王様スマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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スマイル19・王様ピンチに現る

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 あんな大きな男から、サトル君を守れるかしら。
 でも、やるしかない。
 大切な子供たちを守れるのは、私しかいないんだから!!


 大男に吹っ飛ばされたであろうライタ君が地面にしりもちをついていたけど、それでも泣きながらサトル君を守ろうと必死に立ち上がり、大男の腕にしがみつくのが目に入った。

「サトルっちを返せ!」

「あぁ!? ガキ、殺されてぇのか!?」

 大男の剣幕にライタ君は顔を引きつらせた。しかしそれでも勇敢な彼は、大男の腕を離さない。

「何をやっているの! そこの貴方、子供たちから離れなさい! 乱暴は赦さないわよ!!」

「み・・・・ミューせん・・・・せっ・・・・」

 私の姿を見た途端、安堵したのかライタ君の涙腺が崩壊した。ぼろぼろと涙を零して震えている。怖かっただろうな。それでもサトル君を守ろうとしてくれたのね。ライタ君は本当に勇敢だわ。
 サトル君に至っては、ぴくりとも動いていない。震えているわ。怖くて動けない様子みたい。

「ライタ君、こっちいらっしゃい。大丈夫よ」

 大男の前まで行って、ライタ君を守るようにして立った。「遊戯室にみんないるから、一緒にいてて。この男とは先生が話するから、後は任せて? 怖かったでしょ。本当によく頑張ったね。ありがとう」

 ライタ君は頷いて、走って施設内に入って行った。
 
「どちら様ですか。一体、その子に何の御用ですか? 子供にこんな乱暴して、警察呼びますよ!」

「親が子供をどうしようが、親の勝手じゃろうが! おんどれ(※方言でおのれの意味)が口を挟むな! サトル、帰んぞ、コラ」

「やめて下さい! たとえ親御さんでも、こちらは責任をもって大切なお子様をお預かりしています! 規約違反ですよ!!」

「じゃかあしいっ(やかましい)!!」

 無理矢理サトル君を連れて行こうとする男の腕に、がっしりしがみついた。「行かせません、絶対に!!」


――おかあさん、いたいよ。

――おとうさん、やめて。

――どうして、たたくの?

――どうして・・・・。


 男の太い腕を見て、幼い頃の、私の中の痛く苦しい記憶が蘇る。
 毎日のように殴られて、悪い事等何もしていないのに閉じ込められたり、寒いベランダに放置されたり――。実の親から受けた数々の仕打ち、一生忘れない。この男の腕は、顔も忘れてしまった私の父親の腕にそっくりだ。

 止めてと訴えても、誰にも助けて貰えなくて、苦しくて、辛くて、何度も死を予感した。
 このまま殴り殺されてしまうんじゃないかという恐怖に怯え、毎日を暮らしていた地獄の日々。
 私が守ってあげなきゃ、サトル君は想像を絶する程の酷い目に遭うだろう。
 口にするのも憚(はばか)れるような、大人たちの勝手な折檻という名目の酷い暴力を、その幼い身体中に浴びる事になる。

「離せや、コラぁ! 痛い目見んぞ!!」

「殴りたければ殴りなさい! 気が済むまで私を殴ればいいわ!! でも、絶対、絶対サトル君は渡さない!! アンタみたいなクズには絶対にっ!!」

 私の剣幕に、逆にチンピラ男の方が一瞬怯んだ。

「じゃかあしんじゃ(やかましい)、このアマ! いてまうど、ワレぇ(殺してしまうぞ)!」

 彼の暴言を無視して、サトル君を取り返そうと必死になっていると――・・・・



「悟(さとる)っ、悟――っ!!」



 細身の四十歳位の紳士的な男性が、突然サトル君の名前を呼びながら、大男にタックルしてきた。彼は白のポロシャツに黒のパンツ姿で、いたって普通の上品そうなおじさんだった。



 なにっ、突然!? この人、一体誰っ!?



 呆然としていると、チンピラ男に体当たりした紳士的な男の人は、サトル君を守るように包み込んで、その場で蹲った。
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