王様スマイル

スマイル１２・王様がバースデーパーティーを企画

１

　
「王雅、本当にありがとう!!　留守番、宜しくね！」

「いいって。任せとけ。ホラ、大事な打ち合わせなんだろ？　早く行けよ。遅れちまうだろ」

「うん。本当にありがとう！」


　行ってきますと言って、施設を後にした。


　今日、施設に関わる重要な打ち合わせが入り、施設を夕方まで抜けないといけなくなってしまった。
　立ち入り検査とか色々しなくてもいい代わりに、施設の様子や諸々行政に説明をしなくちゃいけないの。

　数日前に連絡が入り、近くの商工会議所まで来るように言われた。
　留守番をどうしようかと思っていたところに、王雅がやって来て、困ってるなら俺が留守番してやろーか、って言ってくれたんだ。
　渡りに船とはこの事ね。速攻でお願いした。
　王様が神様に見えた。


　本当に助かるわ。持つべきものは友――じゃなくて王様ね。
　今度何かお礼しよう。


　朝早くから留守番の為に来てくれた王雅に、どこに何が収納されているか――主にお昼寝の為の布団ね――の場所の説明、昼食にカレーを作ったので食べさせて欲しい事、様々お願いした。
　ちょっと心配だけど、ガックンやリカちゃんも居るし、何せよ子供達だけで留守番をさせなくて済むから本当に助かった。
　夕方までって言われてるけど、早く切り上げて帰ろう。


　近くの商工会議所の一室に行った。約束の時間五分前到着だったけど、簡易な白い壁の室内には、行政の人間と思われる男性が二人、並んで座って待っていた。
　机の上を見ると、大層な資料が置いてある。

　あぁ、私のやり方（施設運営）がマズいから、注意喚起されるんだろうな。
　思わずため息が出そうになった。


「真崎美羽です。マサキ施設の責任者です。今日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

　眼鏡をかけたいかにも行政の人って感じの、がっしりしているけど、ピチっとスーツを着こなした三十代半ばくらいの男性と、商工会議所の担当者と思われる、恰幅の良い大きなおなかをした五十代後半の男性が二人、揃って挨拶をしてくれた。

　おかけください、と席に着くように言われた。

　マサキ施設の資料を見せられ、運営施設はこちらで間違いありませんね、と聞かれたので、そうです、と答えた。

「えー････マサキ施設は、該当するなら児童養護施設になる訳ですね？」

「そうです。保護者のない児童や虐待を受けている児童などを養護し、退所後も援助を行っています。主に小学生になるまでのお子様を、責任を持ってお預かりしています」
　
　
「現在、おひとりで？」

「はい。金銭的な余裕がありませんので、誰も雇う事が出来ません」

「わかりました。この、マサキ施設というのは小舎制とありますが、どういう意味ですか？」

「小舎制というのは、施設の在り方のひとつです。一舎（建物ひとつ）につき十二人までの児童が生活する施設の事です。一つの施設の敷地内に独立した家屋がいくつかある場合と、大きな建物の中で、生活単位を小さく区切る場合があり、それぞれに必要な設備が設けられています。マサキ施設は後者です。子供が小さいので、本来でしたらもう少しスタッフが必要ですが、私一人で今はこなしています。一人ではありますが、一般的な施設より家庭的な雰囲気のある団体生活を心がけて、運営しております」


　マサキ施設（小舎制）は本当は十二人までしか入所できないって決まっているのは解っているけど、事情があって、ちょっと前まで十三人いたのよね。時々人数オーバーすることがある。
　バレてないかしら。
　冷や冷やした。


　それからも、施設の事を根掘り葉掘り聞かれ、延々と説明をさせられた。
　気が付くと、お昼前になっていた。