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スマイル38・王様の寵愛
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しおりを挟む「お前には何度も伝えたけど、俺は櫻井家に未練は無いし、もし縁が切れても大丈夫な用意もしてある。俺は、美羽とガキ共に囲まれて、施設で暮らしたいと思ってんだ。俺が淋しがり屋の子供みたいな性格の男だって、知ってんだろ? 何度も俺の事抱きしめて、面倒だって思わずに受け入れて、助けてくれたよな? お前が居なきゃ、俺の方が生きていけねーんだ。そんな俺が、どうしてお前を捨てるんだよ。お前が俺の事全然信用してくんねーから・・・・だからこんな公のプロポーズにして会見まで開いたんだ」
王雅の綺麗な指が、私の涙を優しく拭ってくれたかと思ったら、逃げられないように両肩を掴まれた。
「美羽。俺があんな恥ずかしいプロポーズにしたのは、全部お前の為だ。名指しで公の場で宣言したんだ。絶対に裏切ることなんてできねーだろ! 俺は今から宣言通り、政治家目指すんだ。もっともっとスゲー男になって、お前達の事もそうだけど、これからの未来のガキ共の事も、俺が守ってやるんだ! そんな男が、公の場で愛の告白した女を捨てたなんて事してみろ。もう誰も俺を信用してくれなくなるだろ。それくらい察してくれよっ!」
王雅に抱きしめられ、涙の跡を拭うように口づけが落とされる。
「俺が、お前を裏切ったりすると思うか。信じてくれ。あんな恥ずかしーマネしたんだ。このご時世、もう一生消えねえニュースになっちまうだろ。それなのに、プロポーズ断られたなんて世間に公表させる気か。俺をどこまで間抜けな男にさせる気だ、お前」
「でもっ・・・・私なんて・・・・何にも持ってないのよ? 庶民で貧乏だし、美人でもないし、王雅みたいな凄い男に一生愛される自信が無いの! 血筋だって胸を張れるものじゃないし、貴方を好きになっても、捨てられたりしたらどうしようって、不安で、不安で、堪らなくなるのよ・・・・」
もっとわかって欲しい。代わりなんか幾らでも履いて捨てる程、誰でも傍にいる貴方と、私は全然違うの。
認めたくなかった。貴方を心から必要としてしまった、愚かな自分を。
私が唯一寄り添えるのは、貴方しかいないんだって事――
「俺が凄いのは当然だ。お前が、俺を育てたんだからな」
自信たっぷりに言う所は、相変わらず王様ね。
「だから、自分がどれだけスゲー事やってるか、もっと自信持てよ。心配しなくてもお前は美人だし、世界一のイイ女なんだ。俺が死ぬほど惚れた女なんだぜ? お前はスゲーよ。血も繋がらないガキ共の事、毎日一生懸命、命懸けて立派に育ててるんだ。それだけでも、胸張って自慢できることだろーが! 俺はスゲーって思う。マジで尊敬してる。そんなお前に、俺も立派に育ててもらったんだ。お前に出逢わなかったら、俺は今ここに居ない。櫻井家のボンボンで、ボンクラのまま一生終わってたと思う。誰もがスゲーって認めてくれる、ガキ共や苦しむ会社を守るための未来プロジェクトなんて、考えもつかなかった。こんな立派な男にはなれなかった。ま、今はまだ途中だけどな。でも、俺は絶対、やり遂げてみせるぜ。こう思えたのも、頑張れたのも、全部お前のおかげだ。だからさ、お前が俺を支えてくれよ。これからもずっと、お前が俺を愛してくれよ――」
そっと王雅の唇が触れた。熱い唇が、私を包んでいる。
ドキドキする。もう逃げられない。
溶けてしまいそう――・・・・
唇を離し、さっきと同じ選択肢を王雅が投げかけてくる。「で、返事は? 俺のものになってもいいか、イエスかハイか、どっちだよ!」
「さっきも言ったけど、どっちもイエスじゃない・・・・」
答えを聞かずに、このままなし崩にしてくれたらいいのに。
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