王様スマイル

スマイル２９・王様と双子の兄妹

４

　


　キンコーン



　子供たちの手を取って喜んでいる王雅を見つめていると、来客用のチャイムが鳴った。
　まだ午前九時回った所なのに、一体誰だろう。お客様かしら。

「お客さんだ―」

　全員玄関に居たものだから、我先に子供たちが外へ出ようとするのを、ストーップ、と王雅が大声で制した。

「お前等っ、よく聞けっ！」

　玄関の前に立ちはだかった王雅が、子供たちを見た。

「昨日のチイの時みたいに、お前等、悪い大人がこの施設に来たら、どーすんだ！　誰でも彼でも施設に入れるな！　今来たヤツは、お化けか悪党かもしんねーだろ！　絶対、絶対絶対、ちゃんと確かめてから、客は入れろ。解ったか！」

「お化けなら、俺がやっつけてやるぞー！」

　ライタ君が反論した。

「そういう問題じゃない。お前の手に負えない悪党が来たらどーすんだ」

「悪党なら、俺とリョウちゃんとサトルっちでやっつけるぞー」

「数の問題じゃねーっつーの！　三人でも敵わなかったらどーすんだよ？」

「大丈夫！　ピンチになったら、ウルトライダーQが助けに来てくれるから!!」
　今ライタ君が言った、ウルトライダーQというのは、彼が大好きな戦隊ヒーローよ。ウルトラ強くてカッコイイ、光の国の戦士キュウが色々な乗り物に乗ってやって来るの。赤とシルバーと青の配合がなかなか奇抜で、子供たちに大人気のヒーロー。
　サトル君やリョウ君も大好きで、よくウルトライダーQのチャンバラごっこをしているわ。

　最近は王雅を悪の帝王に仕立てて、帝王VS子供という遊びをやっているの。

　王雅ったら、正義のヒーローというより、悪の帝王っていう方が似合っているから、何だか可笑しくて笑っちゃうのよね。

　この前なんか、黒いゴミ袋かしてーってサトル君が言うから一枚分けてあげたら、私の目を盗んで沢山ゴミ袋を持ち出して、それを割いてテープで止めて、即席の帝王マント作っちゃったのよ。王雅が背が高いから一枚じゃちんちくりんになってしまって、どうしても枚数が欲しかったんだって。


　またそれが、妙に王雅にマッチしてて、思わず赦しちゃったわ。ゴミ袋沢山ムダ使いされたのは困ったけど。
　
「ウルトライダーQが、マサキ施設なんかに来るわけねーだろが。地球の平和を守るのに、忙しーんだよ」

　王雅が真顔でそんな事を言うから、危うく吹きそうになった。
　地球の平和ね。本当に、そんなヒーローが居てくれたらいいのにね。

　ううん、もう居るわ。
　私の、目の前に。

　マサキ施設の平和と幸せを守ってくれる、ウルトラ帝王（ヒーロー）がね。
　たまにセクハラするけどね。そこは目をつぶってあげましょう。

　あなたたちの言う通り、そんな悪（？）のウルトラ帝王に、私の心は見事に持っていかれてしまったわよ。
　本当、迂闊だった。出来るなら、今からでも返して欲しい。


　でも、ヒーローが何時か宇宙へ帰ってしまうように、帝王もお城の然るべき場所へ帰る日が来るわ。
　何時でも助けてくれるって、勘違いしちゃダメなのよ。


「と・に・か・く！　よく確かめもせずに来客を中に入れるのは――」

「ちょっと王雅！　お客様が待ってるから、どいて」

　そういえば、と来客を放置していたことを思い出し、喋っている最中の帝王を押しのけたら、不服そうにされたけど、知らないフリをして表に出た。