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第1話 ~政海ちゃんと海里くん~
Side・斎賀政海/その5
しおりを挟む「急になんかごめん・・・・」
しょんぼり俯いて謝った。
「あ、ああ。手なんか食べるなよ。びっくりするだろ。そんなにお腹すいた?」
「うん。GM(ごめん なさい)」
「いいよ、気にすんな」ポン、と頭を撫でられた。「じゃあまた後で。昼、一緒に食べよ」
「うん。食べる!」
「二限が終わったら、迎えに行ってやるから」
「うん。待ってるね!」
「じゃ、な」
海里ちゃんは手をヒラヒラさせて、颯爽と去って行った。
KK(かいりちゃん かっこいい)――!!
あああ、僕、海里ちゃんの一番になりたい。
海里ちゃんが好きになってくれるような・・・・って、あれ。待って。
海里ちゃんが好きになるのは、どっちだろう?
男? 女?
僕はどっちも被っているから、持ってこいだと思うんだけど、それ言ったらダメだよねぇー。はあー。
がくっと肩が落ちる。今日の授業はイケメンの先生の授業だから嬉しい筈なのに、海里ちゃんに意識が行くようになってからは、今一つ身が入らない。
それよりも、さっきの事を思い出すと顔が赤くなる。
なんて大胆な事をしちゃったんだろう。海里ちゃんの指を食べちゃうなんて・・・・。
だって、手を繋いでくれたのが嬉しかったんだ。違うと思うけど、恋人つなぎみたいに思えて・・・・。だからあのまま。海里ちゃん、僕・・・僕! ガバッ! っと抱きしめて、キスしちゃったりとか・・・・そういうの無意識に考えちゃった結果論だと思う。
ああ、また妄想が止まらないよ。
海里ちゃんはさっきも優しかった。手を優しく握り返してくれて、彼女(?)の言う事にドキドキしながら従っちゃうんだ。
『政海、可愛いな』
可愛いって、他の男の人じゃなくて、海里ちゃんに言って貰いたい。
ああ、僕の脳内の海里ちゃんは僕が好きで、可愛いって囁いてくれて、そのままキスできる距離まで近づいて――
「おっはよー、政海」
「きゃんっ」
声をかけられたので、驚いて声を出してしまった。妄想から現実に引き戻された。
妄想していた僕に声をかけてくれたのは、ポニーテールを揺らしながら隣の席に座ってくる女の子――同級生の、田辺美乃梨(たなべみのり)ちゃんだった。明るくハツラツとしていて、僕みたいな不思議系の男(自分では女の子のつもりだけど)でも仲良くしてくれる、優しくて相当いい人。勿論、僕が男だという事は、美乃梨ちゃんは知らない。でも僕自身は、身体は男でも心は女だから、美乃梨ちゃんはガールズトークができる唯一の女友達だと心から思っている。
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