王様スマイル

スマイル２９・王様と双子の兄妹

２

　王雅は何をやらせても、すぐ上手くできるようになる。最初は下手でも、すぐコツを掴んでしまうの。

　そういう彼を見ると、こんな貧乏な施設で食事の盛り付けができるようになるより、もっと立派なお仕事に携わっている方が本来の彼の姿なんだろうと思う。
　仕事もきっとそうなのでしょう。出来ない事があったとしても、すぐに何でもやってのけてしまうんだわ。


　二人で手分けして食事の用意をしていると、キッチンの端に取り付けられた何の変哲もない、白のシンプルな壁掛け時計の針が、そろそろ午前六時五十分を指そうとしていた。
　この時計は、キリの良い時刻を知らせるチャイムが鳴るの。つまり、七時になったらチャイムが一回鳴るようになっている。一時間毎にチャイムが鳴るのよ。
　時間を知る目安にって私が小さな頃から使っていて、似たような時計が各部屋にも付いているのよ。


「時間だから、ガキ共起こしに行って来る。食堂はもう準備できてるから、着替えさせたらそっち向かわせるな」

「うん。お願い」


　相変わらず仕事が早い。便利屋は健在ね。
　まあ私の中で、便利屋なんてそんな風にはもう呼べなくなってしまったけれど。
　王雅がキッチンを出て遊戯室へ向かってくれたので、私は食堂の準備をすることにした。
　暫くすると子供たちがキッチンにやって来て、おはようございまーす、と大きな声で挨拶してくれた。愛らしいチイちゃんの『おーよー（おはよう）』が今日から聞けなくなってしまったのは淋しいけれど、他にもまだまだ私の子供はマサキ施設にいてくれるのだから、私も負けずに元気な声でおはよう、と挨拶をした。


　元気な挨拶って、気持ちがすっとするわね。一日元気で頑張ろうっていう気になれるもの。


　早速用意できたお皿をトレイに乗せて、食堂まで落とさず運べる子供たちには順番に渡して、小さな子供の分は私とリカちゃんやガックンで手分けして運んだ。
　運び終わってみんなで席について待っていると、少し遅れてキューマ君と王雅が食堂に入ってきた。キューマ君は早く歩けないから、ゆっくり誰かが付き添っていつも食堂まで来るのよ。今日は王雅がキューマ君の手を引いて、連れてきてくれたのね。

　二人が着席したのを見て、声を掛けた。


「みんな、揃った？　それじゃあ、今日も楽しく生きている事と、美味しいご飯が食べられる事に感謝して････いただきます」


　神様、ありがとうございます。


　みんなで揃って美味しい食事が摂れる事、こんな幸せな毎日が過ごせる事、本当に感謝しています。
　私は、幸運です。
　様々な出会いがあり、絶望しか無いと思っていた世界が色づき、助けられ、今日まで生きる事が出来ました。


　今尚、同じ空の下、大人に愛されず辛く苦しい思いをしている子供たちが一人でも多く、私と同じように素晴らしい出会いが訪れ、どうか幸せになれますように――