、有名で美味しいってだけじゃダメ。愛情がたっぷり込められたケーキには、皆を幸せにしてくれる魔法の役目がある。それが、ケーキの役割よ」
「ケーキ食っただけで幸せになんのかよ」
「なったでしょ? 子供たちもそうだけど、私も、アンタも」
「なるか!」
「はあー。お金があっても心が貧しいってイヤねえ。これだけ言っても解らないなんて」
やっぱ所詮、お金持ちには庶民の考えは解らないのよね。
超特大のため息が出た。
「テメエ、フザケテルトホンキデヤッチャウゾ!」
「アンタ、まだそんな事言ってんの? それに、私はふざけてないわ。何時だってホンキよ」
「俺だってふざけてねーよ!」
急に声を荒げた王雅が目の前の応接テーブルをドン、と拳で叩いた。
「いいか、俺はこの施設の人間を立ち退かせに来たんだ。お前がこの施設に拘る理由なんて知ったこっちゃねーよ! つべこべ言わずにさっさと契約書にサインしろ。それだけで沢山の金が手に入るし、子供達にも裕福な生活させてやれるだろ! 貧乏くさい手作りケーキじゃなくて、一流のケーキ、毎日腹いっぱい食わしてやれるじゃねーか。それが幸せなんだろ? 何時までも貧乏のまんまじゃ、アイツ等だってカワイソウ――・・・・」
言い過ぎたと思ったのか、私の顔を見て王雅が言葉を詰まらせた。
王雅にそんな事言われて、何故かショックだった。
少しは優しい所がある、いいヤツだって思っていたのに。
ただの勘違いだったのね。
「そうよね。確かにこんな貧乏施設じゃ、満足に美味しいものいっぱい食べさせてあげられないけど・・・・」
声が震えた。
あれ、私、どうしてこんなに悲しいのかしら。
金持ちのお坊ちゃまに、貧乏人のキモチが解らないのは当然の事なのに。
「ここはね、私の両親が一生懸命働いたお金で、建ててくれた施設なの! 孤児で辛い思いをしていた子供達や、虐待で苦しんでいた子供達が、笑顔になれる場所なの!! 幾ら大金出しても、お金なんかじゃ買えない、大切な故郷なの!! だから私だって身体張って守ってる! アンタみたいな金持ちのお坊ちゃまなんかには、この場所が私達にとってどんなに大切な場所なのかなんて、絶対解らないわ! 理解して欲しくもない!! だから、何度来ても同じよ! 帰って! 二度と来ないで!!」
口を開けば、王雅に自分のキモチが理解して貰えない事が、どういう訳か怒りとして現れた。
道楽息子に、私のキモチなんか解らなくたって、別に構わないじゃない。
こんなにムキになるのは、自分でもよく理解出来なかった。
「俺には・・・・わかんねーよ、お前の気持ちなんて。お前だって俺の気持ち、わかんねーだろ。・・・・また来る」
「二度と来ないで!!」怒って王雅を追い出した。
そうよ。もう二度と来ないで。
便利屋がいなくなってしまうのは残念だけれど、平穏なこの生活にこれ以上波風立たせないで。
王雅。貴方には、もう二度と会いたくない。
何度来ても結果は同じなんだから、もう私の事は放っておいて。施設のことは諦めてよ。
この施設は、誰が何と言おうと、絶対に手放さないんだから!!
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