280 / 287
ラストスマイル・王様は世界一
5
しおりを挟む
お母様は、愁いを含んだ切れ長の瞳を空に向けていた。きっと今の私の言葉を聞いて、これまでの事を振り返り、悔やまれていらっしゃるんじゃないかしら。
「ご心配要りません。王雅さんは今、立派に成長されています。照れくさいと思いますけれど、結婚式にお父様やお母様がいらっしゃれば、とても嬉しいと思います。これからですよ、お母様。まだやり直せます。これから、ここから始めたらいいじゃないですか。親子の絆は、これから作っていけばいいんです。私に、お手伝いさせてください」
「ありがとう、美羽さん。私、王雅もいいけど、子供は美羽さんで充分よ。やっぱり女の子がいいわね!」
王雅が聞いたら怒りだしそうなセリフだ。どうだろう。ケンカになっちゃいそうだわ。
聞いていたけれど、お母様と王雅はケンカをした事がないんですって!
私なんか、美幸おかあさんとしょっちゅうケンカしてたけどなぁ。おかあさんがガンコだから。
「ありがとうございます。でも、王雅さんも大切にして下さいね。場所や日程が決まったら連絡させていただきます。絶対、来てくださいね」
「当たり前じゃない」お母様は、王雅と同じ王様スマイル――いや、女王スマイルを見せた。
「可愛い娘の結婚式に行かない親が、どこにいるの」
そんな風に私に向かって、最高の女王スマイルを見せてくれたお母様が、今。
施設で行う結婚式の準備を整えている最中の私を訪ねてくれて、今日この日の為に作って下さったドレスを持ってきてくれた。
そうそう。今日の結婚式は施設で行うの。この話を『コロッケスマイル』時代から読んでくれているならもう知っていると思うけど、知らない人もいると思うから、念のため説明しておくわね。
王雅との結婚式を行う式場を探した時、とても沢山のお金が必要だという事が判ったの。
というのも、彼は日本屈指の大企業の御曹司。私の方はそれほどの人数にはならないと思うけど、会社関係の人達を招待するようなスゴイ結婚式にしちゃうと、億単位のお金がかかる事は避けられないと思う。
大企業には大企業のプライドもあるでしょう。招待客の多さ、借り切る会場のレベル――正直私には身に余り過ぎる。
そんな驚く程の金額でも、王雅や櫻井家はいとも簡単に払ってのけちゃうと思うけど、私はそんな贅沢したくない。
どうしようかと困っていたら、王雅の方から施設で結婚式をしよう、と提案してくれたの!
有難かった。確かに豪華なホテルや会場を借り、引き出物や宴会料理を頼めば、それだけ携わっている人たちが儲かるのも理解できるけれど、自分の為にそんな大金を使うのは、できるだけ避けたかった。
だったらそのお金を、少しでも困っている子供たちのために遣って欲しいから。
「ご心配要りません。王雅さんは今、立派に成長されています。照れくさいと思いますけれど、結婚式にお父様やお母様がいらっしゃれば、とても嬉しいと思います。これからですよ、お母様。まだやり直せます。これから、ここから始めたらいいじゃないですか。親子の絆は、これから作っていけばいいんです。私に、お手伝いさせてください」
「ありがとう、美羽さん。私、王雅もいいけど、子供は美羽さんで充分よ。やっぱり女の子がいいわね!」
王雅が聞いたら怒りだしそうなセリフだ。どうだろう。ケンカになっちゃいそうだわ。
聞いていたけれど、お母様と王雅はケンカをした事がないんですって!
私なんか、美幸おかあさんとしょっちゅうケンカしてたけどなぁ。おかあさんがガンコだから。
「ありがとうございます。でも、王雅さんも大切にして下さいね。場所や日程が決まったら連絡させていただきます。絶対、来てくださいね」
「当たり前じゃない」お母様は、王雅と同じ王様スマイル――いや、女王スマイルを見せた。
「可愛い娘の結婚式に行かない親が、どこにいるの」
そんな風に私に向かって、最高の女王スマイルを見せてくれたお母様が、今。
施設で行う結婚式の準備を整えている最中の私を訪ねてくれて、今日この日の為に作って下さったドレスを持ってきてくれた。
そうそう。今日の結婚式は施設で行うの。この話を『コロッケスマイル』時代から読んでくれているならもう知っていると思うけど、知らない人もいると思うから、念のため説明しておくわね。
王雅との結婚式を行う式場を探した時、とても沢山のお金が必要だという事が判ったの。
というのも、彼は日本屈指の大企業の御曹司。私の方はそれほどの人数にはならないと思うけど、会社関係の人達を招待するようなスゴイ結婚式にしちゃうと、億単位のお金がかかる事は避けられないと思う。
大企業には大企業のプライドもあるでしょう。招待客の多さ、借り切る会場のレベル――正直私には身に余り過ぎる。
そんな驚く程の金額でも、王雅や櫻井家はいとも簡単に払ってのけちゃうと思うけど、私はそんな贅沢したくない。
どうしようかと困っていたら、王雅の方から施設で結婚式をしよう、と提案してくれたの!
有難かった。確かに豪華なホテルや会場を借り、引き出物や宴会料理を頼めば、それだけ携わっている人たちが儲かるのも理解できるけれど、自分の為にそんな大金を使うのは、できるだけ避けたかった。
だったらそのお金を、少しでも困っている子供たちのために遣って欲しいから。
0
あなたにおすすめの小説
推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー
田古みゆう
恋愛
推し活女子と爽やかすぎる隣人――秘密の逢瀬は、推し活か、それとも…?
引っ越し先のお隣さんは、ちょっと優しすぎる爽やか青年。
今どき、あんなに気さくで礼儀正しい人、実在するの!?
私がガチのアイドルオタクだと知っても、引かずに一緒に盛り上がってくれるなんて、もはや神では?
でもそんな彼には、ちょっと不思議なところもある。昼間にぶらぶらしてたり、深夜に帰宅したり、不在の日も多かったり……普通の会社員じゃないよね? 一体何者?
それに顔。出会ったばかりのはずなのに、なぜか既視感。彼を見るたび、私の脳が勝手にざわついている。
彼を見るたび、初めて推しを見つけた時みたいに、ソワソワが止まらない。隣人が神すぎて、オタク脳がバグったか?
これは、アイドルオタクの私が、謎すぎる隣人に“沼ってしまった”話。
清く正しく、でもちょっと切なくなる予感しかしない──。
「隣人を、推しにするのはアリですか?」
誰にも言えないけど、でも誰か教えて〜。
※「エブリスタ」ほか投稿サイトでも、同タイトルを公開中です。
※表紙画像及び挿絵は、フリー素材及びAI生成画像を加工使用しています。
※本作品は、プロットやアイディア出し等に、補助的にAIを使用しています。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
遅咲き鬱金香(チューリップ)の花咲く日
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
巴 金香(ともえ このか)は寺子屋で教師手伝いをしている十九才。
母を早くに亡くし父親は仕事で留守であることが多く、家庭の愛情に恵まれずに育った。そのために自己評価の低いところがあり、また男性を少し苦手としている。そのため恋にも縁がなかった。
ある日、寺子屋に小説家の源清 麓乎(げんせい ろくや)が出張教師としてやってくる。
麓乎に小説家を目指さないかと誘われ、金香は内弟子として弟子入りすることに……。
【第一回 ビーズログ小説大賞】一次選考通過作品
Fly high 〜勘違いから始まる恋〜
吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。
ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。
奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。
なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる