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スマイル35・王様のいない日々
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しおりを挟む「美羽。お前の言う通りだ。僕も自分の心になかなか折り合い付かなくて、菫さんに心を開かず、辛い思いをさせてしまった事は認めるよ。でも今、彼女を大切にしたいと思い始めている自分もいるんだ。この一歩がマサキ施設だよ。彼女にここを見てもらいたかった。僕もこの施設はとても大切なんだ。でも、それ以上に僕は、美羽が大切だ。僕の中で、お前を超える女はいない。・・・・比べたらいけないというのは解っているんだ。菫さんは美羽とは違う。彼女は純粋で、僕だけを想ってくれているのに・・・・応える事が出来ないのが辛くて・・・・。そんな僕だと判っていながら、菫さんはそれでも傍にいてくれるんだ。でも、結婚を止める程彼女を追い詰めていたなんて、思いもしなかったよ」
「恭ちゃんの鈍感! 一体、菫ちゃんの何を見てるの? あんなお嬢様が、私みたいにズケズケハッキリ言える訳ないじゃない」
「・・・・そうだな」
「私とは違うの。菫ちゃんは、菫ちゃん。比べたりしないで、彼女の良い所を沢山見つけて、愛して欲しい」
「・・・・ありがとう。美羽に説教されるなんてな」
「当たり前でしょ。恭ちゃんを説教できるのは、天国のおとうさんとおかあさんと、私だけ。でも、これはからは菫ちゃんも加わるの。家族になるの。でも、恭ちゃんと私は兄妹っていう強い絆で結ばれているの。それは誰と結婚しても無くならないし、変わらないの。愛情はき違えないで、そこ理解したら、何も悩む事なんか無いわ。だから、菫ちゃんを大切に愛してね」
「ああ、そうするよ」
恭ちゃんも、晴れやかな顔になっていた。
フッきれた、いい顔してる。
いつか私が、王雅に話を聞いてもらった時のように。
互いに男女の愛だと思っていたのは、近くに居すぎて解らなかった、幼い私たちの家族愛。
これからは、お互い別の人を愛して、生きていけばいい。
だって家族愛は、たとえどんなに離れてしまっても、永遠になくならないもの。
「今日は来て良かったよ。美羽と話せて、良かった」
「私も、来てくれて嬉しかったわ。菫ちゃんとお友達になれたし」
「お前は凄いな。菫さんとそんなにすぐ仲良くなれるなんて」
「菫ちゃんが頑張ってくれたから。美羽ちゃんって呼んでいいかって聞いてくれて、歩み寄ってくれたの。今まできっと、菫ちゃんは恭ちゃんに歩み寄っていたハズよ。でも、それを汲み取らなかったんだから、今度は恭ちゃんから菫ちゃんに歩み寄ってあげて。菫ちゃん、恭ちゃんが来てくれるのをずっと待っているわ」
「そうだな。菫さん・・・・いや、菫に寄り添ってみるよ」
良かったわ。
大切な恭ちゃんが、大切な菫ちゃんと、ずっと仲良く過ごしていけるなら、こんなに嬉しい事は無い。
「恭ちゃん、菫ちゃんを大事にね」
「ああ。わかってる」
「しっかりね」
「ああ」
お互いに、手を握って固く約束を交わした。
それから渋る子供たちを説得して、また絶対に近いうちに遊びに来てもらえるように約束して、恭ちゃんと菫さんは帰って行った。
これから、二人の絆が私と恭ちゃんの絆とはまた違う形で深まるように、願った。
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